略史:海上自衛隊護衛艦部隊その10
第3次防衛力整備計画の護衛艦:前編原子力潜水艦の時代に入り艦船搭載ヘリコプターによる対潜哨戒の必要性はますます高まってきました。その7で書きましたように海上自衛隊は基準排水量10000トン、ヘリコプター18機を搭載するヘリコプター母艦(CVH)の建造を何とか実現しようと1次防や2次防で努力していました。しかし財政難や海上防衛に対する理解の低さ、そして技術的問題など難問山積で建造の見込みは立ちませんでした。ところが1960年代半ばになると、減揺装置や着艦拘束装置の実用化などにより5000トンクラス以下の艦船でもヘリコプターの運用が可能となりました。そこで対潜ヘリコプター3機を搭載する護衛艦(DDH)2隻の建造を3次防で計画しました。これが「はるな」型です。 DDHはどう戦うか3次防における海上自衛隊のDDH運用構想はどのようなものだったでしょうか?フネは同じでもその運用構想は現在とはまったく違うので以下に概述します。当時の水上艦船の対潜哨戒はアクティブソナーによって行われていました。これはチンドン屋と同じで、探信音を「ピーン、ピーン」と打ち鳴らしながら航行しているわけですから、潜水艦側にいち早く察知されてしまいます。水中速力の高い原子力潜水艦であれば、魚雷攻撃をやめていち早く避退してしまいます。 これではダメなので、水上部隊の周囲に対潜ヘリコプターを配し、吊り下げ型のパッシブソナーで逃げようとする潜水艦の航走音を捉えて攻撃します。 この対潜掃討作戦に必要な対潜ヘリの機数は6機(4機+予備機2機)とされ、1個護衛隊群に2隻のDDHを配備する計画が立案されました。 新型防空艦の建造1960年度(昭和35年度)計画の「あまつかぜ」以来、護衛隊群の防空を担当するミサイル護衛艦(DDG)の建造は見送られてきました。もちろん海上自衛隊も洋上防空の必要性は認識していましたが、「当面の脅威は潜水艦」とされました。このため2次防では乏しい予算で護衛艦の隻数を揃えるため、高価なDDGの建造は見送られ、対潜能力重視の護衛艦が建造されてきました。しかし1967年10月、第3次中東戦争においてエジプト海軍のミサイル艇がイスラエル海軍の駆逐艦「エイラート」をソ連製の艦対艦ミサイル(SSM)で撃沈するという事件が起きました(エイラート事件)。ソ連海軍が対艦ミサイルの開発配備に力を入れているのは、かねてから西側にも知られていましたが、重大な脅威とは見なされていませんでした。しかしこの事件を契機に洋上防空の必要性が叫ばれるようになりました。 こうなると海上自衛隊もいつまでもミサイル護衛艦の建造を先送りにするわけには行きません。3次防では「あまつかぜ」に続く新型ミサイルDDGの建造が盛り込まれる事になりました。これが「たちかぜ」型です。 DEの大量建造1971年(昭和46年)2月、護衛艦隊に第4護衛隊群が新編されました。これにより護衛艦隊は遠海防衛担当の第1、第2護衛隊群と近海防衛担当の第3、第4護衛隊群の4個護衛隊群体制となりました。このため近海防衛部隊用のDEがさらに必要となりました。また1960年代半ばになると地方隊において沿岸防備を担当していた米海軍貸与の護衛艦、通称パトロールフリゲート(PF)が退役の時期を迎えるようになりました。 これらを見越して3次防では新型のDEの建造が計画されました。一定の隻数が必要なため、建造費を抑制しながら、原潜時代に対応するために「やまぐも」型に準じた対潜能力に的を絞った設計となりました。これが「ちくご」型です。 以下、3次防期間内の一般世相と海上自衛隊の歩みです。(色付きは海上自衛隊関係)1967年(昭和42年) 2月:初の建国記念日、全国で革新勢力が抗議行動。第2次佐藤内閣成立 3月:2次防艦・DD「たかつき」竣工 4月:東京に革新知事誕生 6月:遠洋航海(北米西・東岸方面、艦艇4隻派遣) 第3次中東戦争。中国、水爆実験に成功 8月:ASEAN結成。2次防艦・DD「あさぐも」竣工 11月:伊勢湾で観艦式(参加艦艇43隻、参加航空機75機、観閲艦「たかつき」) 第2次佐藤改造内閣成立 1968年(昭和43年) 1月:米海軍原子力空母「エンタープライズ」が佐世保に入港、反対闘争激化。 3月:2次防艦・DD「きくづき」竣工 4月:キング牧師暗殺。霞ヶ関ビル完成 5月:十勝沖地震 6月:小笠原返還。遠洋航海(北米・南米西岸方面、艦艇4隻派遣) 7月:対潜飛行艇PS-1領収開始 8月:2次防艦・DD「みねぐも」竣工 札幌医大で日本初の心臓移植 10月:国際反戦デーで新宿騒擾事件 11月:東京湾で観艦式(参加艦艇44隻、参加航空機47機、観閲艦「たかつき」) 米大統領選、ニクソン当選 12月:アポロ8号が月周回飛行に成功。東京府中市で3億円事件 1969年(昭和44年) 1月:東大安田講堂占拠事件、来年度の入試中止。劇画「ゴルゴ13」連載開始 3月:2次防艦・DD「もちづき」竣工。中ソ国境紛争 4月:2次防艦・DD「なつぐも」竣工 7月:アポロ11号が人類初の月面着陸に成功 遠洋航海(オセアニア・東南アジア方面、艦艇4隻派遣) 11月:初の練習艦「かとり」竣工 10月:海洋業務隊(後の海洋業務群)新編。初の海洋観測艦「あかし」竣工 TBSが「8時だヨ!全員集合」放送開始 11月:大阪湾で観艦式(参加艦艇50隻、参加航空機51機、観閲艦「きくづき」) 初の訓練支援艦「あづま」竣工 1970年(昭和45年) 1月:第3次佐藤内閣成立 2月:国産初の人工衛星「おおすみ」打ち上げ 3月:よど号ハイジャック事件。大阪で日本万国博覧会開幕 2月:2次防艦・DD「ながつき」竣工 6月:日米安全保障条約自動延長 7月:遠洋航海(世界一周、艦艇2隻派遣、「かとり」初派遣) 3次防艦・DE「ちくご」竣工 10月:初の防衛白書「日本の防衛」発表 11月:相模湾で観艦式(参加艦艇45隻、参加航空機48機、観閲艦「もちづき」) 作家の三島由紀夫が陸上自衛隊・市ヶ谷駐屯地で自決。 1971年(昭和46年) 1月:初の涙滴型潜水艦「うずしお」竣工 2月:第4護衛隊群新編 4月:揚陸艦を艦種呼称を輸送艦へ変更 5月:3次防艦・DE「あやせ」竣工 群馬県連続女性殺人事件で容疑者大久保清を逮捕 6月:沖縄返還協定調印。拙ブログ管理人SAC誕生 遠洋航海(北米・南米方面、艦艇2隻派遣) 7月:米中国交回復。第3次佐藤改造内閣成立。環境庁発足。銀座にマクドナルド国内1号店開店 岩手県雫石上空で航空自衛隊機と全日空機が衝突、全日空機の乗員乗客162名死亡 8月:ニクソン・ドルショック。3次防艦・DE「みくま」竣工 9月:成田空港反対闘争激化、警官3名死亡、230名余りを逮捕。日清カップヌードル発売 初の機雷敷設艦「そうや」竣工 10月:中国国連復帰。日本テレビが「ルパン三世」放送開始 11月:佐世保沖で観艦式(参加艦艇45隻、参加航空機59機、観閲艦「きくづき」)。 青函トンネル着工。東北・上越新幹線着工 (つづく) |






