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経済はだれにでも分析できる。そして、国内の政策や世界の外交・安全保障・軍事も経済を通してその真偽を見抜ける。

ヘリマネ論議にソロス氏の影ちらり 導入議論、今後盛り上がりそう

2016.7.21 06:25
 日本を舞台に、カネをヘリコプターから大量にばらまけば、景気が良くなるという「ヘリコプターマネー」論議が活発になっているが、そこには著名投資家のジョージ・ソロス氏の影がちらついている。
 ソロス氏は英国のアデア・ターナー前金融サービス庁(FSA)長官を通じて、ヘリマネ・キャンペーンを展開している。ターナー氏はイングランド銀行総裁候補になった英金融界の実力者である。2013年4月にソロス・ファンド出資のシンクタンク「新経済思考研究所」ロンドン事務所上級研究員に迎え入れられると、すぐにOPMF(Overt Permanent Money Finance=中央銀行による公然恒久財政ファイナンス)と呼ばれる独自のヘリマネ理論を提唱した。
 中央銀行が保有する国債を無利子の恒久国債に換えることで、国債を事実上償却し、政府は債務に制約されずに財政出動できるようにする財政・金融一体化案だ。
 ソロス氏とターナー氏は安倍晋三首相に近い日本の要人、経済学者ともコンタクトして、盛んにヘリマネ政策導入の必要性を説き付けている。
 そんな雰囲気の中、ベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が7月12日に安倍晋三首相に招かれた。バーナンキ氏はヘリマネ政策を最初に提起した故ミルトン・フリードマン教授の信奉者であり、あだ名は「ヘリコプター・ベン」。バーナンキ氏は安倍首相との会談で、「ヘリマネ」という言葉を直接引用しなかったものの、財政出動の必要性を認めると同時に、「金融政策の手段はいろいろと存在する」と語ったという。
 脱デフレ、経済再生へ政府・日銀連携を
 安倍首相の信頼の厚い本田悦朗前内閣官房参与(現駐スイス大使)は早くからヘリマネに関心を持ち、数カ月前にバーナンキ氏に会って安倍首相に会うよう勧めていた。バーナンキ議長の来日前には首相に対して、財政と金融政策の組み合わせによる財政出動に踏み切るよう、提言していた。本田氏はあからさまなヘリマネ策を取らなくても、異次元緩和を強化すると同時に財政をふかせばヘリマネと同様の効果が出せるという。いわばCMF(Covert Money Finance=中央銀行による非公然財政ファイナンス)で、現行の枠組みを活用するわけだ。
 こうみると、ターナー、バーナンキ両氏の理論は本田氏ら首相の経済指南役にかなり強力な影響力を及ぼしていることがうかがえる。公然あるいは非公然、恒久あるいは限定的かはともかく、財政と金融緩和の両輪を回すことを基本にした日本版ヘリマネ策導入の議論は今後、秋の大型補正予算、さらに来年度予算編成のプロセスの中で盛り上がるだろう。
 その間、投機家ソロス氏が円相場や日本株でどんな出方をするかも気になるところだが、要は政府・日銀が粛々と脱デフレ、経済再生に向け、最も有効な政策で足並みをそろえることが肝心だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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2016.7.13 05:00
ヘリコプターマネー検討、安倍首相周辺で浮上 日銀資金で財政出動 「今がチャンスだ」と高官ら進言 


東京都内の日銀本店(ロイター)
 安倍晋三首相周辺で、日銀が国債を買い切って財政資金を提供する「ヘリコプターマネー」政策の導入が検討課題に浮上してきた。市中銀行経由では家計や企業に流れにくい巨額の日銀資金を、財政を通じてインフラ整備、教育などに投入、脱デフレ・経済再生を目指すが、財政規律の順守や日銀同意が課題となる。(編集委員 田村秀男)

 前内閣官房参与の本田悦朗駐スイス大使が最近、首相に「今がヘリマネーに踏み切るチャンスだ」と進言した。

 首相は本田氏らの勧めに応じて12日に官邸でバーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長と会談。菅義偉官房長官は記者会見で、ヘリマネーに関して「特段の言及があったとは承知していない」と述べた。一方で、バーナンキ氏が「金融緩和の手段はいろいろ存在する」と指摘したことを明らかにした。

 バーナンキ氏はヘリマネー論の権威で知られる。2008年のリーマン・ショックでは、ただちにドル資金の大量発行に踏み切り、金融恐慌を終わらせ、米景気を回復させた。

 また、現内閣官房参与の浜田宏一エール大学名誉教授は12日、関係者に「一度限りという条件ならヘリマネーを検討してもよい」と語った。浜田氏は金融緩和を重視し財政出動には慎重だが、平成26年度の消費税増税後、デフレ圧力が再燃していることを憂慮している。

 デフレで消費が萎縮する中で金融緩和しても、民間の借り入れ意欲は乏しい。日銀は今年2月にマイナス金利政策を導入したが円高を止められない。財政を活用しない限り、アベノミクスは回生できそうにない。

 異論も多い。日銀が財政資金を直接賄うようだと財政規律がないと市場にみられ、円や国債への信認が失われる恐れがある。

 黒田東彦日銀総裁も消極的だが、日銀が金融機関保有の国債を買い上げる現行方式で、ヘリマネー効果を実現する道はある。要は財政と金融の一体化だ。

 まず、政府と日銀は協定を結ぶ。日銀は市場で買い取った国債を再売却せず、半永久的に保有する。政府は取り決めの範囲内で国債を発行する。政府の債務増加分は日銀の資産増加で相殺されるので、政府の債務は実質的に増えない。

 インフレ率が一定程度上昇すれば、日銀は国債購入を打ち切るし、政府が消費税率を引き上げるようにすれば、財政規律にも沿う。


 ヘリコプターマネー ノーベル経済学賞受賞の米経済学者、ミルトン・フリードマン氏(故人)が1969年に提唱した。中央銀行はお札を刷って市中銀行に供給する。デフレ圧力が強いと、カネは銀行から家計や企業に細々としか流れないのでデフレが慢性化する。そこで中央銀行資金を政府財政に回せば迅速に家計や企業に行き渡らせられるので景気がよくなる-というもので、ヘリコプターからカネを大量に散布する寓話(ぐうわ)に例えた。バーナンキ前FRB議長はフリードマン氏の弟子である。

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2016.7.9 10:00
【田村秀男のお金は知っている】下落続く人民元 中国不動産バブル崩壊と同時に暴落が起きる


人民元の対ドル相場と外貨準備
 中国の通貨、人民元の下落が続いている。7月5日時点では1年前に比べて対ドルで8・8%安くなっている。円に対してはさらに下落幅が大きく、20%安である。(夕刊フジ)
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 グラフは過去1年間の元の対ドル相場と中国の外貨準備高の推移である。元安トレンドは外貨準備の減少と密接に連動している。

 中国は中央銀行である中国人民銀行が外貨を集中管理する制度をとっている。人民銀行は流入する外貨の大半を買い上げるかわりに元資金を供給するし、大量の元売り、外貨買いを引き起こす資本逃避が起きると、人民銀行は外準を取り崩して外貨を売って元を買い取る。

 人民銀行は原則として前日の元相場の終値を基準にして、当日の元の交換基準レートを決め、その基準値の上下各2%の幅で変動させる管理変動相場制をとっている。人民銀行は昨年8月13日、同10日に比べて4・57%基準値を下げたが、前日比で2%以内の幅での切り下げを繰り返した結果だった。

 人民銀行は既存の管理変動制度の枠内での操作であり、大幅切り下げではないと説明したが、中国内外の投資家は元安政策への転換だとみた。元安を恐れた中国国内の投資家や富裕層は海外の不動産に投資し、消費者は元の価値が高いうちに日本など海外で爆買いに走った。

 爆買いの担い手は、主婦など個人が周囲の知り合い向けに日本製品などをまとめ買いし、手数料を稼ぐ代行業者だ。上海などの空港税関は今年初めから、何個も同じ日本製品を抱えた帰国者に対し規則通りの高い関税率を適用するようになった。その途端、爆買いブームが吹っ飛んだ。

 他方で、習近平政権は元安を必要としている。国内では鉄鋼など設備過剰が深刻化しているため、輸出に頼らざるをえない。

 習政権はいつまで元安路線を続けられるだろうか。その鍵は外貨準備にある。豊富な外準がある限り、元売り投機のチャンスをうかがっているジョージ・ソロス氏らヘッジファンドの攻勢をかわすことができるからだ。

 その外準は年間で5000億ドル(約51兆円)以上も減っている。資本逃避が収まらない。それでもまだ外準は3兆ドル(約306兆円)以上もあり、世界ダントツだと当局者は言い張るが、実は虚勢でしかない。

 外準というのは帳簿上、資産だが、外からカネを借り入れてもそのまま外準に参入できる。中国の場合、対外負債は3月末現在で外準を1・3兆ドル上回っている。いわば、借金によって外準の落ち込みを何とか食い止めている。中国にカネを持ち込むのは主として中国資本である。

 上海など沿海部の大都市では不動産バブルが再発している。香港経由でタックスヘイブン(租税回避地)に資産を移した党幹部一族など特権層が不動産市場に投資する。そこで名義上だけは「外資」のカネが流入するのだが、これらチャイナマネーの逃げ足は速い。バブル崩壊と人民元暴落は同時に起きるだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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2016.7.10 07:00
【田村秀男の日曜経済講座】荒れる世界の金融市場 日本は「ヘリマネー」検討のとき


 世界の金融市場の波乱が収まらない。英国の欧州連合(EU)からの離脱選択がきっかけだが、主因は中央銀行が創出したカネによって一時的に押し上げられた株式など資産市場の脆弱(ぜいじゃく)さにある。金融偏重で財政支出による実物需要拡大を怠った政策の誤りによる。究極の打開案は、中央銀行資金を財政出動の財源とする「ヘリコプターマネー」政策である。円高・マイナス金利の日本が検討する価値は十分ある。

 グラフは、世界の国内総生産(GDP)、株価、通貨発行量(マネタリーベース)の推移である。通貨は国際通貨基金(IMF)が主要国際通貨として認定しているドル、ユーロ、円、英ポンドを選んだ。中でも基軸通貨と呼ばれるドルは中国など新興国や発展途上国の通貨の価値を裏付けているので、世界経済への影響力はずば抜けている。
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 2008年9月には「史上未曾有の金融危機」と騒がれたリーマン・ショックが起きた。米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和によりドル資金を大量発行して金融機関に流し込んだ。

 カネを刷れば景気はよくなっただろうか。

 08年9月から15年末までの4大通貨発行量は5・5兆ドル増え、2・5倍に上ったのに対し、世界のGDP総額は約10兆ドル、16%増えたのにとどまる。07年までの6年間では国際通貨発行量が1ドル増えるとGDPは15ドル増えたのに比べ、実体景気への効き目は極めて悪くなった。

 対照的なのは株価だ。世界をカバーする株価指数MSCIによると、先進国株価はとりわけドルの増量に連動した。だが、14年秋にFRBが量的緩和政策を打ち切った途端に失速した。新興国の株価はその前から急落を始めた。

 日本では日銀が13年から異次元金融緩和に踏み切ったが、景気は14年度に消費税増税を実施すると大きく落ち込んだ。デフレ圧力を受けた日本の株価の上昇局面は15年半ばに終わった。欧州のユーロ圏も日本と同様、金融緩和偏重であり、量的緩和と同時にマイナス金利政策を展開しているが、リーダーのドイツは緊縮財政路線を変えようとせず、そのしわ寄せがギリシャ、スペインなどに及ぶ。

 通貨膨張の副産物は世界的な債務の膨張である。国際決済銀行(BIS)統計によると、世界の企業・家計・政府合計の債務総額はリーマン後から15年末の間に38・4兆ドル増えた。このうち約20兆ドルは中国が占め、米国の2倍近い。中国はリーマン後、ドルの増発と同規模の人民元を発行し、国有商業銀行を通じて生産設備と不動産に投入して景気を拡大させたが、14年には不動産市況が悪化し、過剰生産が表面化した。

 当局発表では経済成長率は7%前後を維持しているが、実物生産のほうはマイナス成長が深刻化している。資本逃避が激化し、15年12月以来、外貨準備が年間で約5千億ドルも減少している。習近平政権は国有商業銀行に対し、融資を急増させて株価を急騰させたが、1年前に株式バブルは崩壊した。その後は上海などで不動産バブルを再発させているが、実体景気のほうは停滞したままだ。

 景気の実態と乖離(かいり)した債務には返済不安、言い換えると貸し手にとっては不良債権のリスクが高まる。英国のEU離脱騒ぎとともに景気先行き不安と不動産市況下落が起きた欧州では潜在的な不良債権を抱えた大手銀行株が急落している。中国は同様の恐れがあり、その衝撃度は欧州のそれをはるかにしのぐだろう。

 巨大なリスクの海に浮かぶ世界の金融市場で、比較的安全とみなされるのが米国と日本だが、米国は今秋の大統領選挙を控え、政策面では先行きが不透明だ。

 その点、日本は政権が安定し、リスクにおびえる世界の投資ファンドは日本国債に殺到し、長期国債は20年物まで利回りがマイナスに転じるほどだ。それは円高を招くが、同時に大胆な財政出動に踏み切る余地を広げている。

 政府に利子収入が転がり込むマイナス金利国債を財源に、先端技術研究やインフラ整備、教育などの分野に投入すれば、軽い財政負担で次世代の機会を提供する一石二鳥ではないか。ヘリコプターマネーについては、本欄5月1日付で詳報したように、日銀の直接引き受けなら財政規律に反するとの批判が根強いが、従来通り市場経由で日銀が買い取って半永久に保有すると宣言すれば済む。ヘリマネーではないが効果は同じだ。小欄はリーマン後から金融と財政の両輪をフル稼働させよと主張してきたが、今はラストチャンスだろう。(編集委員)

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http://www.sankei.com/premium/news/160702/prm1607020009-n1.html
2016.7.2 10:00
【お金は知っている】泥舟AIIBに財務官僚OBが助け船


アジア開発銀行(ADB)の主要国別融資(2015年末)
 英国の欧州連合(EU)離脱を支持する国民投票結果が、国際金融界を震撼させている最中の6月25日、北京では中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の第1回総会が開かれた。総会で韓国代表、柳一鎬(ユ・イルホ)経済副首相兼企画財政部長官が「AIIBは金融危機緩和に役立つ」とはよくぞ言った。AIIBは資金調達力がなく泥舟同然なのだ。(夕刊フジ)

 金立群AIIB総裁は参加国数が同じくインフラ支援を行うアジア開発銀行(ADB)をしのぐ情勢だと胸を張るが、肝心なのは資金力である。AIIBは国際金融市場での信用に欠け、資金源は中韓の外貨準備をあてにするしかない。金総裁は中国政府がAIIBの特設ファンドにポンと5000万ドル(約51億円)を提供すると言うが、年間で5000億ドル(約51兆円)以上も外貨が減る中でやっとひねり出した。韓国はAIIB債を一部引き受けたそうだが、外貨不安がつきまとっている。

 AIIBに助け船を出したのはADBである。ADB総裁の中尾武彦氏は財務官出身で、「現役当時からかなりの親中派として知られる」(財務省OB筋)。金総裁は鳩山由紀夫元首相に諮問委員会の委員就任を打診したそうだが、中尾氏ら対中協調派を目立たなくするための目くらまし工作なのだろう。
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 ADBはこのほど、パキスタンの高速道路プロジェクトでAIIBとそれぞれ1億ドル(約102億円)を受け持つ協調融資を取り決めた。AIIBはこのほか3件のプロジェクトに融資する計画を発表したが、単独融資はバングラデシュ向けの1・65億ドル(約168億円)だけである。残りは欧州開発銀行や世界銀行との協調融資で、合計4件でのAIIB融資額は5億900万ドル(約519億円)。

 さてこの資金はどこからくるのか。

 ADBの金融報告書によると、昨年末時点でのADBからの最大の借り入れ国は中国である。その未実行額は76・7億ドル(約7827億円)もあり、昨年中に承認した新規分は20・5億ドル(約2092億円)もある。これらの融資はもちろん中国のプロジェクト用だが、なんか変だ。そもそも、みずからの主導でAIIBを設立し、「豊富」と自称する外準を使って他国にカネを貸すゆとりがあるのに、なぜ新規に借り入れるのか。

 ADB対中新規融資額はAIIB融資額の4倍にも達する。北京がADB資金を流用すると断じるわけではないが、ADBから入ってくる外貨を利用すれば、外準を減らさなくても悠々とAIIB資金を工面できる計算になる。

 借金国が他国にカネを貸してもおかしくないし、AIIBは膨大なアジアのインフラ資金需要に対応できないADBを補完できる、と中尾氏はAIIBを一貫して擁護してきた。ならば、中国はADBからではなくAIIBから融資を受ければ済むし、ADBは中国に融資せずに、インフラ資金の不足している国にそっくり融資するのがスジというものだ。AIIBを仕切る中国はADBの役割を補完するどころか、破壊している。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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