この日参加した人からは、「現場に行って初めて作業の振り分けがされるため、なかなか断りにくい」という声も聞かれた。ゴーグルに厚手のマスクとビニール手袋を着けた男性、そして女性も、泥まみれになりながら、直接側溝に手を入れて落ち葉や泥をすくいあげていた。
いくつかに分かれた砂や砂利の山を崩し、一輪車に移して敷いていく作業では、参加したボランティアが周囲の人の動きを見ながら、声をかけ合って作業する中で、自然に役割分担ができていった。2日間、連続で参加している人も数人いて、声をかけたり、相談しながら作業が進められていった。約3時間の作業でこの日は終了。集まった落ち葉や木くずなどの廃棄物はトラック1台分になった。
「大波地区は高齢化が進んで子どもたちがよそに出てしまいました。うちも2人暮らしですが、実際には除染作業ができません。ボランティアの方にやっていただいて大変助かります」と感謝を述べる山岸さん。木が植えてある庭に砂利や土を敷き詰めるような作業は人手でやらなければできない。今後も民家の除染では、人力による作業が中心になることが予想される。
「地元のために何かしたい」福島市出身女性も
「私は福島市出身です。最初、津波の被災ボランティアに何回か参加していたのですが、地元のために何かしたいなと思って。それで除染ボランティアに行きついた感じです。今は、福島市と伊達市の除染ボランティアに登録しています」。埼玉県の主婦、今泉尚美さんは、故郷のために何かしたいという思いを語った。
伊達市霊山町下小国地区でも、民家のコケや表土を取る作業に参加しており、除染ボランティアは今回で2回目。「今日の説明で、『関東に住んでいる人は、10回作業をしたら少し休んで』と説明があったので、被ばくについても自分で管理する必要があると思います。下小国地区の時もグループの代表が線量計を携帯しましたが、その時は1日で7マイクロシーベルトぐらいでした。今後、市民団体の除染活動で参加する場合もあると思うので、自分でも小さな線量計を買った方がいいのかなと考えています」。継続してボランティアに参加することも考えているという。
長野県からマイカーで駆けつけた66歳の男性は、「前から南相馬市などに行って現地を見ているのですが、今回は除染活動を1度体験したいと思って参加しました。やってみて、誰でも参加できるということが分かりましたが、若い人が自分の時間を割いて来ていることにも驚きました。今日参加されている方は皆、線量の管理なども含めて、特殊なボランティアだということを理解していると思いますよ」という。
この男性のようにマイカーだけでなく、新幹線や飛行機で来ている人もいることから「災害支援のボランティアとして、交通費が無料になるような手続きや支援などがあると、もっと来やすくなるのでは」。この後は、浜通りの南相馬市などを回って帰る予定で、「被災地支援について、もっといろいろ見てきます」と話していた。
福島市の佐藤放射線総合対策課長は「ボランティア活動を通じて、こうして福島に足を運んでいただいて、いろいろなものを見ていただくことで、『福島は危険、危険と言われていたが、実際に住んでいる人がいる』ということを伝えてもらうことも、とても重要なことだと思っています」と話す。市側がボランティアに寄せる期待は大きい。
ただ今後の重要な検討課題もある。それは県外や市外から来たボランティアの人たちと大波地区の住民との交流がほとんどなかった点だ。この日参加したボランティアの何人かは、「福島の現状を知りたい」という動機で参加していた。市民と顔の見える交流の場、お互いに話ができる時間が30分でもあれば、単なる一方通行の「支援する」「支援される」関係のみで終わらない可能性が見えてくると思う。
除染ボランティアの活用については、厳しい意見もある。
市や市社会福祉協議会とディスカッションを重ね、この週末にも参加した国際協力NGOセンター(JANIC)の竹内俊之さんは「NGO(非政府組織)やNPO(非営利団体)の活動は安価な行政サービスではない。専門的知識が必要とされる除染作業の予算がないから、国や行政が募集した無報酬の市民ボランティアにやってもらうという考えは安易で、善意の悪用であるとの疑問の声が会員から挙がっている」と行政の姿勢に疑問を呈する。
「安全面に取り組んでいるのは分かったが、まだ対策が不十分。出産する可能性の高い年齢の女性や若年層へのリスク説明の不十分さ、積算被ばく量が自己管理に任されている点、環境庁の基準を満たしていない使い捨てマスクの使用やゴーグルの未準備など、まだまだ課題が多い」と警鐘を鳴らす。その上で、「事前加入のボランティア保険は放射線傷害をカバーしていない。市との雇用契約による労災加入が義務づけられるべきではないか」と提言する。
安全対策や安易なボランティア活用に警鐘
ボランティア参加はあくまでも自己責任であるとは言え、原発事故による放射性物質の問題がある福島では、被ばくリスクが生じる。そうしたリスクに対する十分な情報提供を含めて、ボランティアにかかる負担や、万が一健康被害が起きた場合の補償や責任の所在などは明確になっていない。竹内さんの提言が実現すれば、ボランティアもより安心して参加できるだろう。
実はこの除染ボランティア事業、費用負担や責任の所在、リスク管理も含めて、長期的な見通しがあいまいなまま、行政主体で動き出しているのが実情だ。市が「ふるさと除染計画」を市議会に説明した際、議員からは「本来は事故の責任者である東電が一義的責任を負うべきなのに、『ふるさと除染計画』には東電が出てこない。それはおかしい」という声も挙がった。
市議の意見の中では、東電が費用を負担したり、同社社員による労力奉仕などの可能性も挙げられたが、結局、東電が責任を持って参加するという内容は盛り込まれないまま。それでも市が主導する形で、県内外からの除染ボランティアの活用方針が固まった。
費用(健康リスク)対効果については議論の余地もある。10月11日に内閣府と環境省が福島市で開催した「環境の再生に向けた除染に関する国際シンポジウム」で、ロシア連邦医療生物物理センターのナターリア・シャンダラさんにより、チェルノブイリ事故後、ロシア西部ブリャンスク地区472集落で行われた除染について報告があった。
大量の低レベル廃棄物が出る課題とともに、「事故から3年間実施される除染により、70年と予想される公衆の外部線量の低減は平均10%」であることが報告された。放射性セシウム134は半減期が2年と短いため、今後、福島県内の空間放射線量は次第に下がると予想されるが、我が国ではより高度な除染技術を使うなどして、先例ロシアの低減率を上回ることは可能だろうか。
「福島の人を何とか応援したい」。そんな思いで全国各地からボランティアが駆けつけている。しかし、解決していない課題や議論されていない論点が山積している。
十分なリスクの説明や、サポート体制、地元住民と県外ボランティアによる自発的なネットワークづくり、ボランティアと行政がイコールパートナーで取り組める仕組み…。
福島県民に比べて被ばく量が少ない県外の人がボランティアに参加すれば、多少なりとも健康リスクが高まる。それでも除染を進めることを地元の住民はどう考えるか。除染作業が進むことによって増える放射性廃棄物のその処分場をどうするか。今後、こうした論点についても、行政と市民、ボランティアを交えた議論が深まることを期待したい。
除染ボランティア登録のみなさんへ
除染ボランティアへの登録ありがとうございます。
環境省が、除染に関する業務を行うための任期付き職員の募集をしています。
福島を中心に100名という規模です。任期は3年ないし2年ですが、今後の福島県の除染を担う重要な役割を果たすことになると思います。
詳しい内容は、下記のホームページにありますが、締め切りは2月3日とあまり日がありません。情報としてご案内いたします。
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ttp://www.env.go.jp/guide/saiyo/shinsai/info_ftm.html
2012/1/19(木) 午後 9:56 [ 3.11放射性物質汚染シンポ動画配信 ]