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誰がカナリアを殺したか?
西田三郎の電波ゆんゆん日記
【宮家邦彦のWorld Watch】
突然、君に嫌がらせ 傷付いてからでは遅い 高校生でも分かる新安保法制
産経新聞 2015.7.23 09:00

http://www.sankei.com/column/news/150723/clm1507230007-n1.html

 先日千葉県で講演した際、ある読者から伺った話。「来年の参院選で投票するかもしれない高校生の娘から、新安保法制がなぜ今必要なのかと聞かれ困っている」。なるほど、確かに説明は難しい。

 各国の安保法制は通常「ネガリスト」、すなわち「やってはいけないことを列挙し、それ以外は適宜やるべし」という構造になっている。ところが、日本では「ポジリスト」、つまり「やれることだけ列挙し、それ以外は禁止する」作りだ。よりシームレスにしようとすればこの「ポジリスト」を一層拡大する必要がある。国会答弁が難しくなるのも当然なのだが、これでは高校生は理解できない。お父さんが娘に分かりやすく説明するにはどうするのか。


■娘の意見
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「日本がポジリストたらになっとるのは、憲法9条があるからやろ。
 それを一層拡大する、ちゅーのはようするに憲法を拡大解釈する、
 ちゅーこっちゃわな。わかるで、おとん(笑)
 せやから苦労しとんねんな(笑)」




 例えば、法案の必要性に関する筆者の説明はこうだ。冷戦時代の安定期は終わり、過去20年間に東アジアの国際情勢は激変した。1945年以来日本は初めて物理的圧力すら感じ始めた。戦争を起こさせないためには抑止力の強化がどうしても必要だ、云々(うんぬん)。

 「日曜討論」ならこれでよい。だが、この説明は高校生には分からない。彼らは朝鮮戦争どころかベトナム戦争すら知らないのだ。筆者なら高校生の娘にこう説明する。


●ある日突然誰かが君に嫌がらせを始めるとしよう。君には身に覚えのない話だが、相手はストーカーまがい。当然お父さんが、場合によってはお巡りさんが、物理的力を使ってでも君を守る。君に手を出すことが損だと相手に理解させる必要があるからだ。では、なぜ今かって?

 それは君が傷付いてからではもう手遅れだからだ。国際関係も同じ。悲しいことだが、世界には今も抑止が困難な悪意が存在する。その悪意からの攻撃を回避するには一定の備えと実力が不可欠。今までは空想的平和主義でも良かったが、これからはより現実的な平和主義が必要だ。


■娘の意見

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「『なぜ今かって?』→『それは君が傷付いてからではもう手遅れだからだ』
 ちゅーのは話、別やろ。なんで今、採決を急ぐのか、それが知りたいねん。
 きのーのニュースでも言うとったけど、中国は何年も前から海洋進出進めて
 日本はずっとそれをほったらかしとったんやろ。
 この時期になって中国に抗議とか、
 それこそ『なぜ今かって?』とちゃうんか、おとん。

 ほんで『抑止が困難な悪意』に関しては
 『近寄らへん』のがいちばんちゃうか。
 アメリカは十分すぎるほど備えと実力持っとったけど、
 恨み買いすぎた結果、2001にでらい目に遭うたやろ」






 次は集団的自衛権限定行使の是非に関する筆者の説明である。集団的自衛権は国連憲章上加盟国の権利であり、日本国憲法の枠内でも最小限の行使は可能だ。同盟国をも守る意思を示すことで同盟の絆が強まり、抑止力も高まる、云々。これに対し、高校生の娘への説明はこうだ。

 ●もしあのストーカーが君だけでなく、君の親友にも嫌がらせを始めたらどうする? お父さんなら可能な限り彼女も守ろうとするだろう。相手は親友の次に君の所にやって来る可能性が高いからだ。


■娘の意見
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「それは、友達の家庭が考えることちゃうか。」


 新安保法制議論をややこしくしているのが違憲論争である。政府与党は最高裁のいわゆる砂川判決を根拠に新法制は合憲と主張するのだが、これも高校生には分からない。ではどう説明すべきか。


 ●学校で勉強したと思うけれど、日本は三権分立の民主国家だ。立法府が作る法律を行政府は執行するが、それが憲法や法律に反するか否かの最終判断は最高裁の仕事だ。例えば、米国最高裁は最近同性婚を合憲と判断した。でも、この判断は従来の男女婚という論理の延長上にはない。民主国家でこんな判断変更が認められるのは最高裁だけ。憲法学者や官僚にすぎない内閣法制局長官にそんな権限はないのだ。


■娘の意見
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「いや、三権分立がほんまやねんやったら
 今すぐにでも
 最高裁の判断に仰いだらどないや(笑)」


 国会では自衛隊員のリスクが高まるとの議論もあった。自衛隊はリスクを取るプロフェッショナルであり、そのために必要な訓練を行い、装備と情報を持って仕事をする専門集団だが、筆者なら高校生の娘にこう説明するだろう。

 ●巨大火災が発生したら、消防隊員に「これまでより危険だから、出動するな」と言うか。逆だろう? 火事が拡大した今こそ消火が必要であり、そのためプロは日頃から実力を養っておくべきではないのか。


■娘の意見

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「また火事か(笑)どっかの工作好きなおっさんと一緒やな(笑)

 だいたい、戦争は火事みたいに勝手に起こらへんで。
 火事場に行って、捕虜に取られることもないしな。
 自衛隊員は捕虜に取られた場合、どないなんの?
 そのへん、ちゃんと考えとんか、おとん。

 あと、火事場に消化しに行った消防隊員が放火魔から恨みを買って、
 自宅に火いつけられた、っちゅー話も聞かんけどな(嘲)」

 
 

 娘との対話は続くが、紙面が尽きてしまった。今からでも遅くはない。政府与党は丁寧な説明を続けてほしい。

                   ◇

【プロフィル】宮家邦彦

 みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。


■娘の意見
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「こんなんやったら
 幼稚園児でも納得せえへんで、おとん(笑)」



Charlotte & Serge Gainsbourg - Charlotte for Ever. Dance.

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 犬を散歩させていた。
 その頃はそれくらいしかやることがなかった。


 とても天気がいい日だったので、普段は自宅から20メートル四方を離れることはないが、さすがにあそこまで天気がいいと、駅向こうの公園まで足を延ばしてみようかという気にもなる。


 犬のほうは、あんまり乗り気じゃないようだった。
 うちの犬は散歩があまり好きではない。散歩に出かけると、ほんの5分も待たずに家に帰りたがる。
 最近ではわたしのほうがこの犬に、散歩につきあってもらっているようなもんだった。


 うちの犬は和犬系の雑種で、まだらの肌をした、太った、醜い犬だった。
 醜いだけならまだしも、この犬には可愛げというものがまるで欠けている。
 めったに感情を露わにすることはなく、こいつが吠えたり、クンクン甘い声を出したり、ましてやわたしに甘えてくるなどということはこれまでに一度もない。


 どうやら犬はわたしのことを好いていないらしい。
 というか、わたしのことも含めて、世の中のすべてのことに関心がないのだ。
 その点はこの犬はわたし自身によく似ていた。



 だから特に可愛がっている、というわけではないが、ずっと一緒に暮らしている。



 さて、公園の風景はのどかそのものだった。


 空はどこまでも晴れ渡り、太陽はやさしい。ずいぶん緑の目立つようになった桜の木が風に揺れ、まるで全自然が『さあお前、そこらへんのベンチに腰かけて昼寝でもしろ』と、わたしを誘っているようにさえ見えた。


 そんなわけで、わたしはベンチに腰をおろし、ベンチの足に犬のリードを結わえると、くつろげる体勢をとった。
 そんな風に犬を縛りつけて眠るなんてひどいと思うかも知れないが、うちの犬は平気だ。

 
 じっとしてろ、といえば3日間でもそこでじっとしている。動くのが心底嫌いなのだ。
 それに、こんな不細工で汚い犬を盗むようなもの好きがいるはずもない。



 あっという間にわたしはうすい眠りにおちた。


 なんだかいやらしい夢を見たような気がする。
 夢のなかではよくあることだが、数か月前に出て行った女との関係が夢の中ではなぜか理由もなく解消していて、わたしと女は公園のベンチでお互いのそれぞれの性器を、服の上からまさぐりあっていた。


 
 どこかの本で読んだが、われわれ人間はこんなうたた寝のような状況において、入眠直前の風景の中で過ごしている状態を夢に見るらしい。


 夢と事実が違うのは、女がいないだけのことで、眼を醒ますとわたしはしっかり勃起していた。



 と、眼の前で・・・うちの犬が小さなポメラニアンの股間をくんくんと嗅いでいた


 ポメラニアンのリードをたぐるように視線を動かすと、それは小さな手につながっている。

 
 かなりの確率でそのポメラニアンのご主人と思われるその手は、11、2歳の少女のものだった。
 少女は無表情に、自分の犬の股間を、わたしの犬がクンクンと嗅ぐ様を眺めていた。


 ふわりと風が吹いて、少女の短く切りそろえた前髪が揺れた。


 「・・・・」

 わたしは何も言わなかった。少女も、何も言わなかった。
 ただ少女は、犬同士の発情行動に対して、非常に興味を惹かれている様子だった。


 わたしの犬は、執拗にポメラニアンの股間をくんくんと嗅ぎ続ける。


 ポメラニアンは、ときよりうちの犬の鼻先から逃れるように腰をくねらせるが、本気でうちの犬から逃れようとはしていない。
 お互いまんざらでもなく、焦らしあっている最中のようだ。


 「・・・・これって・・・」不意に、少女が呟いた。「・・・赤ちゃんを作ろうとしてるんですよね・・・?」
 「いや」わたしは言った「・・・それは、どうかな。ただ、気持ちよくなりたいだけだよ」


 そう言って、わたしはこんなふうに他人と口を効いたのが、実に3日ぶりであることに気がついた。


 「・・・でも、このまま放っておくと・・・この子たち、コウビをして、赤ちゃんを作るんでしょ?」
 「そう、コウビをする・・・そうそう、コウビをね。そうだよ」



 少女はショートパンツを履いていて、小枝のようにか細い太腿から脛を、露わにしていた。
 足には薄茶色のスニーカーを履いている。
 それにすっぽり隠れるような小さなスニーカーソックスは、彼女の踝までむき出しにしていた。
 彼女の膝小僧は、浅蜊のように小さかった。


 その小さな膝小僧が、居心地悪そうに擦れ合っている。


 「うちの犬は、その・・・この犬が・・・好きなのかな」少女が首を傾げた「今、遭ったばっかりなのに」
 「・・・・どうだろうね。ふしだらな犬だね」わたしは言った「ほんとにメス犬だ」
 「ふしだら?
 「・・・いや、いい。忘れてくれ。ちょっと口が滑った」
 「うちの犬は、ふしだらじゃないですよ。他の犬とは、こんなふうにならないもの」
 「じゃあ・・・一目ぼれしたのかな。まあ、よくあることじゃないかな。大人になればわかるよ」
 「・・・一目ぼれして、コウビしちゃうもんなんですか?」また少女が首を傾げる「じゃあ、うちの犬は、いま、この瞬間は・・・この犬のことが好きなのかな」
 「そうかも知れないね」
 「でも、コウビが終われば、どうなるんだろう。・・・・それでも、うちの犬は、この犬のことをまだ好きなのかな」
 「そうじゃないかも知れないね」
 「・・・コウビって、気持ちいいのかな


 わたしは考えた。
 どうなのだろうか。
 犬たちは交尾で、われわれ人間のように、快感を貪りあっているのだろうか。


 うちの犬は、まだポメラニアンの股間を嗅いで、焦らし続けている。
 ポメラニアンのほうは・・・まだうちの犬を焦らすつもりらしいが、その形ばかりの抵抗もずいぶんおざなりになっているようだ。


 「・・・いや、本能だよ。本能。本能だから、好きとか、そういう問題じゃないのかもしれないね」
 

 わたしは適当なことを言った。


 「・・・楽しくないんですか。コウビって」少女が犬たちの様子を凝視しながら言う「じゃあ、なんでこの子たち、こんなに嬉しそうなのかな」
 「別に、好き同士でなくっても、単純に交尾するのは楽しいんだよ」
 「え、そうなんですか?」
 「ああ、たぶん」わたしは、確信などまるでなく頷いた。
 「好き同士でなくても、コウビはできるんですね」
 「・・・あ、ほら、始まるよ」


 うちの犬が、のっそりと半身を起こし、前足でポメラニアンの腰をとらえた
 ポメラニアンは、前足を伏せ、後ろ脚をつっぱらせて、腰を突き出して・・・・おねだりをするように全身をくねらせている。
 
 ぐいっ、とうちの犬が腰を突き出す。


  「あっ・・・・」少女が薄い唇を開けて、小さな咳のような声を出した。

 
 ぐい、ぐい、ぐい、ぐい、ぐい、ぐい

 「・・・ほら、どうだい。2匹とも、楽しそうだろう。これが、本能だよ」
 「・・・うちの犬、痛がってませんか?」少女が心配そうに囁く「・・・痛くないんですか?・・・コウビって
 「・・・大丈夫だよ。うちの犬はやさしいから。・・・ほら、やさしく腰を使ってるだろ?」



 ぐい、ぐい、ぐい、ぐい、ぐい、ぐい



 「・・・・そうは見えないんですけど。なんか・・・うちの犬、いじめられてるみたい」
 「いや、そんなことはないよ。ごらん」わたしはポメラニアンの顔を指差した「・・・ほら、気持ち良さそうだろ?・・・君の犬は、ちっともいじめられてるなんて思っちゃいない。・・・もっと、もっとって、腰を振ってるだろ?もしいじめられてるとするなら、君の犬はあんなふうに大人しくしてるかい?・・・ほら、ごらん、自分で腰を突き出して、もっとしてほしそうに動かしてるだろ?」
 「・・・そ、そうですね・・・」
 「・・・これが、本能だよ。これが、自然だよ。そしてこれが・・・・」
 「これが・・・?・・・あ、終わった」


 うちの犬がポメラニアンから離れる。
 ポメラニアンはぐったりもせず、少女の脛のあたりに駆け寄ってじゃれつきはじめた。
 うちの犬も当然、ピロートークをしたり煙草を吹かせたりもせず、そのままのっそりとわたしの足もとまで戻り・・・伏せた。


 「・・・これが・・・何ですか?」
 「・・・いや、何でもない。忘れてくれ」


 しばらく少女は、足元でじゃれつくポメラニアンをそのままに、わたしの顔をじっと見ていた。


 「・・・もう行きます。じゃあこれで」
 「ああ、気をつけて」


 少女はポメラニアンを引っ張って、公園の出口の方向へ歩き出した。
 ポメラニアンは少女の足のまわりを駆け回りながら、一緒に去って行った。


 うちの犬を一度も振り返りもしなかった。


 少女もわたしを振り返ることはなかった。
 

 うちの犬は、わたしの足もとで、伏せたまま、じっとしている。

 
 「良かったか?」

 わたしは犬に聞いた。
 犬はわたしを見上げもしなかった。

「まったく、どんな相手にも股を開くとんでもねえメス犬だったぜ・・・・なあ?」

 犬は伏せたままだった。

 ふわりと風が吹いた。
 

 言うまでもないが、わたしはまだ勃起していた。


 【完】


Pan's People: Get Down / Gilbert O'Sullivan

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俺は間違ってるかもしれない いや正しいかもしれない
いや、間違ってるのかも

おれは間違ってるかもしれないし、正しいかもしれない
おれは黒いかもしれないし、おれは白いかもしれない
おれは正しいかもしれないし、間違ってるかもしれない
おれは白いかもしれないし、おれは黒いかもしれない

おまえたちの時代がやってくる、隠されていた新たな層の
リスクは高くて得るものは少ないかもしれない
死の谷を通り過ぎるとき、
書かれている言葉は嘘だ

おれは間違ってるかもしれないし、正しいかもしれない
おれは間違ってるかもしれないし、正しいかもしれない

あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように

おれは間違ってるかもしれないし、正しいかもしれない
おれは黒いかもしれないし、おれは白いかもしれない
おれは正しいかもしれないし、間違ってるかもしれない
おれは黒いかもしれないし、おれは白いかもしれない


おれは間違ってるかもしれないし、正しいかもしれない
おれは黒いかもしれないし、おれは白いかもしれない
おれは正しいかもしれないし、間違ってるかもしれない
おれは黒いかもしれないし、おれは白いかもしれない


連中は俺の頭に熱い針金を押し付けて
おれの言うことややることを封じようとした
連中は俺のあらゆる思想をどこかにやってしまい
俺の考えをなんでもないものにしようとした


あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように


怒りこそがエネルギーだ
怒りこそがエネルギーだ
怒りこそがエネルギーだ
怒りこそがエネルギーだ


あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように
あなたが倒れるとき、道が立ち上がって支えてくれますように



Public Image Ltd - Rise

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* *

ちょーすちょすちょすwwwwwマジこれ聞いてwwww
電話して会っみたらこれが巨乳の人妻wwww
年齢は33つってたけどぜんぜんそうは見えないwwwww
ハナシ聞いてみるとこれが初めてだって言うしwww



* *


 待ち合わせ場所に立っていたのは、想像していたのよりはずっと若い感じの、一見したところふつうの会社員風の男性でした。

 このような形で男性と会うのはこれがはじめてだったので、わたしは少し緊張していましたが、男性のほうはこうしたことに慣れた感じです。

 ああ、今の世の中、こんなに普通に見える男性が普通にこういうことをしているのだなあ、とちょっとしたショックを覚えました。
 
 なんだかその瞬間に、いきなりいくつか歳をとってしまったような気がしました。
 
 男性はさりげない素振りで
 
 「え、33歳ですか?とてもそんなふうには見えないなあ・・・いや、女子大生くらいに見えたんで人違いなんじゃないかと思いましたよ」

 とかなんとかいろいろとお世辞を並べ立てました。
 実際、わたしは2歳サバを読んでいました。逆のほうに
 実際は31歳です。
 
 なんか、まだ30を過ぎたところなのにこんなことしているのが、ちょっと恥ずかしくて。
 いかにも何か、『飢えてる人妻』って感じじゃないですか。

 だから2歳、歳を上に言ってみたんです。
 そうすると男性はちょっと喜んだみたいです。
 なぜなのかはわかりません。
 
 おそらく彼のイメージしている『欲求不満の人妻』は、だいたい33歳くらいなのでしょう。

 彼はいろいろと他愛もないことを話しかけてきましたが、わたしはほとんど聞いていませんでした。
 頭の中が緊張でぐるぐると回っていたからです。

 でも、彼もしきりに話しかけてはきましたがあまり何も考えてなかったんだと思います。
 話している間じゅう、ずっとわたしの胸ばっかり見ていましたから。


* *

 ぁはへあはぁあぁあはぁ!!!ちょw ゴメww いきなりゴメンwwwwwなんか人妻さん、
 食事はいいからさっさとホテルに行きましょ、とか言い出すしwwwww!!!
ありゃよっぽど飢えてたと見たねwwwで、そのまま挨拶もそこそこにホテル街へチン入wwww



* *


別にその人と食事をしたりショッピングをしたりとか、そういうつもりもありませんでしたので、もう面倒くさい駆け引きは抜きでホテルに行きましょう、って……わたしのほうから言いました。
 
 そのときの男性の喜びようときたら、今思い出してもちょっと笑っちゃうくらいです。


 適当なホテルに入りました。
 結婚する前には、主人とよく入ったような、若いカップル向けの、それなりに見栄えが良くて、でもちょっとズレた感覚でおしゃれを装った、いかにもありがちなホテル。
 

 男性はとても慣れた感じだったので、こんなふうに知り合った女の子と・・・・・・・こういうことをするのに、いつもこのホテルを使ってるんじゃないかな、とぼんやり考えました。
 なんか、お昼だったのでサービスタイムだったみたい。
 
 男性はすごくせせこましい、というかいじましいタイプの人だったようです。
 
 一緒にエレベーターに入った途端にわたしに抱きつき、キスをしてきました。


 「え、ちょっと待ってください

 なんて言うと、いかにもこういう出会い系ではじめての体験に戸惑う人妻、みたいな感じだったかしら。


* *

うはwwwww人妻さんホテルのエレベーターの中でいきなり抱きついてくるしwwwww
そのままDeepに舌絡めまくりの唾液飲みまくりwwwww
さすがにズボンのチャック下ろそうとしたときは焦ったwww
ちょwwwww奥さんwwwww部屋まで待てないの?って感じwwwwww
やっぱ人妻さん、ソートー飢えてたと俺は見たねwwwwww



* *


 「いいじゃないですか、奥さん」

 とかなんとかいいながら、男性はわたしのおっぱいを引きちぎらんばかりの勢いで揉み、ブラウスのボタンを外し、スカートの中に手を突っ込んでパンツを脱がせてきました。

 「だ、だめです。だ、誰かに見られたら
 
 わたしも言葉では抵抗しましたが、何せこういう状況ですので、それなりに昂奮していました。

 実際、そういうつもりで来ていたわけですので、ここまでダイレクトに反応していただけるとやっぱり嬉しい。

 
 「何が困るんですか。こんな時間にここに来てるのは、みんなヤリにきてる人ばっかりですよ。僕らだってここに、ヤリにきたんでしょう。ここが図書館だったら、そりゃ奥さんも困るでしょうけど、ここはラブホテルですよ。ラブホテルでこんなことをしてるからって何か変ですか。ぜんぜん普通じゃないですか」
 「で、でも、せ、せめて部屋に入ってから・・・」
 「だめですよ。僕ははじめからテンションを上げていかないとダメなタイプなんです。ほら、触ってみてください。僕のテンション、もうこんなに上がってますよ」 
 「あっ・・・・・・す、すごい


 彼はわたしの手をズボンの前に導きました。確かに、すごかった。
 布地を通して、彼の脈が伝わってくるようでした。
 わたしはなんだか頭がぼーーーーっとしてきました。
 
 エレベータが部屋の階につくと、わたしは彼に引きずるられるようにして部屋まで運ばれました。

 その間も彼は、キスしたりブラウスのボタンを外したりスカートの中でパンツを脱がそうとしたりをやめません。
 二人の体が部屋のドアの内側に収まったときには、わたしはもう、ほとんど半裸状態でした。


* *


 ヤバwwwwヤバwww人妻マジヤバwwwww部屋に入るなり俺のチムポ引きずりだすやいなや、
 いきなりバキュームはじめるから俺焦ったwwwww
喉の奥までディープキメラれて、俺もういきなり(^^;即!昇!天!しちゃいまちたwwww
でも人妻さんそのままゴックンして、止めてくんないの(^^;
 強引に復活させられてそのまま2発目に突入wwwww
マジ殺されるんじゃないかと思って不安になったよwwwwwwww



* *


 当然シャワーなどにいく余裕もなく、彼はわたしを全裸にむき上げると自分も下半身全裸になりました。

 すっごく勃ってました。
 
 まあ人のことはともかく、わたしにはすごい衝撃でした。
 ああ、この人、わたしのせいで勃ってるんだな……と思うと……というのも、最近主人とほとんどセックスしてなかったんです。

 って書くとほんとうに飢えてたみたいでイヤなんですけど。

 実際飢えてたのかも知れません。
 こんなふうに自分に対して関心を向けられることに飢えてたんだと思います。
 見た目にわかりやすいでしょう?

 というのも、結婚してからこっち、主人以外の人がこんなふうにわたしに欲情しているのを見たことなかったから。
 バカみたいと思われるかも知れないですけど、自分がそういう感情を他の男の人に抱かせる、というか湧かせることができたということが、何か理屈抜きで嬉しかったんです。


 なにか突然、頭の中でこれまで動いてなかった歯車とかポンプとかが、いきなり再稼動しはじめたような気がして・・・・・・気がつくとわたし、その人のものを口に含んでいました。

 主人にはしたことないような舐め方もしました。
 主人だったら……もともと淡白な人だから……ちょっと引いちゃいそうなこともしてみたかな。
 それまで頭の中にあった、いろんな知識を総動員して、舌を使って頭を使って夢中で舐めました。

 男の人は大喜びで、あっというまにわたしの口の中に出しました。


 「……はあはあ………す、すごいですね、奥さん……」
 「す、すごいですか?

 わたしは彼が引いていないか、ちょっと心配でした。


* *


ほーれほれほれ!!!やっぱ電マ、すごいっすwwwww
人妻さん、白目剥いて数分間で逝きまくりwwwwww
3回潮吹かせてやったけど、まだ足りないって(^^;



* *

 その後彼がわたしにしたことはちょっと字数の都合で全部詳しくは伝え切れません。

 結構驚きました……最初見たときはいかにもふつうの会社員に見えた彼でしたが、彼の鞄の中にはいろいろなものが入っていたんです。

 ピンクローター、っていうんですか?
 あの、ちっちゃいプラスチックのカプセルが、モーターで動くやつ。
 あと、様々な形をした電動器具。
 さいきんはすごいのがあるんですね。

 一見すると電動マッサージ機にしか見えないのに、その先端にいろんなアタッチメントがくっつけられるようになってるんです。

 そういう電気製品から、手首を拘束する器具。
 手首が痛くなったり、後が残ったりしないように、なんかいろいろと気を使った処理がほどこしてあるみたいでした。
 その他には、目隠し用のナイロンの帯、とか。ローション、とか。

 そういうのが次々と彼の鞄から出てくるのです。
 まるで『ドラえもん』の4次元ポケットみたいに。

 別に怖くはなりませんでしたけど、さすがにちょっと引きました。
 
 「…奥さんは……こういうの……お嫌いですかね」すべての品々を前に、彼言いました。
 「っていうか…そういうの……あんまり経験がないもので」
 「…そうなんですか?」

 まるで、誰もがこういうものに慣れ親しんでいるかのような口ぶりでした。
 例えば、『え、奥さん自転車に乗れないんですか?』っていうみたいに。
 え、そうなんでしょうか。こういう出会い系の世界では、こういう品々を用いていろんなプレイを試してみたりするのが、フツーなのかしら。

 ちょっと自信がなくなってきました。

 「……で、でも……」わたしはちら、と彼の顔を見上げて表情を伺いました「…興味はちょっと……あるかも」
 「そうですか???本当ですか???」彼が鼻息荒く叫びます。
 「ひっ……で、でも……痛いのとか……そういうのはイヤですよ」
 「もちろん!!!」その時の彼の輝くような表情ときたら…まるで少年のようでした「……任せてください!!その点は大丈夫です。いやあ……感激だなあ……奥さん、僕たち実は、案外ウマが合うかもしれませんね。……そうか・・・奥さんの旦那さんは、こういうのにあんまり興味がないんですね・・・へーえ…ふーん…」
 
 何か独り言をぶつぶつ呟きながら、彼はベッドの上に広げた品々の物色をはじめました。

 確かに、主人とはこういう器具を用いたことはありません。
 事実、なんだかこういう器具が家庭のどこかに……たとえばタンスの奥とかに仕舞い込まれている、というのは非常に奇妙な感じがしますし。
 
 しかし主人だって…わたし以外の相手と、こんなふうに内緒で遭ったりしたら、こういうセックスをしたがるんじゃないかと思います。
 いや、実際してるのでしょう。


 主人が外で誰か知らない相手と遭っているのは明らかです。
 

 そのことに対して確信を抱いたときは、そりゃあもう、わたしだって人間ですから、人並みに腹も立ちましたし、嫉妬したりもしました。
 そう、『わたしというものがありながら何で???』というやつです。


 でも、今日・・・こんなにオモチャに囲まれて幸せそうな彼を見ていると・・・少しだけ、主人が浮気をしたことの理由とその気持ちが、理解できたような気がしました。


 つまり、主人は、わたし以外の相手と、わたし相手ではできないことをしたかったんじゃないでしょうか。

 
 『自分の妻相手にはこんなことはできない』なんていうのは、主人の単なる思い込みにすぎません。
 わたしだって、主人がこんなことを求めてきたら・・・当然、戸惑いはするでしょうけれども、最終的にはそれを受け入れ、それなりにいっしょに楽しむことができたと思います。


 でも変ですよね、男の人って。
 そういうのは、家庭に持ち込むべきじゃない、と勝手に思い込んでるんだから。


 今、なんだか禍々しい形の電動式のおもちゃを手にとって、その使用法と効果について得意げに喋っているこの男性にしてみても……わたしはほとんど彼のいうことを聞いていませんでしたが……もし彼に、妻や子供がいるなら、そ絶対かれは家庭にはこんな禍々しいものを持ち込んだりしないでしょう。


 彼にしてみれば、わたしとホテルで過ごしているこの時間は、妄想をできるだけ現実に近付けるための、非日常の一部なのです。

 
 たぶん彼だって……四六時中、こんなふうにエロいことを考えたり、それをいかにして実現するか、とか、そんなことばかり考えているわけではないと思います。
 わたしは、彼の日常の隙間隙間に設けられた、コーヒーを飲んで一服するような息抜きの瞬間を、一緒に過ごしているのです。


 ああ、そうか。と、わたしは思いました。

 これが、浮気なんだな、と。


 そう思うと、なんだか少しだけ、気分が軽くなってきて……その後、彼が好きなように器具を用いてわたしの身体をモテアソブのに、身を任せることができました。


 正直な話、けっこう良かったです。
 でも、毎晩これだったら困るかな。



* *


まじヤベエwwwwww人妻さん、泡吹いてヨガリまくってさすがに焦ったwwwww
「こんなの初めて!!!癖になっちゃいそう!!」とか
白目むいて叫びまくりwwwww
おれのティムポ、掴んで離さないしwwwwww
ダンナさん、よっぽど構ってやってなかったんだな、って感じ?wwwwwwww


* *



そこから2時間ほど、彼はいろんな器具を用いてわたしを楽しませてくれました。
 こんなこと言うとヘンだと思われるかも知れませんけど、なんかその間は、子どもも頃に戻ったみたいに楽しかった。

 まあ、ようするに気持ち良かったんだろ?……って言われると、それはそうなんですけど。

 それだけじゃない、っていうのかな。
 なんか、ひとつのことにこれくらい夢中になってる相手に乗せられて、こっちも夢中になる、みたいなことってここのところ……というか、結婚してからずっと、ご無沙汰だったような気がします。

 主人が浮気したのも、こんな感覚が欲しかったんだろうな、と、しみじみ感じました。

 悪くないですよね。
 まるで、思いっきり無邪気な気分でジェットコースターに乗ってるような気分。


 でも、わたしはわたしで……勝手に楽しんで、それは満足したんですけれども、彼のほうはちょっと気の毒でした。


 ……その……なんていうんですか?
 いろいろと……道具を使ったり、いやらしいことを言ったり、わたしにへんなことを言わせたりで……彼も大変だったんだと思いますけれども……。

 

 つまり……最終的に……ちょっと、元気になりきれなかったんですね。

 わたしもいろいろと、努力はしたんですけれど……。

 結局……彼は元気になりませんでした。最後まで。


 だから……どうなんでしょう?わたしは、浮気をしたことにはならないわけなんでしょうか?


 いや、それはあまりにも虫のいい話ですよね。
 だって……それ以外のことはほとんどといっていいほどしましたし……身体の表面で、彼に触られなかった部分はないというくらいです。中のほうも……ずいぶん奥まで、しっかりと触られましたし。


 最後のほうなんか、ちょっと彼がかわいそうになりました。
 だって……なんか、目に涙が浮かんでましたから。

 「……その……」わたしは言いました「……気にしないでくださいね。わたしは、これで……ぜんぜん満足ですから」
 「…………」


 彼は力なく笑いました。
 その顔は、はっきりこう言っていました。

 『ああ、あんたはそうだろうよ


* *


ちょwwwwwwこんなの、マジであり?wwwww
おれ、マグロ状態で横になってるだけで、勝手に人妻さん上で腰振って
一人でイキまくりwwwww
5回イッたとこで、ようやく許してもらったけどwwwwww
結局、おれ寝てるだけで7マソゲットwwwwwwww
こんなんじゃマジ働く意味ねーーーーーー!!wwwww
おれ、充分これで稼いだから、みんなに情報公開するよwwwwww


* *


 別れる前、彼はわたしに、黙って2万円を差し出しました。

 「え、そんな。いいんですか?…………だって……」
 「いいから、受け取ってください」

 有無を言わせぬ態度だったので、ほとんど仕方なく受け取りました。


 ほんとは……お金なんかいらなかったのに。
 そのお金は……後に残るようなものを買って、『彼の思い出』みたいなものが手元に残るのも感じが悪かったので……その日、はじめてパチンコ屋さんに入って、『CR 火垂るの墓』でわけもわからないうちに、あっという間にすってしまいました。

 やっぱりパチンコは、向いてないみたいです。


 それ以来、彼とは会っていません。

 主人とは、それなりに上手くいってますが……ときどきあの、彼とのひとときが、懐かしくなるときがあります。

 ほら、時々ふと、ジェットコースターに乗ってみたくなるような感じ。

 …………。

 ジェットコースターが好きな人でないと、わかりませんよね。そんな気持ち。

 


 こんな33歳(31歳)の主婦と、楽しい時間を過ごしませんか?

 あ、彼はわたしの身体を見て、こんな風に言いました。

 『すげえぜ、奥さん、とても子どもを産んだカラダとは思えねえぜ

 実際、子どもはまだですけど。


 興味のある50歳までの素敵な男性(既婚・未婚問わず。デブ不可)、連絡お待ちしています。


Simon & Garfunkel - Cecilia

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 「……自分のしたことをわかってるね」

 わたしはできるだけ声のトーンを抑えて、ゆっくり、どんなバカにも理解できるように、丁寧に話しかけた。
 しかし目の前の女子高生は、一向にふてくされた様子を崩さない。

 倉庫兼事務所の小部屋の中は、彼女の香りで満ちていた。
 シャンプーの残り香と、少しの汗と、新陳代謝の香りだ。少し、桃の香りに似ている。


 ピポパポン、ピポパポン。


 店のほうから客が入ってくる音がした。
 レジを任せている赤尾くん、大丈夫だろうか。マジメでいい子なのはわかっているのだが、どうもトロいところがある。
 レジに立たせてもう一ヶ月になるが……どことなく頼りない。
 なんか、少しオタクっぽいし。


 「ほら、君が盗ったのはこれだけ?…何これ?この季節にカイロなんか盗んでどーすんの?……あと……なんだこりゃ。『ミナミの帝王』って。こんなの読みたいの?」
 「………はぁい」


 まるで欠伸でもするような返事が返ってきた。
 見たところ、16、7というところか。
 肩くらいまで伸ばした髪を左右に結わえて、その毛先をやたら気にしている。
 脚を大きく組んでいるので、短いスカートから太腿の大部分が露になっている。
 黒いハイソックスに包まれた足の先で、踵を踏み潰した傷の目立つ茶色のローファーがぶらぶらと揺れていた。


 「……なんでこんなの盗んだわけ?……お小遣いで買えないわけじゃないでしょう。……ってかこんなの、別に本気で欲しかったわけじゃなかったんでしょ?……遊び半分で、万引きしたんじゃないの?」
 「……うん?……うぅん?」

 
 なんとも取れない、なんとも解釈しようのない返事だった。
 
 一向に、反省の色というものが見られない。微塵も、垣間見ることができない。

 
 コンビニの雇われ店長になって5年。これまでに何人もの万引き犯を捕まえてきた。
 その中には、彼女のような女子高生もいた。
 老人もいれば、主婦もいたし、会社員もいた。
 セクシーで魅力的な人妻もいた。

 一体全体、世の中どうなってるんだ。
 うちの店で万引きすれば、人生の経験値が上がるとでも思ってやがるのか。


 「……“うぅん”じゃないよ君。これね、判ってると思うけど、犯罪なんだからね。今すぐ警察に連絡してもいいんだよ?……ってか、君は未成年だから、まずご両親に連絡しなきゃだめだな……はい、ここに紙とペンがあるからここに名前を……」
 「アレ、しないんっすかあ?」

 不意に、女子高生が口を効いた。
 見ると、下からなめつけるような目付きは完全にわたしのことを嘲笑っているし、ぽかんと開いたままの口からは、少しめくれ上がった状態の舌が覗いている。


 「……アレ?……アレって何?」
 「……ほら、アレ。なんか〜“他になにか盗んでないか調べるから、目の前で着てるものを全部脱ぎなさい。ヒッヒッヒ”みたいな〜」
 「な、なにを言っとるんだ君は!」

 思わず、大きな声が出てしまった。

 「……こわいっす〜」まだ、彼女は笑っている。


 ピポパポン、ピポパポン。

 また客だ。


 「……え、脱がなくていいんっすかあ?……」
 「……だ、誰がそんなこと言ってるんだ!……もう判った。君には反省の色がぜんぜん見られない。さっそくご両親に来てもらうから、さっさとここに名前と住所と電話番号を書きなさい!!」
 「え、でもソレやっちゃったら〜……」彼女が、事務椅子の上で、ぐい、と反り返って伸びをする。ブラウスの隙間から、縦型のへそが見えた「……“親に連絡されたくなかったら、おれの言うことを聞きなさい。ヒッヒッヒ”っての、できなくなっちゃうけど〜」
 「……き、君は自分の立場をわかっとるのか?」


 小娘相手に、キレてしまった。
 気がつくとわたしは、椅子から立ち上がっていた。
 いや、誰だってキレるだろう。あなただったらどうする?


 「……え〜……わかってるから言ってるんですけど〜……これでも一応、ハンセーっての?セーイっての、そ〜いうの見せてるつもりなんですけど〜……」
 「反省とか誠意とか、意味をわかって言ってるのか君は」
 「……そんなにあたしの親に連絡したいんですか〜?なんでそんなに親に連絡したいんですか〜?……でも、にそうしたとして、どうなるってんですか〜?」
 「もう知らん。もう怒った。親はいい。警察に連絡する。警察に引き渡して、そっちからご両親に連絡してもらうから。そこで思いっきり反省しなさい。もう知りません

 
 「え〜……」足先で剥げたローファーが揺れる「……反省しなさいって〜……あたしが反省したからって、店長さん、なんかいいことあるんですかあ〜?……ケーサツで〜……あたしが親に怒られて〜……そこで〜店長さんが知らないところで〜……泣いて謝ったりしてるところとかを〜ソーゾーしたりすると〜……店長さんそれで満足なんですか〜……?……そういうのが、コーフンするんですかあ〜?……それって、マジ変態じゃないですかあ〜?……それより〜……ここで〜……“親にも警察にも言わないから、僕の言うとおりにしなさい”ってしたほうが〜……フツーじゃないですかあ〜?」
 

 「君はおかしい」わたしは言った「何なんだ。おかしいのは君で、僕はまともだ。何か?……君は、基本的に男というものは誰も、こういう状況になれば、無条件でその立場をいいことに、君の身体を弄びたがるもんだ、と、そんな風に考えてるのか。見くびらないでほしいな。僕は、そういう男じゃない」
 「え〜……なんか“カラダをモテアソぶ”って〜……超エロいんですけど〜」
 「エロくない!……君はおかしいぞ。そりゃあ世間には、そういう事をするけしからんことを企む輩もいるかも知れない。でも、ほとんどの男はそんなに悪い人間じゃない。頭でそういうことを企むけれども、実際の行動に移すことはない。ほとんどの男にはほとんどの人間には、理性ってものが備わってるんだ。そこが獣と人間の違うところだ」
 「え〜なんかむつかしくてわかんないけど〜……それってつまり、ケッカが怖いからしない、ってだけのハナシでしょ〜……リセーとか、あんまりカンケーないっしょ〜?」


 「なんで?なんでわからないんだ?」わたしの声はもはや、半泣きになっていた。
 「え〜だって〜………この前〜……」女子高生はわたしの顔をちらりと見上げると、にたり、と笑ってから言葉を続けた「……地下鉄で〜……こども料金で電車に乗ってたら〜……改札で〜……駅員さんにバレちゃって〜………」
 「ほう?」


 なぜかわたしは、また椅子に座りなおした


 「……超怒られて〜……なんか〜駅員さんの〜休憩室っての?仮眠室っての〜?そーいうとこに連れ込まれちゃって〜……トーゼン、その駅員さんと二人っきりでさ〜……なんかミョーなフンイキになっちゃったわけですよ〜……そしたら〜その駅員さんが〜……言うわけですよ〜……『反省してんだったらそれを態度で示してもらわないと』って〜……」
 「……マジかねそれは。なんかウソっぽいが」
 「え〜……店長さん、続き聞きたかったりするんですか〜?」


 ピポパポン、ピポパポン。


 女子高生が、身を乗り出してくる。気付けばわたしも身を乗り出していた。
 舌を伸ばせば届きそうな距離に、彼女の顔があった。


 「……それで〜……『え〜……態度で示すってどういうことですか〜』って駅員さんに聞いたんですよ〜……そしたら〜……『態度で示すってのはこういう事でしょう』って〜……スカートの中に〜……手え突っ込んできて〜………あ、まだ続き、聞きたいっすっか〜?」
 「……話してごらんなさい」
 「店長エロいっすね〜……それで〜……なんか仮眠ベッドみたいなのに押し倒されて〜……いきなりキスしてきたんすよね〜……ベロin the マウスで〜……」
 「ベロ、イン、ザ、マウス」わたしはオウムのように繰り返した。
 「……それで〜おっぱいとか〜メチャクチャに揉まれるわけっすよ〜……あたし、ちょっと胸大きいじゃないっすか〜」
 「うむ」確かに。
 「……で、左手におっぱい、右手in the スカートで〜……パンツとか〜……マジ脱がそうとしてくんですよ〜……で〜結局〜……パンツ伸びるくらい引っ張られちゃって〜……破られると超困るから〜……そのままズルっ、みたいな感じで〜……」
 「……脱がされちゃったわけだね」
 「続き聞きたいっすか〜?」


 ピポパポン、ピポパポン。


 「……聞かせてもらえるかな」
 「……やっぱ店長、超エロいじゃないっすかあ〜……で〜……話したら警察とか親とか、そういうのナシにしてもらえますか〜?」
 「……いや、それとこれとは……」
 「じゃあ話さないっす〜」


 ひらり、と身を翻すように彼女はわたしから離れていった。
 そしてまた、事務椅子の背もたれで大きく伸びをする。
 また、ちらりと、へそが見えた。
 

 「……じゃあとりあえず、警察はなし。それでどうかね?」
 「……え〜……」彼女はちょっとふくれっ面を作って、ちらりとわたしを見た「ま〜……それから〜……パンツ脱がされちゃて〜……そのままスカートも脱がされちゃって〜……下半身、パンゼロにされちゃったわけっすよ〜……それで〜……膝小僧をガシ、みたいにワシヅカミされて〜……そのままガバ、みたいにM字系にされちゃったわけですよね〜……そこで〜………駅員さんが〜……脚の間に〜…………まだ聞きたいっすかあ〜……?」
 「……よし、学校には連絡しない。それでどうかね?」
 「え〜……ガッコなんて〜……最初はハナシに出てなかったじゃないっすか〜……ま、い〜けどね〜……それで〜……駅員さんが〜……脚の間に顔突っ込んできて〜……舌で〜……アソコ関係を〜……」
 「『アソコ関係』ってどこのことなのかちゃんと言い…」
 「まんこっすよ〜……まんこ、っていうかクリ集中攻撃?〜みたいな〜……」
 「……そ、それで君は……か、か……感じ……ちゃったり……しちゃったのかね?」
 「……え〜……店長マジ、エロいんですけど〜……え、どうだったか答えたらあ〜……親に連絡しないっすか〜……?」
 
 
  ピポパポン、ピポパポン。


 続いて、ゴクリ、という大きな音がして驚いた。
 なんとそれは、自分が唾を飲み込む音だった。




 数分後、わたしはバイトの赤尾くんとカウンターに並んで立ち、女子高生が店を出て行くのを見送っていた。
 自動ドアの向こうで、彼女の紺色のスカートがひらりと揺れ、一瞬立ち止まり、そのまま人込みの中に消えていった。


 「……店長」赤尾くんが言った「……超かわいい娘でしたよね」
 「そうだね」わたしは答えた。まだ少し、呼吸が乱れていた。
 「スカート、超短かかったですよね」
 「そうだね」
 「ケーサツも親も、呼ばなかったんっスよね」
 「ああ」わたしは口の中でもごもごと答えた。
 「……やっぱ自分、正社員目指します」赤尾くんがいつになく熱のこもった口調で言う「……絶対、店長クラスまで昇りつめるっす」

 赤尾くんの目が、ぎらぎらと光っている。
 
 
 こいつはさっさとクビにしたほうがいいな、とわたしは思った。


 【完】


Klaus Nomi--Wasting my time


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