『三年身籠る』
『三年身籠る』2005年日本映画 99分原作・脚本・監督:唯野未歩子 出演:中島知子(冬子)、西島秀俊(徹)、奥田恵梨華(緑子)、塩見三省(海)、木内みどり(母・桃子)、丹阿弥谷津子(祖母・秋)、鈴木一真(元彼・代理店男)、関敬六(おじいさん先生)、綾田俊樹(ビリヤード店店主)、戸田昌宏(病院の警備員)、相築あきこ、猫田直、天光眞弓 末田冬子、29才。妊娠9ヶ月を迎えた彼女は、外に出かけるときは余計な刺激を受けないように耳栓をし、家ではテレビや音楽を聴かないようにしていた。夫・徹は職場の同僚と浮気をしていたが、いつかは終わる関係と黙っている。そんな冬子のことが信じられない妹の緑子は大学病院に勤める年上の恋人・海(かい)と一心同体になりたいと願っている。親戚中女だらけの一家にあって、母・桃子も祖母・秋も冬子のお腹にいるのが女の子だと信じて疑わない。そんな中、冬子は顔も知らない父親に宛てて手紙を書き続けていた。 妊娠18ヶ月。一向に産まれてこない子どもを心配するどころか、育児をしなくていいからラクだと能天気な母と祖母。愛人に振られた徹も家事を手伝うようになっていた。まったく生まれて来ない我が子に苛立ちを隠せない徹は、子どもの父親が宇宙人なのではないかと言い出す始末。冬子は海を伴って、元彼に確かめに行く。その後、海の勤める大学病院に入院して検査することになった冬子だったが、世界でも例のない妊婦として学会に報告され、週刊誌にも取り上げられるなどしたため、緑子は海が冬子を見世物にしたと責め立てる。いたたまれなくなった徹は、夜中に冬子を病院から連れ出す。 妊娠27ヶ月。冬子と徹は人里離れた山奥に住み、穏やかな暮らしを送っていた。 妊娠27ヶ月という不条理かつシュールな設定をいとも軽やかに描ききったのは、女優としても活躍する唯野未歩子さん。 これまで『中学生日記』の脚本を手がけたことがあった彼女が、本作で映画監督デビュー。 いい作品というのは冒頭がいい。 冒頭の10分でその作品の出来・不出来が分かると言っても過言ではないのだ(by『時効警察』)。 まず映し出されるのはどこにでもある郊外の風景。 真ん中に道がまっすぐと続いていて、冬子がホウキとチリトリを手に掃除をしている。 一つゴミを取っては、また近くのゴミに目が行く。そのゴミを取ると、また次のゴミが……。 一体どこまで掃除をすればいいのだろう。自分がゴミを拾い続け、森の中、山道、果ては砂漠までたどりつくことを夢想する冬子。そこでつぶやく最初の台詞がいい。 「このまま行くと…」。 途中で終わっているのが何とも心憎い。 まるでこれから彼女の身に起こるとんでもない出来事を象徴しているかのようだ。 生まれたくない子ども/産みたいのか分からない母親というのは、『ドア・イン・ザ・フロア』に出てきた映画と同題の絵本の中でも扱われていたモチーフだが、てっきりそれと同様、母と子の物語かと思いきや、実はこの作品は「父親」こそがメインテーマなのだ。 本作に登場する徹は、妻が妊娠9ヶ月という状態なのに愛人を作っているような男。 まるっきり父親としての自覚がない。 彼が出来ることと言えば、開かなくなった瓶などのフタを開けることぐらい。所詮、男なんてそんなもの。 妊娠27ヶ月になって、「お父さんが必要なのよ」と冬子に言われた徹は、「お父さん? なる、なるよ!」と答える。それを聞いて、お腹の中の赤ん坊は生まれようとしはじめる。 できちゃった結婚なんていう能天気な名称による結婚が増加している昨今、果たしてどれだけの人間が父親として、あるいは母親としての自覚を有しているだろうか。 いわば、冬子のお腹にいた赤ん坊は、ささやかながら反抗をしていたのだ。 ラスト、親子でしりとりをしているシーンでの最後の言葉もいい。 妊娠27ヶ月になってからがややテンポが悪くなってしまったが、デビュー作でここまでできるのだからすごいもんだ。ここのところ、日本映画界でも女性監督の活躍が目覚しいが、その一角に堂々と入り込んできたと言えるだろう。次回作が今から楽しみだ。
役者陣はこれと言って特筆すべきところはなし。中島知子さんは悪くはないが、彼女じゃなくてもよかったかなという気はする。西島秀俊さんはいつもの通りだし。 まぁ設定が突飛な分、役者はあまり前面に出てこない方が正解だったとは思うけど。 それと作品中にしばしば食事シーンが登場するが、その料理の豪勢なこと! 品数も豊富で、色とりどりの料理がところ狭しと並べられ、食欲をそそられる。 祖母が死んで、墓の前でピクニックのように重箱を広げたのにはびっくり。 |
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