弘文院セミナー報告⑤ 『古社寺修理紀行』4 ─吉備津神社─神殿を抱く社殿─

 

 以前、岡山にある吉備津神社本殿の漆塗をさせていただきました。本殿は国宝であります。

本殿の内部の構造ですが、中心に三間社流造の神殿があり、内々陣、内陣、中陣・・・とまるでピラミッドのように中心に向かう姿は、まるで社殿自体が神殿を抱いているようにみえます。

 

 吉備津神社の「津」という語源は「〜の」という意味です。ですので、吉備津神社は「吉備の神社」ということです。

 

 修理の前に宮司さんが私どもに仰いました。

「このほど、国からの補助を初めて受け、修理することになりました。」

 

宮司さんのこのお言葉から吉備津神社の歴史を考えました。

吉備の国はかつて巨大な国でした。それが、大和政権によって吉備四国といわれ、備前、備中、備後、美作の四つの国にわけられ、後に吉備津神社は備中一国の一ノ宮ということになりますが、そのことを不満に思い宮司さんは言われているのでしょう。

 

 そうした歴史を持つ吉備津神社が、国の補助を受けるということに不承不承ながら、並々ならぬ今回の修理への決意と思いがあったのだということを察しました。

 

 さて、この吉備津神社外回りは、屋根まわりの破風だけが赤く漆で塗られ、他は白木となっています。これは天台宗との習合にみられる特徴です。また、内部は漆や丹で赤く塗られていました。

 

 ちなみに、臨済宗の開祖で、お茶の木を日本に伝えたとされる栄西禅師(1141年〜1215年)は、吉備津神社の神官の出身と伝わっています。

栄西禅師は中国に留学された折、寺の造営で材木不足に困ってられた北宋の徽宗皇帝に

「日本に帰ったら材木を送ります。」

と約束して帰られました。

 

そして、下関に修禅寺という山深いお寺がありますが、そこの材木を栄西は徽宗皇帝に送りました。

栄西は徽宗皇帝よりその功績をたたえられ、大師号をいただいております。

 

「千光大師」

 

それが栄西禅師に送られた大師号で、日本において中国よりこの大師号をいただいた方は栄西禅師、ただお一人だけです。




ご拝読ありがとうございました。

○今回ご紹介した神社
(吉備津神社 鎮座地:岡山県岡山市北区吉備津931 交通:JR吉備線吉備津駅下車徒歩5分 

 ○古社修復については当社のHPも是非ご参考になさってください。
  さわの道玄HP http://www.sawanodogen.com

 ○ブログに関するお問い合わせはこちらまでお願いいたします。
  さわの道玄E−mail : sawanodougen@ace.odn.ne.jp
 
次回は、「筑紫の大神さん─大己貴神社について」をご紹介します。



 

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丹後の徐福伝説─ 『古社修理紀行』③─弘文院セミナー報告④
 
 京都の北の丹後半島の突端に、新井崎神社という古社がございます。
この神社にある石の狛犬を40代の頃(昭和60年代)に修理させていただきました。
狛犬は、日本海から吹く潮風で、随分と風化しておりました。
 
 新井崎神社は、常駐の神職さんがいらっしゃらず、地元の区長さんをはじめ、住民の方々が守ってきた神社で、狛犬修理は区長さんからの依頼でした。
 
 毎回わたくしは修理のたびにご祭神を尋ねておりましたが、区長さんにお聞きしたところ 
「ご祭神は徐福です。」
とのこと。
 
 徐福とは、中国の秦朝(紀元前3世紀頃)に生きたとされる人物で、歴史書である司馬遷の『史記』によると、秦の始皇帝に東方に不老不死の霊薬があると進言し、東方に薬を求め旅した人物とされています。
 
 徐福が旅した東方の「瀛州(えいしゅう)」とは日本ではないかといわれています。
 
 地元の方が大切にまもっている新井崎神社、またその地方には「カラヨモギ」といわれる薬草になるヨモギが自生していると聞きました。
 『竹取物語』にもでてくる「蓬莱」には「ヨモギ」の意味もあるらしく、そういった古い言い伝えを聞きながらの修理でした。
 
 また、その神社には神職が常駐していませんでしたので、お宮参りをされる方に、どうぞ一緒に参加してほしいと依頼いただき、お相伴させていただいたりもしました。
 
 余談になりますが、新井崎神社の名にある「ニイ」とは、民俗学者の柳田国男氏によれば「根」を挿す言葉であり、「根」とは「ふるさと」を思わせられ、ここにも何か意味があるのかな・・・などと思いました。
 新井崎もそうですが、日本各地にある地名、越後の新津、岡山の新見、愛媛の新居浜なども同じく「ニイ」にちなんだ、何か望郷の念を抱くような名前なのかとも想像しています。 


ご拝読ありがとうございました。


○今回ご紹介した神社
(新井崎神社 鎮座地:京都府与謝郡伊根町新井 交通:北近畿タンゴ鉄道 天橋立駅→丹海バス大原下車徒歩 伊根町観光協会HP http://ine-kankou.jp/kankou/sightseeing/000165.php 

 ○古社修復については当社のHPも是非ご参考になさってください。
  さわの道玄HP http://www.sawanodogen.com

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  さわの道玄E−mail : sawanodougen@ace.odn.ne.jp
 
次回は、「吉備津神社─神殿を抱く社殿」を紹介させていただきます。



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『古社修理紀行』2─下鴨(賀茂御祖神社) 賀茂社式年遷宮について─弘文院セミナー報告③

京都の三大祭の一つ、
葵祭で有名な京都の下鴨神社は、正式名称は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)といい

その起源は平安京遷都以前と古いものです。


 桓武天皇が平安京遷都のため行幸されてより以来、皇室とのつながりが強くなり、「賀茂皇大神宮」とも呼ばれていたそうです。

 「皇大神宮」という名称は、日本では伊勢神宮と下鴨神社だけに使われていました。

 

 伊勢神宮のように、日本の中にはいくつか式年遷宮を行っている神社がありますが、この下鴨神社も21年ごとに式年遷宮をおこなっております。

 

 来年の平成27年がその年にあたり、私どもは21年前の平成6年と今年の、二度に渡って本殿の漆塗をさせていただきました。

 

 本殿は2棟あり、どちらも建築的にいえば「流造(ながれづくり)」といいます。


 建物の周りに縁があり、欄干あり、階(きざはし)があります。そしてその部分だけが朱漆で塗られております。

 

 さて、何故この箇所だけが塗られているのか・・・。

 

 滋賀県坂本にあります、山王信仰で有名な日吉大社、東西本宮も同じ塗り方でした。

 

 先の「海神社」のところ(前回ブログ記事参照)でお話しましたように、これは神仏習合の跡であり、天台宗との関係を示唆するものと私は考えております。

 天台宗と古来習合していた神社さんは、社殿全体ではなく、高欄や木階など一部分だけ赤く塗るような傾向が見られます。

 

 桓武天皇と関わりが深かった下鴨神社。さらに桓武天皇は天台宗の開祖である最澄を庇護したことでも有名です。

 

 毎年5月15日の葵祭、「葵祭」という名称は江戸時代以降で、それまでは「賀茂祭(かものまつり)」もしくは単に「祭」と呼ばれていました。

 

 葵祭に先立って、下鴨神社では「御蔭祭(みかげまつり)」が行われます。この御影祭は比叡山山麓の八瀬にある御蔭神社より神霊を向かえる神事です。

 

余談ですが、御蔭祭の「みかげ」とは、日陰のことであり、「ひかげ」は「ひかか」、つまり日が輝いているということです。「ヒカゲノカズラ」という古事記や万葉集にもでてくる植物がありますが、あの「ヒカゲ」も同じで、「日が輝いている」ということです。


その神事において行列の装束にフタバアオイの葉をつける。このフタバアオイを振るのは、神の御託を受けることを意味します。

 

 下鴨神社の本殿の塗り方にも天台宗との習合の跡がみられ、歴史を語っているようです。

 

ご拝読ありがとうございました。


次回は新井崎神社(京都府与謝郡) ─丹後の徐福伝説 をご紹介いたします。


○今回ご紹介した神社
(下鴨神社 鎮座地:京都市左京区下鴨泉川町59 交通:京阪出町柳より徒歩12分)
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初夏の弘文院セミナー報告②『古社修理紀行』1─山奥にある「海神社」─
 

 海神社(カイジンジャ)は奈良県宇多郡室生村という山村にある神社です。

近くには春の石楠花が有名で、女人高野とも呼ばれている室生寺があります。私が当時30歳頃、(昭和50年頃)に本殿修復でお世話になりました。

 天井裏にムササビが住む社務所に寝泊りしながらの塗装作業。その折々に宮司さんと様々な語らいをいたしました。

 

「何故、こんな山奥に海神社があるのか?」

 

 参拝の方によくそのように聞かれる宮司さんの疑問。調べてほしいと宮司さんよりの御話。本殿を赤く塗りながら様々なことを調べました。

 

 この神社の近くには、洞窟がお社の龍穴神社があり、そこから神様が勧請されたのが神社の起源です。

 明治時代までは別名「善女龍王社」と呼ばれていましたが、明治の廃仏毀釈により「海神社」と改名されたのです。


 「善女龍王」

 

「善女龍王」というのは仏法的な性格を持っております。廃仏毀釈までは、この神社さんは神仏習合的な神様をおまつりしていたのです。

 

現在のご祭神は「豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)」であり、明治時代の廃仏毀釈の折に、龍にちなむ女神様ということで、御祭神を豊玉姫命となさったのでしょう。昔、龍は海に住んでいると考えられていました。

 

 その折に「海神神社」とせず「海神社」と改名された。

 これが、この山奥に「海神社」がある謎解きです。

 

 ちなみに海神は「綿津見(わたつみ)」と呼ばれ、湟咋(みぞくひ)ともいわれます。

余談になりますが、「わた」は「海」の古語、「つ」は格助詞で「〜の」という意味です。「み」は「日」であり、神霊の意味で「わたつみ」は「海の神霊」という意味になります。

 

海神の反対が、山神。山神は「山?(やまつみ)」、山咋(やまぐひ)ともいいます。


瀬戸内海、大三島の有名な大山?神社は山神をおまつりした神社さんということです。京都の松尾大社、滋賀の日吉大社も大山咋をおまつりしています。

 
 

 話しを海神社さんに戻します。


海神社の近くにある室生寺は真言宗であり、こちらの海神社は真言宗との習合ということになります。本殿は真っ赤に塗られている。

 

長年仕事をしていて、社が何故塗られるのか、ということをずっと考えてまいりましたが、これは神仏習合の跡だと私は考えております。

古建築の歴史でもよくいわれることですが、神社というのはもともと自然の岩や山を登場としていました。それが仏教伝来と共に、常設の建物を祭場とするようになったのです。

 

 最近時、滋賀県の比叡坂本にある日吉大社さんの東本宮、西本宮漆塗工事をさせていただきましたが、この神社さんは高欄、木階だけ赤く塗られておりました。日吉大社さんは、先にお話したように山の神様、山王信仰で、天台宗と集合していた神社さんです。

 

 そして、古来において真言宗と習合していた神社さんは、全体を赤く塗っている。海神社さんのように。そして、天台宗と集合していた神社さんは高欄や木階だけというように、一部を赤く塗る。そのような傾向があるのだという考えに至りました。

 
 

ご拝読ありがとうございました。

 次回は、下鴨(賀茂御祖)神社─賀茂社式年遷宮について を紹介いたします。

 

○今回ご紹介した神社

海神社(鎮座地:奈良県宇陀市室生村三本松3358 交通:近鉄大阪線「室生口大野」駅より徒歩2分)

 

○古社修復については当社のHPも是非ご参考になさってください。

○ブログに関するお問い合わせはこちらまでお願いいたします。

sawanodougen@ace.odn.ne.jp

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初夏の弘文院セミナー報告 ①
 
 京都御所の西に、和気清麻呂公をおまつりした護王神社があります。
そこで毎月一回、土曜日の午後二時から無料で『弘文院セミナー』と称する市民公開セミナーが開かれています。
 
 「弘文院」とは、和気清麻呂公のご子息が平安時代、この地に創立した和気氏の学問所のことです。
和気清麻呂公は桓武天皇の時代、国の学問振興に深く寄与したと伝えられています。
 
清麻呂公の意思を受け継ぐ護王神社での弘文院セミナーは、各回様々な講師陣の方招かれ、誰でも無料で日本の歴史について学ぶことができます。
 
 そのセミナーに、弊社の代表取締役も講師として招いていただいております。

 先日、5月31日土曜日に『古社修理紀行』と題して、神社修復にまつわるエピソードなど話させていただきましたので、その内容を次回よりご紹介させていただきます。
 
また、弘文院セミナーは次月から以下のようなスケジュールで開催されております。
平成26712日/御香宮神社宮司 三木義則先生/『延喜式祝詞─広瀬大忌祭─』
平成26920日/城南宮宮司 鳥羽重弘先生/『天の岩戸開きの絵画や社殿彫刻』
平成26年10月18日/大阪国際大学教授 松井嘉和先生/『古事記の魅力─外国人の視点から─』
平成26年11月29日/下御霊神社宮司 出雲路敬直先生/『風土記の世界(2)』
平成26年12月20日/京都産業大学名誉教授 所 功先生/『平安京との宮廷文化と和気公』
平成27年1月24日/京都山産業大学名誉教授 岩井勲夫先生/『座田惟貞の思想と行動』
平成27年2月28日/霊山歴史館 副館長 木村幸比古先生/『松陰とその周辺の人びと─大河ドラマを                                       十倍楽しむ─』 



 興味をお持ちの方は、神社様のHPも是非ご参考になさってください。(http://www.gooujinja.or.jp/jigyou/koubunin.html

 ご拝読ありがとうございました。

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