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1 はじめに

昨今、刑罰制度に関連した議論の活発さが目立つ。とくに終身刑創設に関する報道が多く見受けられる。裁判員制度が09年5月に迫るなか国民への配慮から、或いは凶悪犯罪をメディアが執拗に取り上げ世論を加熱させ厳罰化への動きが高まったというのも働いて、また廃止派の様々の思惑も絡んで終身刑創設への潮流が出来上がったのかもしれない。
ともかく動きだした終身刑創設への政界の動向を考察するまえに、まず従来あった日本の「無期刑」について、また、ある一定年数を経れば釈放されうる「仮釈放制度」、刑免除の効果もある「恩赦」について、再度検討していこうと思う。終身刑の可否を論じる前に従前の制度について再考しその問題点を暗に浮き上がらせた後これからの終身刑の存否を論じてゆこうと道筋を立てた次第である。


2 日本の無期刑とは

〔鬼刑

現行刑法上、無期懲役は死刑に次ぐ重い刑罰として位置付けられている。
しかし、現行の無期刑は十年間服役すれば仮出獄(*仮釈放については後記)できることになってある。仮出獄中は「保護観察」に付せられ、この間に再犯などあれば仮出獄が取り消されることがあるが、無事に経過すれば生涯を社会で過ごすことができる。(*恩赦については後記)仮出獄条件としての服役期間は次第に長くなっているが、ほぼ例外なく仮出獄が認められているので、現行の無期刑は、実質において「十年以上の有期刑」であるといえよう。このように、無期刑は「無期」という用語とは裏腹に、高い蓋然性を持って社会復帰がなされうる刑であるといえる。(参考:産経新聞朝刊 2004/05/12:土本氏)

仮釈放とは? (参考 ウィキ 終身刑)

(顱鵬昭疂
無期刑囚は10年服役後、仮釈放できると先に述べた。現在平均25年(朝日新聞08 6/5では30年)で仮釈放されているのが実情である。諸外国でも刑の言い渡しは日本と比較ならぬものであっても実際は仮釈放の存在によって実質は社会への復帰がなされている。
仮釈放申請は受刑者本人ではなく矯正施設長(刑務所所長)が申請し法務省地方更正保護委員会がその申請を受け許否を決定することとなる。
仮釈放が認められた囚人は終身保護観察で「恩赦」がなされれば刑は終了、犯罪をおこせば刑務所に戻るということになる。(かような刑を相対的終身刑と呼ぶ)(*ちなみに少年法51条は18歳未満が死刑相当なときは無期刑科す旨規定している。無期刑の場合は10年以上15年以下の有期定期刑科す旨規定している。同2条:ただし「できる」であり、無期刑科すことも可。ちなみに1項者には適用なし)

(髻鵬昭疂を受けている人はどのくらいいるのか?
毎年50人以上が1980年まで仮釈放許可を受けている。
2004年以前の、5年間では年平均「8,8人」と減少する傾向にある。(例2000年、在所40年以上17人、在所50年以上2人、仮釈放なしのまま死を向かえる者も毎年数人いる(04年犯罪白書より)


2玄呂箸蓮その実績

国家的慶弔時に行政権が刑罰権の一部ないし全部を消滅・減殺する制度を「恩赦」と呼称している。恩赦事体その意義がまったくないとはいえないのだが刑事司法の視点からはかなり問題のある制度でもあると位置づけられていることにも注目すべきであろう。恩赦には細かくは
\令の定める犯罪を犯した者全体に刑罰権を消滅させる大赦
特定の有罪を言い渡された者に対し、その言い渡しの効力を失わせる特赦
8嵯
し困亮更圓量判
シ困慮世づ呂靴砲茲辰銅困辰浸餝福Ω⇒を回復させる復権
がある。
(参考:刑法総論講義第3版:前田雅英P494より)

かように多様な効果を持つ恩赦ではなるが、事実どれほどの人が恩赦をうけているのだろうか。
戦後に恩赦された者は「86人」いる。しかし1960年実施を最後に恩赦された者はいない。
政令恩赦による減刑も00年10月3日政府答弁によると1953年サンフランシスコ平和条約発効に伴う恩赦以後行われていないとされている。
つまり、戦後1960年以後、一切恩赦は行われていないことになる。仮釈放されて身体的拘束はなくなった無期刑の元囚人たちは法律上刑は依然存続しているということだ。無期刑の囚人について命の続く限り刑から逃れ得ぬという態度を日本国はとっていることになる。

まとめ

1960年以降日本という国は無期刑囚人の法律的拘束を終生解くことはしなかったのだが、「仮釈放」が無期刑に処されたものたちに未来の仮出獄というある種の希望を与えて、彼等なりの目的をもって刑期を過ごせる役割を担っていることは事実であって、仮釈放が人権を尊重した配慮をおこない続けていたことをまず我々は心に留めておかなければならない。
しかし、今回の終身刑導入の動きによって、人権への配慮という安定が崩れ掛ろうとしている。


3 提言

1 現在の日本の動き

法務省内では一部の野党議員の意見が終身刑創設だと捉えてたむきがあったが、与党議員が今回中心になった動きへと発展したため無視もできなくなって、刑罰の根幹にかかわる問題を政治家任せにできないとの考えにもなって法務省も重い腰をあげ終身刑について真剣に向き合うようになった。

終身刑そのものの問題は大いにある。仮釈放のない刑に囚人は如何に希望を見出せばいいのか。自暴自棄になり自殺、暴動が起こることが容易に想像できよう。
かような終身刑の孕む問題にいち早く気づきながらも死刑廃止派等が終身刑の動きを止めぬのは、死刑廃止するためのオプションとして絶対的終身刑をつかっている隠れた動機があるからだ。廃止派には手段として終身刑を推進せざるを得ない両刀論法(ジレンマ)があった。
(参考:朝日新聞朝刊 08 6/5)

厳罰化への動き、手段として終身刑をつかうなどの動きに各々は拘泥することなく、秋の臨時国会法案提出までに、もっと、終身刑の議論を活発に行っていただきたい。
そこで、厳罰化を望むものと、廃止派の両者の意向を汲んだ提言が土元氏がなさっていたので、紹介してみようと思う。非常に人道的な素案であり、是非とも政府の方々に参考にしてもらたい。以下、産経新聞掲載の氏の言葉を抜粋する。

土本武司 (英国を参考に制度新設を)
―身刑には大きな問題がある

矯正当局は無期刑囚にも「社会復帰を目指しての改善更生を処遇理念としている」
・・・が、社会復帰の可能性が皆無の終身刑囚に対しては処遇理念を持ち得ない。
他方、受刑者も社会復帰が絶望的であれば「自暴自棄的」になり「人格破壊」をもたらしかねない。

提言
私(土本氏)は執行停止については、停止後再開された場合の受刑者の心情を考慮して反対するとともに、次のように考える。
イギリスの「終身タリフ」に範をとった制度の新設を提言する。
すなわち仮出獄が予定されていない無期刑を言い渡し、一定期間(二十五年)経過後に無期刑の見直しをするという制度である。
 この制度においては終生服役させるのが「原則」であり、見直し・仮出獄は例外的・二次的である点が仮出獄を原則視する無期刑とは異なる。
(参考:2004/05/12 産経新聞朝刊)

4 コメント

土元氏は、08年5月放送の「たかじんのそこまでいって委員会」なるバラエティー番組では立場として国民の大多数である死刑存置の立場を支持することがよい、とはっきりとした自身のとる立場の言明を回避していたけれど、上記記事でもわかるように絶対的終身刑については「絶海の孤島に囚人を閉じ込める」以外に賛成はしないとほぼ同じ内容を言っておられた。たしかに、絶対的終身刑を導入した場合に刑務官はなにを処遇理念にするか、ただの目的なき永続した「管理」に徹するのか、囚人の精神状態についても仮釈放のない希望なき拘束に問題はないのか、と危惧するのは当然であろう。私もまったく賛成である。
土元氏の終身タリフに近い制度の導入も団藤氏の恩赦の可能性を含めた終身刑(参考#死刑廃止1)、共に意味合いにおいては同じであろう。細かい制度設計についても、まだまだ議論の余地はある。ともかく方向性としては、かような方向が望ましいと私は固く信じている。
無期刑囚の仮釈放後の生活を見守ってきた保護観察業務を担う神戸保護観察の(元)所長栗村典男氏が昨今の死刑求刑、死刑判決理由にみられる「更正可能性が認められない」に苦言を呈していた。
理性と情緒性の精神的機能のうち、情緒性を「愛」と「憎」に分類するならば、憎のみを採用してしまったのが昨今の判決ではなかろうか。
(参考:08 6/4 、朝日新聞)
元保護観察所長の言葉にもあるように、一切の更正可能性を排除した冷酷な判決を人間が恣意的に行う「死刑」もさることながら、「終身刑」についても慎重に我々は取り扱わなければならない。
我々が進むべき尊い道の先に、恩赦可能性を残した終身刑、日本版終身タリフ、共にあることを私は強く願う。

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