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■SS 長門有希の監督
〜第四章〜
―待っていた長門―
ボケていなかった管理人の爺さんの目線の先には、
野球グローブを持った姿がまったく似合わない、
長門が立っていた。
「長門、俺を待っていた……のか?」
「そう」
「どうして…?」
「あなたが野球の練習をすると言った」
「た、たしかに言ったが……あれはだな…」
「……」
自分でも無意識に言った。
…なんていい加減なことは言えなかった。
「その……お前の予定とかは……大丈夫なのか?」
「問題無い」
俺が野球の練習を頑張ろうとしている理由…
もしかしたら……長門と一緒に練習をすれば、
その答えが見つかるかもしれない。
……いや、これは俺の都合の良い言い訳だな。
正直な気持ち……長門と一緒に練習できることが、
ただ嬉しかっただけじゃないのか?
そうだとしても……そんな恥ずかしいことを、
面と向かって言えるか、バカ野郎。
「それじゃ……野球の練習に付き合ってくれるか?」
「了解した」
「……ありがとな」
「別に気にしなくていい」
こうして長門と二人で、
野球の練習をするために出かけることになった。
「よかったのぉー少年。
そのお嬢ちゃんは、とてもいい子じゃー
絶対に逃すんじゃないぞー」
後ろからKY爺さんの声が聞こえた気がする。
……空耳、空耳アワー注意報。
マンションの表に出た。
昨日と同じ、マンション裏で練習をするか。
と思って歩きだそうとすると…
「待って」
長門に呼び止められた。
「どうした?」
「マンション敷地内での練習は、適切ではない」
「そうか? 人気は全然無かったし、
別に安全だと思うんだが…」
「安全ではない」
「…どうしてだ?」
「ねこ」
「猫? ……そうか…!
あそこは、あいつらの餌場に近いもんな。
もし、俺がバットを振ってすっぽ抜けたり、
ボールを誤ってぶつけたりしたら……危険だ。
確かに止めておいたほうがいいか…」
「いい」
最近、涼宮たちSOS団と関わりっきりで、
猫たちと遊ばなくなったからか、
すっかり猫たちのことを忘れていたぜ。
昨日は、早めに練習を切り上げて正解だったな。
それにしても…
「猫たちのことを気に掛けるなんて、
やっぱり長門は猫好きなんだな?」
「別に」
相変わらず猫好きだと認めないのか…
変なところで負けず嫌いな奴め。
いつか、マンション裏で餌をあげている場面を、
しっかりと抑えて……ん?
そういえば俺……さっきマンション裏に行くって、
長門に言ったか…?
どこで練習するとも言っていなかったような…
……まあそんなこと、別にどうでもいっか。
それよりもマンション裏がダメとなると、
練習場所をどこにするかを決めなくては。
他に思いつく広い場所は……駅前公園だが、
あそこは、元々野球をするような場所ではないし、
今日は土曜日で人も多いだろう。
やっぱり周りに迷惑をかけちまう……困ったな。
「長門、どこか練習できる場所知らないか?」
早くもギブアップして長門に聞いてみると…
「バッティングセンター」
長門は即答した。
なるほど、バッティングセンターか。
まさに打撃練習をするには、もってこいの場所。
ただ一つ問題なのは……タダじゃないことだ。
でもこの際、ケチケチしている場合じゃない。
野球大会は明日。時間が無い。
何より長門のお勧めなら、行かねばならん。
「うしっ。んじゃ、バッティングセンターに行くか」
「……」
長門は、こっくりとうなずいた。
カキーン!
しばらくして……バッティングセンターに到着。
休日の昼だけあって、人は結構いるな。
「いらっしゃい!」
バット、グローブ、ボールを持参しての入店で、
店員のおっちゃんに妙な笑顔で歓迎された気がする。
いや……俺はそんなに野球好きじゃないっす。
俺は空いているバッターボックスに入り、
持ってきたボコボコ金属バットを持つ。
えーっと、たしか図書館で読んだ本によると、
バットの持ち方は、こう……だったかな…?
記憶を頼りにバットを構えてみる。
すると背後から長門の小さな声が聞こえた。
「違う」
「え?」
「バットを構える姿勢は、こう」
「こ、こう……か?」
「そう。そしてもっと脇を締める」
「……こう、か?」
「そう」
本の内容を頭の中に記憶したつもりだったが、
全然覚えていなかったみたいだ…
その後も、長門の的確な指示が続いた。
まるで、ドラフト一位指名で入団したルーキーを、
鍛えようとするベテランコーチのように細かく、
文字通り、手取り足取り構え方を教えてくれた。
正直、最初は周りの客の妬ましく感じる視線や、
『青春しとるな〜』と言いたげな店員の表情で、
恥ずかしかったりしたんだが、
長門の真剣な態度を見て、
そんな気持ちは自然と消えていた。
俺の身体に流れる……スポ魂に火が付いたぜ…!
バッティング練習を始めて数時間経過…
カキーン!
俺の天性の才能!
……ではなく、長門の手解きのおかげで、
早い球も打つことができるようになってきた。
今なら、ロッテの代打くらいできそうな気分さ。
そう思っていると…
グゥー……
いびき……ではなく、腹の虫が鳴った。
そういや遅い朝食を食べただけで、
まだ昼飯を食べていなかったことを思い出す。
時計を見ると、昼を大きく過ぎていた。
俺は、バッターボックスの外に出ると、
ベンチに座っている長門の前に立つ。
「長門、腹減ってないか?」
「減った」
「それじゃ、ちょっと中途半端な時間だけど、
昼飯食いに行かないか?」
「行く」
椅子からスクッと立ち上がる長門。
かなり嬉しそうに見えるのは、俺の気のせいか…?
とにかく、俺と長門は何か食べに行こうと、
野球用具を忘れずにしっかり持ち、
バッティングセンターを出ようとすると…
「あ〜キミ、ちょっといいかな?」
妙な笑顔を向けていた店員のおっちゃんが、
俺に話し掛けてきた。
「もしかしてキミたちも、
明日の野球大会に出場するのかい?」
「え? まあ……そうなっているみたいですけど…」
ふと、カウンター横の壁を見てみると、
昨日、涼宮が部室に持ってきた野球大会のチラシと、
同じものが貼られていた。
このおっちゃんも野球大会について知ってるのか。
でも、それだけでなぜ俺たちが出場することを…?
「やっぱりそうだったか!
いや〜あの娘さんと同じ制服を着ているから、
そうじゃないかな〜っと思っていたんだよ〜」
「あの娘さん?」
「一昨日だったかな?
その子と同じ制服を着ている元気な娘さんが、
店にやって来てね?
この野球大会のチラシを見た途端に…」
『これよ! おっちゃん!
この大会は、どうやってエントリーすればいいの?』
「って目をキラキラさせながら聞いてきてね〜、
教えてあげると、すぐに手続きを済ませて、
猛烈にバッティング練習を始めたんだよ。
いやぁ〜キミたちみたいな若い者、娘さんが、
市内の野球大会に出場するほど野球が好きなんて、
おじさん嬉しくてね〜!
キミたちのお友達なんだろう?
あのやたら元気な娘さん」
はははっ……そんなおかしな女子高校生は、
多分、二人もこの近辺にはいないと思いますよ。
……つまり涼宮は、
ここで野球大会について知ったのか…?
「最近の女の子の間では、野球ブームなのかね?」
「そ、そうかもしれないっすね〜!」
「……」
涼宮が『SOS団』なる謎の団体をPRする目的で、
野球大会への出場を決めたことは、
この野球好きなおっちゃんには、
絶対言わないほうがいいな……うん。
「そ、それじゃ……俺たちはこれで…」
「おや? もう帰ってしまうのかい?
あの子、今日も来ると言っていたから、
そろそろ来ると思うぞ?」
ハッハッハーッ!
だったらなおさら帰りますことよー!
涼宮と試合の前日にこんなところで出会ったら…
『あら? 試合前日に特訓してるなんて感心したわ!
あたしが直々にコーチしてあげるわよ!』
とか言いかねない。
もれなく大会当日筋肉痛コースは遠慮したいぜ。
俺と長門は、おっちゃんに別れの挨拶を述べると、
上半身が1テンポ遅れて移動するくらい、
かっ飛ばして、その場から逃げ出した。
「いらっしゃいませー!」
時間は昼過ぎ、まだ練習をすることを踏まえて、
昼飯は軽く済ませることにした。
「ファーストフードで軽く済ませるか」
「……」
長門は、こくりと肯定した……のだが、
新作バーガーやらナゲットやらを大量に注文する。
それが軽く……なのか?
奢る発言をしなくてよかった…
食事と食休みを済ませた。
さて、練習再開! ……と言いたいのだが、
再びさっきのバッティングセンターに行くのは、
13日の金曜日にキャンプ場でテントを貼るカップル、
戦場で家族の写真を隊長に見せる新米兵士、
連続エネルギー波を敵にぶつけて砂煙がおこり、
ニヤリと笑う野菜王子と同じくらい危険だ。
……どうしたもんかね。
また長門に聞いてみるか…?
……いいや! 野球の練習に無理に誘った上に、
バッティングセンターでコーチまでしてもらった。
俺は、ちょっと長門に頼りすぎだろ?
これくらい、自分自身で何とかしないとダメだ…!
「……」
長門は、トレイにひかれたメニューを見ている。
……早く何をするか決めないと、
長門が追加オーダーを注文しちまう。
うーん……とにかく野球の練習だ。
野球の練習ができる場所……特訓……グラウンド…
……そうだ!
「長門」
「なに?」
注文カウンターの列に並んでいる長門に話し掛ける。
「明日の野球大会が開かれる市営グラウンドに、
行ってみないか?
予め下見しておいて、損はないと思うんだ」
「解った」
「ありがとな」
そう言うと長門は、注文カウンターの前に立つと…
「アップルパイ、ベーコンポテトパイ、カレーパイ、
各十個づつ、テイクアウト」
長門は、お持ち帰りのオーダーをしていた。
……まだ食うのかよ!
第五章につづく。
―あとがき―
前回の記載から、だいぶ日数が空いてしまいました。
先に『涼宮ハルヒの消失』の手前に当たる、
『サムデイ イン ザ レイン』のSSを記載するか、
迷っていたからです。
結局……それは力量不足で保留にしました。
φ(.. ;)
野球大会が始まるまでは、オリジナル展開です。
どうも食べ物ネタに頼ってしまいます…♪
もっと展開を早くできるよう、努力したいと思います。
(*/ω\*)
SSのタイトルを、コーチ→監督、に変更しました。
読んで下さって、ありがとうございました♪
m(__)m
―その他―
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http://blogs.yahoo.co.jp/nikukyustanp921/31683035.html
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http://blogs.yahoo.co.jp/nikukyustanp921/32291251.html
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