作家日記
北海道へ(3) 宿舎生活は、なかなか楽しかった。
男子校だから、やっぱりちょっと白ける。けれど、私立なだけにホテルも豪華なのだ。夕食のバイキングも驚くほど美味しかったし、部屋の居心地も実に快適だった。
秘密で持ち込んだオカリナで運指の練習だけして、あとはなにもかも忘れて、友達とのとりとめもない会話に没頭した。ロマンの恋バナも、内緒話や裏話もない。恐ろしくつまらない学校生活のはずなのに、北海道で同じことをすると、不思議なくらいに楽しかった。どうしてあんなに、楽しかったんだろう。私はたぶん、17歳だからだと思う。変な勘ぐりも、上下関係もないからだ。女子がいなかったり校則が厳しかったりで、世界観も狭量だし、性格もひん曲がっている。でも、開放的なのだ。
夜、友達と話す。それだけで、自由と幸福を感じられる。
旅と友情の力って、すごいと思った。
北海道旅行で一番苦痛だったのは、2日目だと言えるだろう。
スキー実習で、スランプになった。午前中、初心者コースを下り始めた。最初は絶好調で、それこそ初心者組で一番上手い奴に比べても、遜色ないスキーヤーだったと思う。
でも、午前中の最後の坂で、スランプになった。ブレーキがまともにかからず、大回りカーブさえままならない状態が続いた。転倒が頻発し、ついに、左手をくじいた。
北海道旅行の随筆が一日目で止まってしまっているのも、このせいだ。利き手は右手だが、執筆というのは、痛みに苛まれていてはできない。
午後になると調子が出てきて、また滑られるようになった。でも、左手の痛みは消えない。インストラクターを追いかけるので限界だった。左手の痛みが直接の原因ではない。また怪我をするのではないか、という恐怖が、勢いを奪い、スキーを閉塞的なものにしてしまったのだ。
ナイターになった。
ナイターはほとんど自由滑走だったので、リフトの前でのんびりしていた。
虹色の光に照らされたスキー場を見て、私の心は癒えた。いつの間にか恐怖の崖と化していたスキー場が、自由に充ち満ちた天国のように、私の目に映った。
滑っても、いいのかもしれない。
そう思った
いつの間にか、リフトに乗り込んでいた。
恐怖を無にして、思いっきり滑った。
もう、転ばなかった。
楽しい
楽しい
楽しい!
輝く世界を、一人、颯爽と駆けてゆく。
私の中の何かが吹っ切れた。スキーが好きになった。
2日目は一番辛かったが、やっぱり辛いと、成長できる。
明日を夢見て、私は眠った。 |
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