全体表示

[ リスト ]

Mu論文とVojnits論文との関係について、述べたい。

まず先行して書かれた2011年のMu論文についてだが、より簡略に言うと、次のようになると思う。
肉体が損傷したとき、傷がどのように治癒されるのか。通常は、

「筋幹細胞(単核)」→「筋細胞(単核)」→「筋繊維(多核)」

という分化のプロセスをたどって筋肉が再生される。
しかし、ここで、それとは逆のプロセス

「筋繊維(多核)」→「筋細胞(単核)」→「筋幹細胞(単核)」

という、脱分化のプロセスが生じているかどうかを調べる。
このように、体細胞から幹細胞に逆戻りするという脱分化のプロセスは、従来、哺乳類では起こらないとされてきた。しかし、この論文では、あえてそれを実証することを試みたわけである。

それでは、それをどのように実証するのか。
多核の筋繊維は、単核の筋細胞が融合してできるから、このことを利用する。
まず、二つの単核の筋細胞の一方に「Cre」を、一方に「Lox-β-gal」を仕込む。
この「Cre」と「Lox-β-gal」が融合したときに、はじめて「β-gal/LacZ」遺伝子が発現するようになっている。
つまり、「Cre」を仕込んだ筋細胞と「Lox-β-gal」を仕込んだ筋細胞が融合して筋繊維になったとすると、その筋繊維は「β-gal/lacZ」を発現している。
したがって、ここが重要なのだが、その筋繊維が脱分化して単核の筋細胞に逆戻りし、さらに脱分化して単核の筋幹細胞が生じたとすると、その筋幹細胞は「β-gal/LacZ」の発現を保持しているはずである。
つまり、もともとあった筋幹細胞はこれを発現しないから、これによって、もともとあった筋幹細胞と区別できる。
そこで、実際に、「Cre」と「Lox-β-gal」の二つの筋細胞をマウスに移植し、そこを傷つけたところ、その4日後に、「β-gal/LacZ」の発現した単核細胞が観察された。しかも、これはPax7(筋衛星細胞に特有のマーカー)を発現した。
ということは、一度融合して筋繊維になったものが、脱分化して再び筋幹細胞様のものに逆戻りしたものと解釈できる。
この一連の実験操作を、著者らは「Cre-LoxP System」と呼んでいる。

で、次のVojits論文においても、この「Cre-LoxP System」を利用しているようである。

We have previously discovered that among MuSCs, a small population of iMuSCs exist and can be isolated from injured murine skeletal muscles using a Cre-LoxP system established in our laboratory.

とあるから、そうとしか思えない。また、当然そうでなければ、最初からこの論文の意図がわからない。
つまり、「Cre-LoxP System」を用いて「β-gal/LacZ」を発現した筋幹細胞様のもの(最終的に分化した筋繊維由来のもの)を単離したわけである。これを、彼らは「iMuSCs」と名付けたのである。

すなわち、この論文の一つのポイントは、それがもともとあった幹細胞に由来するものである可能性を排除したということである。そのために、わざわざ「Cre-LoxP System」という手法を開発したのである。


この記事に

閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

.


みんなの更新記事