『盤上の敵』(著)北村 薫 1999年9月 講談社
出版社/著者からの内容紹介 我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされた。警察とワイドショーのカメラに包囲され、「公然の密室」と化したマイホーム!末永純一は妻を無事に救出するため、警察を出し抜き犯人と交渉を始める。はたして純一は犯人に王手(チェックメイト)をかけることができるのか? 誰もが驚く北村マジック!!「円紫シリーズ」以来の北村薫フアンを自負する私ですが、この『盤上の敵』は読んでいなかった。殺人もあり暗い話だと聞いていたので敬遠していたのですが、amazon読書レビューで評判が良かったのを見て読んだ次第です。 題名の盤上とはチェスのゲームなんですね、目次全てが序盤、中盤、最終盤、黒のキング、白のキング、白のクイーンの動き云々と洒落た構成になっています。 本を読み終わって強烈な印象が残ったのは、妻の友貴子が回想する中学、高校生時代に兵頭三季という少女にいじめを受けた話ですね。単なるいじめでなく、一人の人間の存在自体を否定し葬さろうとする悪魔的なまでの執拗にして不条理な行為ですね。トイレでのドアを利用した指詰めのリンチ、夕闇の中でのどぶへの突き落とし、愛犬殺しとその場面は背筋が凍りつくほどの嫌悪感を感じました。陰惨な場面が女性の口から著者独特のソフトにして上品な文体で綴られるだけにより切ないものがありました。 主人公の末永純一が活躍する本体の妻救出劇の方は確かにスリリングな味わい十分ですが、それほどのミステリーのフアンでない私にとっては肝心のドンデン返しのトリックも作りめいた替え玉トリックに見えて驚嘆するほどのものではありませんでした。 まあ、最後の最後の場面で純一・友貴子夫婦共演の活躍で正義が勝ったと言うことで気持ちがスカッとしたのは良かったですな。 まあ、北村作品に出てくる女性が好きな私としては余りにも友貴子の部分に偏した読み方をしたかもしれませんね。
北村作品と言えば上品な文体と博識ある蘊蓄に味わいがありますが、中国の故事を基にしたセクハラ・ジェンダー談議や夫との馴れ初めの書店でのレジでのミニミステリーとか交際中の二人の長々したしりとり遊びの話とかの場面にウイットに富んだ北村ワールドがありました。 相変わらず女性の心の機微を描くのは北村氏は上手だなと思いました。 それにしても中盤であれほどの暗い話を織りこんだのでしょうか。最後の結末の「正義は勝つ」のカタルシスの壮快感を高めるための仕掛けだったのでしょうか。 |

