私家版・日豪の比較文化人類学 〜群れから抜け出した羊が見たもの〜

こむずかしいタイトルですが、オーストラリアに移住して気付いた文化の違いを書いています。

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節電は誰のため?

 「心頭を滅却すれば火もまた涼し」などと悲愴な心構えでなくとも
節電や暑さをしのぐ方法について喧しい昨今です。
でも、政治家や官僚が揃いもそろってネクタイなしで「クールビズ」をやっている光景は
まったく異様。滑稽で笑って良いのかどうか首を傾げてしまいます。

 原発事故を起こした無責任な東電と国民の安全と快適な生活より
電力会社に擦り寄る政府・官僚の姿勢のために
どうして国民がせっせと節電に協力しなければならないのか、理解に苦しむところですが、
とりあえずは、エネルギーを使い過ぎていた「飽電・放電生活」を見直すという意味で
この夏の電力使用を出来る範囲で抑えるのは意味があることでしょう。

 確かに、デパートなど大きなビルは寒いくらい冷房を効かせ、
家庭では部屋のどこでも新聞が読めるほど煌煌と明かりを灯し、
夜の街も街路灯とネオンサインで昼間のようです。
電力逼迫の非常時でなくとも、こうした状況はどこか間違っていると思います。

 家庭にエアコンなどなかった頃、私たちは様々な工夫を凝らして
いくらかでも涼しさを作り出しました。
朝顔を窓辺に育てて緑のカーテンとし、夕方には玄関先や庭に打ち水をし、
風呂上りに縁台に出て団扇であおぐ時の心地良さを知っていました。

 障子を外して簾をかけるのも年中行事。
床の間の掛け軸まで涼しげな絵柄に換えて気分からも涼を求めたものです。
ちぢみのシャツやステテコは夏の下着のスタンダードでしたね。
こうした生活は季節ごとのリズムにさえなって、それが当然のことでした。

 こうした生活は現代の電力大量消費の生活に比べて、手間がかかり
面倒で、効率は悪く、効果は限られています。
だからと言って、快適性、満足感や幸福感まで格段に劣るとは言えません。
冷房を効かせてセーターを着ているのと比べればどれほど理にかなった暮らし方か、
またエコロジカルな社会だったか容易に理解できるでしょう。

 とりあえず節電に協力するのは良いのですが、
注意深く見極めなくてはならないことは、政府と電力会社が何を考え、
企んでいるかです。
「電力が不足するので節電や計画停電をお願いします」というのも
裏には「こんな不都合や経済的な損失が出るのだから原発は必要でしょう」と
持って行きたいハラが見えるではありませんか。

 総量的に困難かもしれませんが、逆に節電を軌道に乗せてしまって
原発はもう不必要という状況まで持って行くと嬉しいのですが、どうでしょう。

 いったい福島第一原発の事故で、原発を推進し監督してきた立場の誰が
どのような責任を取ったというのでしょうか。
たとえ野田首相以下政府と電力会社はこれから起こるかも知れない
重大な事故について、どのような責任を取るのか明確にしたとしても
埋め合わせの出来る責任など取りようがある訳でもなく、
その意味でも再稼働や原子力発電そのものも容認する訳にはいかないのです。

 私たちは「ノー・モア・フクシマ、ノー・モア・ゲンパツ」と声高に叫ぼうではありませんか。



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フィッシャー=ディースカウ逝く

 ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)が逝きました。
86歳、ドイツのバリトン歌手でした。
今の若い人たちには彼を知らない人がいるかも知れませんが、
人類史上稀有、最高の歌い手と称えても異を唱える人は少ないでしょう。

 もう半世紀も昔、私も音楽の美しさが少し分かるようになった高校生の頃、
彼が歌うシューベルトの歌曲集「冬の旅」を聴いて、
全身が震えるようなショックを受けたことを思い出します。
柔らかで温かみのあるその声は内省的で、曲の美しさと相まって感動したものです。

 フィッシャー=ディースカウの死が伝えられた同じ18日(2012年5月)、
ベルギーで開催中のエリザベート王妃国際音楽コンクールの作曲部門で
日本の若い作曲家の作品がグランプリを獲得したというニュースが流れました。

 その人は大阪・池田市出身でパリ在住の酒井健治さん(34歳)で、
彼の「バイオリンとオーケストラのための協奏曲」がグランプリとなり、
21日からのバイオリン部門本選の課題曲として演奏されるといいます。

 このところ、ピアノやバイオリンなど演奏家として世界中で活躍する若い日本人は
とても多いのですが、作曲の面ではやや出遅れているだけに
嬉しい知らせでした。
フィッシャー=ディースカウの死とともに音楽界の世代交代を感じます。

 話があちこちしますが、久しぶりに日本に帰って来て、テレビの音楽番組で
とても気になることがあります。
それは、クラシック音楽の番組が極端に少なくなり、その構成がお粗末なことです。

 NHKのEテレで見つけた音楽番組を見て聴いていたら情けなくなってしまいました。
まず、音楽番組は音楽の演奏そのものが一番のご馳走のはずですが、
ゲストに長々とお話を聞き、全体のテーマに関係なく音楽が演奏され、
演奏家に、「あなたにとって音楽とは何ですか」と数十年昔に流行った質問をし、
およそ番組作りの専門家が作ったとは思えない出来で腹が立ったのです。

 一方、民放は相変わらず演歌中心の歌謡番組ばかり。
演歌が悪い訳ではありませんが、私はあまり好きではありません。
それと、新しいバラードなどのポップスも聴いていて歯がゆさを感じます。
というのは、無理に歌詞をメロディーに乗っける曲作りが多く、
ずっこけてしまう「字余り」的な歌が多いからです。
あちこちのメロディーを寄せ集めて作曲しているのではないかと疑うほどです。

 ともあれ、日本が香り高い音楽の環境を整えて行くには
テレビの音楽番組はとても大きな役割を担っていることを再認識して
番組作りに反映させてほしいと思います。
また、作曲家も歌い手もチャラっぽい世間に迎合しないで欲しいものです。

 フィッシャー=ディースカウの死の話がとんだ結論になってごめんなさい。


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世代をつなぐ絵本

 私たちは今日本に一時帰国していて、来月ニューヨークの娘のところへ
遊びに行き、その後7月上旬にオーストラリアへ帰ることにしています。
3ヶ月間もの長旅の最中です。

 それで、先日娘からメールがあり、もうすぐ3歳になる彼女の息子、
すなわち私たちの孫のために日本の絵本を持って来て欲しいと言ってきました。

 その私たちの娘や息子が幼児の頃は、数多くの絵本や童話を買いそろえて
読み聞かせるのが私たちの大切な仕事だったのですが、
子供たちも大人になり、私たちがオーストラリアへ移住する際
そうした本が邪魔になって、お世話になった幼稚園に全部寄付してしまったのです。

 娘がリクエストしてきた絵本の中には「三びきのやぎの がらがらどん」や
「しょうぼうじどうしゃ じぷた」など、私たちがその娘に読み聞かせた同じものが
含まれていて、さっそくアマゾンで取り寄せました。
本屋さんで探せば時間がかかる上、全部そろうかどうか分かりませんが
インターネットは便利なもの。リクエストの本全てが揃いました。

イメージ 1 中でも「・・・がらがらどん」を手にすると懐かしさが
こみ上げてきます。
 
 30数年昔、幼い娘や息子を膝に乗せ、
数え切れないほど読んでやりました。
小さなヤギが木の吊り橋を渡る時「かたこと」と
読みながら、膝を小さく揺り、
二番目に大きなヤギの時には「がたごと」で、
膝はもう少し大きく揺すります。
そして、一番大きなヤギの時は「がたんごとん」と
激しく揺り動かしてやるのです。
 
 娘もその時の印象が深く刷り込まれて、
今度は自分の息子に読み聞かせてやりたいと
思ったのでしょう。
きっと、彼女の膝に乗せて、
私がやったのと同じようにするに違いありません。

 その孫息子が大人になって子供が生まれた時、同じ絵本があるかどうか心配ですが
世代をつないで「がらがらどん」が生き続けて行って欲しいものです。
その時は、私たちは空の星になってその光景を見守っていることでしょう。


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旨し旬の味、日本

 私たちの日本滞在も一か月が経ち、すっかり生活に慣れてきました。
心配していた石焼き芋やワラビもちの流し売りが来なくなっていて
今年は静かで快適な日本の春を楽しんでいます。
変な調子を付けて流し売りするそのスピーカーの音があちこちのビルに反射して
聞こえて来ると、私は情緒不安定になってしまうのです。

 桜やツツジなど春の花も良いのですが、やはり花より団子。
とりわけこの時期旬の食材が豊富で、「あれも食いたい、これも食いたい」と
東海林さだお状態が続いています。

 日本に着いてすぐ、スーパーで見つけたのが釜揚げの小女子です。
小女子といってもチリメンや釘煮ではなく、長さ5〜8センチのものです。
あまり大きいと頭や中骨がシャリシャリしてダメですが、見つけたのは小ぶりのもの。
さっそく少し油を引いたフライパンで炒め、酢醤油でいただきました。
次の日からその小女子はスーパーから姿を消したので、
シーズンの終わりだったのでしょう。タッチの差で味わうことができました。
オーストラリアではアジやイワシ、サバなど小魚はほとんどなく
キスと大型のコチくらいしか入手できません。ましてや小女子など望む方が無理です。

 私たちが味わった旬の味を全部ご紹介していては紙面が足りませんので
あと、数品目だけ。
いずれもオーストラリアでは入手が困難なものばかりです。

 アナゴも4月〜7月がシーズン。肉厚の美味しそうなのを見つけたので
早速仕入れました。ウナギが高騰していてその代用になるのか、
例年より値が上がっているようですね。
我が家ではアナゴは柳川にするのが定番料理です。
アナゴのぬめりをこそげ取り、5センチほどに切った身を味付きダシに入れて火を通し
いったん取りだして、そのダシで細く切ったゴボウを煮ます。
ゴボウが柔らかくなったところへアナゴを戻し、たまごでとじて出来あがり。

 竹の子も旬の味の仲間から外してはなりません。
竹の子はまず薄味の出しで炊いて、下ろし際にワカメを加え、木の芽を添えて
いただきますが、美味しいダシがしみ込んで得も言われぬ春の一品です。
この時のご飯は深川めしで決まり。
深川めしのオリジナルはご飯にアサリのおすましをぶっかけたものだったようですが
普通はアサリの茹で汁と醤油でご飯を炊き、炊きあがったところへ茹でたアサリの
身を加えて混ぜ合わせますね。

 この他、桜鯛、桜エビ、新じゃがの肉じゃが、フキ、そら豆、お豆のご飯・・・・・・、
あ〜ぁ、 フ〜〜ッ!!!

 定年の60歳まで日本で暮らし、また、オーストラリアでの生活が長く、
こうした旬の味覚を楽しむことが出来ない私たちとしては
日本での滞在期間中に精一杯「食いしん坊」をすることにしています。

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狂気の運転

 一昨日(2012年4月29日)、静岡県に住む息子のところへ1泊で遊びに行ってきました。
ゴールデン・ウィークの東名高速道路は渋滞で難渋すると思っていましたが
名古屋からの行きはまったく渋滞もなくスムースに走りました。

 ところが、昨日の帰りは自然渋滞や事故、それに新東名高速道路からの
合流車などの影響でノロノロ運転の連続。
結局、行きにかかった倍の3時間もかけて我が家にたどり着きました。

 普段生活しているオーストラリアでもホリデー中や朝の通勤時間帯に
高速道路の渋滞はあります。
オーストラリアの場合はいわゆる下道や抜け道などがない場合が多く
条件は厳しいのですが、これほどのことはありません。

 ところで、この高速道路での帰路肝を冷やし、憤慨したことがあります。
渋滞を切り抜けて、やや速度の遅いトラックを追い越そうと追い越し車線を
走っていると、後ろから猛スピードのワゴン車が迫って来て
私の車の直後にピタリとくっついて来たのです。

 「邪魔だから早く走行車線に移って道を開けろ」と要求していることは
分かるのですが、左にはトラックが走っているのですぐには道を譲ることはできません。
すると、そのワゴン車は走行車線から私を追い越そうとして左に移りますが
トラックがいてだめ。また急ハンドルで私の後ろに入って車間距離1〜2メートルに
付けてくるのです。

 私も血の気が多いのでハザード・ランプを点滅させて警告したのですが効き目なし。
やっとのことで走行車線に移ったら、ワゴン車はまた猛スピードで走り抜けて行きました。
仕返しの嫌がらせがなかっただけ良しとしなければならないのが情けないことでした。

 この他にも、渋滞している個所で路肩を走って行く車。
合流地点でギリギリ前方に進んで強引に流れに割り込む車など
久しぶりに日本人の汚く嫌な面をたくさん見てしまいました。

 ただでさえこのところ居眠り運転のバス事故や通学の子供の列に突っ込むなど
自動車事故が頻発していて、安全運転が叫ばれているのに
その安全意識よりもっと基本的な人格を疑う狂気の運転ぶりに、改めて驚いたのです。

 ハンドルを握ると人格が変わる人が多いとよく言われます。
確かに、意のままに車を操り車内では一番偉い人。意地を張ろうが威張ろうが
誰も文句は言わず、他の車を運転する人とは上下関係なし。
こんな状況でしか自らの存在を主張し、お山の大将になれない人間だとすれば
哀れで恥ずかしいではありませんか。

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開設日: 2008/4/23(水)


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