思いのしずく

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2010年3月18日

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吉田伊佐 ケータイ投稿記事

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「吉田伊佐展」が始まったので、おじゃました。
会場に飾られた新作17点、その渾身を拝見する。
風景の中の動きがしなやかさを増し、グリーンの美しさにハッとさせられる。
期待に胸を膨らませ、緊張しているこちらを、絵の中の風景が優しく出迎えてくれた。

作品の中に張りつめている作家の心の緊張感が、なんとも心地よい。
作家の意志が紡ぎ出す繊細な筆のタッチが、画面の中の草の葉を風にそよがせたり、空気や流れる水に季節の匂いをにじませる。

写実の素晴らしい腕が、遺憾なく発揮されているのだが、見れば見るほど画面の奥に、目に見えない何かが感じられる。
当たり前だ、作家は細部を描いている訳ではない。
神は細部に宿るというが、細部を描きながら世界を表現しているのだ、


すべての樹木の表情が異なる。
それは季節の違いだけでなく、その木が育った環境、運命の必然までをも描こうとしているかのような、深い思いが込められた表現である。


会場は、銀座 「アルトン」 03-3569-2321
会期は、3月27日まで。

個展会場を後にして、国立新美術館の白日展に向かった。
吉田先生の「陽光の中の木立」(上のフォト)の大作に対面。
 
何気ない風景だが、その空間の中にこめられた作家の心象、作家の眼に映った美しい時間を、いつまでも眺めていたかった。

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長谷川等伯 ケータイ投稿記事

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それは 想像以上に巨大だった上に、絵柄のインパクトに度肝を抜かれ、動けなくなった。

待ちに待った長谷川等伯「松林図屏風」を見に行ったのに、それ以上に感銘深い作品に出会えたことが嬉しかった。

「仏涅槃図」である。
ダヴィンチの死から20年後に生れた等伯の作品に、「トーハク・コード」を見た。

一幅の高さが10メートル、横6メートル、一体どこに飾るのか、現実を超越した迫力。
その画面いっぱいに、釈迦の入滅と、弟子や動物たちをはじめ、木々の葉まで、あらゆるものが悲嘆にくれている様が克明に描かれている。

解説には、
「本図には、明兆や松栄の作と同じく、画面上部に天上から駆けつける釈迦の生母摩耶夫人が描かれていない。
これは堂宇の中で、画面の下で祈願する信徒たちには、光が届かず、画面の上部分がほとんど見えないことが考慮されているのではないだろうか。
巨大な沙羅双樹が天空へ延び、その先端が夜の空に消えていく様は、画面の大きさをより効果的に感じさせて、強い臨場感を生み出しているのだ。」

と説明されているごとく、スケールの大きさは破格だ。
一度に視野に収まらない画面の隅々に描かれた、様々な悲しみの姿態をつぶさに鑑賞し、目を画面上部へと移動させる。
そこには、小さく開いた夜空に、丸い月が見下ろしている。

この月は、等伯の左目に違いない。

その目から溢れ出る涙のように、白い雲が人々の頭上に垂れ込めている。

最初、泣き崩れる群集は、老若男女が描かれていると思っていたが、どこを探しても子供の姿がない。

この絵の裏には、釈迦如来をはじめ日蓮聖人と祖師たちの名前、等伯の養祖父母、養父母、さらに将来に期待を寄せていたが26歳の若さで亡くなった息子 久蔵の名前が書かれているという。

「仏涅槃図」は、釈迦入滅とともに、息子の死を鎮魂する作品だったのではないかと、親としての等伯の気持ちに思いを馳せた。

能登半島の七尾から戦国の京に出て、筆一本で画壇を駆け上り、利休や秀吉と言った天下人に認められる絵師となった。

その61歳の時に描いたこの作品から、改めて月の光に宿る無常感を感じるのだった。

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