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                ・掲載日 H19/12/29
                ・改訂1:H20/1/5(原文を3つ挿入)
・改訂2:H20/1/23(ホッブスの報復権挿入)



1 はじめに 

       
宮崎哲弥氏がとある雑誌で慶応大学法学部の駒村圭吾教授の論考を紹介していた。
「報復の原理」についての論考だ。(SAPIO:07・12・12号:21世紀の死刑大研究より)


2 駒村氏の理論

駒村氏は死刑制度の存置を論拠づけるために以下のような論理をうちたてた。
駒村氏は死刑制度を「被害者および被害者遺族の報復権を国家が代行するシステム」
と。
しかしここで疑問が生ずる。「報復権」とは何だろうか。


3報復権と社会契約

駒村氏はまず自然権(人間が国家成立以前に持っていた自由)のなかに「報復権」が含まれることを認める。ようするに報復権とは、相手から不正に権利を侵害された場合、同質・同量の不正を相手に加えることができるとする権利だ。

 しかし、報復権は国家の成立によって、個々人から奪われてしまう。
「*万人の万人に対する闘争」「暴力の連鎖」という状態から脱却するために、暗黙の裡(うち)に社会契約が結ばれたと説明される。その代わり、国の方は個人の報復権を代理で履行する義務を負ったと解するのである。

*参照カテゴリ;ホッブス

 そして駒村氏は結論づける。
「したがって、死刑は、国家が、報復権を本人になりかわり、適正かつ安全に代行する制度であるといえる。」



4コメント
 ,呂犬瓩
わたしは、宮崎氏が引用した、ルソーの社会契約論にあたってみた。第2編第5章に「生と死について」で死刑について述べている。解説をつけて以下。


顱法崚治者が市民に向かって「おまえの死ぬことが役にたつのだ」というとき、市民はしなねばならぬ。なぜならこの条件によってのみ彼は今日まで安全に生きてきたのであり、また彼の生命はたんに自然のめぐみだけではもはなく、国家からの条件つきの贈物なのだから」*参考図書:社会契約論:岩波文庫P54


「犯罪人に課せられる死刑もほとんど同じ観点の下に考察されうる。刺客の犠牲にならないためにこそ、われわれは刺客になった場合には死刑になることを承諾しているのだ。」

*参考図書:社会契約論:岩波文庫P54ー55

(解説)
つまりルソーは、本来より早く死ぬ運命にあった命を永らえたのは国家のおかげである。だから、それに報いるために「必要あらば」死ななければならない。このように「死刑」を導き出す。



社会的権利を侵害する悪人は、すべて、その犯罪ゆえに、祖国への反逆者、裏切者となるのだ。彼は、法を犯すことによって、祖国の一員であることをやめ、さらに祖国にたいして戦争をすることにさえなる。
だから、国家と保存の彼の保存とは、両立し得ないものとなる」

「彼は・・追放によって切り離されるか・・死によって切りはなされるか、されなければならない。」社会契約論:岩波文庫P55

(解説)
「社会契約を破ったものは国家の反逆者(敵)となる。反逆者と国家の自己保存は両立しない。だから彼を殺す。これは、彼を市民としてではなく敵として殺す。
宣告された彼は、追放、或いは死によって制裁が与えられる。



それから、ルソーはこのようにも言う。


「・・・刑罰が多いことは、つねに、政府が弱いか、怠けているかのしるしである。なにかのことに役に立つようにできないほどの悪人は決していない。生かしておくだけでも危険だという人を別とすれば、みせしめのためにも殺したりする権利を、誰も持たない」
   *社会契約論:岩波文庫P55-56より
(解説)
犯罪者の多さは「政府の怠惰」に原因がある。だから、「生来犯罪者」というもの以外、役にたたない人間(犯罪者)はいない。(つまり更正を認めている)


△泙箸
ルソーの死刑論をまとめる。

国民は条件付の命であるから「必要」あらば国家に命を捧げねばならない。その「必要」にあたる場合が、「契約違反者」だ。
しかし、彼等の中で、死刑に値するものは「生来の凶悪犯罪者」のみであり、「その他」は有用に再利用すべき。
「その他」の犯罪者は政府の「怠惰」によって生まれたにすぎない。



私見 

顱縫襯宗爾陵論を現代に

ルソーは死刑制度を求めた理由は国の事情にあった。「敵」の概念からもわかるように、国内法の適用されないものを「死」で対応していた。というか、「死」以外対応できなかった。だから、‥時の現状、と契約違反者、がそろうと「敵」には「死」が当然に与えられた。

 現代社会にルソーの理論をあてはめるには慎重に適応させなければならない。現代社会では「敵」なる存在がいないことからも分かるように、すくなからず誤差が生じるからだ。

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現在の死刑制度を考える場合、ルソーの時代よりも犯罪予防の技術は向上した。犯罪の予防線は限りなくわれわれに接近し、その恩恵にわれわれは授かっている。

このような状態で、仮に犯罪が発生した場合、

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こうした国家の責任増大は、国民の積み重ねた努力と功績に由来していた。


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国民の長い苦悩と努力の結果、現代社会には、一律死刑としなくともよい犯罪予防の手段が無数に生まれた。
一方、司法整備が遅れてしまった。
この社会の発展と司法整備の遅れを無視して、

‘「死刑」こそ現代の犯罪予防の最前線だ‘

と言っているのが現代の日本だ。これはルソーの言葉を無視している。
ルソーのいう「政府の怠惰」をだ。



堯棒府の怠惰の克服

国の怠惰のため発生した凶悪犯人を、現代社会の能力を駆使して、有意義な方向へと矯正させること、これがルソーがいった「政府の怠惰」の「克服」である。

「死刑制度」そのものは古い時代につくられた「敵」と「生来の犯罪者(と現時点考えられるもの)」に対する罰則であり、さきに説明したように現代社会ではなじまない。

)結論
 わたしは、ルソー(駒村氏)が言う「報復権」がルソーの時代の制約が生んだものであり、先に説明したように、現代社会ではあてはまらないと考える。「社会の発展」と「政府の怠惰」を見過ごして人を殺すことはルソーの理論に反するからだ。
時代錯誤の報復権を現代にあてはめ国家が報復権を代理行使してしまうと、これは適正な法の執行にあたらない。

 よって、駒村氏の死刑存置論は条件付きで間違っているといえる。(時代が古ければ適合)


いよいよ、わたしは死刑制度の廃止が間近に迫っているように思えた。



参考:
ホッブスのレバイアサンにおいても条件付で報復権を認める箇所がある。以下。

*トマス・ホッブス:レヴァイアサンより

「コモンウエルスの設立前にはすべてのものに権利を持ち、また自分を維持するのに必要と思われるすべてのことを行う権利を持っていた。その目的にためには他人を服従させ傷つけ殺す権利があったのである。すなわち、これこそがコモンウエスルが行使している処罰の根底である。
すなわち、国民が主権者に処罰の権利を与えたのではない。
国民はただち彼等の権利を放棄することによって主権者が国民全体の維持のために適当と考えたところにしたがってみずからの権利を行使することを強化したのである。
したがって処罰権は彼に与えられたものではなく彼に、しかも彼だけに残されたものである。
そして(自然法によって彼に定められた制限を除けば)それは、まったくの自然状態、各人がその隣人にたいする戦争状態におけるのと同じようにそっくりそのまま残されているのである。」
(*世界の名著23 第28章:処罰と報酬についてP319より)

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訪問ありがとうございます。
記事を読ませていただきました。古くから決まっていたことが現代になって通用しないということは上記の論拠に限らずあると思います。そのためには何年、何十年ごとにチェックしていくことが大切ではないでしょうか。先日国連では死刑廃止を求める決議が採択されました。「廃止」への動きは高まっているのかもしれませんね。

2007/12/31(月) 午前 2:27 [ ハッチ ] 返信する

はじめまして、私が疑問に思ったのは、報復権の代行を認めてしまえば、報復権を行使する主体が個人から国家に移っただけで、結局、間に国家機関を介した万人の万人に対する闘争状態となり、本質は変わらないのではないかと思うのです。それは社会契約の目的と矛盾するのではないでしょうか。

2008/1/10(木) 午後 7:31 [ hiro ] 返信する

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コメントありがとうございます。

恐らくferunanndo777様は国が「報復権」を濫用することを危惧されているのだと思いますが、ここでの論点はあくまで駒村氏が「死刑存置の理由付けを自然権(報復権)から導き出した」という点です。
なお報復権の乱用は原則「*国家設立の経緯」から、まず行われることはありません。(例外は立憲主義が崩れたとき)
(*自然状態では個人の権利が常に脅かされるため各々は自然権を譲渡(放棄)し国家を設立しました。ですから国家には全体の自然権保護のため厳格な規律が課せられます:リヴァイアサン要約)

2008/1/10(木) 午後 9:20 [ sat**ukurod*wi* ] 返信する

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