「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦
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「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦(2006)☆☆☆★★ ※[913]、国内、現代、小説、恋愛、懸想、京都、幻想、ファンタジー、大学、青春、ラブコメ、エブリデイマジック 「おともだちパンチ」で思いっきり殴ると怪我をする。 本作品の冒頭に紹介される「おともだちパンチ」とは、親指をほかの四本の指でくるみこむように握り、すると「固く握ろうにも握られない。そのひっそりとひそませる指こそ愛なのです」と主人公の少女が語る、ふるいたくない鉄拳を敢えてふるわねばなるぬときに使う愛のあるパンチだそう。なるほど作品に紹介されたとおり親指を折り込んだ拳は、たしかに招き猫のように愛らしい拳に見えなくもない。しかしぼくはこの親指を握りこんだ拳を振るうがあまり、自らを傷付けてしまう物語を知っている。 「ロング・アゴー」(三原順)、ぼくの心のバイブルと何度も述べてきた「はみだしっ子」というマンガのサイド・ストーリー。はみだしっ子たる四人の子供をひきとった養父ジャックとその親友ロナルドの学生時代の物語。ジャックの名誉を守るため、飛び級してきたロナルドのふるったその拳は、結局自らを傷付ける。そんなロナルドにジャックの友人たちは、ばかだなぁ親指を拳のなかに入れるなんてと、喧嘩の仕方を知らないロナルドを諭す。拳の握り方なんて教えてもらわなきゃ、わからない。 そういう記憶があるがゆえに初っ端から躓いた。この作品のタイトルを、あるいは表紙を多くのネットの友人のレビューで見かけてきた。評判がよい。それで少し期待しすぎたのかもしれない。 いや読み終われば、決して悪いというわけではない。京都の一年を、あるいは四季を通し語られる、いまどきの若者と程遠い、なんともじれったい恋の物語、そしてまた京都という不可思議な街の物語はこれでこれでよかった。 主人公の私は大学のクラブの後輩の少女に懸想する青年。しかし素直に思いのたけを伝えられるほどにすれておらず、勇気もなく、彼女の周りを計画的にうろつき、さりげなく彼女に気づいてもらおうと試みる。しかし物語はこの「じれったい恋の物語」のみではない。恋の物語を主軸としながら、怪異が似合う京都の街を舞台に、すぐ横にある不可思議な世界を描くこともまた作品としている。しかし京都は怪異が似合う街だ。 「じれったい恋の物語」をのみ期待して読んでいた。第一章で少女を追いかける主人公が、物語の主たる流れから弾き出されてしまう様に唖然とした。第二章で、同じクラブの先輩、後輩の間柄にあるはずなのに、いまだ名前を覚えてもらえない主人公にリアリティーの欠如を感じた。どんなクラブなのか明確に書かれていない(よう)だが、しかし幾らなんでも、ふたりともが名前だけの幽霊部員でないならば夏までには名前くらい覚えてもらえるだろう。そこのところを胡散臭く読んでしまった。 思い返してみると、そのことが少し残念だ。この作品はリアリティーある恋愛小説のひとつだと思ってはいけない。ひと昔前の少女マンガにある、リアリティーとは無縁なラブコメなのだ。例えば(もしかしたら少女マンガとはいえないかもしれないが、)高橋留美子のマンガ「うる星☆やつら」と同系列に連なる作品といえるのかもしれない。そう思いながら読んでみると、なるほどとてもしっくり来る作品であった。(蛇足:ちなみにまたもや脱線であるが「うる星☆やつら」は原作もさることながら、劇場版「ビューティフル・ドリーマー」(押井守)がオススメ!) 第一章 夜は短し歩けよ乙女 大学のクラブの遠い先輩のお祝いの席に同じく出席していた、主人公の私が懸想する彼女の姿を追い求め、夜の京都を彷徨う私。いっぽう底抜けの酒豪であった彼女は、羽貫さんという凛々しい酔っ払い美人と、天狗を名乗る樋口さんと知り合い夜の京都の街をあちらこちらと。そして彼女はついに李白翁なる不思議な老人と偽電気ブランの飲み比べとあいなった。 ※もともとあるアンソロジーのなかの一作であったよう。その前知識をもとに本作品を単独の作品として読んだのも当初の敗因のひとつか。この章はあくまでも一冊の作品の、登場人物紹介の章として読むべきかもしれない。 第二章 深海魚たち 季節は夏。舞台は下鴨神社の古本まつり。彼女との「作為的な」偶然の出会いを期待して出かけた私は、彼女が欲しがっているという古本の絵本を入手すべく李白氏が開催する「火鍋」勝負に参加する羽目にあいなった。 ※夏なのにまだ名前も覚えてもらえないのかと突っ込んで読む話ではなかった。ちょっと変わった彼女に、いまだ名前も覚えてもらえないことが「お約束」の物語として読むべし。前章にひきつづき李白翁、天狗を名乗る樋口さんの登場に、やっとこの作品の「お約束」が理解できた。古本市の神様が秀逸。そして最後の涼しい夕風の描写がいい。 第三章 御都合主義者かく語りき 晩秋の学園祭を舞台にした物語。学園祭に無縁なはずの私は、またしても入手した情報をもとに作為的にさりげなく彼女の前に現れることができた。「ま、たまたま通りかかったもんだから」と繰り返す私に「あ!先輩、奇遇ですねぇ!」と彼女は応えてくれる。 学園祭では学生たちが自由な催し物を繰り広げている。そのなかを緋鯉のぬいぐるみを背負い、達磨を首からさげ、天真爛漫に闊歩する彼女の姿。ゲリラ芝居の「偏屈王」の主演女優にいつの間にかなっていた彼女を見つけ、最終幕には命をかけて自らも出演する私。 ※まさにラブコメマンガの世界。新たなキャラクター、パンツ番長ってどうだい。主演した劇では、声まで変わる彼女の姿はまさにお約束の世界。もちろん物語もお約束どおり進むのであった。 第四章 魔風邪恋風邪 冬、京都の街を恐ろしい風邪が襲い掛かる。次々と高熱に倒れる人々。そのなかを風邪と無縁な彼女が闊歩する。そしてついに彼女は京都の街に蔓延する大元である李白翁を襲う風邪の神を倒すべく、古本屋の少年にもらった秘薬「潤肺露」を携え、下鴨神社の糺の森へ向かうのであった。果たしてその結末は・・。 ※まさしく最後はお約束どおりの大団円。しかし、この彼女とつきあうことはなかなか大変なことだと思う。 天真爛漫に自由に闊歩するちょっと変わった素直な乙女に、どうしてぼくらは惹かれてしまうのだろう。勝手な妄想を抱きつつ、ともすればストーカーにならんとする主人公の姿もお約束の主人公だと思えば、いつしか共感を感じないではおれない。主人公の私と、少女の私がそれぞれ語り手を変え進む、文章も心地よい。 しかし、しかし、「お約束」に気づいたがゆえのこの不可思議な世界の魔法(いやこの作品だと「呪文」のほうがぴったりか)にかかることができた反面、「お約束」に気づかないで読んでしまった冒頭の部分やっぱり悔しい。間違えた期待に違ったことが、作品を心から楽しめなかったということとなり、評価は☆四つに近いけど、☆三つ。小品佳作という点も残念ながら否めない。 蛇足:これはファンタジーのジャンルでいえばエブリデイマジックだね。
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読後感想 「夜は短し歩けよ乙女」 V53
森見登美彦 著 を読む。2007年山本周五郎賞、本屋大賞2位。読みたくて図書館でずっと待っていたが、文庫本で購入する 森さんは、2作目だ。題名からユニーク。誰がこんなタイトル思い付くだろうか?後輩女性に一目惚れした主人 公。後輩女性のキャラが、淡々としつつ独創的。また主人公の心理描写も面白可笑しく表現されている。 特に第3章御都合主義者かく語りきで、緋鯉を背負った...
2011/11/23(水) 午後 4:17 [ 元気な毎日 ]

なるほど〜
私はこれはファンタジーとして読みました。
だから設定は少々突飛でも大笑いして読んじゃいました。
それしにても「はみだしっ子」は男の子にも読まれていたのですね。
当時の自分にはあまりにも心理描写が深くて理解できず、5回くらい
読み直しては、首をひねっていたものです。
いま読めばまた違った読み方が出来るのかもしれません。
私のバイブルは萩尾望都の「メッシュ」か伸たまきの「パームシリーズ」でしょうか。
劇場版「ビューティフル・ドリーマー」が押井守だったとは知りませんでした。機会があったら見てみます。
2008/11/1(土) 午後 11:44 [ ウクレレ ]
今晩は〜すのさんは、厳しめに読んでいらしたんですね!確かに名前を覚えていないという突っ込みは、いえていますね〜。ファンタジーというよりは、新しい切り口のお笑い小説かな?と思い読みました。
2010/5/10(月) 午後 11:08
ご無沙汰いたしております!
たまたま開いたページを見て、TBさせて頂きます!
2011/11/23(水) 午後 4:18
お久しぶりです。最近、すっかり年甲斐なくアイドル活動ばかりで、ブログやら読書やらに遠い日々です(苦笑)もっとも最近も森見さんは読んだばかりでした。「四畳半王国記」ですね。
2011/11/24(木) 午後 1:27