日々のこと

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君が見えなくなるまで・・・

夕方6時をすこし過ぎた時間。
駅からの帰り道、歩道を歩いていると、自転車に乗った少年が向こうからやってきた。
年の頃は小学校中学年、といったところ。
その小さな体には幾分大きすぎるように見える自転車にまたがり、
虫取りの網を片手に挟み、
ハンドルを必要以上に右左に振りながら、急いだ様子でペダルを漕いでいる。

少年の背後から、声がする。
「ばいばーい!」

声のする方を見やると、少し太った少年がメガホンのように口に手を当てて叫んでいた。
「ナントカ君、ばいばーい!!」

自転車に乗っていた少年は、私の目前でスピードを緩め、後ろを振り向きながら、叫び返す。
「ばいばーい!」

ペダルは漕いだまま、首だけを後ろへ曲げて、ヨロヨロしながら叫んでいる。

叫び終わるとまた、当たり前に自転車を漕ぎだした。
私の横を通り過ぎたとき、また声がする。
「ばいばーい!!ナントカ君、ばいばーい!!」

自転車の少年は、また自転車を漕ぎながら中途半端にではあるが振り返り、叫び返す。
「ばいばーい!」

太っちょ君がすぐに叫ぶ。「ばいばい!!」
自転車君が応える。「ばいばい!!」

自転車はどんどん遠ざかる。太っちょ君は又もや叫ぶ。
「ばいばーい!」

・・・。返事がない。
太っちょ君の声が大きくなる。「ばいばーーーーーーいいいいい!!」
「・・・ばいばーい・・・」小さな返事が聞こえる。

自転車はもはや見えなくなった。太っちょ君は、なおも叫ぶ。
「ばいばーーーーーーーーーーーーーーーいいいいいいいいい!!!」
今度こそ返事がない。「ばーーーいばーーーーーーいいいいいいいい!!!!」
叫びながら、見えない相手に虫取りの網をブンブンと振ってバイバイをしている。

私は「まるで今生の別れのようだ」と笑いを堪えていたが、
太っちょ君の横を通り過ぎたときに見た彼の表情が、あまりにも真面目だったので、
感動してしまった。

思い返せば、私も子供のころ、同じように友達を見送っていた。
学校からの帰り道、友達と別れるところで毎日感じた、少しの寂しさ。
遊びの時間が制限いっぱいになり、「もう帰らなくちゃ」という友達を、
いつまでも引き留めておきたい寂しさ。

制限時間の6時いっぱいまで遊び、「まだ、もう少し遊んでいたい」という誘惑を断ち切って
急いで自転車を漕いで帰ってゆく友達。
今日のメインイベントはもう終わったんだ、という現実を、
力ずくで自分に言い聞かせていた太っちょ君が、私にはキラキラと輝いて見えました。

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