砺波空き家利活用に関する提言書
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1 空き家の現状
砺波市は現在、少子高齢化や地域農業衰退による若者の都市圏への流出などで、空き家が急速に増えています。市長のタウンミーティングや議会での質問にも、散居村景観保全や防災・安全上の観点から、現状を強く危惧する意見が上がっています。
平成24年1月現在の空き家戸数は305戸(全調査地区)に上り、住宅総数16,020戸(住宅・土地統計調査より)の約2%にもなり、例えば太田地区では473世帯のうち約7%にあたる33戸が空き家という大変深刻な状況にあります。また、砺波市の平成23年12月31日現在の60歳以上単身世帯は1,640世帯あり、総世帯数15,564世帯の10%以上になります。これらは空き家予備軍であり、今後も急速に増加することが予想されています。
このような状況を踏まえ、砺波市空き家利活用調査研究委員会は、平成23年11月12日、となみ散居村ミュージアム情報館研修室で「空き家利活用シンポジウム」を開催し、「地域資源としての空き家利活用を考える」をテーマに、事例報告とパネルディスカッションを行いました。市議会議員や自治振興会長ら130名の参加を得たことは、この問題に対する市民の関心が極めて高いことをあらためて示したものといえます。
2 空き家がもたらす深刻な問題
刻々と増加する空き家は、地域に深刻な問題をもたらします。散居村景観の保全が難しくなることはいうまでもありませんが、獅子舞など古くから受け継がれた祭りや自治会活動など、地域コミュニティの存続が難しくなります。また、放棄田が増えるほか、不在地主の増加で用排水路などの農業インフラの維持が困難になることも予想されます。小作料より高い用水費等などを、都市圏に住む不在地主が払い続けてくれるでしょうか。用水路は川上から川下まで整備されていて、はじめて機能します。農業インフラが崩壊すれば、散居村に人が住むことすら難しくなってしまいます。
また既に起きている問題として、地域の安全・防犯・防災上の危険があります。野良猫やハクビシンなどが侵入する空き家が増えているほか、粗大ごみの不法投棄などが見られます。不審火による火災、不審者の侵入、子供や女性の連れ込みなど、心配の種は尽きません。
現在、私たちの家の近所に若者がどれだけ住んでいるでしょうか。10年後、20年後、地域の人口、世帯構成はどうなるでしょうか。その時、住民はどんな生活をしているでしょうか。高齢になった私たちが、除雪や江浚い、買い物ができるでしょうか。
空き家の増加は、私たちの地域を確実に限界集落のようにしてしまいます。そうなってからでは手遅れです。
3 空き家利活用の方向と課題
空き家が増え続けることをただ嘆いているだけでは、問題は解決しません。地域に人が住んでもらうこと、特に若い人たちに住んでもらうことが重要です。いわゆるU・J・Iターンの人々を受け入れるため、「空き家を地域資源として考え、利活用を進めていく」ことが、最も有効な手段と考えます。全国各地でさまざまな空き家対策が試みられており、石川県では金沢市や能登地方で空き家対策を重要施策と位置付けた事業が実施されているほか、県内でも射水市、氷見市などが積極的に取り組んでいます。
空き家に人が住むようになれば、地域に新しい風が起こり、新しい「風土」ができあがります。従来からそこに住む人々の活性化にもつながります。県外などからの移住ばかりではなく、近隣のアパートに住む若い夫婦などにも、少ない費用で空き家を改築し住んでもらうようなことも考えなければなりません。その実例が柳瀬地区などにあり、参考にすべきです。
新しく住む人が地域に定着してもらうには、安定した収入確保や地域住民との良好なコミュニケーションなど、行政や地域コミュニティが配慮すべき点が多々あります。それらの課題も行政や住民が協力して取り組んでいく必要があります。
砺波市は各種調査による住み良さランキングが、毎年上位となっています。散居村という素晴らしい自然環境や歴史文化に恵まれた地域であることは自他ともに認めるところです。空き家問題解決のため定住人口を増やすには、「砺波に住みたい」と思ってもらえるように、歴史文化など地域の魅力や散居村暮らしの素晴らしさを広く発掘・発信することも重要です。
さらに、住民自らが本当に故郷の魅力を実感し、自信を持って訪れた人たちに伝えなければなりません。地域愛のないところに人は来ません。自らの地域を蔑むのでは、人が逃げていくばかりです。地域に愛着を持ち自慢する人たちがいるところに、人々が集まるのです。生涯学習のNPO法人砺波土蔵の会が平成21年度から行っている散居村民泊ツアーは各回とも大好評で、私たちが日ごろ気付かない砺波の魅力をあらためて再認識させてくれました。市民の意識改革が不可欠なのです。
4 空き家利活用策への具体的提言
全国的にも、空き家利活用について、さまざまな方策が検討されています。砺波市も平成21年度からNPO法人砺波土蔵の会とともに空き家調査を開始し、その深刻な現状について地区自治振興会などと認識を共有してきました。そして平成23年6月には砺波市空き家利活用調査研究委員会を設立し、先進地の視察、シンポジウム開催など精力的に活動してきました。その中で、空き家バンクや定住促進策を担う新組織の設立を求める提案が出されました。
その組織の活動としては、概ね以下の3点が考えられます。
① 空き家バンクの運営(自治振興会との連携による空き家の継続的調査、賃貸・売買の情報提供、空き家の管理、入居希望者への相談対応、空き家問題の啓発など)
② 歴史文化や散居村暮らしの楽しさなど砺波の魅力の調査研究と発信(民泊事業や観光ガイド育成、空き家を活用した体験宿泊施設などの運営、各種講座の開催など)
③ 空き家バンクと地域の魅力を広く発信するホームページの運営
このような活動を行うには、まず必要なスキルを持つ人材と資金、特に人件費の確保が必要です。さらに新しい組織が将来にわたって活動を継続していくには、スタッフが順次世代交代を行える程度の事業規模が必要です。これまで空き家問題には、砺波土蔵の会が主導的にかかわってきましたが、その活動はボランティア団体の域を超えず、前記のような活動を行うことは不可能です。
各地の空き家バンクの中には、行政主導で行っているものも多くありますが、公平性や無謬性が求められる行政には、利用者の立場に立った柔軟できめ細かな対応が難しいことなどが課題になっているようです。また、民間並みのコスト意識と迅速な対応が取れないことも問題です。やはり現状では、事業目的に対して熱い情熱を持つ人たちによる新組織の立ち上げが不可欠であると考えます。
また、空き家問題の解決を利活用の立場だけから議論することには、限界があります。空き家利活用シンポジウムでも参加者からも提案があったとおり、空き家の所有者責任を明確にすることも必要です。「管理不全な状態」の空き家所有者に適切な管理を求めることなどを定めた「空き家条例」についても十分検討すべきです。
5 砺波型新法人設立の必要性
砺波という地域に合った新組織はどのような形が望ましいのでしょうか。空き家バンクの運営だけでは、組織を継続的に維持するだけの業務量や資金を確保するのが難しいと考えられます。また、地域の魅力の発掘・発信についても、歴史文化の調査研究やホームページ運営が行える程度のスキルを持った人材を集めることが必要です。
幸い、古くから多くの地理学研究者を魅了した散居村地域の砺波市には、学術研究の長い蓄積を持つ砺波郷土資料館と砺波散村地域研究所、散居村の魅力を発信するとなみ散居村ミュージアムがあります。
その中でも、となみ散居村ミュージアムは指定管理者制への移行が検討されており、「空き家利活用策への具体的提言」で提案した活動も担えるような組織が指定管理者となることが重要であると考えられます。加えて、これまで別々に活動してきた3つの組織ないし運営を一体化するための検討も必要です。そのことにより、従来の学術研究などの資産を活用した地域の魅力発信などが、将来にわたって継続的かつ効率的に行えると考えます。さらに、観光情報なども一体的に扱うことが可能です。
民間的な発想で運営を行えば、コスト面でも大きなメリットが考えられます。チューリップや大門そうめんなどの生産農家、観光業者、宅建業者などとも協力すれば、従来にない活動を展開できる可能性もあります。
空き家問題は刻一刻と深刻化しており、待ったなしの状態です。定住促進についても全国の自治体が知恵を絞っており、地域間競争に後れを取らないよう早急な対応が求められています。 |






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