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新生児託す養子縁組「愛知方式」に注目(讀賣新聞)

新生児託す養子縁組「愛知方式」に注目
脱施設化「早いほど絆深まる」


 親が育てられない赤ちゃんを、「育てたい」という家庭へ生まれてすぐに橋渡しする「赤ちゃんの特別養子縁組」。生後2〜3年経てからの縁組が一般的な中、妊娠中から仲介の相談を始める愛知県の取り組みが注目されている。

 子どもにできるだけ早く家庭的な環境を与えることが必要だという認識が広がっているからだ。

 12月中旬、愛知県刈谷市の刈谷児童相談センターで開かれた「里親サロン」。血縁関係のない親子の交流会に参加した30代の女性が、縁組した子どもを抱いてあいさつすると、10組近い親子が拍手で祝福した。

 2歳の息子と参加した女性(42)も、新生児養子縁組で息子と出会った。子どもができず、養子縁組目的の里親として2年前、センターに登録。その数か月後、「実の親が育てられない子が、2か月後に生まれます。受け入れますか」と打診された。

 その子どもが生まれた翌日、産院の新生児室で息子と対面。感激し、涙がこぼれた。「この子が実の親のおなかにいた時から誕生を待っていたので、自分で産んだ子のような気がした。障害があっても、うちの子として育てようと夫と話していました」と振り返る。

 女性は病院に泊まって、母子同室で育児を学んだ。名前も夫婦で付けた。半年後、特別養子縁組を申請し、法的に実の親子になった。「祖父母にもかわいがられ、事情を知らない人から『パパそっくり』と言われる。一緒に暮らすと性格や癖も似てきます。縁組制度に心から感謝している」

 新生児の養子縁組を推進してきた同センター長の萬屋
よろずや
育子さんは、実の親が育てられない場合、育てたい人に赤ちゃんを早く託す意義を強調する。「子どもは幼い時ほどかかりっきりで愛し、世話をする人が必要だが、たくさんの子がいる施設では難しい。一方で不妊に悩む夫婦がおり、縁組が早いほど親子の絆が深まることを実感しています」

 愛知県の児童相談センターで新生児の縁組が始まったのは1982年。今は県内10か所のセンターで新生児の養子縁組を行い、28年間で縁組された子は131人に上る。

 毎年、全国で成立する特別養子縁組は約300件。ただ、ほかの都道府県では妊娠中から仲介するケースは珍しい。親が育てられない新生児は乳児院に入れられ、その多くは児童養護施設に移る。「後で縁組が破談になると困るので、障害の有無がはっきりする2〜3歳まで縁組の仲介はしない」と児相関係者は話す。

 萬屋さんは今秋、愛知の実践を日本子ども虐待防止学会や専門誌で報告。関心を集める背景には、新生児の虐待死が多いことがある。また、親が育てられない子を匿名で受け入れる「こうのとりのゆりかご(通称・赤ちゃんポスト)」を運営する慈恵病院(熊本市)が、望まない妊娠の相談を通じ106人を特別養子につないだ実績も影響している。

 養子里親制度に詳しい京都府立大教授の津崎哲雄さんは、「欧米では、子どもを守る福祉制度として養子縁組を行っている。乳幼児を施設に長く入れたままにするのは『国家のネグレクト(育児放棄)』だと、脱施設化と養育家庭の開拓を進めた。日本も児童福祉として特別養子を位置づけ、推進すべきです」と話す。(榊原智子)

 特別養子縁組 1988年に新設された制度で、「子どもの利益のため必要」と家庭裁判所が審判すれば成立。半年以上の試験養育期間、養子の年齢制限(原則6歳未満)、実親との法的関係の断絶など厳しい規定がある。当事者の届け出で成立する普通養子(15歳未満は家裁が許可)と異なる。児童相談所に縁組前提で仲介してもらう場合、里親登録をして委託を受ける。

児童相談所が橋渡し…誕生前から相談

 生まれて間もない子を、児童相談所が里親につなぐ愛知県。「愛知方式」とも呼ばれる特別養子縁組の取り組みは、どのように定着したのか。

 「愛知方式」が生まれたきっかけは、同県産婦人科医会が1976年から行った「赤ちゃん縁組無料相談」。妊娠したが育てられない女性の相談を受け、養子に迎えたい家庭にあっせんし、21年間で1255組の縁組が成立した。

 その間、「育てられない」という相談が約1603件、「育てたい」という申し出が2228件あった。同県の児童福祉司だった矢満田篤二さんが養子縁組のニーズを知り、児相で手がけ始めた。

 「乳児院や児童養護施設には、親が年1回も会いに来ない子が多くいた。愛情不足のまま育つと、社会で独り立ちするのが難しくなる。子どもの人権を優先すべきだと思いました」と矢満田さんは話す。

 現在、赤ちゃんを育てられないという相談は、各市町村の相談窓口、病院、学校などから児相に寄せられる。妊娠や出産に否定的だった相談者も、「本当に育てられない場合は、代わって育ててくれる人を児相が見つけます」と伝えて養子縁組の仕組みを話すと、表情が和らぐという。

 「子どもを捨てるのではなく、育ててくれる人に託す。それがあなたにできる最大の貢献だと話します。将来、出自を知りたくなった時のために子どもに手紙などを残すことも頼みます」と、刈谷児童相談センターの萬屋育子さん。

 同県では、縁組までの手順をマニュアルにまとめ、混乱を防ぐ工夫に力を入れている。その一つが、実の親に育てたい気持ちが生じたら、縁組をやめ、育児支援をすること。養子を迎える側にも、性別や障害の有無などは選べないなど、親としての覚悟を求める。

 「養子と里親を考える会」理事長で、中央大教授(法学)の鈴木博人さんは「4万人近い子が施設におり、退所年齢の18歳までいる子も多い。特別養子縁組を促進するため、欧米各国のように養子縁組をあっせんする法律も早急に整備する必要がある」と話す。

 厚生労働省家庭福祉課長の高橋俊之さんも「親が育てられないとわかっている場合は、特別養子縁組を進めた方がいい。来年作成する里親委託ガイドラインには『愛知方式』も取り入れたい」と話す。

◇  ◇  ◇  ◇
 赤ちゃんを特別養子に迎える夫婦に「親となる覚悟」を確認する際のポイント

 ▽養子縁組成立前に、生みの親から子どもを引き取りたいと申し出があった場合、話し合いに応じる。

 ▽子どもの性別を選ばず、実親側の妊娠経過にどのような事情があっても問わない。

 ▽赤ちゃんに重度の慢性疾患や障害などがあった場合でも親となる覚悟をする。

 ▽養子に迎えた子には、生みの親と別れた経緯を知る権利があることを理解し、将来、適切な時期に真実を告知する。

 (萬屋さんの話をもとに作成)

(2010年12月21日 読売新聞)

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