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経済はだれにでも分析できる。そして、国内の政策や世界の外交・安全保障・軍事も経済を通してその真偽を見抜ける。
【お金は知っている】外国人が讃える国民性を逆用する“財務官僚御用メディア”

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内外の登山者がひしめく富士山頂
 8月11日の「山の日」に富士登山を敢行した。登山者のラッシュの中、ゴミらしきものはほとんど見当たらず、全員が整然と歩み、休む。10人中3、4人は外国人だ。金剛づえに日の丸をくくり付け、誇らしげに登るのは台湾を含む東南アジア、米欧、中東、中南米の人たちだ。(夕刊フジ)

 国際的にも称揚される日本人の規律。その国民性を逆手にとって自己利益を追求するのは、経済の緊縮を是とする財務官僚とそれに追従する御用メディアだ。

 朝日、毎日、日経新聞はこれでもか、これでもかと緊縮財政を求める。突出しているのは日経で、財務省が10日に「国の借金」が6月末で1053兆4676億円になったと発表するや、国民一人当たりで約830万円の借金を抱えていることになると騒いだ。経済に多少でも精通していれば、すぐわかる詭弁(きべん)である。

 国債の9割以上は金融機関経由で国内の預金者が保有しているのだから、国民一人当たり約800万円の資産なのである。借金の当事者は財務官僚なのだから、それほど問題だと言うなら官僚は給料を返上すべきなのだ。

 日経はこの大本営発表のタイミングに合わせて朝刊1面で「日本国債」と題した記事を5回にわたり連載した。米欧系投資ファンドが投機の口実に使う日本国債の暴落不安要因を並べ立て、消費税増税と緊縮財政強化をせきたてる。最終回は15日の終戦記念日付で、敗戦時には国債が悪性インフレのために紙くずと化したと断じた。このときばかりは国債を「国民の借金」ではなく「資産」とみなすご都合主義だ。

 8日には、天皇陛下が「生前退位」のご意向を示されたお言葉の中で、「健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶ」と懸念されたくだりには、とりわけ胸を打たれた。

 日本経済は元号が改まるたびに、大不況に襲われる。大正天皇崩御の4カ月後、1927年3月の「昭和金融恐慌」、昭和天皇崩御(1989年1月)後の「平成恐慌」である。いずれも政官の指導者による緊縮政策が引き起こしたが、その政策転換までには多くの年月がかかっている。

 昭和恐慌の場合は1932年12月の高橋是清蔵相まで待たなければならなかった。バブル崩壊を伴った平成恐慌は慢性デフレへと停滞局面が続き、2012年12月の第2次安倍晋三政権が打ち出したアベノミクスでようやく政策転換がなされた、と思ったら、財務官僚が敷いた罠(わな)にはまった。14年4月からの消費税増税と財政支出削減であり、浮上しかけた景気はゼロ成長とデフレ局面に陥った。

 安倍首相はようやくこの失策に気付き、消費税率の10%引き上げを2度にわたって延期したうえに、総事業費28兆円超の大型経済対策に踏み切ることにしたが、要は秋だ。安倍政権は執拗(しつよう)きわまる財務官僚や御用メディアによる緊縮包囲網を突破するしかない。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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財政出動「投資加速」に迫力不足 民間資金100兆円の呼び水に

【田村秀男の経済から世界を読む】
 政府は2日、臨時閣議で事業費28兆1000億円の大型経済対策を決定した。成否の鍵は、財政支出が民間の消費や投資の呼び水となるかどうかにある。国内で積み上がる年間約100兆円の余剰資金を流れ出すようにする。そのためには一過性ではなく、中期的で継続的な財政拡張・成長戦略を明確にし、内需の確信を民間で回復させるべきだ。
 政府経済対策は保育、介護、最低賃金引き上げなど家計へ目配りするが、目的に掲げる「未来への投資の加速」は迫力不足だ。目玉はリニア中央新幹線の前倒しだが、あとは各省庁官僚による小粒の寄せ集めだ。財政をテコに民間で眠る膨大な資金を動員してみせる、という安倍政権の気迫が伝わってこない。
 官僚の思い込み障害
 障害は、財務官僚が長年にわたって政治に刷り込んできた膨大な政府債務と財源難という思い込みだ。政府債務はネットでみると国内総生産(GDP)比は米国と同水準で、世界最大の対外債務国米国の方は大統領候補の共和党トランプ、民主党クリントン両氏とも、財政出動で競い合っている。最大の対外債権国日本は札束の山に埋もれ、沈みかけている。
 日銀は年間80兆円もカネを刷って金融機関に流し込んでいるのに、銀行は日銀当座預金に300兆円以上も留め置いている。日銀が当座預金新規分について利子を徴収するマイナス金利を2月に導入したが、銀行は6月までに日銀当座預金をさらに40兆円も増やした。このうちマイナス金利適用分までも3.4兆円増えた。
 対照的に、銀行貸出増加額は6600億円にとどまる。他方、企業の利益剰余金は3月末で320兆円もある。日銀当座預金、利益剰余金とも、融資や設備投資、雇用改善に使えるはずの軍資金だ。その合計残高は620兆円以上、それが毎年100兆円ずつさらに増えている。需要を生むはずのカネがここまで豊富な国は他に例をみない。
 見方を変えると、毎年100兆円を内需に回して日本を再生させるチャンスが目の前にある。これほどの資金余剰をつくり出したのは、3年以上経過したアベノミクスと異次元緩和である。その果実をみすみす腐らせるのはばかげている。
 緩和政策の限界突破
 巨額の民間資金があるのに、日銀資金で財政資金を事実上賄う「ヘリコプターマネー」を評価するのは矛盾しているようだが、萎縮病から目覚めるにはちょうどよい。財源制約に縛られず、未来に向けた政府投資を持続させる。すれば、日銀自身も異次元緩和政策の限界を突破できる。
 例えば、政府は毎年、成長に結びつく社会資本、人的資本、防衛を含む先端技術に10兆〜20兆円を投入する。その財源となる建設国債を発行し、日銀は市場経由で相当額の国債を買い入れる。すると、80兆円もの国債購入枠は半分以下に縮小してもよい。緩和策を延命させると同時に、出口戦略とも取り組める。カネを伴う有効需要に点火すれば、民間にはアニマルスピリッツが徐々にもどり、消費者も経営者も手元資金を使い出すだろう。(産経新聞特別記者)

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2016.7.31 07:00
【田村秀男の日曜経済講座】財政・金融連携の盲点 巨大な民間余剰資金の覚醒を

 日銀の金融緩和追加に合わせて、政府は週明けに事業規模28兆円超の大型経済対策を決定し、財政と金融の連携を明確にする。日銀が財政資金を提供する「ヘリコプターマネー」政策と同じ効果が期待されるが、盲点がある。日本国内ではカネが有り余り、しかもその余剰マネーは膨らみ続けている。眠る民間資金を活用できない限り、日本の再生はおぼつかない。

 グラフは、アベノミクス開始以降の民間の資金余剰の増加ぶりを端的に示している。第2次安倍晋三政権が発足した平成24年12月時点に比べ、今年3月の金融機関の日銀当座預金は228兆円、企業が内部に貯め込んだ利益剰余金は92兆円、合計で320兆円増えた。いわば、アベノミクスの副産物である。
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 両資金の残高合計では642兆円にも上り、名目国内総生産(GDP)約500兆円余をはるかにしのぐ。増加分の3分の1でも消費や雇用、住宅や設備投資に流れていれば、安倍政権が目標とする名目GDP600兆円はとっくに達成されたはずである。

 25年4月に異次元金融緩和に踏み切った日銀は、資金を発行して国債を金融機関から大量に買い上げ、円安と同時に金利低下を促した。円安は株高を伴ってきたが、今年になって円高に反転、株価も不安定になった。金利の方は低下基調が続き、今年2月に日銀が金融機関の日銀での当座預金の新規分についてマイナス金利を導入した途端に、長期金利もマイナス領域に落ち込んだ。

 マイナス金利ではカネを預ける側が利子を払う。ならば金融機関は日銀当座預金を減らし、資金を一般向け貸し出しに回すようになるはずだが、実際にはそうなっていない。6月の日銀当座預金は2月に比べて40兆円も増えている。このうちマイナス金利適用分までも3兆4千億円増える始末だ。対照的に、銀行貸し出し増加額は6600億円にとどまる。

 銀行はマイナス金利に強く反発し、最大手の三菱東京UFJ銀行が国債入札の特別資格を財務省に返上したのだが、国債を売却した資金を当座預金に留め置く従来のやり方を変えていない。銀行が創出される日銀資金を国内で仲介する意識はマヒしている。そのくせ、債務膨張が国際的に不安視されて問題になっている中国に対し、三菱東京UFJ銀行は大型融資するなど、銀行業界は国内ではなく海外向け融資には熱心だ。

 いくら「追加緩和」を強調したところで、日銀の基本路線は変わらない。年間80兆円規模でカネを新たに刷り、金融機関に流し続け、国債を買うので、マイナス金利は今後も続く。手元資金が豊富な企業は、マイナス金利で資金調達できるというのに、事業リスクに脅えて国内では設備投資や雇用の拡大に慎重だ。従来のような日銀の異次元緩和に依存するようでは「無駄カネ」が巨大化するだけだ。

 そこで緩和資金を何らかの形で財政出動に振り向け、内需を刺激、拡大させるという選択は確かに理にかなうが、問題はその中身と持続性だ。

 政府の大型経済対策は、今秋に予定される第2次補正予算、続いて編成される来年度予算での実行が焦点となる。明確なヘリコプターマネーでない限り、政府は財源の制約と債務増加の恐れから逃れるわけにいかない。国債増発には限度があり、公共投資など財政支出がそのままGDPを押し上げる「真水」部分は6兆円前後にとどまりそうだ。

 政府は25年1月に大型補正予算を組んで、25年度の景気を押し上げたが、消費税率が8%に引き上げられた26年度には増税と公共投資などの大幅削減による緊縮財政に転じた。アベノミクス効果は一挙に消滅し、デフレ圧力が再燃し、現在に至る。今回は、安倍首相が来年4月に予定されていた消費税率の10%引き上げを2年半延期したうえでの財政出動だが、前回の消費税増税の後遺症を引きずっているし、20年にもわたる慢性デフレに染まってきた民間資金を単発的な財政出動だけで揺り動かすことができるのか。

 欧州は英国の欧州連合(EU)離脱決定に伴う不安、中国は不況下の不動産バブル、そして米国では大統領選の共和党トランプ候補の反グローバリズムと、日本はリスクの大海に浮かんでいる。

 緊縮財政を支持してきた経団連は、今や政府に対し思い切った財政出動を求めるのだが、企業は剰余金を雇用改善や技術革新に回し、銀行は国内向け融資拡大に向け総力を挙げるべきだ。民間は政府・日銀の連携策に呼応して、社会的使命の原点に立ち返るべきではないか。(編集委員)

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2016.7.29 21:33
【日銀追加緩和】ヘリマネ「偽薬」を処方せよ 編集委員 田村秀男

 日銀は29日の金融政策決定会合で長期国債購入拡大を見送った。黒田東彦日銀総裁は政府に財政資金を提供する「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」に拒否反応を示したのだが、財政と金融の連携強化自体は脱デフレ・日本再生のためには不可欠だ。ヘリマネという劇薬は無理でも、「偽薬」なら調合できるはずだ。

 経済というものはカネを使う消費者や経営者の心理が萎縮していればデフレから抜け出られない。日本国内にはカネが有り余っているのに回らない。日銀は年間80兆円もカネを刷っているのに、銀行は日銀当座預金に300兆円以上も留め置いている。銀行は、企業が借りてくれない、という。無理もない。企業の利益剰余金は3月末で320兆円もある。

 融資や設備投資、雇用改善に使えるはずのカネは毎年100兆円ずつ増えている。日銀がいくらカネを刷っても、無駄金になる。政府が巨額のカネをヘリでばらまくがごとく、日銀マネーを財源に財政出動すればデフレは解消するだろうが、通り越して悪性インフレになりうる。

 ならば副作用がほとんどない偽薬はないものか。国債発行して民間の余剰資金を吸い上げて財政支出する。が、国の借金は国内総生産(GDP)の2倍以上もあると財務官僚が待ったをかける。安倍晋三政権が8月2日に打ち出す経済対策は総事業費28兆円超と銘打っているが、使われるかどうか不確かな政府系機関の融資などをかき集めた。債務の制約で国債増発は数年間で5兆、6兆円が限度、いかにも迫力不足だ。

 解決策はある。政府は債務を増やさずに、民間資金を活用する。国債と同じ条件で発行する財投債は政府の借金ではないと国際的にも認定されている。政府は超長期国債を発行し、日銀は市場経由で買い取り、40、50年間も保有し続けることにすれば、政府は巨額の債務償還を長期間避けられる。巨大な札束の山に埋没しかけている日本列島をピンチからチャンスに変える絶好の機会が到来している。安倍首相と黒田総裁は話し合うべきだ。

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日銀はヘリマネ「偽薬」処方を 日本列島をピンチからチャンスに変える絶好機
2016.7.30 07:00
【田村秀男の経済から世界を読む】

 追加緩和 政府周辺、肩すかしの「ファウル」

 「空振りとは言えないまでも、ファウルだな」。安倍晋三首相の周辺は、日銀が29日の金融政策決定会合で長期国債買い入れ拡大を見送ったことで肩すかしを食らった。財政資金を供給する「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」を警戒する黒田東彦(はるひこ)日銀総裁と、安倍首相周辺には深い溝ができた。しかし、金融緩和偏重では、「黒田バズーカ砲」は無駄撃ちを続けるばかりか、砲弾を撃ち尽くしてしまう。日銀はヘリマネという劇薬は無理でも、偽薬の処方には応じざるを得ないだろう。

 無駄金増えるばかり

 経済というものはカネの動き方で決まり、カネを使う消費者や経営者の心理が萎縮していればデフレから抜け出られない。

 日本にカネはあるが回らない。日銀は年間80兆円もカネを刷って金融機関に流し込んでいるのに、銀行は日銀当座預金に300兆円以上も留め置いている。日銀が当座預金新規分について利子を徴収するマイナス金利を2月に導入したにもかかわらず、銀行はどこ吹く風だ。6月までに日銀当座預金をさらに40兆円も増やした。このうちマイナス金利適用分までも3.4兆円増えた。

 対照的に、銀行貸出増加額は6600億円にとどまる。銀行は、企業が借りてくれない、という。無理もない。企業の利益剰余金は3月末で320兆円もある。

 日銀当座預金、利益剰余金とも、融資や設備投資、雇用改善に使えるはずの軍資金だ。その合計残高は600兆円以上、それが毎年100兆円ずつさらに増えている。日銀がいくらカネを刷っても、さらにマイナス金利にしても、無駄金になるだけで景気は一向に良くならない。金融緩和偏重の政策限界は歴然としている。

 政府が巨額のカネをヘリでばらまくがごとく、日銀マネーを財源に財政出動すればデフレは解消するだろう。が、財政規律は乱れ、悪性インフレになるという負の副作用が心配で、黒田氏に限らず、安倍首相だってそこまで大胆にはなれない。

 ピンチを救う絶好機

 ならば副作用がほとんどない偽薬の出番だ。国債発行して民間の余剰資金を吸い上げて財政支出する。が、国の借金は国内総生産(GDP)の2倍以上もあると財務官僚が待ったをかける。

 安倍政権が打ち出す経済対策は総事業費28兆円と銘打っているが、使われるかどうか不確かな政府系機関の融資などで粉飾する苦心ぶりだ。債務の制約で国債増発は数年間で5、6兆円が限度と迫力不足だ。

 解決策はある。政府は債務を増やさずに、民間資金を活用する。国債と同じ条件で発行する財投債は政府の借金ではないと国際的にも認定されている。さらに、政府が超長期国債を発行し、日銀が市場経由で買い取って40〜50年間保有し続けることにすれば、政府は巨額の債務償還を長期間避けられる。

 巨大な札束の山に埋没しかけている日本列島をピンチからチャンスに変える絶好の機会が到来している。黒田総裁は間髪を入れず安倍首相と話し合うべきだ。(産経新聞特別記者)

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