つぶやき日記
願い/ZEROCanon EOS Kiss Digital Xで撮影した「2012.03.25」 「・・きれい」
国道313号線を北上する半ばで、車窓に顔を押し付けるようにして、君がつぶやいた。
岡山県北の真庭市を抜けて、犬挟峠から鳥取県へと向かう途中のことだ。
外は、夕暮れを迎えようとしている。
湯原湖というダム湖の最上流地域にあたり、広葉樹が折り重なるように枝を広げた姿が、
くっきりと湖面に浮かぶ。
「写真を撮りたいでしょ?」人差し指を運転中の僕の頬にあてた。
カーブの連続で、時折、少動物の鳴き声に似た、タイヤの悲鳴が交じる。
写真を撮る時は、たいがい一人で行動するから、君の言葉には、やや皮肉を帯びた響きがあった。
「まぁ、ね」曖昧な返事で、ここは切り抜けるしか無い。
あとで地図を見ると、中和(ちゅうか)という場所らしいことがわかった。
暗い世相を反映するニュースばかりが目立つ中で、
奇跡の生還を遂げた「はやぶさ」の偉業は、鮮烈な光彩を放った。
もちろん、60億キロという途方もない宇宙航海は、順風満帆といえるものではなかっただろう。
その危機の最大のものが、中和器の故障だったという。
プロジェクトの関係者は、中和器の回復を願い、
岡山県北の中和村(ちゅうかそん:現真庭市)にある、中和神社へ祈願に訪れた。
読みこそ違え、中和器のトラブルが改善され、はやぶさが無事帰還するよう、
東京からこんな田舎へと足を運んだのである。
すがる思い・というのは、このことを言うのだろう。
何が何でも、成功させる・という、強い意志をこのエピソードひとつからも、感じられ、
日々伝わってくる無責任な政治屋たちの体たらくを見るにつけ、
余計に、はやぶさ計画の成功が、尊く思えるのである。
3月25日。
もしかしたら、今シーズン最後の雪景になるかも・・
カメラを首からぶら下げて、一里塚のある駐車場から、歩きだす。
空はどんよりと暗く、時折、雪が舞い落ちてくる。
一面、雪に覆われているため、国道を外れると、道がわからない。
白い野原を湖面に向けて歩いてゆくが、足を取られないかと気が気ではない。
いつだったか、友人が狩猟用のトラバサミに足を挟まれ、大怪我をした話を思い出す。
森閑とした風景の中、ウグイスの声だけが響く。
雪の中で聞くと、不思議な気がするな・・
鳴き始めだから、「ホーホケキョ」と、うまくは鳴けない。
さらにゆくと、鴨が数羽、飛び立ち、その羽音の方には、川舟の姿があった。
君の言ったとおり、すばらしい場所だ。
今日だけは、なんだか神様を信じられそうな気がするよ。
だけど・・
ダム湖は、いきなり深いから危険だ、
春?・・マムシが出てくる。
夏は・・やぶ蚊がすごい、刺されると、顔がパンパンに腫れちゃうくらいだから。
秋になると、餌を探しているクマに遭遇するかも・・
だから、やっぱり君を連れてくるわけには、いかないんだよ。 |


