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■その日のまえに/重松清

■読了本のご紹介■

重松清著、「その日のまえに」 文芸春秋、2005.8

「別冊文芸春秋」に'04.7〜'05.7の間掲載された連作短編。
かつて経験した「突然の別れ」や、今まさに直面している「別れ」。
それらの「死」に向きあうひとびとの物語。
ひこうき雲、朝日のあたる家、潮騒、ヒア・カムズ・ザ・サン、
その日のまえに、その日、その日のあとで、の7編収録。

※書籍情報(表紙画像など)は記事右下にある「私のおすすめ〜」のリンク先でご確認ください。

「その日のまえに」からの3編は、主人公が同じ連作。

それと同時に、それまでの4編のエピソードも添えられており、

この作品集は、連作であり、かつ、ひとつのテーマをおった長編ともとれる。


どれも、「その日」=「死という別れ」について書かれた作品であるが、

一番印象に残ったのは「朝日のあたる家」だった。


主人公のぷくちゃんは、8年前に夫を「虚血性心不全」で突然亡くした42歳の高校教師。

一人娘も成長し、中学生となった今、

夫を亡くした悲しみを忘れたわけではないが、「夫のいない生活」が普通のものとなっている。

通勤前の早朝ジョギング中に、かつての教え子に偶然出会い、

別の教え子が同じマンションに住んでいることを知る。

その晩に訪ねてきたもうひとりの教え子は、ある問題を抱えていた・・・。


他の作品と大きく違うところは、

作中の登場人物の誰もが、誰か(もしくは自分)の死に直面していないこと。

そして、かつて大切なひととの別れを経験したぷくちゃんの目線から、

「それでも生き続ける今」の辛さと大切さを描いているところだ。

大きな問題を起こした、「既に大人」の教え子ふたりに彼女は言う。

「終わってないから、まだ。

いろんなことが終わっても、いちばん大事なことはまだ終わっていない。

わかる?だから、間違っても、間違っても、やり直せる。あんたたちは、やり直せるから」


そして、ラストシーンで

日課の「早朝ジョギング」をしながら、彼女はこう自分にエールを送る。

つづけることは――すごいんだぞ、と自分に言い聞かせた。

始めることも終えることもすごいけど、こっちだって負けてないぞ、と付け加えて、

生きてるんだから、生きてるんだから、と繰り返した。


この本は、図書館のポスターによると、

今年の夏、高校生向けの「推薦図書」となっていたようだ(私の住む地域だけかもしれないが)。

自分やひとの命を軽く考えてしまいがちな年頃の彼らには、何かしら得るところのある作品だと思う。


死は望むと望まざるとに関わらず、突然やってくる。

時期はひとそれぞれだが、「死なないひとはいない」という意味においては、

誰にでも等しくやってくるものだ。

それが突然の事故であったり、病気であったり、老衰であるかは分からない。

「生きたくても生きられないひとがいる。だから、あなたは自分から死を選んではいけない」

とは、私は思わない。

ひとは、ひとのためでなく、自分のために生きるものだと私は思っている。

「ひとのため」という感情も、結局は「自分のため」のものであると思うから。

だから、そんな押し付けがましいことは言いたくないし、言われたくもない。

(身内になると話は変わってくるが、偉そうに見知らぬ誰かに説教をするつもりはない)

ひとはそれぞれの状況にあり、それぞれに楽しいことや辛いことを経験するのだから、

そんな無責任な一般論は無意味だ。


けれど、自分がなぜ今、生きているのか。

生き続けているのか。

それを考えることは大切だと思う。


ひとはひとりで生きていくものだと私は思うが、

たくさんのひとの愛情や優しさを受けて今があるものだし、

それが未来に繋がっている。


生きるも死ぬも、自分次第。それに良いも悪いもないだろう。

けれど、「生き続けること」だって、偉いのだ。

そのことを、忘れずにいたいと思うし、誰もに知っていてほしいと思う。





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書籍情報はこちら:重松清著、「その日のまえに」

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