林誠司 俳句オデッセイ

「本当にすごい俳句〜季語編、地名編」始めました!随時更新しています。(12/5 飯田蛇笏句、12/19野村喜舟追加)

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水の地球すこしはなれて春の月   正木ゆう子(まさき・ゆうこ)

(みずのちきゅう すこしはなれて はるのつき)



「紫薇」同人。
読売新聞「読売俳壇」の選者をされている。

以前、お話させていただいた時、自分の中には生まれ故郷である熊本の雄大な自然が息づいている、ということを言っておられた。


揚雲雀空のまん中ここよここよ

(あげひばり そらのまんなか ここよ ここよ)

水うすくゆきわたりたる桐の花

(みずうすく ゆきわたりたる きりのはな)

さて穴に戻るか干潟見尽くして

(さて あなに もどるか ひがたみつくして)




「水の地球」というのは、阿蘇などの雄大な自然に慣れ親しんだ彼女だからこそ、生まれた表現だろう。
これら三句も、熊本の大自然を思い浮かべながら鑑賞するとさらに味わい深い。

掲句は、自分のいる地球を意識しながら、春の月を眺めているのであろうが、SF映画のような宇宙からの映像が思い浮かんでしまう。

俳句も時代と共に進歩する。
おそらく、こういう句は映像文化に慣れ親しんだ時代であるからこそ、生まれた句であろうし、読むほうも鮮やかに映像が浮かぶのではないだろうか。

摩天楼より新緑がパセリほど   鷹羽狩行(たかは・しゅぎょう)

この句は、ニューヨークの摩天楼より、セントラルパークを眺めた時に生まれた句であるという。
山の頂とか、自然の高さではなく、人工建造物の高さという視点から生まれた、当時は画期的な句であった。

正木さんの句は科学の進歩により、とうとう宇宙にまで俳人の視点が到達した、ということであろうか。

ただし、この句は科学の中に厳然と存在する自然がテーマ。
宇宙の雄大さに加え、潤んだ叙情が滲んでいる。
それは「水」や「春」という言葉の効果だろう。
やはり俳句的叙情を失っていない。

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