人工呼吸管理に関するブログ

自発呼吸とAPRVを中心に考えるブログです。

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呼吸管理と栄養管理

更新がしばらく空いてしまいました…。


ぼくは最近、院内のNST(栄養サポートチーム)の一員として活動をしています。本日のお話は、NST活動を通じて、その重要性を再認識している栄養管理についてです。

栄養管理は、他の全身管理に比べて華やかさに欠ける?ため、おろそかにされがちですが、非常に重要な全身管理の主軸です。
人工呼吸器を用いた呼吸管理や、循環管理で用いる体外循環、血液浄化…
これらの管理は非常に高価で、高額な医療機器が必要だったり、劇的な改善が得られたり…確かに華やかさ?があります。しかし、栄養管理は地味?ながら着実に、じわじわと効果が出てきます。

アルブミンが低ければアルブミン製剤を使えばいい…しかし、投与されたアルブミンはいずれ分解されてしまいます。低アルブミン血症に対するアルブミン製剤の投与は対症療法であって、低アルブミン血症になった原因を改善させなくてはならないのです。


呼吸管理と栄養管理の最近の話題として、ARDS・敗血症の際に特殊経腸栄養剤(オキシーパ)を使用することによって死亡率が改善することが示されています。昔から、呼吸不全の際には呼吸商を減らすために脂肪分が多い食事をとるとよいとされていますが、オキシーパは脂肪分をリッチに、炭水化物を少なめにし、二酸化炭素の産生が抑えられる組成になっています(呼吸商を考慮している)。また、ARDSでは水分を控えめにしたほうが人工呼吸器からの離脱が早いとの研究もあり、通常の経腸栄養剤に比べて濃縮されているのです。その他にも、急性期炎症の際には有害な可能性があるアルギニンを含まず、ω3系・ω6系の脂肪酸を含有する、などよくよく考えられた組成になっているのです。
ちなみに、先日の学会でオキシーパのプレゼンテーションにきたガイジンさんは、オキシーパの試飲し過ぎなのか、まるでハンプティー・ダンプティーのようでした…

それでは、うちのICUでの実際の栄養管理を紹介します。
気管挿管され人工呼吸管理を行っている人であれば、当日もしくは翌日にはGFOの投与が始まります。GFOは、グルタミン・食物繊維・オリゴ糖からなる栄養剤で、白湯100-150mLに溶かして投与します。GFOは腸管のメンテナンスとして非常に有用で、腸管に必要最低限の栄養素を提供することができます。そしてよほどの血圧低下などがなければ、翌日には経腸栄養が始まります。よく使われる経腸栄養剤として、一般的組成のエンシュア、濃縮製剤のエンシュアH、腎不全用のリーナレン(たんぱく制限ではリーナレンpro1.0、たんぱく付加にはリーナレンpro3.5)、耐糖能障害の方や脂肪付加をしたい人にはグルセルナ(慢性呼吸不全の方用にはプルモケアという製剤もありますが、当院ではこれで代用しています)、ARDS・重症敗血症の際には前述のオキシーパを用います。ここまではあると非常に有用で、その他にも個々の症例に応じて選択ができるようにいくつかの経腸栄養剤を取り揃えてあります。

例えば、COPDの急性増悪の患者さんでは、本人を説得のうえ入院同日(もしくは翌日)には経鼻胃管からの経腸栄養を始めます。急性期には、通常よりも栄養が必要にもかかわらず十分量の栄養が取れないからです。海外の積極的な施設では、早期にPEGを増設してしまうところもあるようです。


栄養管理は非常に安価ですみます。栄養ポンプは必須ですが、それを含めても安価でしょう。効果に即効性はありませんが、あとあとになってじわじわと効いてきます。早期経腸栄養を成功させるには多少のコツは必要です。可能な限り早期に、腸管がダメージを受ける前に始める。何らかのトラブルで一時中止となっても、あきらめずにトライする。腸管のメンテナンス(GFOやパントテン酸、腸管蠕動促進薬の使用など)や排便のコントロールは重要です。

ご興味を持っていただけましたでしょうか?
疾患ごとに、症例ごとに、栄養管理は個別に考えていくことが重要です。ASPENのガイドラインが参考になります(英語ですが…)。よかったら読んでみてください。

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僕はICUに勤務する看護師です。
とても参考になる内容で、見させていただいてます。
重症患者における早期からの経腸栄養はすごく興味があります。

鎮静して挿管、人工呼吸器管理中の患者さんには、
医師に相談しても、すぐに経腸栄養をはじめて
もらえないことが多いです。
何日かして、呼吸器が離脱できなくなってくると、
ようやくはじめてもらえます。

先生方は、経腸栄養を呼吸器管理中に行うことや、
鎮静している状態で行うことをためらっている印象でした。

それは陽圧換気や鎮静の影響で嘔吐したら困るということ
何でしょうか?

どう先生方に相談したら早期から経腸栄養が開始できるか、
何かいいアドバイスはありませんか?

2009/2/2(月) 午後 6:48 [ yusuke226 ] <<コメントに返信する

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ありがとうございます。
お返事が長くなってしまったので、こちらにお答えしました。
http://blogs.yahoo.co.jp/rikimaru1979/23280985.html

2009/2/3(火) 午後 6:53 [ rikiwaru ] <<コメントに返信する

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教えてくれませんか
経腸栄養剤を経鼻胃管で注入する場合
鎮静剤を注射器でなく栄養剤と混合して
使用することがありますか? 削除

2009/11/22(日) 午後 8:53 [ みゆき ] <<コメントに返信する

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口腔ケアや創部処置など、必要に応じて鎮静薬は微調整していくべきものです。何も侵襲を加えていない状態に対して、必要最低限の鎮静薬をベースラインとして流し、必要な時に適時追加投与をしていきます。
体内での薬物代謝動態が同じであれば、理論的には静脈内注射でも経腸投与でも変わりませんが、微調整のしやすさという点からは静脈内投与に軍配が上がります。
また、サーカディアンリズムをつける意味での睡眠薬の投与など、鎮静補助薬(抗不安薬や睡眠薬)の経腸投与はしばしば行うプラクティスです。

2009/11/22(日) 午後 11:11 [ rikiwaru ] <<コメントに返信する

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教えてもらってありがとうございます。
人工呼吸器を装着している患者の家族
なのですが現在 酸素濃度25%換気回数14
一回換気量400 SIMVモードで呼吸管理を
夜間鎮静剤使用の状態ですが、自発呼吸が弱いと担当医の見解です、入院40日目で肺炎は治癒して
他の臓器も特段悪くないとのこと。
このブログを見てオキシーバという経腸栄養剤
を知ったのですが、担当医に使ってもらうことは
できるのでしょうか? 削除

2009/11/24(火) 午後 0:52 [ みゆき ] <<コメントに返信する

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その病院その病院によって、採用している薬剤や経腸栄養剤は異なります。ですから、実際の診療に関しては担当の先生とよくご相談なさり、その先生のコンセプトに従って診療をしてもらうのが良いのだと思います。お伺いした状態は、ARDSの侵襲期は過ぎ、落ち着いた安定期だと思います。そのシチュエーションであれば、必ずしもオキシーパである必要はないと思います(オキシーパは高価ですし、ぼくであれば他の経腸栄養剤を使用すると思います)。体内のCO2産生量を抑えるためにも、呼吸商を抑えた、脂肪分のリッチな経腸栄養剤がベターです。CO2産生量が少なければ、自発呼吸への負荷が少なくて済むからです。
誠意をもってお返事をしているつもりではありますが、ブログでの発言に比べて、担当医の先生の決断ははるかに責任の重いものです。くれぐれもよくご相談ください。

2009/11/27(金) 午後 9:35 [ rikiwaru ] <<コメントに返信する

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ご返事ありがとうございます!
担当医の話では安定期に入っているとの説明です。
人工呼吸器装着当時は酸素状態は問題はないが
CO2が多いとのことでした。
ですがIVHを中止して経腸栄養に切り替えてから
改善したようです。
10日程前自発呼吸が弱いので人工呼吸器からの離脱は難しい
が源疾患が治癒したので転院してくださいとのこと。
現在、鎮静剤などが切れている時は咳きをすれば
痰が気管切開の入り口から飛び出てきますし。
気道内圧計が逆方向に触れますので本当に呼吸が弱いのかな?
と思う毎日です。
ですが夜間睡眠薬を飲んで寝てしまうとトリガーにかからなく
なってしまいます。?
現在の担当医は呼吸器の医師ではありませんのでウイーニング
には積極的ではないようです。
転院先の担当医に期待したいのですが、自発呼吸を強くするには
どのような方法があるのでしょうか?
自発呼吸の負担を軽くするにはどのような経腸栄養剤があるのでしょうか? 削除

2009/11/27(金) 午後 10:44 [ みゆき ] <<コメントに返信する

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人間は三大栄養素を燃焼させてエネルギーを作り出します。その時に、エネルギーと一緒に水と二酸化炭素が産生されます。同じカロリーでも、脂肪がもっとも二酸化炭素産生量が少なくてすみます。そのため脂肪分が多い食事では、患者さんが呼吸で排出しなくてはいけない二酸化炭素の総量が少なくて済むのです。この組成となっている経腸栄養剤にはARDS用のオキシーパや、慢性呼吸不全患者用のプルモケアなどがあります。糖尿病の患者さん用の経腸栄養剤(グルセルナなど)も、糖分が少ない組成のため、相対的に脂肪分が多くなっており代用することができます。
自発呼吸を増強?呼吸筋を強くする??には、呼吸リハ、鎮静薬の減量、キサンチン誘導体(テオフィリン製剤)の投与などが選択肢としてあげられますが、基本原則は「自発呼吸を温存し、呼吸筋委縮をさせない!!」です。

2009/11/28(土) 午後 6:39 [ rikiwaru ] <<コメントに返信する

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誠意のあるご返事に感激しました!
転院先の医師に相談したいと思います。
呼吸管理について詳しいスタッフのいる病院
はいいですよね。たまたま肺炎で入院し入院中に
急変したものですから、身動きとれない(病院を
選ぶ余地がなかった)状態でした!
病院に聞けば医師を含めて呼吸管理に詳しい人は
大変少ないとのことでした。

2009/11/28(土) 午後 9:18 [ hon*31*2*00 ] <<コメントに返信する

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人工呼吸器は生命維持管理装置です。おっしゃる通り、よほどの理由がない限り、患者さまの移動は行うべきではありません。転院や検査など、患者さまの移動に際しては、本当に必要かどうか、安易に行わずによく検討しなくてはなりません。
人工呼吸器は慣れたスタッフが、人工呼吸管理が得意な場所で行うことが好ましいです。ですが、日本の現状は決して満足のいくものではありません。人工呼吸管理の体系だった教育が十分になされているとは言えず、呼吸管理を得意とするコメディカルスタッフの数も足りません…。このブログにきてくれている方々を始め、熱心な医療従事者が数多く潜んでいることもわかりました。これだけ問題点が明らかになっていて、仲間もいて…未来が変えられないはずがありません。どうかこれからの日本の人工呼吸管理の行く末を温かく見守ってください。ちょっとずつかもしれませんが、必ず日本の未来を良くしてみせます。

2009/11/29(日) 午前 1:17 [ rikiwaru ] <<コメントに返信する

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お世話になって4ヶ月ぶりの投稿になります。
おかげさまで人工呼吸器装着して半年近くなりました。
現在、療養病床の空きベッド待ちの状態です。
主治医の説明では状態は安定しているとのことです。
二回程気道感染をおこしましたがなんとか乗り切りました。
意思疎通もとれ何とか元気で入院生活をしています。
ただ、まだ少し二酸化炭素が溜まり気味とのことです。
先日、気管切開口に計測器をあてて計ったら
一回の自発呼吸量が100ccから150ccとのことです。
本当は200〜250なければならないそうです。
現在に至るまで経腸栄養(鼻管)にエンシュアを使用
しているのですが、このブログを拝見してプルモケアが
良いようですが、担当医に相談できるものでしょうか?
どうかご返事をお願いします。
なんせ介護者が女の私一人なのでよろしくお願いします。 削除

2010/4/3(土) 午後 1:57 [ みゆき ] <<コメントに返信する

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お返事が遅くなりました。
発症半年の時点で人工呼吸器から離脱ができていないということは、一般的には離脱不可とされているということは知っておいてください。お話を聞く限り、予測換気量の約半分ということですので、ウィーニングにはかなりの困難が伴うと思われます。発症半年以降に離脱が成功した経験もありますが、あまり多くはありません。
エンシュアやメディエフは一般的経腸栄養剤に属し、とくにメディエフは日本人の標準栄養摂取基準に準拠して組成が考えられています。また、エンシュアは薬剤の扱いになるので、他の経腸栄養剤と異なり保険が効くため、患者さんのご家族への負担は軽くなります。プルモケアは、脂質が多く、呼吸商は小さいですが、高脂血症のリスクなどのリスクになります。人工呼吸器からの離脱を行わないのであれば、標準的組成のエンシュアの方が好ましいと考えられます。たとえば、(数ヵ月後に)もう一度人工呼吸器離脱を試みる際に使用してみるのがよいかもしれません。

2010/4/17(土) 午前 1:16 [ rikiwaru ] <<コメントに返信する

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ご返事ありがとうございました!
ウイーニングは発症1ヶ月目で一回試みただけでした
それ以降はやっていません。
あと酸素濃度が25%と30%とではCO2が貯留するタイプ
で、負担は変わらないですか?
なぜか、25%の設定の時のほうが血液中CO2が少なかった
ものですから。 削除

2010/4/17(土) 午後 10:17 [ みゆき ] <<コメントに返信する

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三日前に自発モードでウイーニングを試みましたが
夜間(軽い睡眠薬を投薬後)無呼吸状態になりアラーム
が鳴りっぱなしで医師が駆けつけ設定を元のSIMVに
戻しました。
翌日は調子が良くなかったのですが、今日は普段と
変わらない状態でした。
昨日から再びウイーニングにはいり
下記の条件で二日目となります。
SIMVモード
ボリューム 400
換気回数 6回
酸素濃度 30%
サポート 15
感度 3
SPO2 98〜99
自発モードをクリアするという
ことは難しいことでしょうね。 削除

2010/4/24(土) 午後 10:59 [ みゆき ] <<コメントに返信する

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お話を聞く限りでは、人工呼吸器離脱には困難・リスクを伴うと思います。人工呼吸器をつけている限り、無呼吸はさほど怖いものではありません。人工呼吸器には無呼吸になると強制換気に切り替えるというバックアップ機能があるからです。しかし、人工呼吸器離脱後の無呼吸はときに致命的となります。
無呼吸の時間がどのくらい続くのかにもよりますが、許容範囲内のCO2レベルで、pHが保たれているのであれば、無呼吸アラームを伸ばして対応することもあります。SIMVで強制換気の回数を減らしていくウィーニング方法は、離脱に関して有用性が少ないとする研究もありますが、他に方法がない患者さまもいます。基本的には、その施設ごとの慣れた方法で行うしかありません。

2010/4/27(火) 午前 11:02 [ rikiwaru ] <<コメントに返信する

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rik**aru197*様ご返事ありがとうございました!
現在の病院に転院して10日経ちました。
昨日から集中治療室(ウイーニングの為)に入室しました。
主治医の話では血液検査の結果が良ければ自発モードでの
ウイーニングを開始するとのことです。
転院時にCRPが5,0白血球は基準値ですが小さい丸い影があるとのことで抗生物質治療をしていました。
ご相談したいのは人工呼吸器装着のリスクについてですが
気道感染を何度か起こしていると抗生物質が効かなく
なるということ
また設定モードによってもリスクの大小はあるのでしょうか?
離脱後の無呼吸は致命的とのことをお聞きしまして、え!と
感じました!
離脱後の無呼吸はどのように監視するのでしょうか?
(私の思いつきでは、在宅療養の場合、リアルタイムの
オキシメーターで酸素濃度が低下した時アラームが鳴る
ような物がありますが)
また無呼吸状態にはどのように対処するのでしょうか?
よろしくお願いします。 削除

2010/4/30(金) 午前 8:16 [ みゆき ] <<コメントに返信する

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