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少し先の話題で申し訳ない。
しかも石神井と関係ないし…
毎年8月1日から一ヶ月間、東京は谷中の全生庵で円朝まつりがおこなわれる。
円朝とは江戸から明治にかけての落語家、三遊亭円朝のことで、まつりの間円朝の集めた幽霊画50幅あまりが虫干しを兼ねて公開される。
4、5年前に雑誌の企画で円朝まつりをプレ取材し、住職の許可を得て幽霊画を写真におさめさせてもらったことがある。
その時の話だ。
幽霊画はいずれも鬼気迫るもので、それらを一堂に展示した部屋はひんやりとした空気に包まれていた。
撮影を開始した最初の一幅。具体名はひかえるが男の幽霊を描いたものである。
カメラをかまえてシャッターを切るが、どうにもシャッターがおりない。
これまでも神社仏閣でカメラが違っても同じことがあったので、ボクは別にあわてない。
心の中で「どうか撮らせてください」と静かにお願いする。
この時素直な気持ちにならないとダメ。邪念があったら絶対にシャッターはおりない。
心静かに念じながら再びカメラを構え、幽霊画にめいっぱいズームした。
ファインダーの中には幽霊の顔がクローズアップで映っている。
その時である。
幽霊の右目がパチッとウインクしたのだ。
一瞬ギョッとしたが、すぐに嬉しくなり「ありがとうございます」とお礼を言いながらシャッターを切った。
カメラがパシャと鳴り、何事もなかったようにシャッターがおりた。
その後全ての幽霊画の前でお願いとお礼をくり返して撮影は無事終了した。
住職にお礼を言いつつ、幽霊画の素晴しさに感嘆をのべた。
最後に「夜中に音とかするんですか?」と尋ねたところ
「そりゃもうしょっちゅうですよ」と涼しげに笑っておられた。
実際、幽霊画を展示した部屋の雰囲気は独特で、単に恐いだけでなく背筋がピンと伸びる厳粛な空気に包まれている。
ボクたちは普段では味わうことのできない空気が体験できたことに満足しながら全生庵を後にした。
ただひとつ残念なことは、その雑誌の企画がボツになったことである。
そちらのお許しは出なかったのね。
トホホ
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