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2009年8月16日

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「バロン西」について

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左・西中尉(当時)とウラヌス号の雄姿  右・西中佐とご家族(ちなみに妻・武子の祖父は川村純義海軍大将)

  「バロン西」
 昨夜、TVで「硫黄島からの手紙」という映画を観ました。何とも凄まじい映画でした。
 司令官・栗林忠道に渡辺謙が演じていました。彼はいい俳優さんですね。
 ハリウッドでもその演技力を認められている渡辺だが、『硫黄島の手紙』での彼は、ひときわ異彩を放っていた。血と汗と泥にまみれた戦場の中で、栗林忠道だけが、すがすがしく輝いていた。クリント・イーストウッド監督を語るとき、渡辺は「grace」という言葉を使ったが、硫黄島で死を気高く迎えた栗林中将も、それを演じる渡辺謙も「grace」の言葉にふさわしい演技者と言えるのではないだろうか。もうひとり「grace」な将校がいた。西竹一中佐である。(伊原剛志が演じる)
 バロンとは男爵の意。父・徳二郎(家系は薩摩・島津家士族)は、外務大臣や枢密顧問官などを歴任し、駐清公使時代には義和団事件処理に当たった人物で、彼は義和団事件の処理の際、西太后から信頼を厚くされ、シナ茶の専売権を与えられ巨万の富を手にしたといわれている。
 西竹一は、昭和7年(1932)に開催されたロサンゼルス・オリンピックの最終日、閉会式会場にて開催される最終種目であり、かつ「五輪の華」とたたえられる馬術大賞典障害飛越競技に愛馬ウラヌス号を駆って出場し、世界の名だたる名騎手を抑え金メダルに輝いた。(日本人の馬術競技での金メダルは、空前にして絶後の快挙である。ウラヌスとは天王星のこと)
 西は優勝者インタビューで「We Won!」と語った。ウラヌスと自分を「We」としたこの言葉は、アメリカ国民に大きな感動を呼んだという。

 昭和19年(1944)年6月、満州に駐屯していた西連隊長率いる戦車第26連隊に本土の防衛線 硫黄島への動員命令が下った。彼は騎兵出身ですね。栗林中将は騎兵の先輩になります。
 連隊はひとまず内地に帰還。その後、横浜を発って硫黄島へ向け南下した輸送船は、途中、敵潜水艦による魚雷攻撃を受けて撃沈され、戦車第26連隊はその装備のほとんどを失った。僚艦に救助されて命拾いし、硫黄島に渡った西は、丸腰では戦えぬとばかり、装備の再調達のため一時東京に戻った。
 このとき西中佐は、馬事公苑で老いて余生を過していたウラヌスを訪れている。ウラヌスは彼の足音を聞いて狂喜して、馬が最大の愛情を示す態度である、首を摺り寄せ、愛咬をしてきたという。彼は、たてがみの一部を切り取って懐に入れ、硫黄島に帰って行った。
 西竹一中佐は、昭和20年(1945)3月22日頃、壮絶な戦闘の末、自決したとも戦死したともいう。享年42歳。愛馬ウラヌスも、同じ3月末、彼の後を慕うかのように、息を引き取った。
 生き永らえた人の証言によると、戦闘末期の撤退戦の中でも、はぐれた兵士を洞窟内に入れることを拒絶する隊長が多かったなか、西は「一緒に戦おう」と受け入れたという。また映画でも描かれているが、目を負傷したのも、負傷米兵を尋問ののち乏しい医薬品で出来るだけの手当てをしたということも、証言として残されている。

 彼については、城山三郎著『硫黄島に死す』が有名ですが、硫黄島の戦闘については、若い時に関連する本をずいぶん読み漁りました。リチャード・F・ニューカム『硫黄島』、ビル・D・ロス『硫黄島 勝者なき死闘』などは米軍側から描いたものですが、米軍にとっても悲惨な戦いだったことが窺える。
 記録によると硫黄島の戦いで、日本軍は守備兵力20,933名のうち20,129名(軍属82名を含む)が戦死した。捕虜となった人数は3月末までに200名、終戦までにあわせて1,023名であった。アメリカ軍は戦死6,821名、戦傷21,865名の損害を受けた。硫黄島の戦いは、太平洋戦争後期の島嶼防衛戦において、アメリカ軍地上部隊の損害が日本軍の損害を上回った稀有な戦闘であった。
 映画の中で、米兵が投降してきた日本兵捕虜を射殺するショッキングな場面がある。戦友を殺された戦場心理を思うと、復讐感情から射殺したこともあったと思われる。元海兵隊員の手記の中で、日本兵を収容所へ連行する途中、ある海兵隊員が「Do you want me to kill him?」(そいつを俺に殺させてくれないか)と話しかけてきた、と回想している記述を読んだことがある。もちろん組織としては日本兵の投降を認め、保護しているのだが、感情はどうしようもない。日本上空で撃墜されたB29の乗員も哀れでした。彼らは少なからず処刑されています。無差別殺人の罪で・・。
戦争はむごいことです。人を殺して英雄になってしまうのですから。

 
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