2年前に、増税などあり得ないと力説していた野田総理は、政権を取った途端に、増税派に成り果ててしまった。財務官僚に取り込まれた事だけは確かである。さて、財務官僚上がりの政治家や評論家、あるいは、ジャーナリストなども増税已む無しと言う論議が盛んになりつつある。ただ、前提に行政の無駄をどれだけ削減できるかを問うているだけである。
消費税を社会保障費とリンクさせて社会保障の安定的な運営を目指し、財政の悪化を改善するとした論は、明らかに大きな矛盾を抱えている。
現在の財政状況を、確実に黒字あるは損益分岐点にする為には、もし消費税だけで賄うとすれば、最低27%程度まで引き上げなければ、到底足りないのである。つまり10%程度の消費税では、財政再建など不可能と言う事になる。
更に、10%に引き上げた場合の見込み税収は、10兆円程度増えるだけで、現在の税収が40兆円弱、これに10兆円が増えても、行政経費を考えると、30兆円規模の国債発行が必要となる。つまり、借金は、それでも増え続けると言う事になる。
借金が若干少なくなる程度であって、財政再建などという目的には程遠いのが現実なのである。
孫子の代まで借金を残さないとか、つけを残さないと野田周辺は主張しているのだが、現在の900兆円規模の国債発行残高を全て償却するには最低50年掛かる、それも、これ以上、国債発行を見合わせた場合である。もし30兆円規模の国債発行を続ければ、償還分差し引いて、年に9兆円づつ減ってゆく計算となり、全償還まで、100年と言う事になる。つまり、どう考えても、消費税率の引き上げでは、財政再建は、できないと言うのが事実である。
野田や財務省が考えているのは、単に国際市場へのポーズでしかない、つまりギリシャなどの市場金利が暴騰した事を例に、我が国の長期金利が暴騰する事への配慮と言うだけの効果でしかない。
しかしながら、5年前から、我が国の借金体質に対して財務官僚や日銀は、国際市場での長期金利が暴騰すると主張して、財政の改善を求めて、国債発行枠44兆円と言う足枷を政府に認めさせた。しかし、現実には、本予算内では、この44兆円枠は、何ら根拠もなく、ただ守られたが、補正予算などで結果、増え続け、更に大震災では、10兆円規模の補正予算が計上されることになっている。
しかし、5年前から、IMFや諸外国から(特に米国から)財政の健全化を求められ続けたが、我が国の長期金利は暴騰する事も高騰する事もなかった。つまり財務省や日銀の主張は、完全に否定されている。何故ならば、我が国の国債引き受けの殆どが国内の金融機関であるからだ。諸外国が引き受けたものは、10%に満たない。つまり国債市場に於ける我が国国債の長期金利が暴騰する可能性は、殆ど0であるのだ。
無論、このまま財政の建て直しをせずに借金を続けてよいと言うものではない。いつか破綻する事は、避けては通れない現実でもある。それは、この数年で起こると言うものでもない。平成不況に入って、18年、この是正を考えて、時々の政権が財政出動を企図して国債発行を増やし続けた結果が900兆円なのだが、その最大の原因は、財政出動に経済浮揚の効果が無かったからである。
ごくごく一部の勝ち組み企業は、莫大な経常収支を引き出したが、大半の企業は、損益分岐ぎりぎりの状況であった事や、その利益を引き出した企業ですら、それが雇用の安定や国民所得を引き上げる事には繋がらなかった事は、この10年で国民所得が15%以上も引き下がっている事を見れば明らかである。
何故、過去の財政出動に効果が無かったのか、それは、チビチビとした財政出動であったからだ。前にも述べたが、中小企業が倒産した場合、規模の割りに債務が多いのは、その月々の経費や手形決済などを確保するのが精一杯で、その小さな債務の積み重ねが、最後には取り返しの付かない債権として残るからである。もし、10年かけて作り上げた小さな借金の積み重ねが、数年で可能であれば、決済金や経費以外にも、設備投資や営業などに余裕のある資金となっていたはずである。しかし、現実には、一月には、100万円の借金はできても、1年分まとめて1200万円を一度に借金できないのが、中小企業を取り巻く経営環境であるから、結果、数年後には、数千万円と言う債務が残って破綻するのである。
しかし、国家は、中小企業ではない、莫大な国家財産もあり、また国債を引き受けてくれる金融機関も所有している。思い切った財政出動が可能なのである。簡単に言うと、幾らでも青天井で紙幣を作れると言う事である。
それを何故か、財務省や日銀が、まるで正論の如くに、一定の枠を嵌めて、これ以上は引き受けられないとか、財政モラルに反するとか、主張する為に、度胸の無い時々の政権は、チビチビとした借金をし続けると言う悪循環を齎しているのである。
この数年、特に東日本大震災と原発事故と言う大義名分がある限り、国際市場は、ある程度の国債発行は、容認する可能性が高く、この期に乗じて、一気に、財政出動をするべきである。どうせ、消費税を少々引き上げても、国債発行額を若干減じるだけの効果であり、どう考えてもこの財政難を克服できる処方ではない。
寧ろ、我が国の経済浮揚を信じて(国民の能力を信じて)財政出動を、50兆円規模に膨らせ、3年程度、逆に消費税を引き下げ、あるいは所得税率や法人税なども減額して、景気浮揚に最大限の努力をすべきである。
もし国内の民間金融機関が引き受けられない場合でも、日銀がその全てを引き受けて、紙幣を増やせばよいのである。その結果が、インフレを加速させて暴走すると日銀は主張するが、現在の我が国の場合、このハイパーインフレはあり得ない、何故なら、我が国の通貨は、現在、国際市場で最強であるからだ。ユーロやドルが、不安定な今こそ、この円高を利用して、一気に財政出動することは、強ち不可能ではない。
元々、中央銀行の役割は、インフレ是正が目的であり、その為に、デフレスパイラルに見舞われている我が国への処方が、彼らには未経験であり、能力がないと言うのが、最大の不幸である。
これだけ長期に渡ったデフレを、彼のケインズも、あるいはハイエクも予想しなかった事で、セオリーがない。過去の経験則にしか能力が発揮できない官僚や日銀マンは、自らの知識に無いことへ挑戦などできないと言うのが事実である。
その為に、財政さえ保持すれば、それが原因で失業者で溢れ様が、次々と中小企業が倒産しようが、あるいは国民が途端の苦しみに喘ごうが、国家さえ存続できれば、自らの責任は果たせたと結論できるのが官僚の限界である。
野田政権が目指す、消費税率引き上げには、景気にも、あるいは財政モラルにも効果のない暴挙であると言う意味である。
どうせ、消費税率を少々引き上げても、財政再建に役立たないのであれば、景気浮揚を目指して一気に財政出動すべきである。更に、年金問題の抜本改革や医療保険制度の改革などを同時にやり遂げて、国民が抱える将来への不安を払拭できれば、一般消費は、格段に引き上げり、結果、国内消費に支えられた中小企業は、業績を伸ばして雇用の安定を作り出せる。これによる国民所得の引き上げは、税収を引き上げて、財政再建にも目鼻がつくと言う好循環を生むのである。
社会保障の安定的な確保の為に、消費税率を引き上げるなどというのは、ただ単に、国家の延命だけを企図した対症療法でしかない。長期のビジョンに立てば、この消費税率引き上げが、如何に無能な政策である事が、理解いただけるものと思います。
外は大雨、これが雪に変わると予報がなされています。明日から、また、多忙な日々が続きます。皆様も風邪など引かぬように健康に留意されてお過ごしくださるようにお祈り申し上げて終わりにします。