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安徳天皇漂海記

 気になりつつ1冊も読めていなかった宇月原晴明氏の作品。“山本周五郎賞受賞フェア”とかで書店にコーナーができていたのを横目で見ながら通り過ぎたが、お知り合いの愛書家の方々が注目されている作家氏だと知り、翌日再訪した。

 壇ノ浦の戦いで源氏の軍勢に追い詰められ、祖母・二位の尼に「浪のしたにも都のさぶらふぞ」と諭されて入水したわずか8歳の幼帝・安徳天皇の悲劇は、琵琶法師の語る『平家物語』でも特に有名なくだりである。彼の遺骸は、神剣とともについにあがることはなかったと言われる。
 その幼帝が、巨大な琥珀のようなもののなかに封じられた姿で、眠ったように息づいて20年余りを永らえていた・・・という話である。ながらく幼帝を守護してきた、怪しい術を使う“天竺の冠者”(実は平家の落人)がいよいよ策に窮し頼った相手は、なんと敵の末裔である征夷大将軍・源実朝であった。幼くして将軍とまつりあげられ、その実政治の実権は叔父・北条義時に握られ、武士たちから軽んぜられる空しさを歌の道に打ち込むことで紛らわせてきたと言われる実朝の真の姿は、深謀遠慮を抱いた策士であったのだ。

 歴史学というものが苦手である。というより、歴史を研究する意義が正直な話認められない。勝者によって記録された文字に、どれだけの“真実”があるものなのか。起きた事象は一つなのに、見るものの解釈によってその意味は捻じ曲げられていく。捻じ曲がった結果から元の姿を取り戻そうとしても、そこにはただ「解釈」があるだけだ。

 そんなわけで、歴史について書かれたものを読むときは、所詮フィクションと割り切っておくことにしている。本書などはそういう読み方に慣れた立場からしたら、非常に嬉しい作品である。どうせフィクションなら興奮できるもののほうが良いし、辻褄が合うように史実を思い切り大胆に切り貼りしたほうが楽しめるのだ。もしかしたらこういうことが事実だったかもしれないじゃない?と言ったら不敬だとお怒りになる方々には、そういう楽しみは理解されないだろうけれども。

 本書は第1部“源実朝篇”、第2部“マルコ・ポーロ篇”である、第1部の語り口や場面の描写、的を射た歌の引用などに魅了されたのだが、話が中国大陸に渡ってからの第2部には私としてはそれほど凄みを感じなくなってしまった。自分自身の知識不足のせいなら申し訳ないが、おそらく作者は日本的な情緒を表現されるほうをより得意にされておられるのではないかと思う。

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冴さんも読まれたんですね^^。これは、冴さん的には○だったってことですよね。この話は源平の時代が舞台みたいですが、いままでの作品は戦国時代を舞台にした作品ばかりでした。ぼくはデビュー作以外を読んだのですが、概ね好感触でした^^。作品違いですが、ぼくもTBさせてくださいね。

2006/6/29(木) 午前 6:51 beck

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「実朝の真の姿は、深謀遠慮を抱いた策士」という部分にとても惹かれます。(策士なんて格好いい!!)先日「平家物語」を読む機会があって、あまりの面白さに興奮してしまったので、この作品もチェックしておかなくては。

2006/6/29(木) 午前 10:46 ang*1jp

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りあむさん(内緒コメントへ)>TBありがとうございました。やはりそんなふうに思われましたか。そちらの件も楽しみに行方を見守りたいと思います。

2006/6/29(木) 午後 2:34 冴

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>beckさん。「○だった」は正しくその通りです。付け加えるなら、第1部だけなら☆でも良いです。でも通算では○になります(あぁまた辛口)。TBありがとうございました。『太閤の錬金窟』もbeckさんの記事を見て買ってあるんですよ。

2006/6/29(木) 午後 2:38 冴

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>あんごさん。高校の時の試験で「安徳天皇入水」の件が出題されたことを唐突に思い出しました。もうそれ以来読んでいないかもしれません。当時は受験科目でもないのにあえて勉強するほどに古典が好きだったのですが。

2006/6/29(木) 午後 2:40 冴

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この作者、beckさんもりあむさんも、かなり高得点だったので気になってるんですよ。冴さんの書評も楽しめたようで、やはり読むことにします^^;

2006/6/30(金) 午前 1:39 しろねこ

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しろねこさんにも楽しんでいただけるのではないかと思います。第1部は☆です←くどい(笑)。読まれたらまたご感想を伺わせて下さい。

2006/6/30(金) 午後 1:48 冴

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『安徳天皇漂海記』山本周五郎賞受賞作!

『安徳天皇漂海記』(宇月原晴明/中央公論新社) もともとは私の好きなファンタジーノベル大賞でデビューした作家であるが、 どうもこの作家は"イロモノ"的なうさん臭いイメージが強くて敬遠していた。 今回も山本周五郎賞を受賞しなければ手に取ることはなかっただろう。

2006/6/28(水) 午後 11:37 [ 朝から晩まで本を読んでいたい ]

宇月原晴明「黎明に叛くもの」

正月に読んだ「聚楽 太閤の錬金窟」がことの他よかったので、本書を読んでみた。 尚、その時の記事はこちら→http://blogs.yahoo.co.jp/sayuppe02/22887796.html で、「聚楽 太閤の錬金窟」が風太郎の「妖説太閤記」へのオマージュだったのにたいして、本作は司 馬遼太郎

2006/6/29(木) 午前 6:53 [ 読書の愉楽 ]

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