「ホルモー六景」万城目学
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「ホルモー六景」万城目学(2007)☆☆☆★★[2008036] ※※[913]、国内、現代、小説、青春、ファンタジー、式神、鬼、京都、連作、短編 ※ネタバレ、あらすじあり、未読者は注意願います。 ホルモーが帰ってきた。かって期待もせず読み、これはすごいファンタジーだと評した「鴨川ホルモー」[http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/42521938.html ]の続編、あるいはアナザーストーリーに当たる一冊が本書。「鴨川ホルモー」で語られた、謎の競技ホルモーを巡る人々の、ホルモーに関わる六篇の物語を収める連作短編集。 「鴨川ホルモー」を評したとき『この「ホルモー」を題材に、シリーズを続けることは可能であろう。しかし、それはまたこの作品のファンタジーを変質させることになるだろう。この設定をそのままこの作品にとどめ、敢えて捨てるのは惜しいだろうが、ぼくは続編は望まない。またアナザー・ストーリーも要らない。』という言葉で締めた。残念ながら本書は、その言葉どおりで終わる。読後の感想は決して悪いものではない。しかし前作があればこその本書であり、いや前作を読んでいないと(たぶん)さっぱりわからない。そういう作品のあり方もある。しかし「鴨川ホルモー」のあとに「鹿男あをによし」[ http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/49741768.html ] という、やはり名作ともいえる青春ファンタジーを出すことができた作家だけに、せめて「鹿男あをによし」でこの作家に出会い、続けてこの作品を読む読者にも単独で読んでわかる作品にまで仕上げてほしかった。 プロローグ、「鴨川(小)ホルモー」「ローマ風の休日」「もっちゃん」「同志社大学黄竜陣」「丸の内サミット」「長持ちの恋」。最初にプロローグを置き(これは最後の物語に連なる)、エピソード六つを収める一冊。 プロローグ 「鴨川ホルモー」の主役であった、安倍と高村のある日の昼食風景。高村はあのちょんまげをやめたらしい。さていよいよ通算五百一回目の闘いだ。 「鴨川(小)ホルモー」 京都産業大学玄武組の二人静の物語。定子と彰子。「黒い嵐」の異名を持つ玄武組の中心メンバー。 大学に入りさえすれば彼氏ができると思い込んでいた定子と彰子。しかしふたりに春は訪れなかった。おっさんの性格の彰子には男を寄り付きもせず、男に囲まれはするものの定子は中途半端な男を寄せ付けなかった。嫌いな男の話をする定子、好きな男の話をする彰子。好きな男のできない定子。好きな男に振り向いてもらえない彰子。たまたま同じレディースマンションに住んでいた二人はよく夜通し語り明かした。 世の記念日は二人で過ごそう。誓いを立てたふたりであったが、ある日定子に恋人ができたという。誓いを破ったものは、もうひとりの言うことをきく、そういう約束であった。彰子は定子に決闘を申し込む。 定子の誕生日、デートの日が、決闘の日となった。 ホルモーを知らず、鬼たちの姿の見えない彼氏を横に置き、鴨川の河原で定子は奇声をあげる。 女同士の熱い友情。 「ローマ風の休日」 高校生の僕がバイトをするイタリア料理店に、新しくひとりの女性スタッフがバイトとしてはいってきた。楠木ふみという愛想のない、いまどきでないその女性に軽い失望を覚えたぼくらであった。 ある夜、ふたまたをかけた女性二人が別々に店に来ることがわかり店長が逃げた。予約でいっぱいの店をどうしようと悩んでいる僕らを尻目に、店長の代役をかって出る彼女。終わってみれば見事、店長の代役をなしえた彼女の働きぶりを見て、ぼくらは彼女を完全に認めるようになった。 その忙しかった夜、夜ひとりで歩くのが怖いから早いシフトしかいれていなかったという彼女に、僕は家まで送るよう頼まれた。そしてそれを理由にデートを申し込む僕。それは他愛のないお出かけに過ぎないものであったはず。しかしいつの間に僕は彼女を責めていた。好きな人に告白できないという彼女に、なぜそんなに自信がないんですか、と。 僕を「少年」と呼ぶ彼女は蒼白な顔で言った。初めて男の人にデートに誘われて、それが冗談とわかっていても今日は嬉しかった。そして彼女は僕を置いて帰っていく。 青春のほろ苦い淡い恋の物語。 「もっちゃん」 安倍の入学以来の友人、もっちゃんの物語。もっちゃんはある日、通学中の電車で見かけた女性に恋をした。レモンの香りを嗅ぎ、一晩かけ書いた想いを託したラブレターは、しかしこともあろうに、俺が書いた恋文と入れ違っていた。女性の「額」が好きな俺の書いたいたずら書きでは想いは伝わらないだろう。もっちゃんの恋は玉砕した。それをきっかけとしたのか、もっちゃんは小説を書くようになった。卒業した俺に、東大の文学部に進んだもっちゃんから一冊の同人誌が届いた。そこには銀色の懐中時計が一緒にはいっていた。 俺はひょんなきっかけでホルモーの時刻を告げるための時計として、その時計をひとりの青年に貸し与えることとなった・・。 前代の会長、菅原さんから譲り与えられた銀の懐中時計を手にした俺、安倍はカラオケにある曲をいれる。さだまさし『檸檬』 「同志社大学黄竜陣」 英文学科の桂教授の授業を受けることを目的に一年の浪人を経て同志社大学に入学した巴。一、二年の通う京田辺の校舎では桂教授の授業はなく、しかも桂教授は今年で退官されてしまうらしい。直接指導を受けることなく終わってしまうのは納得できない。巴は濃い目の化粧で四年生に化け、桂教授のいる今出川キャンパスに向かった。ひょんなことから桂教授から依頼ごとをされた巴は、書庫で古い木箱を見つける。木箱の中には古い英文の手紙と黄色い浴衣。英文の手紙には謎の言葉、ホルモーのことが書かれていた。最初は気づかなかったが、その手紙は歴史上有名な人物ふたりの間に交わされたものだった。 後日もう一度木箱を探ると、その紙は見つかった。「<ホルモー>黄龍陣、復活に関する三条件」。 巴の浪人中にほかの女性を好きになり別れたはずの元彼、芦屋満に呼び出されては何度も会う巴。ある日ふたりで歩いているときに満の今カノとばったり出会ってしまう。 やっぱり満は最低の男だ。結局「ホルモー」もわからなかった。 「少女よ、大志を抱け」だ。 「丸の内サミット」 青山のアパレルに勤める井伊直子は、同僚の酒ちんに誘われて合コンに参加することになった。相手は御茶ノ水大出身の酒ちんのサークルで交流のあった一ツ橋出身の本多という男性。待ち合わせの場所で、直子思いがけない顔を見る。本多の連れのもうひとりの男性、榊原康こそ、直子が京都でホルモーで戦った相手だった。 京都産業大学玄武組第四百九十八代会長榊原康と、龍谷大学朱雀団第四百九十八代会長井伊直子といえばホルモー史に残る好敵手として、都大路にその名を轟かせた二人だった。あれから三年と半年の、歳月を経て両雄は東京丸の内に屹立する新丸ビルの五階で、再会したのだった。 ふたりが知り合いだったことに驚く酒ちんと本多。しかしその理由を説明するわけもいかない。うまく誤魔化し、合コンを楽しく過ごす四人。ホルモーの闘い以外の場でゆっくり話してみて初めて、康と直子はそれぞれお互いにのよいところが知れてきた。あのときは苦手な相手だったのに。 合コンが終わってテラスに出た直子は、あるものに気づいた。康に知らせる直子が見つめるものは? 始まる恋の予感?それとも・・・。 「長持ちの恋」 立命館白虎隊式部舞のひとり珠子は、伏見稲荷の料理旅館で仲居のバイトをすることになった。女将に言われ蔵まで燈台を取りにいった珠子は、蔵の隅に古い長持を見つけた。長持の中にはいっていた古びた板に書かれた「なべ丸」という文字に反応し、思わず「おたま」と書いてしまった珠子。 なべ丸とおたまの時代を越えた文通がはじまった・・。 時代を越えた運命の出会い? 高村のちょんまげが落とされる。 まず。 多くの読者が評価する「長持ちの恋」を、ぼくはあまり評価しない。時代を超えた恋愛譚といえば聞こえはいいのだが、ただ昔の人の思いに動かされているよう。それはそのひとの意思ではなく、踊らされているようにぼくには思えてしまう。それを「きっかけ」とすることもありなのかもしれないが、いまいるひとがそれぞれに「想う」ことが恋だとぼくは思う。個人的な趣味の問題。 「鴨川(小)ホルモー」こういう女性の友情譚はいい。きっといつかはそれぞれが、それぞれの好きな人と出会い、恋をして離れてしまうのだろうけれど、こういう女の子の強い結びつきの物語は好きだ。一条君はもちろん定子のもとにもどって侠気(おとこぎ)をみせて欲しいのだが、やはり設定として<ホルモー>が秘密だと難しいか。 「ローマ風の休日」は悪くもないが、よくもなし。ありがち。 「もっちゃん」は伏線がうまいのだが、技術としてのうまさと作品としての評価は別。あくまでも「鴨川ホルモー」あっての作品にしかすぎない。安倍という同名の主人公が時代を経て繋がることは、勿論それだけでもおもしろいのだが、これは前作のエピソードあればこそ生きている。同じ<ホルモー>に関わる現代の安倍も、このエピソードの語り手の安倍も、ともに女性について特定のパーツに執着するという性癖を共通項とするところはどう評価すべきだろうか?当初、前作の主役である安倍だと思って読んでいたので、そのミスリードに気づいたときは確かに巧いとは思った。しかしそれ以上の膨らみがないのは不満。少なくとも少しだけ登場する安倍の奥さんについて、その部分の記述があってもよかったと思う。もちろん理想どおりではない。またさだまさしのエピソードもどうなのだろう。前作で触れていたさだまさし好きという設定を結実させたということになるのだが、ちょっと収まりがよすぎて違和感が残る。 「同志社大学黄竜陣」は復活しないことが巧い。ただ巴と元カレのエピソードは不要。 「丸の内サミット」オチはうまいのだが、評価は難しい。確かにクスリと笑えるのだが・・。 しかし、怪異が似合う京都だからこその物語(ファンタジー)の根底をひっくり返すかのごとく結末はどうなのだろう。これもホルモーを離れたところで出会う、若い男女のボーイミーツガールの物語だけで充分だったのでは。 と、まぁ勝手な感想を述べてみた。しかしやはり冒頭に述べた通り、<ホルモー>に続編は、アナザーストーリーは、不要だ。 蛇足:だから短編のあらすじはやめようと思うんだ・・。いったい何文字、何時間かけてるんだ。
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2008/5/10(土) 午後 11:13 [ ☆★☆セカンドはうす☆★☆ ]
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ホルモー六景 万城目学/角川書店 このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。四神見える学舎の、威信を賭けます若人ら、負けて雄叫びなるものかと、今日も京にて狂になり、励むは御存知、是れ「ホルモー」。「鴨川(小)ホルモー」「ローマ風の休日」「もっちゃん」「同志
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2008/9/16(火) 午前 0:43 [ ミステリ読書録 ]





なるほどねぇ〜〜「長持ち」は踊らされてる…そういわれてみればそうかもしれないですよね。目から鱗…
単純に(T-T )( T-T) ウルウルしながら読んでしまいました(ノ∀ ̄〃)ヘヘヘ
TBさせてくださいね♬
2008/5/10(土) 午後 11:13
>チュウさん コメントありがとうございます。また小言オヤジの穿った見方です(苦笑)多忙でレビューを書けなかった「ハイドゥナン」(藤崎慎吾)もそういう設定。「時空を越えた再会」を素直に感動すべきなんでしょうけど・・。
2008/5/11(日) 午前 6:48
わたしも読みました!!!「ローマ風の休日」は、最後、ちょっと
うるっときちゃいました。
2008/7/18(金) 午後 10:19