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「WILL」本多孝好

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「WILL」本多孝好(2009)☆☆☆★★[2010007]
※[913]、国内、現代、小説、ミステリー、連作短編、葬儀屋、生、死

高校時代に両親を揃って亡くし、家の稼業であった葬儀屋を引き継ぎ、社長を務める森野。不器用でぶっきらぼうな彼女を支えるのは先代より勤めるベテラン社員、竹井。そして遠く海を渡ったアメリカから時折電話をかけてくる、同じ商店街の文具屋の息子で幼なじみの神田。葬儀屋としては良心的な経営をしているつもりだ。しかし町の小さな葬儀屋ではこの先に展望が見えるわけでもない。月に一、二件も葬儀があれば支払う給与も含めて暮らして行くことができるが、最後の葬儀を行ってからの日々を指折り数えることもある。
そんな森野のもとに、森野の店で葬儀を執り行ったひとびとが再び訪れてくる。
若くもなく、かといって年をとったとも言えない中途半端な30歳という年齢に近い、小さな葬儀屋を営む独身女性を主人公に、彼女をとりまく小さな事件を淡々と紡ぐ連作短編集。

ACT.0 プロローグ
十一年前、十八のとき両親が揃って亡くなった。家の葬儀屋の社員であった竹井は葬儀を執り行うよう、私に告げた。

ACT.1 空に描く
高校で同級生だったことが縁で佐伯杏奈の父親の葬儀を執り行った。四十九日が終わり半月が過ぎた頃、杏奈が店に現れ、幽霊はいるのかと問うてきた。死んだ父親の幽霊が現れ、三つになる甥が見たという。その後、杏奈のもとに亡き父親が描いた絵が郵送で届けられる。二人姉妹の妹である杏奈の家には複雑な事情が隠されていた・・。
亡き父親が残した想いとは何だったのだろう。

ACT.2 爪痕
既に終わった葬儀について、自分を喪主にしてもう一度やり直したいという女が現れた。それは脳溢血で倒れ突然亡くなったある男性の葬儀であった。男性の妻が喪主であることが気に入らないという。依頼は断った。しかし、その女は独自に葬儀のやり直しの通知を故人の親族に出していた。執り行った葬儀に対する責任として、独自に調査を行った。果たして、男性が死んだその日に、その女は自殺をしており、もはやこの世にいないことを知る。愛人の噂や気配もなかったその男性に、何があったのか?
たまたまの偶然が呼び寄せた想像もつかない真実。

ACT.3 想い人
生前の両親が葬儀屋を営んでいた十五年前、ご主人の葬儀を執り行ったという老女が現れ、死んだ人に会うことはあるかと聞いてきた。いまどきの夜中に現れる幽霊と違い、亡くなったご主人とは姿の似ていない十五歳ほどの男の子の姿で、老女のもとに週に一度くらい現れるという。一緒にお茶を飲み、他愛ない昔話をして帰っていく。
悪ガキが小遣い稼ぎに悪質な悪戯をしているのでは?調査の結果、予想もしなかった真実を知る。爽やかな少年の恋。

ACT.4 空に描く(REPRISE)〜エピローグ
問題が解決したはず佐伯杏奈がへこたれた様子で再び現れた。事件の解決を伝えて以来、母親の様子がおかしいという。解決したと思った事件は、杏奈の母親にとっては、まだ解決できていない問題だった。
悩み続ける杏奈の母親に、杏奈の父親が残した絵の解釈を伝えた。杏奈の父親は全てを受け止めようとしていた。その言葉に真実をきちんと伝えることを決意する杏奈の母親。
一方、葬儀屋では雇ったばかりの気は利かないが気のいい若い従業員が辞めると言い出していた。やはりバンド活動を続けたい。そして竹井は、もう一度、両親の葬儀をやり直すことを提案する。新しい出発をするために・・。

本書は7年前の作品「MOMENT」の続編として出版されたとオビにある。しかし残念なことに前作の記憶はほとんどない。確かに前書は読んでいる。当時、この作家に対する印象は強い。とても良い印象を持っていた。しかし前作の記憶は、病院を舞台にし、死を目前にした患者の最後の願いをかなえる掃除夫の物語ということしか思い出せない。7年後のいま、前作の主人公神田が、遠いアメリカから電話で森野を支える関係という点を考えると、やはり前作を読んでから本書にあたるべきだった。ちょっと悔しい。
そういえば、当時のこの作家のすべての作品について、良い印象は残っているが細かい記憶がない。それがどういう意味なのかはまた改めることとしたい。
そして本書を理解するために「MOMENT」の再読をした。前作の森野と本書の森野との間にどうにも違和感を覚えた。同じ人物に繋がらない。それは読む順のせいだろうか?

それはともかく、やはり本書は前作に続けて読むべきだ。並べてみると、作品のつながりがよく分かる。前作は「死を目前とした人が『足掻きながら』生きる物語」、対して本書は「残された者が生きる物語」という構造が見える。
前作に比べると本書では森野のモノローグがあるせいだろう、森野の中身が少し見え、そこに不器用な女の子の姿を少し垣間見ることができる。前作の主人公神田に比べ、森野のクールさは不器用故であり、読者を少し遠ざける。よく言えばベタベタとしない。それが読者の感情移入を少し阻むのも事実だ。ただ、暑苦しくなりそうなエピソードが乾いた文章で淡々と綴られることは、表紙カバー写真の星空の風景のようにしんとした夜の静けさにも似て好ましい。何か大きな事件が起きる訳でも、大きな物語の流れがある訳でもない。小さな、町の葬儀屋の周りに起こる、色々な境遇の人々の小さな物語。心地よい距離、そして語られるミステリー。本書にミステリーが必要であったかどうかは別として、最近の作品ではなく、昔のこの作家の作品のように心地よい読後感を与えてくれた。

しかしその一方でぼくには森野の顔が思い浮かばない。前作のクールでぶっきらぼうな女性であれば格好いい大人の女性を想像することもできる。しかし本書ではそのクールさが実は、両親を亡くした少女のままの不器用さゆえであることも見えるような気がして、逆にその顔が思い浮かばない。華奢ではなさそうな、その体の描写もあいまって。それはドラマ化を想定した現実のタレントの顔を当てはめるということでなく、このぶっきらぼうで不器用な女性を、肉体のある人間として捉え、想像することができないということ。それが故なのだろうか、ぶっきらぼうなクールさの与える距離以上に、作品に馴染みきれないもどかしさがぼくには残った。

森野について、両親を亡くした少女が、その不器用さ故に心に鎧を纏いクールに生きてきたとそれらしく語ることも可能だろう。だからこそ、森野の心の鎧をこじ開け「泣く」という行為をさせた神田が彼女にとって必要だというのも理解できる。そして本書の最後で、粋な演出とともに森野が新たな一歩を踏み出す意義も理解できる。もっともその辺のミステリーの謎解き的な演出は、少しやりすぎな気もする。
ともかくぼくには森野の笑顔が見えてこなかった。そこがとても歯がゆい。
本書の読後には心地よさが残る。しかしぼくは本当にこの作品を覚えているのだろうか?そこが疑問だ。

蛇足:本書にあった、いまどきの幽霊はかはたれどきや、たそがれどきでなく、真夜中に現れるという意味の文章はちょっと粋に感じた。
ほかにも幾つか小粋な文章が散りばめられており、そういとこは小憎らしい。

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死者の想い

小説「WILL」を読みました。 著者は 本多 孝好 あの「MOMENT」の姉妹編 というか続編 今回は葬式屋 森野が主人公 連作短編の構成で 全体の雰囲気も 「MOMENT」と似ていますね 今回は葬式屋ということから その仕事から、死者に関わる不思議な事件 謎を解くミステリは...

2011/12/24(土) 午前 0:38 [ 笑う学生の生活 ]

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