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(謎解き・二十六)
○ 梅が香や隣は荻生惣右衛門 (其角)
四十九 この掲出句の、「荻生惣右衛門」とは、時の将軍・徳川綱吉の御用人の柳沢吉保のブレーンでもあった「荻生徂徠」その人である。この句は、其角の自選句集ともいうべき『五元集』には収載されていない。夏目漱石に「徂徠其角並んで住めり梅の花」という句があり、それに由来があるという句で紹介され、「実際、其角は日本橋茅場町で荻生惣右衛門こと荻生徂徠と隣合わせに住んでいたときがある」(半藤・前掲書)ということなのである。
この掲出句の徂徠と其角とは、「落語や浪曲の演目である『徂徠豆腐』は貧窮時代の徂徠と人情家の豆腐屋夫婦の心のふれあいを描いた名作である。現在は立川志の輔の演出が高名」の頃のものであろう。なお、下記のアドレスの「荻生徂徠」の赤穂浪士の処分裁定関連のものは、下記のとおりである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%BB%E7%94%9F%E5%BE%82%E5%BE%A0
○元禄赤穂事件における赤穂浪士の処分裁定論議では、林鳳岡(注・林信篤)をはじめ室鳩巣・浅見絅斎などが賛美助命論を展開したのに対し、「義は自分を正しく律するための道であり、法は天下を正しく治めるための基準である。礼に基づいて心を調節し、義に基づいて行動を決定する。今、赤穂浪士が主君のために復讐するのは、武士としての恥を知るものである。それは自分を正しく律するやり方であり、それ自体は義に適うものである。だが、それは彼らのみに限られたこと、つまり私の論理にすぎない。そもそも浅野長矩は殿中をも憚らず刃傷に及んで処罰されたのに、これを赤穂浪士は吉良義央を仇として幕府の許可も得ずに騒動を起こしたのは、法として許せぬことである。今、赤穂浪士の罪を明らかにし、武士の礼でもって切腹に処せられれば、彼らも本懐であろうし、実父を討たれたのに手出しすることを止められた上杉家の願いも満たされようし、また、忠義を軽視してはならないという道理も立つ。これこそが公正な政道というものである。」と私義切腹論を主張し、「徂徠擬律書」として上申。結果的に採択されるに至った。禄赤穂事件における赤穂浪士の処分裁定論議では、林鳳岡をはじめ室鳩巣・浅見絅斎などが賛美助命論を展開したのに対し、「義は自分を正しく律するための道であり、法は天下を正しく治めるための基準である。礼に基づいて心を調節し、義に基づいて行動を決定する。今、赤穂浪士が主君のために復讐するのは、武士としての恥を知るものである。それは自分を正しく律するやり方であり、それ自体は義に適うものである。だが、それは彼らのみに限られたこと、つまり私の論理にすぎない。そもそも浅野長矩は殿中をも憚らず刃傷に及んで処罰されたのに、これを赤穂浪士は吉良義央を仇として幕府の許可も得ずに騒動を起こしたのは、法として許せぬことである。今、赤穂浪士の罪を明らかにし、武士の礼でもって切腹に処せられれば、彼らも本懐であろうし、実父を討たれたのに手出しすることを止められた上杉家の願いも満たされようし、また、忠義を軽視してはならないという道理も立つ。これこそが公正な政道というものである。」と私義切腹論を主張し、「徂徠擬律書」として上申。結果的に採択されるに至った。
また、林信篤のものは、下記のとおりである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E9%B3%B3%E5%B2%A1
○一六八〇年(延宝八年)林家を継ぎ、四代将軍徳川家綱以後八代吉宗まで五代にわたり将軍の下で幕府の文書関係の行政に参与し、特に五代綱吉・八代吉宗の信任が厚かった。朝鮮通信使の応接にもかかわっている。また「武徳大成記」などの編纂に従事し、林家の官学的傾向をつよめた。一六九一年(元禄四年)それまで上野不忍池湖畔にあった家塾が、湯島に移され湯島聖堂として竣工したにあわせて大学頭に任じられ、以後林家が世襲した。それまで僧形で勤めていた儒官も終わりを告げた。
五十 幕府の学問の責任者である大学頭の林信篤にも、さらには、その官学の主流ではないけれども、時の幕藩体制の一角に参与していた旧知の荻生徂徠にも加担せず、其角はより一人の人間として、林信篤流に「義士」として賞賛する立場ではなく、さりとて、荻生徂徠流に、「武士の礼でもって切腹に処す」などという、「公が私に優先する」立場ではなく、「悲しみを悲しみ」としてありのままに「事の信」を見ようとする詩人の魂と、その「悲しみ」の根底にある幕藩体制や身分制度などの鋭い批判精神が、時として、其角の句の根底に流れていて、さしずめ、旧知の俳人であった、大高子葉等の赤穂浪士の切腹に関連しての、「うぐひすに此芥子酢はなみだ哉」の句と、その一連の「前書き」などは、その其角の人間性と批判精神が顕著に宿しているものとして、その筆頭にあげられるべきものなのであろう。
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