(都道府県知事・政令市長あて環境事務次官通知)
水質汚濁防止法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)は、平成元年六月二八日に公布され、同年一〇月一日から施行される。
また、水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成元年政令第二三三号)並びに水質汚濁防止法施行規則の一部を改正する総理府令(平成元年総理府令第四七号)及び水質汚濁防止法施行規則第六条の二に基づき環境庁長官が定める検定方法(以下「告示」という。)がそれぞれ平成元年七月二八日、八月二一日に公布され、いずれも改正法の施行の日から施行される。
本改正法は、有害物質による地下水汚染の未然防止及び有害物質の流出事故による環境汚染の拡大の防止を図るため、有害物質を含む汚水等の地下浸透規制、地下水の水質の監視測定、事故時の措置等に関する規定を整備するものであるが、貴職におかれては、左記事項に留意の上、改正法の施行に遺憾なきを期されたい。
以上、命により通達する。
第一 改正法制定の趣旨
地下水は、我が国の水使用量の約六分の一、都市用水の約三分の一を占め、水道を通じて全国約三、〇〇〇万人分に相当する飲料水となっているなど、身近にある貴重な水資源として広く活用されているほか、災害時等緊急時の水資源としても重要である。
しかしながら、近年、トリクロロエチレン等の有機塩素化合物による広範な地下水の汚染が明らかとなっているが、地下水は、いったん汚染されるとその回復が困難なため、汚染の未然防止を図ることが何よりも重要である。また、有害物質の流出事故時における環境汚染の拡大の防止を図ることも重要な課題となっている。
本改正法は、こうした状況に鑑み、有害物質による地下水汚染の未然防止及び有害物質の流出事故による環境汚染の拡大の防止を図るため、有害物質を含む汚水等の地下への浸透を禁止する等の措置を定めるとともに、地下水の水質の監視測定体制の整備、事故時の措置等に関して必要な措置を講ずるための規定を整備することとしたものである。
第二 目的規定の改正
今回の法改正により、水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号。以下「法」という。)の目的として、「工場及び事業場から地下に浸透する水の浸透を規制すること等によって地下水の水質の汚濁の防止を図ること」が加えられた(法第一条)。
改正前の法は、その目的として、「工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出を規制すること等によって公共用水域の水質の汚濁の防止を図ること」を主な内容としていたが、改正法では、地下水汚染の未然防止を図るための規定が格段に整備されたことから、法の目的として、「地下水の水質の汚濁の防止を図ること」を明記することとされたものである。
改正法において「地下水」とは、社会通念上「地下に存在する水」をいい、通常、自然の状態として地下に存在する水をいう。このため、地下水に該当しない例としては、下水道法(昭和三三年法律第七九号)上の下水道施設内の水がある。
また、「浸透」とは、改正前の法第一九条の「しみ込み」と同義であり、「自己の管理の及ばない部分に出すこと(本法上の「排出」のこと)」のうち、「地下へ出すもの」をいい、加圧注入によるものも含む。なお、浸透は排出の一形態であるから、従来の排出の考え方と同様意図的なものによるか、非意図的なものによるかを問うものではない。
第三 地下浸透規制の対象
法第一二条による排水規制の対象となる水は、特定事業場から公共用水域に排出される水(法に規定する「排出水」)すべてであるが、法第一二条の三による地下浸透規制の対象となる水は、「特定地下浸透水」であり、特定事業場から地下に浸透する水すべてをいうものではない。
このため、改正法において、地下浸透規制の対象となる「特定地下浸透水」を「法第二条第二項第一号に規定する物質(以下「有害物質」という。)を、その施設において製造し、使用し、又は処理する特定施設(以下「有害物質使用特定施設」という。)を設置する特定事業場(以下「有害物質使用特定事業場」という。)から地下に浸透する水で有害物質使用特定施設に係る汚水等(これを処理したものを含む。)を含むものをいう。」と定義したものである(法第二条第五項)。
また、有害物質使用特定施設は、水質汚濁防止法施行令(昭和四六年政令第一八八号。以下「令」という。別表第一に掲げる施設のうち、有害物質の製造、使用又は処理を目的とする特定施設のことをいい、個別の特定施設ごとに判断されることとなる。ここにおいて、「製造」とは、当該特定施設において、有害物質を製品として製造することをいい、「使用」とは、当該特定施設において、有害物質をその施設の目的に沿って原料、触媒等として使用することをいい、「処理」とは、当該特定施設において、有害物質又は有害物質を含む水を処理することを目的として有害物質を分解又は除去することをいう。このため、有害物質使用特定施設に該当しない例としては、令別表第一第七三号に掲げる下水道終末処理施設、令別表第一第七二号に掲げる屎尿処理施設がある。
また、「汚水等」とは、改正前の法第五条第六号に規定する「汚水等」と同義であり、「特定施設から排出される汚水又は廃液」をいう(法第二条第四項)。
第四 特定地下浸透水の浸透の制限
有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)は、有害物質を含むものとして総理府令で定める要件に該当する特定地下浸透水を浸透させてはならない(法第一二条の三)。
本規定は、改正前の法第一四条第五項の規定の趣旨を継承するものである。具体的には、有害物質を含む特定地下浸透水の地下への浸透を禁止することとするものである。この場合、「浸透」とは、意図的な地下への浸透行為によるもののほか、非意図的な原因による地下への浸透も含まれる。
非意図的な原因による地下への浸透の例としては、排水管の破損による汚水等の漏出による地下浸透、事業場床面、排水処理施設のひび割れによる汚水等の地下への浸透等がある。なお、有害物質使用特定施設からの汚水等を素掘の汚水ます、沈澱池等へ貯水する場合は、汚水等が通常自然の状態として地下に浸透することから意図的な特定地下浸透水の地下への浸透となる。
「有害物質を含むものとしての要件」とは、有害物質の種類ごとに環境庁長官が定める方法により特定地下浸透水の有害物質による汚染状態を検定した場合において、当該有害物質が検出されることをいい(水質汚濁防止法施行規則(昭和四六年総理府・通商産業省令第二号。以下「規則」という。)第六条の二)、具体的には告示で検定方法が定められ、「検出」の判断基準値が示されている。
本規定を遵守すべき者は、法第五条第二項の届出義務を有する者に限られるものではない。改正前の法第一四条第五項の「排出水を排出する者」だけでなく、下水道に水を排除する者を含め、有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)すべてをいう。すなわち、有害物質使用特定事業場の設置者が水を公共用水域に排出しているか、下水道へ排除しているか、地下へ浸透させているかを問わず、すべて本規定を遵守する必要がある。
なお、本規定の違反については、法第一二条の違反と異なり、直ちには罰則は科されないが、第五から第七までの措置によりその実効性が担保されるものである。
第五 特定施設設置前の措置
(一) 有害物質使用特定施設の設置の届出
工場又は事業場から有害物質使用特定施設に係る汚水等(これを処理したものを含む。)を含む水を地下に浸透させる者は、有害物質使用特定施設を設置しようとするときは、所要の事項を都道府県知事(法第二八条第一項に基づき事務の委任を受けた市の長を含む。第九の(二)を除き、以下同じ。)に届け出なければならない(法第五条第二項)。
本規定は、有害物質を含む水の地下浸透を禁止する規定の実効性を担保するものであり、公共用水域に水を排出する者が特定施設を設置しようとする場合と同様有害物質使用特定施設に係る汚水等(これを処理したものを含む。)を含む水を地下に浸透させる者について、当該施設の設置に関し、事前届出制を設けるものである。
届出(法第六条第一項による届出を含む。)を要する者は、意図的に地下に浸透させる者に限られている点に留意されたい。
届出事項は、法第五条第二項に定める八事項についてであり、同条同項第八号に規定する事項としては、特定地下浸透水に係る用水及び排水の系統が定められている(規則第三条第二項)。
特定地下浸透水を地下へ浸透させ、かつ、公共用水域にも水を排出する者にあつては、本規定及び法第五条第一項による届出の義務が生じる。この場合、記載内容が重複する届出事項にあつては、事業者にとって過重な負担とならないよう配慮し、図面等提出物は共通のものを使用して差し支えない。規則様式第一、様式第二、様式第三及び様式第四については、この趣旨を踏まえ様式変更したものである。
(二) 計画変更命令等
都道府県知事は、法第五条又は第七条の規定による届出があつた場合において、特定地下浸透水が有害物質を含むものとして総理府令で定める要件に該当すると認めるときは、その届出を受理した日から六〇日以内に限り、その届出をした者に対し、その届出に係る特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは汚水等の処理の方法に関する計画の変更(法第七条の規定による届出に係る計画の廃止を含む。)又は法第五条の規定による届出に係る特定施設の設置に関する計画の廃止を命ずることができる(法第八条)。(「有害物質を含むものとしての要件」については第四を参照のこと。)
本規定は、有害物質を含む水の地下浸透を禁止する規定の実効性を担保するためのものである。
本規定の客体となる者は、法第五条又は第七条の届出をした者であるので、法第五条第一項の届出をした者についても、審査において、有害物質を含む水が地下へ浸透すると認めるときは、計画変更命令等を行うことができる。
地下水の水質浄化の措置命令
特定施設を設置する工場・事業場が、有害物質を含む水を地下へ浸透させたことにより、健康被害の恐れが生じたときは、都道府県知事は相当の期限を定めて、地下水の水質の浄化のための措置をとることを事業者に命令することができる(水質汚濁防止法第14条の3)。この命令を「地下水の水質浄化の措置命令」と呼ぶ。
この地下水の水質浄化の措置命令は、平成8年の水質汚濁防止法の改正により新設された制度であり、平成9年4月1日から施行されている。
http://www.re-words.net/description/0000000889.html
転載元:
水.土壌.心の汚染や、アジア太平洋の歴史を現場で考え真実を伝える
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