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またまた更新が遅れてしまいました。いろいろと考えることが多々あって、作業がなかなか進みません。

前回までの流れでは、仏教で言うところの『彼岸』というもの、古代インドの世界認識における『須弥山の岸』である、と指摘しました。

その根拠としては、世界の中心車軸としての絶対者ブラフマンと世界の中心車軸としての須弥山の重なり、そして最古層のパーリ経典においてブッダもしくは解脱した聖者をバラモン(ブラフマナ)つまりブラフマンに至った者、と表現している事などを挙げておきました。

今回は、この彼岸が須弥山の岸であるという仮説の、もうひとつ最も重要な根拠を挙げたいと思います

テーラワーダ諸国の伝統的な修行システムであるヴィパッサナー瞑想において、瞑想の深まりゆくプロセスを層状の階梯を上がっていくイメージで捉えている事は、このブログの読者であれば多くの方がご存じかと思います。

その階層構造が『何処に』設定されているか思い出してみてくださいそれは件の須弥山上空に想定されてはいませんか?


イメージ 1
瞑想階梯は須弥山上空に想定された。★要拡大参照

瞑想修行の深まりが、何故須弥山上空を上がっていくイメージで把握されたのか。

これは何よりも、瞑想の実践と須弥山の世界観が密接に関わりを持っている証左だと考えられます

瞑想を深め一定レベルの境地に至った者は、人間世界から神々の住む須弥山上空の天界に赴き、さらにその天上界の層状世界を一段また一段と上がっていく。

瞑想の深まり須弥山上空現象する。そこには『車軸世界』の階梯を登っていくという世界認識が明確に表れています。

ただし、ここで言う車軸世界とは単なる棒状の車軸ではありません。ここがインド人のめんどくさい所なのですが、彼らは車軸世界にも『輪層構造』を想定していました。

イメージ 2
世界の車軸もまた輪層構造として把握された。
平面図なので分かりにくいが、
車軸の層も周辺世界も全て円輪の重なりである。


最古代の輪軸世界観であるリグ・ヴェーダの時点では、世界は至高なる神を一本の車軸とし、それによって分かち支えられる大地の車輪と天の車輪が想定されていた。その後その間に広がる空(そら)の世界として空界が加えられ、いわゆる三界が成立しました。

車軸なる神は、偉大な一本の柱であり、これがやがてアタルヴァ・ヴェーダにおける万有の支柱スカンバとしての絶対者ブラフマンへと収斂していきます。

けれど本来多神教であったヴェーダの宗教においては、絶対者ブラフマンを想定しつつなお諸々の神々を捨て去ることはできなかった。非人格的な絶対者と人格神群との折り合いをなんとか付けなければならない。

リグ・ヴェーダにおいて天地を分かち支えたインドラや諸神は、絶対者ブラフマンにその至高性の地位を譲って退いたけれど、なお神々としての偉大性を失った訳ではないからです。

そこで一本の聖なる車軸が二構造に分けて把握されるようになった。これを
簡単にイメージすると、以下のようになります。

ちょっと太めの串を想像してみてください。ちょうどフランクフルトに刺さっているような長めのやつです。この棒を車軸なる絶対者ブラフマンに見立てます。

そしてこの棒に五円玉を通して行きます。机の上に立てた棒に五円玉を一枚通しそれを下まで落とす。机の上に五円玉を置き、その穴に棒を立てた形になります。そしてもう一枚の五円玉を棒の先端にはめて落ちないように支えておく。すると棒を車軸とし二枚の五円玉を両輪とした輪軸を、直立させた形になります。

これが最初期の輪軸世界観です。上端の五円玉が天界であり、下端の五円玉が地上界です。比率的に天地両輪は五円玉などよりもはるかに巨大だとも思いますがしかし、車軸たる神の偉大さを考えれば、この喩えもさほどおかしくはないはずです。

本来上位の神々は、その至高性強調される時には棒の方に喩えられ、その他の諸神や天体(太陽や月など)が天の車輪に住まうと考えられた。インドラも一般的に天界もしくは天上界の車輪に住まうのだけれども、その本質は車輪の中心にある『不可視の車軸』だった訳です。

そのただひとつの車軸としてのアイデンティティが絶対者ブラフマンに奪われた時、インドラ達は車軸から追い出しをくらってしまった。けれど彼らが背負っている車軸としての伝統観念は強固にあった。

そこで妥協案として車軸に二の構造を想定したわけです。

先ほどの机の上に直立させた串に五円玉を何枚も何枚も通して行きます。やがてたくさんの五円玉が重なってそれが串の高さと同じになった時、そこには何が現れるでしょうか。

それは五円玉の直径を太さとした新たな柱で。その五円玉の柱にドーナツを通して机の上に落し込みます。そしてもう一つのドーナツを五円玉柱の上端にはめて支えると、先ほどの天地輪軸の世界が再現されている事に気づくでしょう。

所が今回は、世界の柱である棒は、実は車輪であった五円玉の重なりとして把握できます。そして柱の中心のいわば『真柱』として、『串』が五円玉を貫いている訳です。

どうも私の説明が下手なもので、わかっていただけるかどうか心もとないのですが、この真柱こそが、絶対者ブラフマンであり、五円玉柱の上層の五円玉こそが、インドラ達の住まう天の車輪に相当す事になります。

かつて至高であったインドラなどの主要諸天は、世界の柱としての属性を保ちつつ、同時に天の車輪である天上界の住人として表されたのです。

車輪世界に住まう者はしょせん『輪廻の内にある』者です。だからいわゆる天(デーヴァ=諸神)は永遠不滅ではない。転変し輪廻し、苦の中に生きる者です。

一方で絶対者ブラフマン、永遠不滅の、車軸の中の不動の車軸、『真柱』として完全に輪廻の外にある』と考えられた。この苦なる車輪世界から、永遠不滅なる車軸実在への解脱こそが、彼岸へと渡るという事の最終的なゴールになりました。

ただし、ブッダの時代、一般にそこまで厳密にブラフマンと諸神が弁別されていたかは疑問です。何しろブラフマンでさえ人格神化して梵天になってしまうのですから。特に在家者の俗的信仰においては、論理は錯綜していたはずです。

けれど逆にブラフマンが人格神化して梵天になれる、という事が、この二重性の根拠とも言えるかも知れません。

一方で、真の求道者はもちろん、真実在たるブラフマンの真柱に至る事を目指した。恐らくこれら五円玉柱とその核心にある真柱、その両者を合わせて象徴する世界の中心として須弥山が想定され、その岸辺が彼岸として望まれたのではないでしょうか。

そこには三重の構造が見受けられます。最外最下層の大地のドーナツ車輪が、私たちが住まう日常的な現象世界です。これは須弥山世界観では金輪の海(大地)に相当します。一方、
天のドーナツには月日々が巡り、下層諸天や精霊など住まう。

そして人間界から見れば十分に高貴な五円玉柱の神々の世界がある。しかしそれも実態は輪層をした車輪世界、すなわち輪廻に拘束された世界に過ぎません。

真の解脱とはブラフマンの永遠不滅なる真柱、車軸の中の車軸に至る事だった。ウパニシャッドの哲人をはじめ全ての求道者はそこを目指した。けれど、在家の人々にとっては神々の五円玉柱に至るだけでも十分に満足だったのでしょう。

さてこのような三重の世界構造ですが、実はこれが私たちの身体の中にも存在する、そう古代インド人は考えていた節が濃厚にあります

私たちの身体をCTか何かで『輪切り』にしてみましょう。ドーナツ車輪として『肉身』があり、五円玉柱として脊柱があり、真柱の串として『脊髄』がある。そう見ることも可能ではないでしょうか。脊柱の椎骨の重なりは、そのまま五円玉の層状構造と重なり合います。

そして、体内というミクロ・コスモスのこのような輪層構造を前提にして初めて、瞑想階梯が須弥山上空に想定されるなどという事が、『実践的に』可能になります。

瞑想とは脳神経システムの生理的な活性変動である、という事を古代インド人は明晰に把握していました。もちろん、脳神経システムなどという概念やその明確な機能の弁別はなかったでしょう。

けれど、心とは、そしてそれ味わうところの『経験』とは、何か身体の中でエネルギーを伴って生起する現象であるという事を『体感』していた。そして、
ミクロ・コスモスの内部で生起する『瞑想経験』が、同時にマクロ・コスモスである須弥山世界における『上昇』に照応しているとも考えていた。

これは例えて言えば、エヴァンゲリオンと操縦者・碇シンジの関係に似ているかも知れません。エヴァの体内でシンジが右手を動かせば、モーション・キャプチャのようにその動きは完全にコピーされてエヴァの右手の動きとなる。

内なる小さな身体と外なる大いなる身体が、完全に照応している訳です。

須弥山世界観の背後には、コスミック・マンとしての『プルシャの身体』が想定されていた事を思い出してください。上に掲載した画像を見れば明らかなように、この世界とは偉大なるひとつの『身体』でした

だからこそ、瞑想の深まりは車軸たる須弥山の上空において階層世界を上昇するという形で把握されたのではないか。そのように考えられるのです

今回の説明は、私の表現力のつたなさもあり、大変わかりにくいかもしれません。けれど、ここを理解できるかどうかが、ブッダの瞑想法の作用機序を明確に把握できるか否かのいわば境界線になっている、そう思われます。

なんとか論理とイメージの力を駆使して、了解していただけるといいのですが。


この記事は、ブロガー版 脳と心とブッダの悟り と連動しています。
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