「正義のミカタ 〜 I’m a loser 〜」本多孝好
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「正義のミカタ 〜 I’m a loser 〜」本多孝好(2007)☆☆☆★★[2008037] ※[913]、国内、現代、小説、正義、大学生、サークル、青春 ※ネタバレ少しあり。未読者は注意願います。 久しぶりの本多孝好。「真夜中の五分前」(side-A、side-B)を読み損ねて以来、読んでないのだが、デビュー当時からナイーブで、かつ乾いた感じが好きな作家のひとりだった。いまやすっかり人気作家。今回も予約してから、手にし、読むまでに随分時間がかかったものだ。 大学に入ったら僕は変われる。蓮見亮太18歳。一流大学を目指す妹からすれば、兄がそこにいっているとはひとには言えないような三流大学に入学した。大学進学率が三分の一にも満たない僕の高校からすれば、それでもかなりの努力が必要だった。うちの高校から誰も行かないはずの大学でぼくは生まれ変わる。そう思っていた矢先、大学のキャンバスで畠田に出会った。高校時代僕をいじめ続け、バイト代を巻き上げ続けた畠田。彼は関西の大学に行ったのでは?高校のときと同じように毎日、金を寄越せと畠田は言い、そして僕のことを殴り始めた。 そんなぼくらの前にひとりの男が現れた。俺なら会ったときだけ500円でいいよ、雇わない?小柄なその男は、体格のいい畠田をあっという間に倒した。桐生友一、でも友達はトモイチと呼ぶ、トモイチと呼べ。友達扱いしてくれた彼の言葉に、泣きそうになる僕。同じクラスだという彼に連れていかれたのは、何のサークルなのか想像もつかないサークルの部室。彼は何ができるの?眼鏡の先輩がトモイチに尋ねる。テストしてみませんか。トモイチが言う。自分では気づかなかったが、高校時代いじめられ、殴られ続けたぼくは、いかに痛くないように殴られるかを研究していた、そして攻撃を避けることを身体が覚えていた。高校ボクシングでインターハイ三連覇をしたトモイチの攻撃を避けることのできた僕は、晴れて入部を許された。仲間として認められ、鼻の奥が熱くなる僕。あれ?ところでここは何のサークルだ? 「飛鳥大学学生親睦会。正義の味方研究部」 かってある運動部が起した不祥事をきっかけにできたこのサークルは、学内の正義を守るためのサークルであった。新歓コンパでの呑み過ぎを取り締まったり、あるいは女性を酔わして不埒な行いをした者を懲らしめたり。そうしたなかで、ある企画サークルに不穏な動きがあるという投書が投げ込まれた。潜入捜査をするトモイチと僕。サークルの中心メンバーの仲間となるトモイチと違い、ひっそりと使い走りのような仕事を地道に行う間先輩と仲良くなる僕。ある日、間先輩はぼくに仲間にならないかと、声をかけてきた・・。 貧乏な家のいじめられっ子、いわゆる負け組の僕を主人公にし、とある大学サークルでの活動を通し、本当の正義とは何か問いかける青春小説。 主人公が「正義の味方研究部」を退部する最後のエピソード、それまでの仲間との決闘で盛り上がった気持ちは、しかしサークルの部長との対峙するエピソードで残念なことに冷めてしまった。しかし久しぶりに一気におもしろく読めた。ただぼくの知っている本多孝好とはちょっと空気が違う。らしいといえば、らしくもあるのだが。 いじめられっ子が、いじめられっ子を脱却しようと、入った大学でのクラス、あるいは入ろうとするサークルの勢力分布を冷静に見極める冒頭は、なんだか頭でっかちな段取り型マニュアル小説のようでイヤだな、と当初は思った。しかしそんな心配は不要だった。ありがちないじめられっ子が仲間を得、少しずつ変わり成長していく物語が前半は語られる。大学内での事件に、警察までに及ばない範囲で「正義」の解決を図る「正義の味方研究部」。絶対ない、こんなサークル(笑)。でも青春小説らしい設定。 汚い紙コップでの杯の交換という、どうでもいいディティールもまた青春小説らしくよかった。クラスで仲良くなる女の子と淡い恋のようなエピソードもよい。(ただ、このエピソードは不完全燃焼のように尻つぼみで終わってしまい、そこは少し不満。) しかし青春ユーモア小説よろしい軽妙で楽しかった小説はそれだけで終わらない。物語の後半、ある企画サークルに関わる事件を通し、世の中はやはり決して輝かしい未来だけではないことに主人公は気づかされる。クラス分けがされた現実社会では、下の階級から上の階級へはなかなか上がれない。公平なようで、不公平な社会。そのなかで下の階級の人間はどのように這い上がっていけばいいのか。 誰もしないことをすればいい。そう語るサークルの先輩。そして不法滞在の元留学生たちをも仲間にしたその先輩の活動と、彼の語る言葉。現実を見つめると、その言葉を肯定するしかない主人公。そんな主人公が選ぶ二つの行動。「正義の味方」であることを選び、そして、そのあと「正義の味方」であることをやめる彼。 そうした事件を通し、主人公は「正義」を見据えどこか違和感を覚え、語る。「正義の味方である自分に酔っている気持ちはまったくないですか?」そしてそうした正義が間違えることがあるかもしれないと。 正義の味方にとって何十回に一度の間違いも、間違えられたほうにとってはかけがない一回である。そして主人公自身が間違えられる側の人間であり、だからこそ、もはや「正義の味方」を演ずることはできないと決意する。 そして最後の電車のシーン。シルバーシートで傍若無人な若者を諭す主人公の姿は決して格好よくない。作品を読み終わっても、決して気持ちのよい読後感を得ることができない。主人公が成長する青春の成長譚なのだが、それは決して爽やかな成長とは言いかねる、現実を見据えたそれである。楽しく読み、そして考えさせる結末。それは青春の小説のあるべき姿なのかもしれない。しかし、やはり楽しくはなかった。とくに「正義の味方研究部」の部長の最後の姿には、なんだか哀しいものさえ感じた。彼自身が作った伝説が作品で語られていただけに・・。 たぶん、悪くない一冊。しかしもう少し気持ちよい読後感を残すようにも書けたのではないだろうか?作家は確信犯としても、。 蛇足:この作品を読み「公平の極みは不公平の極み」という言葉をぼくに教えてくれた「はみだしっ子」(三原順)と、正義の味方である「鬼」(=仮面ライダー)になる資格を持ちながら、最後には鬼になることを選ばなかった、「仮面ライダー響鬼」に出てきた「少年」明日夢を思い出した。
蛇足2:成程、正義の「味方」ではなく、「ミカタ」なわけである。 |
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正義のミカタ〜I‘m a loser〜 本田孝好
{{{いじめられっ子の亮太は自分を変えようと「正義の味方研究部」に入部する。果たして亮太は変われるのか。いじめ、リストラ、格差。こんな社会で生きていかなきゃならない、将来が少し不安なあなたに贈る、書き下ろし青春小説。 (amazonより)}}} 前半は軽快で面白く、後半は深く
2008/5/23(金) 午後 3:33 [ いろはのお気に入りノート ]

TBありがとうございました!
最後の部長の行動には驚きました。しかしそうさせたのも「正義
」に対する深い執念・・・!?
「正義」の定義は難しいですが、改めて、それなりに考えさせられました。
2008/5/23(金) 午後 3:37
正義…正義って何でしょうね。私の正義を信じて闘かった経験から言いまして、正義とは真実を貫く勇気…そんなふうに思います。多くの人に正義について考えて頂きたいですね。
そういう意味では、この本も私たちにメッセージを伝えてくれる一冊だと思います。
正義…何でしょうね。
2008/8/4(月) 午前 8:15
TBありがとうがざいます。
遅くなり申し訳ありません。なんせスロー更新なものですから...。
確かにこんなサークル絶対ないですよね。
あったらどうなってしまうだろう...。
その大学の治安は良くなるのか新たなトラブルの素になるのか...。
2008/8/10(日) 午後 3:47 [ レモンスカイ ]