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「ロックンロール七部作」古川日出男(2005)☆☆☆★★
※[913]、国内、現代、小説、文芸、ロックンロール

古川日出男の「LOVE」は購入希望を出せど、さっぱりなしのつぶて。なのになぜか本書はちゃかり入庫。どうなってるんだ、わが街の図書館。
常々、古川日出男は物語でない、文章だ、文体だと言い続けてた僕ではあるが、あ、ちょっと、これはヘン、困ったゾ。ノれない。ロックンロールなのに。
っていうか、これ、ホントにロックンロール?グルーブ感も、ドライブ感もない。それは、作品のせいでなく俺がリズム音痴のせい?ノれてる人も多いようだし。あちゃぁ。

あたしが語る20世紀のロックの歴史。ビートルズも少しだけ出てくるが、あとは古川の描く独自のロックンロールの物語。7部作で7大陸を駆け巡り、最後は第8部ではなく、第0部。語り手であるあたしに戻る。7部作は、それぞれAパート、Bパートに区分され、そしてそれぞれアフリカ大陸、北米大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸、インド亜大陸、南米大陸、南極大陸を舞台にした、ロックンロールの物語。時は1901年1月1日から2000年12月31日の間。語るのは、本当は2001年1月1日0時0分00秒に生まれるはずが、2000年12月31日午後11時59分59秒コンマ何秒かあとに生まれた、あたし。
ブックスタイルも、それぞれの部で、ページのノンブルのフォントを変えたり、ところどころのページ染みのような模様を入れたりして、妙な凝り方。で、その意味するものは?

古川が語る壮大なホラ話がおもしろくない、というわけでもない。ただ、ノれない。それが歯がゆい。
「あたし」の文体がいけないのか?それとも、僕が知っている、思っているロックンロールの世界と遠いせいからなのか?

第一部:アフリカ大陸、
1966年、イギリスで曇天というアーティストが作った「あなたの、心臓むしゃむしゃ」という曲が欧米を席巻し、そして幾多の人を介し、アフリカ大陸に辿り着く物語。そして曲名は「希望」に変わる。
第二部:北米大陸
1951年、ロックンロールという名前が命名された。物語はその十年か二十年前に遡る。ミシシッピ河のデルタで、鰐じじいの孫1セントがブルースマンを騙し、鰐の餌食にし、ブルースの魂モジョ・ハンドを盗む。モジョ・ハンドは盗まれ続けながら、持ち主を変える。持ち主は、そのたびに、2セント、3セント、4セントと名乗り、そして1945年最後の持ち主、1ドル1セントに辿り着く。ブルースからリズム&ブルースへ。喝采を浴びる1ドル1セント。だが、彼の手からモジョ・ハンドは消えた。
1999年カナダに新たに生まれた準州ヌナブットで、アザラシの腹から針金が出てきた。それを見つけたカリフォルニケーションは、あたかも1セントが鰐の腹から出た針金を張って手作りギターを奏でたように、自殺した兄の安物ギターに、その針金を張り、歌を奏でることを直感した。曲名は「自立」。
第三部:ユーラシア大陸
2000年夏、ソビエト連邦が消滅したロシア共和国で、モスクワまで向かうロシア号に乗る七人の若者。ロックンロールのコンテストのために組んだバンドのメンバーたち。赤いエルビス、血のしたたる熊、箱入り娘、極限馬、怒りのチョウザメ、チョウザメ弟、悪い肝臓。いろいろな経緯で呼吸(いき)の合わないメンバー。そんななか、見知らぬ初老の男が特製のサワークリームを投じた、食堂車で食べたボルシチが、あるいは、怒りのチョウザメが皆に差し入れたブリヌイが皆の心を解きほぐす。新しい曲が生まれる。曲名は「鷹揚」
第四部:オーストラリア大陸
ロックンロールはベトナム戦争とともに従軍した。1969年アメリカ軍の青年ディンゴの父親は、オーストラリアでのR&R(レスト&レクリエーション 慰労休暇)で、ディンゴの母をナンパした。その結果、ディンゴが生まれた。ディンゴの父は、戦死し、母はトラック乗りの二番目の父と結婚。ディンゴは二番目の父に可愛がられたものの、その父は死んだ。父の死を認識したくない思いがディンゴを目覚めさせた。天才コンピュータプログラマー。そして、眠れないディンゴ。いつしか動物たちに歌を追わせ、ソングラインを捜し求める。そして、典型のロックンロールを発信し、動物たちを真実の歌の道(ソングライン)に歩ませるために、ラジオ曲を乗っ取り、「無垢」と命名した曲をかけようとするディンゴ。
第五部:インド亜大陸
1970年ラスベガスのエルビス・プレスリーのショウを、インド人で初めで見た緑っぽい緑は、大いなるロックンロールの化身エルビスに感化された。そして、ショウの余韻醒めやらぬカジノで大金を得る。インドに戻った緑っぽい緑はそのあぶく銭でもって、映画を製作、何本もヒットを飛ばした。
しかし、監督と脚本家に騙され、裏切られた彼は、借金を背負い、貧民窟に逃げ込む羽目に。そこで、正義に目覚めた彼は映画の衣装、エルビスのそれを模したジャンプスーツを着、謎の正義の味方となっていた。
ジャンプスーツを来た正義の味方、インドではエルビスのジャンプスーツが新たなHEROを生み出し、増え、そして消えていった。
1991年花街の踊り子、甘露、その恋人猫は、甘露のパトロン候補を殺害し、街から逃げた。逃亡先の山岳寺院の巨像にジャンプスーツを纏わせる二人。そしてそこにエルビスが居ることを知り、集まる本場アメリカから来たジャンプスーツを来たエルバイたち(エルビスに心酔、感化され、その姿真似る人々)。ヒーローに、十二人の使途に、俺たちのこれから生まれくる子供たちは祝福されている。その瞬間、猫は叩いている即興曲を「覚醒」と命名する。
第六部:南米大陸
ロックンロールには、グライドするような腰の動きも大事。1990年アルゼンチンから一人の、のちに武道派の王子を名乗る若者がブラジル入りする。彼は、アルゼンチン・タンゴのタンゴ・ダンサー。粗野でアホな父親の仇を討たなければ、遺産が相続できない。ブラジル、サンパウロで空手、ムエタイと修行に励む彼。そして、最後に勘違いから、合気道を少し齧ったことのある演歌のカラオケジジイ、幸福な亀に師事する。
そして、父の仇を討つための試合。相手は武道派の王。しなやかに伸びる武道派の王子のキック。それは身に染み付いたタンゴという演歌。
しかし、格闘技におけるロックンロールは、それより遥か以前、1956年から二年間ブラジルで無敗を誇ったカポイエラの天才児の精神と身体に刻み付けられていた。「解放」と名づけられた音楽(それ)で。
第七部:南極大陸
ロックンロールはどこの国のもの?全米制覇を目指し、「イギリスの侵攻」と呼ばれる状況を生み、全世界をライブ・ステージにし。それは多国籍?いや、どこの国籍にも属さない、無国籍。そんな場所、国、大地はあるか。ある。南極大陸。
インディーズ(独立系)のレコード会社を営む父を持ち、小さな太陽はシカゴに生まれた。そこはのちにリズム&ブルースと呼ばれる音楽の生まれる地。SP盤の78回転のレコード。そして、父親と多くのミュージシャンを焼き殺して、シカゴを離れ船に乗る小さな太陽。
あたしの物語。21世紀の記念碑ベイビーになることに失敗したあたし。あたしの母、優秀ガールの目指したそれは、ほんのコンマ数秒ずれた。そしてあたしは生まれた。
小さな太陽は、南極大陸に辿り着いた。南極基地で殺人を犯し、自分の両耳の聴力をゼロにした。そのとき封印は解かれ、ずっと鍵をかけてきたものが、聞こえない世界に響く。あぁ。リズム&ブルース。南極点を目指し、辿り着く小さな太陽。南極点の周囲を、地球の自転と逆に回る。日付変更線を越えるたびに、一日前に世界に戻れる。365回転か、366回転か、正しい1年のそれを。そして、脳裡に演奏され続けていた楽曲を「贖罪」と名づけた。
第0部
現在(いま)、20××年。21世紀、20世紀の七つのロックンロールの物語は、当然、20世紀の外側から語られる。だからこそ、序章であり、第0部。
煩い号に乗っている彼女。冷蔵庫で氷漬けになった全身刺青の若者。ラテン民族の遺伝子が濃いが、アジアの顔だち、アフリカの血の混じる皮膚。つまり白色人種であり、黄色人種であり、黒色人種。レコードを携えた、密航者。
そして、彼女、あたしはロックンロールの七部作を生む。生むだろう。

へとへと。従来、古川において、あらすじをまとめてみようなんて思わなかったのだが、ふと見かけたblog「★究極映像研究所★」の本作についてのレビューhttp://bp.cocolog-nifty.com/bp/2005/12/post_786f.htmlに触発され、挑戦してみた。勿論、視点は変えてね。
ごめん、まとめてみたけど、やっぱりよくわからない。誰か読み解いて、教えてください(苦笑)。
っていうか、すげぇ、無意味な行為だったかも。

ただ、やはり「ベルカ、吠えないのか」とは、単純には比較できない作品だとわかった。ベルカは犬の物語が拡散されていても、繋がりを感じる。対してこの作品は、「あたし」という語り手を除くと、各物語にロックンロールという要素以外の繋がりを感じられない。バラバラ。確かに、最後、第0部で集約されると言えなくもないが、でも、これ、集約されている?なんか物語としてのカタルシスを得られないのだけれど。

正直言えば、ぼくには評価不能。そして古川日出男って、今まで文章、文体だと思っていたけど、実はそれだけではないと気づかせてくれた作品。加えてこれは他人には絶対勧められない。

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