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2012年2月9日

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イザベル・ファウストさんのブラームスを聴く

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リサ・バティアシュヴィリさんのブラームスについて色々書いたので、昨年リリースされた、
イザベル・ファウストさんのブラームスのヴァイオリン・コンチェルトについても、ちょっとコメントを。

ファウストさんの演奏・録音活動には、やっぱり注目してしまいます!
いろいろ刺激をもらえるし、気づきを与えてくれます。今回のブラームスのCDは以下の通り。

【収録情報】
・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.77

 イザベル・ファウスト(ヴァイオリン/「スリーピング・ビューティ」1704年ストラディヴァリウス)
 マーラー・チェンバー・オーケストラ
 ダニエル・ハーディング(指揮)

 録音時期:2010年2月
 録音場所:ビルバオ、Sociedad Filarmonica
 録音方式:デジタル

・ブラームス:弦楽六重奏曲第2番ト長調 op.36

 イザベル・ファウスト(ヴァイオリン/「スリーピング・ビューティ」1704年ストラディヴァリウス)
 ユリア=マリア・クレッツ(ヴァイオリン)
 ステファン・フェーラント、ポーリーヌ・ザクセ(ヴィオラ)
 クリストフ・リヒター、シェニア・ヤンコヴィチ(チェロ)

 録音時期:2010年9月
 録音場所:ベルリン、テルデックス・スタジオ
 録音方式:デジタル

室内オケとブラームスのコンチェルトを演奏するのは、今日では珍しいことではないし、
ファウストさんの音量や音色を考えると妥当な選択だと思います。もちろんその選択には
彼女のこの曲に対する考え方も反映されています。

ライナー・ノーツにあるファウスト自身のエッセイによれば、今回の演奏において、
ブラームスとヨアヒムの様々な対話の記録や、ヨアヒムの手になる「ヴァイオリン教本」が
とても示唆を与えてくれたようです。

今回の演奏では、非感傷的(unsentimental)な解釈と、オケとの親密で対等な(gleichberechtig)
協働が心がけられています。名人芸を誇示する自己宣伝的な演奏や、非本質的な細部に
感傷的に拘泥する演奏を戒めるヨアヒムの発言から、多くの示唆を得たとのこと。
ヨアヒムとは、ご存じの通り、この曲の初演者でありブラームスの畏友であった、
ハンガリー出身のヴァイオリニスト。室内楽奏者としても活躍したヨアヒムならでは指摘は、
今回、弦楽六重奏曲をカップリング曲にしたファウストの選択にも影響しているでしょうね。

ファウストさんの乾いた細身の音は、フォルテシモになると幾分窮屈で、正直つらいところも
ありますが、過剰な装飾を洗い落した観のある第1楽章は、取り立てて急いでいる様子もないのに、
従来の演奏の標準的なタイムから1分近くもはやく、かなりすっきりしています。
むろん、感傷に溺れないとはいえ、よく歌っているし、解釈的にもオーソドックスです。
ただ、バロックや古典派の作品において、豊かなイマジネーションによって行間を補ってきた
ファウストさんですが、今回はいくぶん禁欲的で、「引き算の美学」みたいなものを感じさせます。
だから、好みが分かれるかもしれません。味わい不足と感じる人もいるかもしれません。
確かに、甘みやまろ味にかけるかも。2楽章など、実は意外とたっぷり弾いているのだけれど、
伝統的な意味での「滴るような美しい音」ではないし、響きが痩せていると言えなくもないです。

テンポ設定については、いろいろ悩んだに違いないと思います。
ファウストは、ヨアヒムが異常なほどに速いテンポに拘っていたエピソードを紹介していますが、
2、3楽章に関しては、彼女の演奏が特別速いわけではありません。(速く聴こえますが。)
むしろ3楽章はもっと遊びがあってもよかったかも知れません。間合いを詰めて、前へ前へ
進んでいくという印象です。

なお、ハーディングの指揮するマーラー・チェンバー・オーケストラとのアンサンブルは、
確かにとても親密です。小回りの利く機能性の良さが、ファウストさんのソロとよく合っています。
特に木管はきれいです。ところどころ、ハーディングとしてはより大きな構えにもっていきたい
ホンネみたいなものが顔を出して、ソロとの方向性に綱引きがありますが、まあそういう齟齬は
何にだってあります。むしろ、よくサポートできていると思います。

ついでに、ブゾーニのカデンツァを採用したのも今回の特徴ですが、あまりピンと来ませんでした。
ヨアヒムの示唆を受けてヨアヒムのカデンツァをどう弾くのか、そこを知りたかった気がします。

最後に、弦楽六重奏曲第2番。この曲は大好き。1番より好きです!
ブラームスの室内楽は、バランスをとるのが難しいし、音色がそろわないと響きに厚みが
出ませんが、その辺はみんなファウストに合わせて、乾いた音色と響きになっています。
中低音のボリュームも抑え気味。だからバランスは抜群ですが、サクサクした軽い響きね。
大福ではなく最中、ミルフィーユではなくウェハースという感じ。

ホントに最後に・・・。ヴィブラートに関するヨアヒムの指摘について。
早い段階から「ピリオド奏法」を積極的に取り入れてきたファウストにとって、
ロマン主義時代の巨匠が過剰なヴィブラートを戒めていた事実は、大きな勇気と確信を
与えたに違いありません。そういうことも含めて、今回のCDができあがったのだと思います。

では、長くなりました。 

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