ピアニスト☆保坂修平のブログ

6月17日、浅草じゃのめにて、リーダーライブ!

僕の名盤紹介

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2.マイルス・デイヴィス ソーサラー

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マイルス・デイヴィスの音楽。

それは現世に対する否定の音楽ではないだろうか?

この世の中はなんてバカげたものだろう。
人間というものは、いつだってズルく、悪だくみで頭が一杯、他人が転ぶの見て嘲笑い、欲望は尽きるところを知らない、弱い者、負けた者を足蹴にして進んで行く生き物である。
人間とは、自分以外はみんな馬鹿だと思っているバカ者、親を憎み兄弟を憎み、恋人を憎み妻を夫を憎み、先輩を馬鹿にし、後輩をこき使い、政治家、お偉いさんはみな金の亡者、世の中は汚い。自分より劣った者は人間ではないし、自分より優れたものは認めない。自分に理解できないものはすべて価値がないと思っているし、いわゆる人情も友情も結局は保身のための仮面。
だれもが塀の上を歩いている。そして一歩踏み外せば真っ暗な底なしの沼が広がっている。

マイルスのトランペットは、そんなどろどろとした粘着質の暗闇を切り裂く閃光である。
怠惰で安逸をむさぼる人間たちに下される怒りの鉄鎚である。
「普通に生きること」で犯している諸々の罪(普通に生きて何が悪いの?)を焼き尽くす劫火である。
正義なき世の中に突然宣告させる唯一の「正義」である。
「探し出す人間だけが見つける」隠させた秘密である。
選民思想的である。広い世の中から選ばれたエリートだけが到達しうる世界。おまえたちもそこまでついてこいと誘う。しかし実際にその世界を垣間見ることのできる人間は少ない。いや、垣間見たと思っている人間も、聳え立つオリンパス山の麓に辿り着いただけなのかもしれない。
このくだらない現世、そこから遠く隔たったユートピアである。

こういった世界観はすごく魅力的である。
特に若いころは、音楽に限らず芸術とはかくあるべきだと僕は思っていた。
だからマーラーとかシェーンベルグとかマイルスとか、プログレとのイエスとかが僕のスターだった。

僕の中では、偉大なマイルス・クインテット、ピアノにハービー・ハンコック、ベースにロン・カーター、ドラムにトニー・ウィリアムス、サックスのウェイン・ショーターを擁したこのバンドはそんな「芸術的」ジャズの最高峰である。「ソーサラー(魔術師)」と題されたこのアルバムには、彼らの到達したユートピアのすべてが詰まっている。一体、自分のことを「魔術師」と呼ぶ(呼ばれることを臆さない)マイルスはどんなことを考えていたのだろう?

                  ☆☆☆


ところで、世の中、実はそんなに捨てたものではない。

僕は、この世に生れて本当に良かったと思っています。
やっぱり、「人でなし」の国はこの世よりもっと住みにくいはずだ。
僕はこの「現世」の生活を謳歌しています。


だけど、たまに、マイルスの音が聴きたくなるんだよね。。。

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1. ザ・ロイ・ヘインズ・トリオ

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この度、新しいコーナーとして「僕の名盤紹介」を設けました。僕はそんなにたくさん聴く方ではなく、いわゆる名盤を網羅的に知っているわけではありません。でも僕に音楽的な影響を与えてきた、あるいは与えつつある音楽がたくさんあります。それをこのコーナーで少しずつ紹介していきたいと思います。



記念すべき第一回に僕が選んだのは、比較的最近知ったばかりのこのCD。
月一でセッション・ホストをしている浅草のソウルトレーンで偶然見つけてマスターに貸してもらって聞いてからというもの、完全にハマりました。
その名は「ザ・ロイ・ヘインズ・トリオ・フィーチャリング・ダニーロ・ペレス&ジョン・パティトゥッチ」。ベテラン・ドラマーのロイ・ヘインズが、ピアノの若手ダニーロ・ペレスと技巧派ベースのパティトゥッチを配して組み上げたピアノ・トリオ。

ダニーロ・ペレスというピアニストは、ウェイン・ショーターのカルテットで、ベースのパティトゥッチとドラムのブライアン・ブレードと一緒にやっていた辣腕奏者。ショーター・バンドのあの素晴らしいサウンドとリズムの世界を作り上げる要(かなめ)のミュージシャンだと感じた。和声感もリズム感も個性的で変わった感じ、前衛度も高い音楽なのだが、不思議な親しみやすさがあり、とにかく聴いていて「楽しい」ピアノだ。天才的なピアノでもある。天才のネクラで気難しい部分を全部とっぱらって、陽性で朗らかな部分だけを全面に出したような音楽。うらやましい、一生に一度こんな風に弾いてみたいと思うピアノ。

パティトゥッチのベースはとにかく音色がよく、ソロに限らずよく「歌う」ベースだ。その名前からするとイタリア系なのだろうか?クラシック的な感覚からすると、「イタリア」という言葉からは、常に「歌」が思い起こされる。そう、ベル・カント。そしてイタリアからは、ポリーニという部類の名人ピアニストが出ている。超絶技巧つながりで僕の頭に浮かんでくるのはそんなとこ。それから、パティトゥッチはチック・コリアとの共演でも有名(僕はそれで初めて知った)。とにかく独特の艶やかな音色と歌い方に驚いたものだ。

そして、リーダーのロイ・ヘインズ。
僕は彼のドラムが好きではない。嫌いなわけではないのだが。
サウンドもリズム感もすごく個性が強く、それが魅力なのだし、かっこいいとも思うけど、心から「いい」と思ったことはない。「すごさ」は十分に分かるんだけど。
やることなすことすべて鼻につく、無性に気に障るんだけど「だけど、かっこいいんだよな」みたいなヤツ、学校とか会社にいませんでしたか?
僕にとって彼のドラムはいつもそんな感じ。
まあ、これだけ気になるということは、「好き」のうちに入るのかも。


そして、このアルバム、最高にかっこいいのだ。
ダニーロ・ペレスの「おかしな」感じのリズム、これがロイ・ヘインズのドラミングとすごく合っている。お互い歩み寄ったりという感じではない。これは完全に相性の良さなのだろう。ともするとガチャガチャしそうなピアノとドラムのサウンドのど真ん中に、いかりを下ろすように重心の低いパティトゥッチのベースがいる。そして出来上がる万華鏡のようにカラフルで楽しいサウンド、ウキウキするリズム。

僕が最高だと思うトラックは、モンクの「ブライト・ミシシッピー」。
素晴らしくスリリングな演奏の真中に、モンクの魂が、まったく純粋な形で出現するのだ。

今年前半期で一番よく聴くCDだ。
不思議なのだが、僕が目指す、自分のピアノ・トリオの理想像と、あまりにも違う彼らの音楽。
だから好きなのかもしれない。何度も楽しく聞けるのかもしれない。
とにかく「好き」とか「嫌い」とか、よく考えさせる音楽だ。
ま、「好き」なんだね。きっと。

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