死に逝くもの

 ホスピスの世界では、死に逝くものとその家族への配慮には特別なものがあり、非常に手厚い配慮と、本人や家族が発する希望は、何よりも優先されています。傍目で見ていると、やり過ぎではないかと思うほどの気遣いをします。

 これでご飯を食べているというか、社会的な存在意義が、ここにあるのですから、ある意味では当然の事なのかもしれませんが、そこに働いているボランティアにも、強い奉仕を求めるというのは、どういうことなのだろうかと考えないではありません。

 ホスピスでのボランティアを始めて半年くらいの、私を含めての連中からすると、何だろうねぇ・・という感じなのですが、ここに慣れたボランティアには、当然のように受容され、何か宗教がかったような、素晴らしい、人として修養ができるとか、感動したとか、そんな言葉が並びます。誰に向かって祈るのか私には分からない。家族や友人に囲まれた愛とか幸福なんていうものは、私には分からないし、あまりにも縁遠い。

 この違和感というのは、後、一年とか二年とか経つうちに消えるのかが、今の私には大問題です。ここの雰囲気に慣れる事が、どういう意味を持つのかを考えます。

 そしてこういう最期を望むべくもない私自身の現実があり、凄惨な未来しか予想できない中で、こういう手厚い介護の中で、これが人間の死の姿である、尊厳ある、幸福な死であると言い募る人々に反感が渦巻いている事も、口を閉ざさせる大きな要因です。何も喋りたくない、話したくないと感じる。

 まぁ、ここのボランティアは長く続きそうもありません。フェイドアウトをどうやるかを考えているところです。

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認知症という病 2

 認知症の中には、進行する形態のものがあることは確実です。アルツハイマー型やルビー小体型、もしかすると脳血管性も進行するかもしれません。脳の委縮などが顕著に見られ、時間が経てばより大きく広がるという意味では進行性をきたすことにもなります。

 ただ、これらが完全に立証されてはいないように見える事、すべての認知症と見なされた人が、このどれかに分類されるということも無いようであるとしたならば、ある種、無用の恐怖心を煽りたてていると言えないか、という問題です。

 介護の世界では、近年では自立が強く叫ばれ、実践されています。皆さんも入院して手術などを受けられる事があっても、ほとんど数日後には立って歩かされる経験があるでしょう。寝たきりにしない、誰かの全面的な助け、介護を受けなければ生活できない状態を、とことん避けるようになってきており、それが本人にも医療機関などの負担を減らすことに結び付くこととして行われています。

 当然のように認知症においても、自立自立が合言葉でしょう。進行する以前にどうやって維持し、その状態をキープさせるかが医療側、介護側の目標になっている。できる内は、時間がかかろうが、周りをいらいらさせようが、ともかく自身でヤルことが要求されています。

 いったいこういう時代の中で認知症はどのような病として受容されていくのかを考えると、今とは随分、様相が変わりそうです。今から十年、二十年前に比べて、認知症への理解も対応も大きく変わってきた事を思えば、今がそのまま未来になる事は無いのでしょう。

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認知症という病

 講演会なんかに行くと、認知症は基本、アルツハイマー型、脳血管障害型、ルビー小体型の三種類とされ、非常に多くがアルツハイマーに分類されるという話を聞かされます。

 これに私は以前から、どうも変だという印象を強くもっていまして、こういう病名が付くような感じの認知症というのは少ないのじゃないかと思っていて、というのも老いの進行の中で、認知症に近い症状を呈していても、それを完全に病気だというには、どう何だろうかと思わないではないからです。

 老いの進行の中で、明らかに体力は落ち、例えば握力はかなり落ちて、皿などはしっかり持てなくなっています。それと同じような意味で記憶する事がなかなか難しくなっていて、何度も確認する、確認しても、まだ心配で見直す。それでも忘れる。そういう状況を見ていると、認知症だとは言えるけれど、握力が落ちているのと何が違うのかと思わないではありません。

 先日の講演で、認知症というのは、実は病の集合を意味するのであって、一つの病、肺炎とか、胃潰瘍とか、そういうものではなく、中を分類すると三十種類を超える症状があり、それになったからと言って、必ず進行するかどうかも分からない。
 昨日書いたように、優しい連れ合いがいれば、病は進行しないという話にも繋がる訳で、これ病気なのか、と言えばちょっと違うのではないかと。

 そして認知症になったとか、なっていないとかいう形のon/off関係ではないのだとも語っていました。何か統合失調症と呼ばれるものとも似ているようなところがあります。
 私は統合失調症も、ある種の精神のありようの数多くの集合体であって、何か具体的な病を意味するものではないのではないかと考えているからですが・・・・。

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