目玉医者のスローライフ日記

目は心の窓。フリーター眼科医の目に映ったLOHASネタの数々。ゆっくり健康になろう!

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映画「ムサン日記」(4):スギョン

パク刑事は、スンチョルを教会に連れて行く・・・
 
・・・
 
北からの脱出者であるスンチョルの、精神的居場所を見つけるためである。
 
スンチョルはその教会の聖歌隊で歌うスギョンに惚れてしまう。
 
写真1(↓):聖歌隊のスギョン(右から3番目、パンフレットより)
 
イメージ 1
 
しかし、スギョンにとって、スンチョルは影の薄い人物の一人に過ぎない。
 
ある日、スンチョルは牧師に促され、過酷な過去を告白する。
 
その日から、スギョンのスンチョルを見る目が変わる。
 
スギョンは北からの脱出者ではないが、スンチョルの中に、同じ種類の悩みを持つ一人の人間の姿を見たからである・・・
 
・・・
 
スギョンがスンチョルの存在を認め、心を開く場面は感動的である。
 
スギョンは階段の途中で、礼儀正しく、「スンチョルさん」と呼びかける。
 
スンチョル、スギョンが抱える悩みは、社会を生きるすべての人間が抱える悩みでもある。
 
生きるための妥協、生きることの「仕方なさ」を受け入れることへの葛藤である。
 
人はその葛藤のために、精神の血を流す。
 
よって、この映画は普遍的な青春映画の様相を呈している。
 
写真2(↓):カラオケ店でスンチョルに仕事を教えるスギョン(パンフレットより)
 
イメージ 2
 
・・・
 
映画のラストシーンには、賛否両論あるだろう。
 
僕は、ちょっとまずいな、と思った。
 
なぜなら、この日は、うちの女庭師を誘って、一緒に観たからである。
 
彼女はあのシーンを許容するだろうか・・・
 
恐る恐る、どうだった、と聞くと、観てよかったわ、という返事が戻ってきて、ほっとした・・・
 
・・・
 
評論家の川本三郎氏が指摘しているように、この映画にはイタリアン・ネオリアリズムの匂いがあることも申し添えます・・・
 
・・・
 

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映画「ムサン日記」(3):ペッグ(白い犬)

映画には白い犬が出てくる・・・
 
・・・
 
なかなか人間としての存在を認めてもらえないスンチョルは、捨てられた白い犬と暮らし始める。
 
人間は自分以外の人間を人間と認めないことは往々にしてあることだが、すべての犬は、人間を人間として認知しているようである。
 
スンチョルはそのような犬の視線に慰められたのである。
 
それは、哲学者のエマニュエル・レヴィナスが、ナチスの強制収容所で経験したことと同じである。
 ↓
 
・・・
 
写真1、2(↓):白い犬・ペッグ(パンフレットより)
 
イメージ 1
 
イメージ 2
 
この犬は、プサン犬とチンド犬のミックスで、監督の飼い犬とのこと。
 
家族総出で、製作費用の節約に貢献している。
 
ペッグ、可愛くて、偉い・・・!
 
・・・
 
続きは、また明日・・・♪
 
・・・
 

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映画「ムサン日記」(2):不思議な刑事

映画には、パク刑事という、ちょっと不思議な人物が登場する・・・
 
・・・
 
パク刑事は、北を脱出してきた人達の世話をやいたりしている。
 
主人公のスンチョルの就職の世話をする場面がある。
 
面接をする人がスンチョルの住民登録票の提示を求める。
 
そこには、125で始まる番号が記されていて、それは北からの脱出者を示す番号である。
 
「125」の人は中国への渡航が許可されないので、採用できないと断られる。
 
すると・・・
 
「何とかしてやってくださいよ! こいつも食っていかなくてはならないんだから!」
 
とパク刑事は叫ぶ。
 
韓国の刑事って、こういうこともやるのか、と不思議な感じを覚えた。
 
・・・
 
後からパンフレットを読んで、少し事情がわかった。
 
北からの脱出者は、まず中央合同尋問センターで、過去を徹底的に調べられる。
 
次に、「ハナ院」という施設で、韓国への適応訓練を受ける。
 
それが終わると、社会に出るわけだが、最初の2年間は「身辺安全」と称して、警察に保護され、定着金というものも支給される。
 
その際、パク刑事のような保安局の刑事が、監視を兼ねて(おそらく)、就職などの生活の面倒をみてくれるのである。
 
パク刑事は、そうした青年たちの部屋で、一緒にビールを飲んだりして、人間同士の付き合いをしている。
 
情のあるいい演技だったが、演じているのは素人である監督のおやじさんと聞いて、ちょっと驚いた。
 
・・・
 
写真(↓):違法のポスター張りをするスンチョル(パンフレットより)
イメージ 1
 
 
パク刑事の就職斡旋も虚しく、スンチョルにはなかなか職がない。
 
そこで、違法のポスター張りをするが、そこでの縄張り争いで、暴力を受ける。
 
北からの脱出者は、なかなか人間としての存在を認められない。
 
「俺たちは、時給○○○ウォンのために、命をかけて北を脱出したのか」
 
という一人の青年の叫びが印象的だ。
 
収入を上げるために、違法性をアップさせる者もいる。
 
しかし、スンチョルにはそれができない・・・
 
・・・
 
この映画は、金と社会システムと人間存在の物語でもある。
 
続きは、また明日・・・♪
 
・・・
 

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映画「ムサン日記」(1):製作過程のこと

5月18日、渋谷のイメージフォーラムで、「ムサン日記」を観た・・・
 
・・・
 
写真(↓):「ムサン日記」のパンフレット
 
イメージ 1
 
監督:パク・ジョンボム(韓国)
 
主演も監督が演じ、プロの俳優は友人を演じたチン・ヨンウクと、主人公が思いを寄せる女性を演じたカン・ウンジンだけのようだ。
 
出演する犬は監督の飼い犬、味な演技を見せる刑事役は、監督の父親らしい。
 
撮影は18日間、スタッフ全員で合宿し、食事は監督の母親が作ったとのこと。
 
制作費は借金しまくって捻出したらしい。
 
要するに、どうしても作りたい映画を作ったということ。
 
内容が暗いわりには、どこか爽やかな後味が残るのは、そうした製作過程があったからか・・・
 
・・・
 
映画は若くして病死した監督の友人(北からの脱出者)に捧げられている。
 
ムサンはそうした人が集まる北の都市の名前。
 
この映画を観たきっかけは、「ニーチェの馬」を観に行った時、予告編で知り、興味が湧いたから・・・
 
・・・
 
続きは、また明日・・・♪
 
・・・
 

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映画「ほかいびと」(10):自由とは?

明治という近代が井月を野垂れ死にさせたという北村監督の視座は妥当だろうか・・・
 
・・・
 
自由について考える時、いつも浮かんでくるのはマックス・ウエーバーの次のような文章である・・・
 
「今日の資本主義的社会は既成の巨大な秩序界であって、個々人は生まれながらにしてその中に入り込むのだし、個々人にとっては事実上、その中で生きねばならぬ変革しがたい鉄の檻として与えられている。誰であれ市場と関連を持つ限り、この秩序界は彼の経済的行為に対して一定の規範を押し付ける。製造業者は長期間この規範に反して行動すれば、必ず経済的淘汰を受けねばならないし、労働者もこの規範に適応できず、あるいは適応しようとしない場合は、必ず失業者として街頭に投げ出されるであろう」
(プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神、大塚久雄訳、岩波文庫)
 
この本が出版されたのは1920年(大正9年)である。
 
井月の死は1887年(明治20年)である。
 
井月は上記の秩序界(鉄の檻)には適応しようとしないであろうから、野垂れ死には免れない。
 
ただ、その前に、幕末の封建社会にも適応するのを拒否し、放浪者としての道を選んだのである。
 
おそらく、井月は人間が作り上げるあらゆる秩序界からできるだけ遠ざかりたいと考えるタイプの人間なのだろう。
 
それが個性と呼ばれる範囲内なのか、精神病理学の対象となる領域なのかは、今となっては判然としない。
 
残された作品は病跡学の対象にはなるであろうが・・・
 
・・・
 
人びとは、多かれ少なかれ、鉄の檻から出たいと願っていると思う。
 
だから、どうせなら、監視側に立ちたいと思ったり、檻のない世界を夢見たりする。
 
そして、ごく少数の人間が、野垂れ死にを覚悟で、檻から脱出する。
 
井月は確かに脱出したのであり、覚悟の上で野垂れ死にを遂げたのだと思う。
 
・・・
 
自由とは、〜〜からの自由と、〜〜への自由の二重構造をとっている。
 
井月は人間の秩序界という鉄の檻から自由となり、俳句という文学を生きる自由を追った。
 
風狂とは、風雅に徹し他を顧みないことを言うらしい。
 
そして、人びとは、そんな風変わりな人間もまた、どこかにいて欲しいと密かに思っている。
 
そんな思いが、伊那地方で、井月を生かし続けたのではないだろうか・・・?
 
井月を野垂れ死にさせたのは、明治という近代ではなく、井月自身の自由の精神だったと僕は思うのである・・・
 
・・・
 
井月の自由の気配が特に感じられる句をいくつか挙げてみると・・・
 
「よき酒の ある噂なり 冬の梅」(冬)
 
「数ならぬ 身も招かれて 花の宿」(春)
 
「命とぞ 云うては掬う 清水かな」(夏)
 
「濃く薄く 酔って戻るや もみぢ狩」(秋)
 
・・・
 
写真(↓):田中泯演ずる伊那の井月
 
イメージ 1
 
伊那谷から見える山々は、本当に美しいですね・・・♪
 
・・・
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