「ヒミズ」
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<あらすじ>
15歳の孤独な少年、住田祐一(染谷将太)の夢は、誰にも迷惑をかけずに生きる平凡な大人になることだった。彼は、実家の貸しボート屋を続けていくことを決意するが、突然、母親が行きずりの男と駆け落ちしてしまう。そんな住田にクラスメイトの茶沢景子(二階堂ふみ)は好意を抱き、住田の実家である貸しボート屋を手伝うなど積極的にアプローチする。そんな中、借金をつくって蒸発していた父親(光石研)がやってきて・・・。
「冷たい熱帯魚」「恋の罪」の園子温監督が古谷実の同名コミックスを、舞台背景を東日本大震災後に設定して映画化した衝撃の青春ドラマ。
主演の染谷将太と二階堂ふみは、ヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)に輝いています。
同監督の作品では、「自殺サークル」「恋の罪」と本作で、最初に見た「自殺サークル」が全く受けつけなかったクチです。
原作のマンガは、こないだネットカフェで読んできました。
原作との比較では、震災とのリンク、夜野がクラスメイトから家のそばに住んでいるホームレスという設定になっている、茶沢の家庭環境などが違います。
映画を先に見た自分としては、この設定変更はアリだと思っています。
冒頭、瓦礫だらけの街中を呆然とさまよう少年、住田。
まわりの風景、安定しないカメラワーク、茫然とする少年、このあたりが未曾有の震災がもたらした虚無感のようなものが表現されています。
そんな住田の夢は、「誰にも迷惑をかけずに生きる平凡な大人になること」。
実家の貸しボート屋を継いで、大儲けするわけでもなく、その日を暮らしていくことを思い描いています。
学校のシーンでは、担任の先生から、「夢を持て!」と叱咤激励されますが、どこ吹く風。
そんな住田に熱い目線を注いでいるのが、クラスメイトの茶沢だった。
彼女は、住田のつぶやくセリフを名言のように記録しており、彼に興味津々で近づいて行きます。
一見、天真爛漫に見える彼女も実は家庭に問題を抱えています。
平凡に生きる=夢、という構図が本作を通して貫かれているのですが、その根底には、監督自身も語っていたように、3.11の東日本大震災の影響がありありと考えられます。
突然の災害により、家も職も失ってしまった人たちにとって、それまでの日常が続いていくということが、どれほど幸せなことだったのかを考えると、心が痛みます。
慎ましく生きていこうとする住田にも突然の災難が降りかかります。
母親が行きずりの男と駆け落ちしてしまい、さらには父親が作った借金の返済を迫ってヤクザが家にやってきます。
そして、その元凶たる父親がふらっと家に帰ってきます。
この後、住田は自分の生きる理由、平凡さ、自分とは?という命題を自問しながら、街をさまようことになります。
一方、茶沢は、住田以上に住田を理解しており、彼の帰ってくる場所として機能します。
そして、ラスト。彼らの疾走はどこへ向かうのか・・・。
結論を言うと、本作はかなりの傑作だと思っています。
震災がもたらした虚無感、そこから生まれる凡庸さへのあこがれ、そしてそれすらもかなわない境遇と、それでも強く生きようという渇望。
これらのものががっつりと凝縮された濃厚な作品でした。
129分とやや長尺なのですが、全く飽きることがない、それどころか目を離す隙すらない映画でした。
先述したように主演の2人は、ヴェネツィア映画祭で新人俳優賞を受賞しているように、その演技は圧巻です。
圧倒的な絶望の中、自分も闇へと落ちて行くのを必至で抗う住田を演じる染谷将太もさることながら、同じ絶望にいながらも希望の光を失わない存在としての茶沢に扮する二階堂ふみがすごかった!
見た目は宮崎あおいになんとなく似ている彼女ですが、これからの化けっぷりにも期待です。
ストーリー、キャスト全てをひっくるめて、日本映画史に燦然と輝く作品になると思います。 |

