from davao with love

長年のダバオ移住の夢を果たした、男のブログです。

全体表示

[ リスト ]

私の歩んできた道。(パート─

 我々、田舎の市役所職員にとって一番嫌なことの一つが、四年に一度行われる統一地方選挙である。
 この選挙によつて、市長は四年間の市政について、市民からの審判を受けなければならない。
 そのことは、ある意味、職員に対する審判とも言える。
特に、市長を直接補佐している管理職職員にとっては、自分たちが進めてきた市行政の評価に他ならない。

 ある年の晩秋、翌年春の市長選挙立候補予定者が出揃った。
そのメンバーとは、まず、五選を目指す現職の市長、次に、前回の市長選で惜敗した市長の元支持者、更に、自然保護問題で市を二分させている、市民運動活動家の現職市議である。

 私は総務次長として、地方公務員法並びに公職選挙法に抵触しない、いや、抵触するかもしれない?範囲内で、全力を尽くすことを覚悟した。

 私に出来る事は、知人友人に市長支持をお願いすることは勿論、市職員の大多数の支持を取り付けることである。

 市長は日頃から職員とはあらゆる機会を通じて懇親を深めていたが、対立候補も市長の牙城の市役所を切り崩さない限り、当選は厳しい。
 そのため、空手形を乱発する。管理職に登用できない駄目職員には、昇格を匂わせ、若手職員には希望するポストを約束する。
 形振り構わず、その一角を崩そうと攻めてくる。

 そこで私は、気心の知れた職員に依頼し、職員の各種会合を調べて貰った。
それは、市長に出来る限り職員の会合に出席してもらい、酒席を通じてお互いの理解を深めて貰いたかったからである。
 特に、若手職員は市長と親しく言葉を交わす機会は少なく、絶大な効果を上げた。

 次に、管理職の更なる団結を図るため、部課長会主催の夫婦同伴忘年会を計画した。
 我々公務員は、地方自治法、公職選挙法の縛りがあり、特定の候補者の選挙運動は厳禁である。
 しかし、その妻は一市民であり、法的拘束は受けない。
そこを上手く利用して、選挙運動に加わって貰おうと魂胆であつた。
 但し、今まで一度も夫婦同伴の忘年会など遣った事はなく、誰の目にも奇異に写った事は事実であつた。

 忘年会は市長ご夫妻、後援会幹部を来賓に迎え、市内のホテルで開催した。
当日は、市長と奥様にご挨拶をいただき、後援会幹部の方に乾杯の音頭を取ってもらった。
 その挨拶の内容は、ご推察の通りである。

 宴も佳境に入った頃、会場の入り口が騒がしい。
係員に呼ばれて行ってみると、新聞記者が数名騒いでいた。
彼らは私を見ると開口一番、「次長、この宴会は何ですか?まるで選挙運動ではないですか。地方公務員法に抵触しますよ。」と、食って掛かって来た。
 私は平然と「夫婦同伴の部課長会主催の忘年会のどこが、地方公務員法に抵触するの?。」と答えると、「市長の後援会幹部が出席しているじゃないですか。」と更に、語気を強めてきた。
 「日頃から市政推進に、ご協力を頂いている各界の代表の方をお招きするのが、違法とでも言うの。?」
 新聞記者たちは、私が動揺して口を滑らすのを期待していたようだが、諦めて渋々退散した。
 あくる日の各社の新聞に一行も、この忘年会の記事が載らなかった事は言うまでもない。

 選挙が告示されると、市長は選挙カーに乗り、市内各所を終日遊説に廻る。
その為、市役所には登庁せず、副市長がこの間、市政の舵を取る。
 しかし、市長に業務報告とその指示を仰ぐ為、誰かが毎日選挙事務所に出向かなければならない。。
 この役目は、普通は総務部長が果たす。
ところが、火中の栗を拾いたがらない総務部長は、何かと理屈を付けて遣ろうとはしない。
 そこで、私にお鉢が廻ってきた。
元来、火中の栗を拾うのが大好きな私は、進んで引き受けた。

 告示期間の選挙事務所は戦場である。
大声で運動員に指示を出す幹部の声、鳴り響く電話の音、血走った運動員の目、炊き出しのおばさんか達が作る飯の匂い、何もかもが初めての経験であった。
 突然、選対幹部から「次長、この件はどうしたら良いと思う。」と聞かれ、「此処にはこうして、あそこには、ああした方が良いのでは。」と答える私。
 まるで、選対幹部にでもになったような気になった。

 選挙は勝った。心から感動した。公務員を完全に忘れみなと一緒になって万歳と叫んだ。

 選挙も終わり、一ヶ月が過ぎようとしていたある日、地元警察署との会議が開催された。
 会議終了後、懇親会が開催され警察署幹部と杯を酌み交わした。

 私の横に座っていた某幹部が、酔った勢いで口を滑らした。
「次長、今回の選挙は少し遣りすぎましたね。いろんな情報が沢山入ってきましたよ。ハハハー。」と。
 私は「そんな事ありましたっけ。」と、惚けてお茶を濁した。

 教育的指導を受けたのである。
大事には至らなかったものの、結構、危ない綱渡りをしていたのかも知れない。

パート⑨へとつづく。



「無題」書庫の記事一覧

閉じる コメント(10)

顔アイコン

臨場感あふれ、まるで小説を読んでいるようでした。次も楽しみにしてます!!

2013/4/27(土) 午前 9:14 [ movetophils ]

なるほど興味深い話ですね。
フィリピンも只今市長選の真っ最中日本では現金はご法度ですが、フィリピンではTシャツ、ご馳走、現金もあるという話ですがもっとクリーンに日本の選挙方法を取り入れて欲しいものです。

2013/4/27(土) 午前 9:16 ドン・ディエゴ

顔アイコン

これこそその現場に居合わせた人しか分からない実体験ですね。
公職選挙法に抵触するか否か、非常に難しいでしょうね。
組合は組合で特定の候補者を支援したいでしょうし。

2013/4/27(土) 午前 11:05 Ming

こんにちわ(^^)。

何事にも慌てず堂々と…中々出来ないのですよね
動じずご立派です

2013/4/27(土) 午後 6:47 mamamiyuki

顔アイコン

結構危ない橋でしたねー ハハハ

でもこれぐらいの覚悟がないと

なかなか改革なんてできないですよねー

2013/4/27(土) 午後 7:30 keina

顔アイコン

moveさん、公務員が選挙運動に、のめり込むのは非常に危険なんです。
それは、他の運動員に感化され、自己コントロールが効かなくなり、最後まで行ってしまうからです。
この選挙はいい教訓になりました。(汗)

2013/4/28(日) 午後 3:25 [ numakan ]

顔アイコン

ドンさん、日本の選挙において、公職選挙法を遵守し、法廷選挙費用内で選挙運動をやっている候補者は皆無と言われています。
日本もアメリカのように、支持者から寄付を募り、オープンに選挙運動を遣った方が、陰湿な違反も無くなる様な気がします。

2013/4/28(日) 午後 3:33 [ numakan ]

顔アイコン

mingさん、今考えると、抵触していると言われても仕方がないでしょうね。
しかし、警察は金銭が動くか目に余る行為をしない限り、動かないようでした。
私の場合、もう少しで目に余る行為に該当していたかも知れません。(汗)

2013/4/28(日) 午後 4:54 [ numakan ]

顔アイコン

miukiさん、当時の私は、「赤信号、皆で渡れば怖くない。」の心境に陥ってたようです。
ですから、怖いものなしでした。(汗)

2013/4/28(日) 午後 4:58 [ numakan ]

顔アイコン

keinaさん、私個人の為でなく市の将来の為だとの思いが、私の心の中にあったのかも知れません。
ですから、役所内の友人を失おうが、周りから批判されようが、初心を貫くことが出来たのだと思います。

2013/4/28(日) 午後 5:06 [ numakan ]

コメント投稿
名前パスワードブログ
絵文字
×
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

閉じる トラックバック(0)

トラックバックされた記事

トラックバックされている記事がありません。

トラックバック先の記事

  • トラックバック先の記事がありません。

飲食店カテゴリの関連記事

※「練習用」カテゴリが登録されている場合は「飲食店」カテゴリを表示しています


.

人気度

ヘルプ

Yahoo Image

 今日全体
訪問者144516
ブログリンク034
コメント04380
トラックバック03

ケータイで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

URLをケータイに送信
(Yahoo! JAPAN IDでのログインが必要です)

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

毎月60万ポイントをブロガーで山分け
楽しい話題がいっぱい(Y! Suica)

プライバシーポリシー -  利用規約 -  ガイドライン -  順守事項 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2014 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事