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経済はだれにでも分析できる。そして、国内の政策や世界の外交・安全保障・軍事も経済を通してその真偽を見抜ける。
2016.6.27 03:00
【田村秀男の経済講座】円高の主因は日本のデフレ圧力だ 日銀は毅然としてマイナス金利を進めよ

 英国の欧州連合(EU)からの離脱が国民投票で確実になったのを受けて円高が加速しているが、主因は日米の実質金利差の縮小にある。

 グラフは2013年1月以降の日米金利差と円の対ドル相場の推移である。金利は償還期間10年国債の利回りで、実質金利とはその利回りから消費者物価上昇率を差し引いた。金利差は米国から日本を差し引き、名目と実質の2通りを挙げている。10年国債は、主要国の標準的な金融資産であり、その国の通貨価値を反映する。

 一目瞭然、円の対ドル相場は日米の実質金利差が拡大する局面では下落し、縮小傾向に転じると円高になる。昨年4月以降、実質金利差は下がり始め、それより6カ月前後遅れて円高傾向に転じた。

 実質金利差に比べて、名目金利差のほうは13年9月以降、ほぼ安定した水準で推移している。
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 日銀は同年4月に異次元金融緩和に踏み切り、国債を金融機関から大量に買い上げることで、国債利回りを下げてきた。しかし、米国との名目金利差はあまり動かなかった。円高傾向が続く中で、日銀は今年2月にはマイナス金利政策を導入し、国債利回りはマイナスに転じたが、それでも円高は止まらない。

 日本の消費者物価上昇率は、14年4月の消費税率8%への引き上げによる上乗せ分がなくなった翌年4月以降、ゼロ・コンマ台で推移し、今年3、4月にはマイナスに陥った。対照的に、米国の物価は今年に入って以降、上昇基調にある。こうして実質金利差は大きく縮小し、消費税増税前の14年2月の2・5%から今年4月には0・46%まで下がった。

 英国のEU離脱問題が円高に作用したのは、世論調査で離脱支持派が多数を占めた6月初旬時以降である。今後の円相場を左右する鍵はやはり、日米の名目金利、インフレ率の動向になるだろう。

 米国のほうは、景気回復の足取りは鈍く、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げに慎重で、実質金利は当面、上昇しそうにない。

 日本では、消費税増税後に落ち込んだ家計消費が底ばい状態である。内需低迷に円高が重なり、デフレ圧力は高まっている。日本の実質金利は高くなり、米国との実質金利はさらに縮小する気配である。仮に、英国がEU残留となり、市場で円が売られても、一過性の「巻き戻し」に終わっただろう。

 日銀が円高傾向に歯止めをかけるためには、量と金利の両面で追加緩和に踏み切る必要がある。「量」の追加緩和は、国債の購入額を現在の年間80兆円から100兆円に引き上げる案が有力だが、逆に円高要因になりうるので、威力に疑問符がつく。日本国債が品薄になると相場はさらに上昇すると見込まれ、海外からの投機買いを招き寄せる。その結果も円高だ。

 世界では市場リスクが渦巻いている。中でも、チャイナリスクは膨張の一途である。

 中国の銀行不良債権は今年3月時点で、国内総生産(GDP)比で2割を超えると国際通貨基金(IMF)はみている。日本の場合、1990年代のバブル崩壊後の不良債権比率はピーク時で12%程度だった。習近平政権は国有商業銀行を通じた融資を急増させて、ゾンビ企業を生き長らえさせている。不良債権処理は先延ばしされ、さらに巨大化する。

 チャイナリスクが再浮上すれば、さらに円高が加速しかねない。日本国債は世界では、ドイツ、スイスの国債と並んで最も安全な金融資産としてみられているからだ。

 円高に歯止めをかけるための、残る機動的かつ弾力的な手段はマイナス金利政策の強化しかない。

 日銀は新規に金融機関が日銀の当座預金口座で積み増す資金について0・1%の金利を徴収しているが、その対象を広げると同時に、マイナス金利幅をさらに拡大する余地がある。すると国債利回りは即座に下がり、米国との実質金利差を広げられるはずだが、日銀は慎重だ。

 銀行界トップの三菱東京UFJ銀行が強く反対しているからだ。三菱UFJは新規発行国債の入札特権を財務省に返上し、マイナス金利国債の入札には応じるとはかぎらないとの姿勢をあらわにした。

 このまま、日銀が手をこまねいていると、円高が進行する結果、デフレ不況に舞い戻りかねない。株価も低迷し、アベノミクスへの逆風が強まるだろう。チャイナリスクが爆発してからでは、遅すぎる。日銀は毅然(きぜん)としてマイナス金利政策を展開すべきではないか。(編集委員)

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2016.6.25 01:00
【英EU離脱】世界危機ドミノがいよいよ迫ってきた 轟いた金融体制崩壊連鎖の号砲 編集委員 田村秀男


急激な円高が進んだ対ポンド、ドル為替相場を表示するボード=24日午後、東京・東新橋の外為どっとコム
 英国の欧州連合(EU)からの離脱は金融主導の経済体制崩壊連鎖の号砲である。衝撃度は2008年のリーマン・ショックをしのぐかもしれない。迫り来る世界危機のドミノに対し、日本は潜在力をフル出動させなければならない。

 リーマン時では米連邦準備制度理事会(FRB)がドルを大量発行することで大恐慌の再来を防いだが、中国に流れ込んだドルは過剰設備・不動産に化け、今や銀行不良債権を際限もなく膨らませている。米国では紙幣を印刷して借金を返済すると叫ぶ共和党トランプ氏が今秋の米大統領選有力候補になっている。

 国際金融センター、ロンドンを抱える英国は、グローバルなカネの流れを左右する。そのEUからの離脱は国際金融体制のほころびを意味するから、リスクある各地で危機を誘発する。

 旧英領香港を通じて、ロンドン市場に深く結びついている中国はとりわけ危うい。タックスヘイブン(租税回避地)の内情を暴露した、かのパナマ文書によれば、共産党幹部一族や国有企業が世界でもっとも多くタックスヘイブンに資産を逃避させている。ロンドンの金融街シティーはタックスヘイブンの総元締めだ。シティーは人民元の国際取引に全面協力し、収益を稼ぐ。

 元国際通貨化の勢いを駆って、国有商業銀行は企業や地方政府に対し、巨額の融資を続ける。鉄鋼などのゾンビ企業は過剰生産をやめない。上海などでは不動産バブルが再発した。銀行の不良債権は北京当局発表ではこの3月末で融資残高の1・4%だが、国際通貨基金(IMF)の基準だとその10倍、国内総生産(GDP)比で2割、日本円換算で約230兆円に膨らむ。

 米国の有権者も英国民と同じく、グローバリズムに反発を強めている。トランプ氏はメキシコからの移民を遮断する一方で、FRBにカネを刷らせて日本などへの借金を返し、国内雇用を回復させると意気込む。ドル基軸体制の利点を乱用するわけで、ドルの信用は地に落ち、国際金融市場を破壊しかねない。そんな市場の懸念は、反ウォール街の政治潮流に封殺されている。金融主導経済への不信感を強めた世論が作用したEU離脱騒ぎは底流が同じだ。危機は米中という世界1、2位の経済超大国に連鎖しかねない情勢だ。

 日本はどうすべきか。世界有数の安全資産、日本国債は金利マイナスでも買い手が殺到している。おかげで超円高に突き進みかねない。ならばチャンスだ。

 財政資金をマイナス金利国債で調達して、インフラ整備や人材投資など経済再生に使う。対外金融資産は900兆円以上もある。それをリスクだらけの国際金融市場にまかせるのはばかげている。

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【お金は知っている】日銀は公然と反旗を翻した三菱東京UFJの“圧力”に屈するな
6.17

 英国の欧州連合(EU)からの離脱か残留を問う23日の国民投票が近づくにつれ、外国為替市場では円高が止まらない。

 英国離脱となれば、他のEU参加国に飛び火し、「EU解体」危機に発展し、欧州経済は大混乱に陥り、全世界に波及する、という連想が生まれ、全世界の株式市場が揺れる。不安に駆られた世界各地の投資家は安全な逃避先として日本、ドイツ、スイスの国債と通貨に殺到する。

 円高はどこまで進むのだろうか。英国・EU問題を脇に置いてみると、基本的かつ中長期的な円・ドル相場のトレンドはやはり、日米の実質金利によって決まる。グラフは日米の10年物国債の名目利回りから消費者物価上昇率を差し引いた実質金利の差(米国マイナス日本)と円ドル相場、および日本国債利回りの推移を比較している。

 一目瞭然、円相場は実質金利差に沿って変動していることがわかる。統計学でいう相関度は0・81(1が完全相関)と極めて高い。それに対して、国債の名目利回りは低落傾向を一貫して保っているが、円相場との相関度はかなり弱いことが見て取れる。

 ということは、円相場の決定要因は日米双方の名目金利とインフレ率になる。米国の金利は日本と同様、今年に入って下落しているが、インフレ率の方は上昇気味であり、実質金利は下落している。これに対し、日本のほうはインフレ率がマイナスに再び落ち込んでおり、国債利回りのマイナス幅よりも低い。このため、実質金利はむしろ上昇気味であり、日米の金利差が縮小している。
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 米連邦準備制度理事会(FRB)は当面、利上げに慎重なので、インフレ率が現状のままだとすれば、米実質金利は上がりそうにない。

 日銀が円高傾向に歯止めをかけるためには、量と金利の両面で追加緩和に踏み切る必要がある。「量」のほうは、国債の購入額を現在の年間80兆円から100兆円に引き上げる案が有力だが、逆に円高要因になりうる。国債相場が上昇(国債利回りの低下)すると見込まれるので、海外からの買いを招き寄せて、円高につながるからだ。

 その点、マイナス金利政策を強化すれば、実質金利も下がり、米国との金利差を広げられるので、円安効果が期待できるのだが、収益減を恐れる銀行界トップの三菱東京UFJ銀行が公然と反旗を翻す始末だ。

 何しろ三菱UFJといえば、かつて三菱銀行時代は日銀総裁にトップを送り出したほど「格式」が高く、新卒の入行審査の面接回数の多さは日銀と同等である。三菱UFJのトップは「哲学の相違」を口にしてまで日銀に刃向かうが、目先の収益優先で日本経済に貢献できるはずはない。

 英国のEU離脱が決まれば、円高デフレ不況の再来も懸念される。日銀がマイナス金利という伝家の宝刀を封印したら、アベノミクスの効能は薄れる。日銀は三菱UFJの圧力に屈してはならないはずだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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【田村秀男の経済講座】マイナス金利政策にNOを突きつけた銀行に言いたい 特権と引き替えに課せられた社会的使命をお忘れか?


 15、16両日に日銀金融政策決定会合が開かれる。安倍晋三政権は消費税増税の延期決断に続く、日銀の追加金融緩和によって景気浮揚に弾みをつけたいところだが、日銀の周辺から思わぬ「反乱」に遭遇している。

 銀行界最大手の三菱東京UFJ銀行が国債入札に有利な条件で参加できる特別資格を政府に返上するという。日銀によるマイナス金利政策に「ノー」を突きつけたのだ。

 国債入札特別資格を持ったままだと、銀行はすべての入札で発行予定額の4%以上に応札する義務があり、マイナス金利のもとで額面より高い値で国債を買わされる羽目になる。国債の相場がその後下落すれば、大きな損失を受けるリスクがあるので、特別資格が邪魔になった。銀行寄りの論調の日経新聞は、他のメガバンクも追随しかねないと、報じている。

 が、ちょっと待てよ。あなた方、銀行は何か忘れてはいませんか。

 銀行は他の業種にはない特権が首相から認められている。製造業などはぎりぎりまで人件費や原材料などコストを切り詰めても、販売価格がどうにもならず、ときには原価割れを覚悟しなければならない。かたや銀行は、低コストの資金を預金者から集め、より高い金利で融資し、利ざやを確実に稼げる。おまけに日銀の当座預金口座に資金を寝かせたままで、銀行員が椅子に座ったままでも、大半は日銀から0・1%の利子が振り込まれる。バブル崩壊後には、総額で十数兆円の公的資金の注入も受けた。

 どれもこれも、「国民経済の健全な発展に資する」(銀行法第1条)という銀行の公共性が、国家によって認められているからだ。

 国債は金融市場の要である。金融市場が揺らげば、国全体の経済運営に支障をきたす。銀行が国債を購入して市場安定に貢献する。国民から集めた預金を源泉とする資金を政府に供給して、世の中にカネが回るようにするのは、銀行法の趣旨を引用するまでもない、銀行として当然の社会的義務のはずである。

 銀行側にも言い分はあるだろう。国債相場が大きく値崩れすれば、資産が目減りする。資産が預金を下回れば債務超過になり、信用危機が起きる、と。
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 その可能性はゼロとは言い切れないが、日銀が年間80兆円と、新規発行の2倍以上もの国債を銀行などから買い上げるので、国債はむしろ品不足である。そのせいで国債相場は上がり続けてきた。それでも国債暴落リスクを言い立てるのは現実から遊離した架空、仮定の論法ではないか。

 消費税増税の延期によって財政再建が困難になり、国債の信認が揺らぐという、一部メディアの自虐論もある。しかし、増税が内需を萎縮させて、企業の借り入れ意欲を冷やす結果、銀行融資への需要がうせる。税収は減り、財政収支が悪化する恐れがある。

 三菱UFJの物言いは何よりも日銀政策を縛る。安倍政権内部からは日銀に国債の購入枠を100兆円に引き上げる追加緩和策を求める声はあっても、「マイナス金利については現状維持でやむなし」との声が聞こえるし、日銀側も政策決定会合の議題にも上げそうにない。

 預金金利をマイナスにしにくい中で、マイナス金利幅を広げられると銀行の収益基盤が弱くなる。前述したように、既存の日銀当座預金の超過準備分は0・1%の利子がもらえるのだが、それを廃止されるだけで銀行界全体では年間約2100億円の収入が吹っ飛ぶ。

 グラフは第2次安倍政権が発足した平成24年12月を起点に、銀行の国内外融資などの推移を追っている。国内銀行の貸し出しは最近になって増え始めたが、いま一つ力強さに欠ける。中堅・中小企業向け融資は信用保証協会による融資の80%保証など政府の支援策にもかかわらず、前年比で3%台の伸びにとどまっている。20%分の融資リスクにすら銀行は尻込みする。

 対照的に、海外での融資には積極的で、アベノミクス開始以降、昨年末までの融資増加額は約60兆円で、国内の40兆円余をしのいだ。日銀が銀行から国債を購入する結果、銀行の国債保有額は減り続けるが、銀行はそこで得た資金の多くを国内ではなく、海外で運用している。

 銀行側が収益減やリスク増を理由に日銀政策に反発しても、特権享受に見合うだけの役割を「国民経済」に対し果たしているなら、まだ説得力はあるかもしれない。だが筆者のみるところ、銀行の日本経済再生に向けた意思と行動は貧弱過ぎる。(編集委員)

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【お金は知っている】米中摩擦にダマされてはいけない トランプ氏もヒラリー氏も実利主義者だ


中国の鉄鋼生産と対日輸出単価
 6、7日の両日、北京で開かれた米中戦略・経済対話の経済分野の最大のテーマは中国の鉄鋼過剰生産問題だった。貿易制裁を武器に大幅減産を迫るルー米財務長官に対し、中国の楼継偉財政相は「鉄鋼業界の52%以上は民営企業が占めるため、厳しい原産割り当ては無理」と強弁した。「民営企業」とは看板に過ぎず、実質的には共産党が支配しているくせに、民間に口が出せないとはよくぞ言ったものだ。揚げ句の果てに「リーマン・ショック後は、経済成長を押し上げたとして世界が中国に感謝したが、今では世界が中国を名指しで批判している」とぼやいた。(夕刊フジ)

 1970年代から90年代前半にかけての日米通商摩擦では、米側の一方的な無理難題に対し、日本側は「日米関係を壊さないように」を合言葉に、多くのケースで米側に譲歩してきた。その日本に比べると、さすがは口舌の徒の国だ。スプラトリー(中国名・南沙)諸島の埋め立てに関する王毅外相の強引な正当化論法と同様、黒を白と言いくるめて譲らない。
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 米国は、党が支配する異形の市場経済であっても、自由貿易ルールに取りこめると踏んだが、手に負えない怪物と化したのだ。が、ワシントンが後悔しており、対中強硬策をとる、制裁すると見たら甘すぎる。

 共和党の大統領候補が確実になっているドナルド・トランプ氏は中国製品への関税を大幅に引き上げると口にはするが、利益になると見ればすぐに取引に応じる実利主義者である。

 同じく、民主党の指名を確実にしたヒラリー・クリントン氏も口では対中批判しても、裏では中国系からの献金を受けている。オバマ政権当時の国務長官時代でも、内輪の会合で「米国債のスポンサー中国に頭を下げなければいけないのか」とぶつぶつ言いながら、公式の場では満面の笑みで米中友好に励んでいた。中国は依然として、米ビジネス界にとっては巨大市場なのである。

 それを見越した北京側は今回の対話でも、環境ビジネス権益などのニンジンをちゃんと用意している。

 グラフは中国の鉄鋼生産と鉄鋼製品の対日輸出平均価格の推移である。世界の鉄鋼の過剰生産能力は7億トン超で、そのうち中国の過剰分が約6割、4億トン超を占めるという。李克強首相は今年初め、1億〜1・5億トンを5年間で削減するよう指示したが、実際には逆に増産していることがわかる。

 対日輸出価格は3年前から急落を続け、半値以下に落ち込んでいる。対米輸出平均価格は下がってはいるが、その幅はなだらかで、最近はむしろ上昇気味である。

 米国国際貿易委員会(ITC)は伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)が開幕した5月26日、中国の大手鉄鋼メーカーとその米国支社計40社に対し、関税法違反容疑で調査に入ったが、知的財産権侵害でありダンピング容疑ではない。

 日本政府は「米中摩擦」に気を取られず、さっさとダンピング容疑で毅然(きぜん)とした行動を中国に対しとるべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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