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「架空の球を追う」森絵都

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「架空の球を追う」森絵都(2009)☆☆☆★★[2009050]
※[913]、国内、現代、小説、短編集、女流作家、女性

森絵都らしさとは何だろう。
作家より作品で語りたいとレビューを書いている。そう思っているのは事実だ。しかしその一方で、図らずも作家に触れたレビューも多い。森絵都もそうした作家のひとりだ。

初めてこの作家を意識したのは「DIVE」だった。当時、一冊ずつ新書で発刊されていたこの作品は一部の児童文学好きな読者の間でしか話題になっていなかった。書き込みをしていたネットの読書掲示板でおもしろいとの評判になっていた。丁度、最終巻が出たばかりの頃、図書館で借りて読んだ。
その初めて知る作家は、アニメのシナリオなどを書く傍らに小説を書いているということだった。「DIVE」のキャラクターの瑞々しさ、青春小説、スポ根小説として楽しい物語に、なるほど、アニメのシナオリオを書いていたということは納得できた。
一方、YA(ヤングアダルト)の作家として評価されていることも知り、「DIVE」とは少し趣の違う、「リズム」、「ゴールド・フィッシュ」「アーモンド入りチョコレートのワルツ」などを読んだ。しかしこれはもはや若々しい感性を失ったぼくにとって、心をぎゅっとつかまれた若い読者ほどの印象はなかった。若い読者にとって、その年代特有のひりひりする焦燥感のようなものを代弁するかのように描く作品が共感を呼ぶことを理解し、そういう世代の作家だと思った。

そして「いつかパラソルの下で」で大きく大人の作家に変わる。この作品のレビューでは、この作家のあり方に、疑問を持ち、そしてそれは「風に舞いあがるビニールシート」へ続いた。普通の女流作家、普通の短編小説。それはぼくの苦手とする分野。

女流作家が苦手なのは、感情を描写する言葉を多用されることが多く、そこに共感し損ねることが多いから。短編小説はひとつの作品の残す余韻から、次の作品へ気持ちを切り替えることが得意でないから。かってはそんなに不得意でなかったのに、年齢を重ねるごとに気持ちの切り替えがヘタになっている。

本書は11編の短編を収める一冊。「架空の球を追う」「銀座か、あるいは新宿か」「チェリーブロッサム」「ハチの巣退治」「パパイヤと五家宝」「夏の森」「ドバイ@建設中」「あの角を過ぎたところに」「二人姉妹」「太陽のうた」「彼らが失ったものと失わなかったもの」

さて最初の作品「架空の球を追う」でさっそく躓く。揃いのユニホームを着た子どもたちに懸命に野球を指導するコーチ。しかしいまどきの子どもたちはニヤニヤ笑うばかりで、真剣に練習するわけでもない。空回りするコーチ。それを眺める母親たちは、子どもたちがこの先、うまくいかなくても、やはり母親の私たちは自分の子どもたちを許しちゃうんだろうなぁと思う。
その後の作品を読み進めてんでいくと、この一冊が「女性」をひとつのテーマにしていることに気づく。それは現代の女性の現実の姿を切り取ること。そうすると最初の作品は母親たちが焦点のとなるのだが、空回りするコーチも気にかかる。不詳の自分のこどもにこの先、繋がれる彼女たちの人生。残る余韻に包まれたところで次の作品になってしまう。

「銀座か、あるいは新宿か」長年付き合う女友達が、年に数回、銀座に集まり、他愛ない話に興じる姿を描く。長年の付き合いという歴史があればこその切ないほどの姿。
「チェリーブロッサム」では通勤途中に、新婚と思われるカップルにシャッターを押してと頼まれる女性。シャッターを押す瞬間、隣の妻を忘れ、目の前を通り過ぎる女性に眼を奪われてしまう男の姿に気づいてしまう。

多くの読者がとりあげる「パパイヤと五家宝」。高級スーパーで、ふと見かけた女性の姿を追い、買い物を真似する。普段の自分の生活から離れた夢を見る主人公の魔法が溶ける瞬間。オチともいえるラストは、しかしぼくにはやりすぎに思えた。高級スーパーであれば、店員は無表情を装うと思う。

家族に同意されなくてもスーパーで買ったカブトムシを森に放す主婦の姿を描く「夏の森」。最後に家族団らんを見せるが、これも家庭に繋がれた女性の姿か。自由奔放な女に憧れていた少女の頃のエピソードが、巧い対比か。

「ドバイ@建設中」石油会社の御曹司を見事に射止めた主人公。婚前旅行で灼熱の観光地ドバイに行ったこ。流れる汗のように剥がれ落ちる化けの皮。いや、お互いの本当の姿を晒しあえばこそ理解しあえるふたり。新奇なものを感じさせることのないありきたりの話し。

「ふたり姉妹」親戚で集まった温泉で、姉が一緒にお風呂にはいってくれないことを相談される親戚の女性。そのことを指摘されうろたえる姉。妹の「女」の部分を無意識に意識していたことに気づく姉。ぎくしゃくとする姉妹。そんなふたりがあるきっかけであの頃のように仲のよい姉妹に戻る。これも普通。

「風に舞いあがるビニールシート」にそのまま繋がりそうな「太陽のうた」。これはこの一冊のなかにあるより、「風に舞い上がる〜」と並べて置く作品では?

「彼らが失ったものと失わなかったもの」バルセロナ空港で見かけたひとつの事件。ある英国人夫婦がリカーショップで大丈夫と念押しされたギフトボックスにはいったワインを通路で破損してしまう。己の責任を全うする夫婦の姿に打たれる主人公。

振り返ってみると最初に躓いた表題作の余韻がいつまでも残っている。ありふれた女流作家の短編小説集。ぼくには森絵都らしさというものが分からない。

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[参考]森絵都作品レビュー
「宇宙のみなしご」http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/3645587.html
「いつかパラソルの下で」http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/9733370.html
「風に舞いあがるビニールシート」http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/38800563.html
「つきのふね」http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/50186947.html
「ラン」http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/55276227.html

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実は私も短編小説が苦手な人です。(苦笑)以前ほど苦手意識は強くないんですが、今でも短編集を読んですごくいい!と思うことは少ないですね〜(連作短編は好きなんですけども)
すのさんに言われて気づいたのですが、確かにこれは女性の視点で語られる話が多いですね。私は男女差を特に気にせず読んでいましたが、男性読者にはイマイチピンとくるものがないかもしれないですね。(^^; 逆に私は「架空の球を追う」はそれほど印象に残っていなかったりします。(笑) 削除

2009/5/19(火) 午前 9:17 [ 板栗香 ]

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>板栗さん 連作短編は同じ主人公ふぁったりm登場人物が連なったりするので、気持ちの切り替えがあまりないので、ぼくも割と読みやすく読めます。で、ふと気づいたのは本当は「短編」が苦手なのではなく、「短編集」が苦手なのかも。ところで短編といえば、伊集院静はいかがですか?「ぼくのボールが君に届けば」はいかがですか?

2009/5/19(火) 午後 7:48 ゆきんこ

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