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経済はだれにでも分析できる。そして、国内の政策や世界の外交・安全保障・軍事も経済を通してその真偽を見抜ける。

【お金は知っている】北の核実験阻止に必要なのは中国金融機関の締め上げだ

9.16
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 北朝鮮は9日の5回目の核実験に引き続き、次の実験準備を進めているという。国連制裁などどこ吹く風だ。中国の習近平政権は口では嘆きながら、金正恩政権にカネも石油も提供している。国際社会は中国に見切りを付け、対中圧力を強化すべきだ。

 グラフは今年の中国の北朝鮮からの石炭、鉄鉱石の輸入量の推移である。これら2品目は1月の4回目の核実験を受けた3月の国連安全保障理事会による対北制裁決議2270号によって、北からの輸入が禁じられている。一目瞭然、3月以降、鉄鉱石は輸入が2倍以上に増え、石炭は減少したのはつかの間で7月には再び増加している。

 一見すると中国による「制裁破り」なのだが、上記制裁決議には抜け穴がある。北の輸出による収入の用途が核やミサイル開発など軍事ではなく、民生向けであれば、制裁対象にはならないというただし書きがある。カネに色はないのだから、中国が支払うカネが民生に限定されるはずはないのだが、中国はそれを盾に白昼堂々と禁制品を輸入している。

 国連安保理は常任理事国中国が拒否権を行使すれば制裁案が成立しない。そこで、米国も日本も妥協せざるをえない事情があるという。ならば、資金の流れを徹底的に明らかにするよう、輸入国中国に義務づけるべきだろうが、外務官僚は金融には疎い。「かつてなく強力な制裁」という外見に満足し、成果を強調したのがこの3月だった。

 石炭、鉄鉱石などの輸入のみならず、中国資本の対北投資、北朝鮮企業の中国内での活動などで北の外貨稼ぎに協力するばかりではない。原油や重油、ガソリンなど石油製品を確保できなくなると、北朝鮮軍は無力化するのだが、北京は、北がミサイル発射や核実験を繰り返してもおかまいなしに供給を増やしてきた。

 日本などがいくら制裁強化に乗り出しても、金政権が一向に動じないのは、習政権の後ろ盾があるからだ。北京は金正恩氏をもてあまし、その首のすげ替えを狙っていると、ドラマ仕立てで見る向きもあるが、経済データをみれば根も葉もない噂に過ぎない。

 米国も甘い。先の5回目の核実験について、カーター国防長官は「中国の責任は重大」と指摘したし、米メディアでも中国に対する批判が高まってはいるのだが、行動はしない。

 昨年12月にはシンガポールの海運会社が武器を密輸する北朝鮮の貨物船の運航資金を送金していたとして、シンガポールの裁判所が有罪判決を下した。この海運会社は北朝鮮のダミーで、中国銀行が協力していた。米国が中国銀行を制裁しドル資金取引を制限できるチャンスだった。他にも、北朝鮮の企業や金融機関は中国の金融機関を通じて、外貨資金を獲得していると、米専門家はみる。

 米国はこれら中国の銀行が米金融システムにアクセスできないようにすれば、北は確実に干上がる。今必要なのは、中国への強硬策であり、日米は結束すべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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新ゴジラ中国の物語

2016.9.12 00:00
【田村秀男の日曜経済講座】シン・ゴジラは中国とそっくりではないか! 債務でどんどん肥大化し、世界を破壊する怪物を退治するには…


 松井秀喜ファンには叱られるかもしれないが、習近平政権下の中国は映画「シン・ゴジラ」のゴジラそっくりだと思った。地球にばらまかれた放射能を存分に吸収して変身、膨張する。世界を破壊しかねない巨大なパワーは米国も加わった多国籍軍をたじろがせる。最後の手段はゴジラ凍結作戦だった。

 「放射能」をドル、「多国籍軍」を国際通貨基金(IMF)や世界貿易機関(WTO)、「凍結作戦」を国際ルールに置き換えると、中国ゴジラの物語だ。
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 2008年9月のリーマン・ショック後の中国経済の膨張を支えてきたのはドルである。世界恐慌回避のために米連邦準備制度理事会(FRB)は14年までの6年間でドル資金発行量を4倍とし、3兆ドルを追加発行したが、中国人民銀行はその相当額のドルを国有商業銀行などから買い上げ、人民元資金を供給してきた。商業銀行は資金を地方政府主導の不動産開発や国有企業などの設備投資向けに融資してきた。これら固定資産投資に支えられて国内総生産(GDP)は2桁台で伸び、10年には日本のGDPを抜いて世界第2位の経済超大国に躍り出た。

 不動産市場が加熱する中で、工業生産能力は14年までの7年間で粗鋼約2倍、自動車2・3倍、セメント1・9倍と急膨張し、いずれも世界ダントツのモンスターとなった。14年に不動産バブルが崩壊すると、地方各地ではゴーストタウンが出現、鉄鋼などの設備の5割以上が過剰となった。中国需要の急減で石油、鉄鉱石など国際商品市況は暴落し、世界にデフレ不況圧力を加えている。

 通常の市場経済であれば、バブル崩壊は資産や生産両面の過剰を整理する動因となるのだが、中国共産党はそうはさせない。決め手は人民元の相場をドルにくぎ付けする「管理変動相場制」だ。通貨価値安定を背景に、家計は株や不動産相場が下落しても、現預金を増やし続ける。そして銀行は不動産や企業への融資を増やす。いったん崩落したはずの不動産市況は昨年前半から上海、北京、深センなどの沿海部の巨大都市で急速に回復し始めた。

 製鉄所などゾンビと化したはずの工場も倒産を免れている。地方の党官僚は党中央が目標とする経済成長率7%前後の達成を迫られる。やり方は簡単だ。GDPの4割以上を占める固定資産投資を増やせばよい。銀行が融資を増やせば、カネは回りに回って不動産需要が盛り上がり、不動産開発によってGDPを押し上げるという仕掛けだが、成果はどうか。

 グラフをみよう。銀行融資は円換算で増え続け、今年は年間200兆円を超える。この信用膨張に引き上げられるかのように上海不動産の騰勢が止まらない。実体経済を示すGDPのほうはというと、増えてはいるが勢いは弱い。5年前はGDPを1増やすためには融資増1で済んだが、今年は3以上必要になっている。

 融資の裏側は債務である。国際決済銀行(BIS)統計によれば、昨年末までの3年間で中国の企業、政府、家計の債務合計は約920兆円増え、増加規模は景気が堅調な米国の2倍以上、世界合計の3・5倍にもなる。実体経済が健全であれば借金が増えても返済されるので信用不安は起きないが、中国は不動産バブルの再発と過剰生産の中での債務膨張である。中国はゴジラさながらに世界経済にとって最大の脅威なのだ。

 国際社会が習政権に対し、チャイナリスク軽減へと是正策を求めるのは当然だし、IMFやWTOそして20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)などと、その場はいくらでもある。

 しかし、中国・杭州で開かれたG20はどうだったのか。

 宣言文は「IMFの決定に従い、われわれは、10月1日の人民元の特別引き出し権(SDR)構成通貨入りを歓迎する」という。SDR入りの条件にしているはずの中国の金融市場自由化や人民元の変動相場制移行には一切触れない。中国をさらに強大化させる国際通貨人民元にひれ伏したかのようだ。

 「鉄鋼及びその他の産業における過剰生産能力が、共同の対応を必要とする世界的な課題であると認識」とはよくぞ言った。課題を中国にではなく世界に押し付けた。

 「シン・ゴジラ」では、生き残った政治家や官僚らが愛国心に燃え、決死のゴジラ凍結作戦に出た。杭州G20では議長、習国家主席側近の官僚たちにやすやすと屈した。中国ゴジラの物語には悲惨な結末しか見えてこないようだ。(編集委員)

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【ビジネスアイコラム】容認できない韓国の対中従属姿勢 日韓通貨スワップ再開には外為相場の公正化が必須

2016.9.15 05:00
 韓国側からの要請で日韓通貨スワップ再開協議が決まった。韓国は頼みとする中国のリスクの増大から、国際金融面で日本とのよりを戻したというわけだろうが、日本は韓国の対中従属関係をもはや容認するわけにはいかない。
 特にその意を強くしたきっかけは、日韓合意の間もない9日の、北朝鮮による5回目の核実験である。国連による制裁にもかかわらず金正恩政権が核とミサイル開発に血道を上げられる背景には中国の習近平政権による実質的な「制裁破り」がある。北京が対北融和路線を撤回しない限り、金正恩は態度を改めそうにない。北が核弾頭を装備し、米本土まで届く長距離ミサイルを開発する情勢なのだから、米側の危機感はかつてなく高まっている。オバマ政権は弱腰かもしれないが、11月の大統領選の結果、政権がクリントン、トランプ候補のいずれになろうと、ワシントンは北の資金稼ぎに協力する中国の金融機関や企業を対象に制裁する公算が大きい。
 そこで日韓とも米国と同調するのは当然だが、韓国がずるずると対中依存を続けるままでは、北京からいいかげんにあしらわれるだろう。
 朴槿恵政権の対中すり寄り路線は経済面でみてももはや破綻同然だ。対中輸出は韓国国内総生産(GDP)の12%程度と大きいが、中国市場はスマートフォンを含め国産メーカーの台頭で韓国勢は押されている。それに何よりも、韓国が日本に通貨・金融で協調を求めざるを得ないのは、中国が支援する北朝鮮からの脅威増大がある。
 海外からの対韓ポートフォリオ投資は同国GDPの4割を超える。北からの軍事攻勢が激しくなれば、外国の投資ファンドは一斉に逃げ出すだろう。そうなると、通貨ウォン、株式とも暴落し、1997、98年のアジア通貨危機の再来となる恐れがある。この脆弱(ぜいじゃく)さをよく知っている韓国の産業界は早くから通貨スワップの再開を日本側に求めていた。
 日韓通貨スワップは2015年2月に期限が到来し、打ち切られた。スワップは金融危機時に双方の通貨を提供し合うのだが、対等のようでいて、日本側からの一方的な便宜供与となる。国際通貨円はドルにそのまま交換できるので韓国側にとっては通貨防衛のための武器となるが、日本側にとってローカル通貨ウォンはほとんど役に立たないはずだ。国内の反日ムードの中で、韓国政府は頭を下げてまで日本に延長を申し入れる気にはならなかったし、日本側も要請がない限り手を差し伸べるまでもない。
 最近の日韓政府間合意にもかかわらず、朴政権は慰安婦像撤去にも応じない。島根県竹島の不法占拠を続け、日本人上陸を阻止する韓国に対し、韓国にとって虫のよいスワップに応じるべきではないとの反発が日本国内にある。だが、日本の国益に結びつく条件を確保する冷たい頭で応じることが財務官僚に求められる。
 条件とは、まず韓国側が、公正で自由な外為相場の制度に改めることだ。韓国は市場操作により、ウォンの対ドル相場を安くしている、と米当局から強く批判されている。韓国側は否定するが、対ドルばかりでなくウォンの対円裁定相場を押し下げ、日本企業との競争条件を有利にしようとしてきたフシもある。
 韓国はこの数年間、ドルを通じてウォンを人民元と連動させている。通貨の面でも対中従属しているわけだ。その中国とは通貨スワップ協定を結んでいるが、いざというときに北京を頼ったところで、資本逃避と暴落不安のある人民元の供給をあてにできるかどうか、不安が残るはずだ。そんなウォンの危機阻止のために、日本が円を提供するのは、百歩譲っても世論が納得できるはずはない。
 政治的には前述したように、日韓とも米国の新政権と組んで、北京に対峙(たいじ)することが最優先される。日韓スワップはその枠組みの中でも位置付けるべきだ。
 以上のような戦略思考は安易な「金融協調」しか考えない財務官僚には無理かもしれない。安倍晋三首相と麻生太郎財務相はしっかりと官僚レベルの協議プロセスをチェックすべきだ。(産経新聞特別記者 田村秀男)

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2016.9.5 05:00
【田村秀男のお金は知っている】朴槿恵政権のあきれた日韓スワップ要請 狙いは中韓一体化路線の墨守ではないか?
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円、人民元、ウォンの対ドル相場の推移
 財務省は韓国企画財政部との間で、緊急時に通貨を相互融通するという建前の通貨スワップの再開に向けて協議に入る。韓国側は最近の国際金融市場の不確実性に備えるため、お互いに一致したと、うそぶいているのには、少々あきれた。通貨危機に脅えているのは韓国側であり、日本側は円資金を提供する一方通行になる。ならば、「スワップ」ではなく「支援」とでも呼ぶべきだ。(夕刊フジ)

 韓国側の狙いは何か。円という強い国際通貨で自身の外貨準備を補強し、ウォンを中国の人民元にぴったりと張り付かせる中韓一体化路線を墨守するためではないか。

 韓国の輸出は国内総生産(GDP)の約4割を占める。中国(香港を含む)向け輸出比率は3割強と貿易相手中最大で、日本向けの約5%を圧倒している。韓国はGDPの12%を対中輸出に依存するのだから、自国通貨を人民元に対して安定させるよう腐心する。

 グラフは、日中韓の各通貨の対ドル相場水準の比較である。一目瞭然、円は大きく変動しているのに対し、当局が相場を管理している人民元はなだらかに推移している。韓国のウォンは円と同じく、制度上は自由変動相場制なのだが、絶えず人民元にまとわりつく形で変動している。韓国当局は否定するが、市場介入によってウォン相場を操作した結果との疑惑が生じる。

 米財務省は対議会報告書で、ひんぱんに韓国の為替操作を非難し、ルー財務長官はこの6月初めには中央銀行である韓国銀行総裁に直接会って、是正を厳しく求めた。国際通貨基金(IMF)も韓国に対し「為替介入は市場が無秩序な局面に限定するべきだ」とクギを刺した。

 中韓とも政経不可分原則である。朴槿恵(パク・クネ)政権は政治・外交面でも北京の習近平政権にすり寄らざるをえない。昨年には米国の制止を振り切って中国共産党主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に率先して参加し、「戦勝国」代表でもないのに、朴大統領が天安門広場での「抗日戦勝式典」に列席するという具合だった。

 事大主義者の服従は北京の独裁者をつけあがらせる。習政権は米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備決定に怒り狂い、韓国を属国同然に扱い、威嚇する。対北朝鮮関係など選択肢が限られる以上、北京に平身低頭せざるをえない。減速する中国市場では韓国企業が中国企業との競争で押されっぱなしだ。それでも朴政権は対中依存をやめられない。

 国際金融市場では英国の欧州連合(EU)離脱騒ぎが小康状態になってはいるが、米国の利上げ機運再燃でドル不足が懸念されている。産業界も金融市場も外資への依存度が高い韓国は外貨が一挙に流出する恐れにいつも悩まされる。

 朴政権は日本との通貨スワップ再開に期待するのだが、虫がよすぎる。せめてウォン相場操作をやめ、円並みに変動させるくらいの公正さを示してはどうか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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2016.8.28 07:00
【田村秀男の日曜経済講座】円高は給与を減らす元凶 日銀はマイナス金利拡大をためらうな


 政府はこのほど平成28年度第2次補正予算案を決定し、積極財政へとかじを切った。消費税増税に伴う後遺症が薄らぎ始めた景気をさらに後押しするはずだが、油断は禁物だ。円高基調である。円高は給与を減らす元凶なのだ。

 米オバマ政権は円高・ドル安について、機会があるたびに、市場実勢を反映していると強調する。「自由な変動相場制」という建前なのだが、外国為替市場は米国にとって有利な仕組みになっている。

 米国は国際金融の胴元であり、外為市場への影響力は他を圧倒する。世界の基軸通貨ドルが尺度であるニューヨーク市場に世界の余剰資金を集中させられるからだ。

 政治力も付随する。ワシントンは米国の産業界にとって不利なドル高水準になれば、「市場原理」を脇に押しやって、他の主要国に対ドル相場を上昇させるよう仕向ける。1985年9月のドル高是正のための国際協調「プラザ合意」が典型例である。

 協調介入は87年2月のドル安定のための「ルーブル合意」の失敗後はほとんど試みられなくなったが、米政府高官はことあるごとに口先でドル安に誘導してきた。ドイツはその間、フランスなどとともに欧州共通通貨ユーロを立ち上げて、米国からの風圧を避けているが、日本の円はいまだに米国の政策や政治情勢に左右され、われわれの暮らしを支える賃金を左右する。
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 グラフは、プラザ合意以降の円・ドル相場と日米の製造業賃金指数の各年間平均値の推移である。驚かされるのは、賃金動向の違いだ。

 米国は一貫して右肩上がりであるのに対し、日本は上がりかけたと思ったら、今度は下がり始める。プラザ合意後の急速な円高にもかかわらず、日本の賃金はしばらくの間は米国と同様のトレンドだったが、97年半ば以降は円相場動向に大きく左右されるようになった。97年4月には橋本龍太郎政権が消費税増税と緊縮財政に踏み切り、現在にまで尾を引く慢性デフレ局面を招いたが、デフレは円高と賃金減の産物ともいえる。

 円相場と賃金の相関度(統計学でいう相関係数で、最大値は1)はアベノミクスが始まった2012年12月までの10年間でみると全産業が0・94である。円高はものづくりばかりでなく、全産業にデフレ圧力を浸透させている。

 対照的に、米国の賃金動向はドルの対円相場はもちろん、貿易相手国通貨の加重平均相場とも無縁であり、相関関係はない。自由市場原理のお手本として評価される米国だが、賃金は下がっても一時的で、中長期的には一貫して上昇を続けている。

 雇用情勢は米国の政策や政治を突き動かし、失業者が増え、賃金が下がれば政権も議会も支持を失う。ドル高になって産業競争力が低下して雇用に悪影響が出れば、自らドルを下げずに、日本などに通貨高圧力を加え、賃上げ基調の維持を図るわけである。

 事実、現在の円高は日米間の金利差の縮小に加え、米国政治情勢、つまり今秋の大統領選がかなり後押ししている。民主党・クリントン、共和党・トランプの両候補ともドル高に伴う産業競争力低下を恐れ、円高・ドル安のトレンドを維持させたい。クリントン候補を支援するオバマ政権は日本が円売り市場介入をさせないようしきりに牽制(けんせい)している。トランプ候補も日本が介入すればライバルに負けず激しく非難するだろう。

 米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げのためらいにも政治の影がある。FRBは物価と並んで雇用にも責任を負う。大統領選と同時並行の総選挙に直面している議員たちは利上げには批判的だ。このまま、日本の為替や金融政策が大統領選に振り回されるような印象を市場に与えてしまうと、投機ファンドはますます円買い投機に興じるようになり、円高は加速しかねない。

 日本政策投資銀行によれば、大多数の大企業の想定為替レートは1ドル=110円前後で、同100円水準を超える円高は企業を萎縮させる。実質賃金はことし初め以来、アベノミクス開始以降、初めて月連続で上昇し始めたが、息切れしかねない。給与に連動する個人消費の回復軌道も破壊される。

 政府が急激な円高には円売り市場介入で対応するのは当然だが、効果は長続きしない。重要な鍵は日銀が握る。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は産経新聞との単独インタビューで、マイナス金利をさらに引き下げの余地ありと発言した。マイナス金利拡大には日銀内部に慎重論も多いが、大型経済対策の成否にも関わる。黒田総裁は大局的に決断すべきだ。(編集委員)

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