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刑事系第1問

財産犯で、被害者が複数にわたり、
かつ、経済的観点から見ると、
同一の利益に対して、
法的評価としては、複数の財産犯が成立し得るので、
不可罰的事後行為として、
そもそも犯罪成立を否定するのか、
又は、最終的な罪数処理で考慮するのか、
という点への配慮が求められます。
 
成立罪名・罪数処理については、
工藤北斗講師の分析を見てもらうことにしつつ、
議論がありそうだな、という点にコメントします。
 
まず、A社が合同会社であることは
犯罪の成否へ影響するのか、という問題があります。
 
甲が、自己の借金の担保として、
A社が保有する不動産へ担保設定することは
利益相反であることは間違いなく、
定款で定めた手続きを経ずに行われている以上、
委託の趣旨に完全に背いており、
実質的に権限逸脱と評価できるので、
業務上横領罪が成立、という結論は変わらないと思いますが、
なぜ、本件で、A社が株式会社でなく合同会社なのか、
は気になります。
 
何となく(文献の裏は一切なく)、ではありますが
株式会社の場合よりも、
合同会社の方が、
代表社員が不動産を管理・処分している、
という「法律上の占有」を認めやすいように思います。
出題者としては、
A社に対する犯罪は、
背任ではなく、業務上横領罪とすべき、
という考えだと予想されます。
 
その代わり、
Eに対して土地を売却した行為によって、
Dに対する背任罪を成立させるべきでしょう。
 
結局のところ、
業務上横領罪と背任罪の両方の、
各構成要件の当てはめが
答案上で表現されることになります。
 
 
文書偽造については、
気付かなかった、という声も聞きますが、
わざわざ別紙で社員総会議事録が
掲載されている以上、
文書偽造は気付いて欲しいです。
代理権の冒用と同じように考えて、
有形偽造を肯定できるでしょう。
無印か有印か、はよく分かりませんが、
有印で良いのでは、と思います。
 
 
最後に、Eへの詐欺罪を成立させるか否か
が一番、議論が分かれるところだと思います。
Eへの売却は
代金を甲が着服するつもりなので、
権限濫用となりますが、
Eはその意図につき善意無過失なので、
売却行為は有効ですし、
移転登記も完了しています。
 
詐欺罪が個別財産に対する罪であることを
強調すると、
本件のような事案でも、
Eは本当のことを知っていれば、
お金を出さなかったはず、と言って
詐欺罪を認めたりしますが、
経済的観点から見れば、
Eは何ら不利益をこうむっておらず、
犯罪不成立でよい、と思います。

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民事系第3問(民事訴訟法)

民事訴訟法は、設問が3つに分かれ、
設問1は(1)と(2)に分かれますが、
合わせて35点分、
設問2は40点分、
最後の設問3は25点分、
という配点でした。
 
事案に即した処理が要求される問題は
配点が高く、
一般論を展開するだけでも
問いに答えた論述となる問題
(設問3)は、配点が低い、
という傾向が、見られます。
 
まず、設問1です。
(1)は、二段の推定、処分証書の理解を正面から
問うものであり、予備試験で
「実務基礎民事」を勉強している人は
有利だったでしょう。
 
もちろん、法科大学院内でも
実務の勉強はしているはずですが、
二段の推定の意味がしっかりと
自分の言葉で書ける法科修了生は
予備合格者よりも、割合は少ないと思います。
 
処分証書の意義や、
民事訴訟法228条4項の解釈については、
読んでもらうことにして、
設問1に対する感想を書いていこうと思います。
 
まず、違和感があるのは、
Xの代理人が、
有権代理構成(第2の請求原因)のみを
主張している点です。
 
後で、第3の請求原因として登場しますが、
「110条の権限ゆ越の表見代理」の方が
立証しやすいはずです。
被告Bは、アパートの管理全般をCへ
委ねていて、実印も預けていた、
と言っているのですから、これを利用できます。
 
私の感覚では、Bから、Cへ実印を預けていた、
という主張が出てきた場合、
まずは表見代理の請求原因を主張し、
その後、有権代理構成の請求原因を
念のために主張する、といった程度だと思います。
 
有権代理の場合、BC間での代理権授与を
立証しなければいけません。
そして、本件契約書にBの印章が
押印されているからといって、
代理権授与を推認する力はない、というのが私の意見です。
なぜなら、Bの主張通りに、アパートの管理のために
Cへ実印へ預けていたに過ぎないとしても、
本件契約書上のB名義の押印の存在は
何ら変わりがないからです。
 
私の意見への批判としては、
 
真実、BがCへ保証契約の代理を依頼した場合には
実印を渡しているはずであり、
後に、Bが代理権授与の事実を否認するために、
アパートの管理のために預けていただけ、
という言い訳をしたに過ぎない、
 
という考え方があり得ます。
 
しかし、この考え方は、
立証命題(BはCへ代理権授与した)を
先取りしてしまっているように感じます。
 
Bの印章による印影がある、
という事実の推認力は、
Xが主張する第2の請求原因だけでなく、
Bの主張(言い訳)を支える方向にも、
同等に働くのではないか、と思います。

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民事系第2問(会社法) ケータイ投稿記事

まず、設問1です。
「取締役選任の当否」という問い方が
曖昧だな、というのが第一印象です。
 
問題文の条件として、
「総会の日から3ヶ月以内に、
株主総会の決議の取消しの訴えは
提起されなかった」とあるので、
仮に、決議方法に法令違反や
決議内容に定款違反があったとしても、
決議の効力は有効であることになります。
 
とすると、決議「内容」に法令違反があるのか、
という点だけが問題となります。
ここで思考が止まってしまいます。
 
本事案では、会社提案が
ABCDの4名を候補者とする選任議案であり、
これに対して、
乙社が新たな議案として、
PQRを候補者へ追加するよう
株主提案を行っています。
この後の採決方法及び4名の選任方法に
何らか問題はありそうですが、
「内容」に関する瑕疵(法令違反)があるとは
到底、思えません。
後述するように、問題となり得るのは
「方法」の違法だけなのです。
 
決議方法は違法だったが、
訴え提起されなかったから、
選任決議は有効、という筋を書くことが
「当否」を論じることを意味するのか
よく分かりません。
 
さて、議長Hは、
ABCDPQRの順に、
候補者ごとに投票による採決を行っています。
これは問題ありません。
 
累積投票が排除されていない場合には、
株主からの請求があると、
複数の候補者について採決をまとめて行い、
株主には、1議決権につき4票(選任すべき人数分の票数)
を与える必要がありますが、
甲社では累積投票が排除されているので、
候補者ごとに、過半数の賛成が得られるか、の採決となります。
 
ここで、会社提案と株主提案を区別する見解に立てば、
まず、会社提案のABCDの4名について、
過半数の賛成が得られるか、を採決することになり、
BCDの3名が選任されます。
次に、株主提案のPQR3名のうち、
誰が過半数の賛成を得られるか、を採決します。
よって、Hの決議方法には何ら瑕疵はありません。
 
なお、乙社の提案によって、
選任すべき取締役の数が、
4名から5名(定款所定の6名からHを除く人数)へ
増える、という考え方もできそうですが、
株主総会決議事項として
「取締役○名選任の件」と、
選任人数が明記されているのが
通常であると思うので、
選任人数は4名のまま、と考えるべきでしょう。
(議題追加権が行使されていれば、5名への拡大はあり得る)
 
これに対し、会社提案と株主提案を同列に扱う見解からは、
最初からABCDPQRの7名が候補者として
招集通知に記載されていた場合と同等に考え、
この7名それぞれで投票の集計を行い、
得票数が多い人を上位から4名選任すべき、
ということになります。
このように考えると、本件では、
DCPQ、RBAの順で得票数が多いので、
DCPQの4名が選任されることになり、
Bは取締役になれません。
 
しかし、これらの瑕疵は
決議方法に関するものにとどまります。
結局、何を論じさせたかったのか、
よく分かりません。
 
 
設問2は、書くべきことが明白です。
(1)は、「あらかじめ阻止するため」
とあるので、違法行為差止請求権を使う、
ということは多くの方が思いついたと思います。
株主による差止めと、
監査役による差止めとで、
微妙に要件が異なることは一言、書きましょう。
 
甲社(Hが代表)が乙社(Pが代表)へ貸付けをすることは、
利益相反取引となります。
もっとも、取締役会の決議は、
説明不足である、という意見は出ているものの、
(一応)有効に成立しているので、
356条違反での法令違反はありません。
 
本件で違法性が肯定できるのは、
無担保で15億円もの多額のお金を
貸し付けることが
取締役の善管注意義務に反する、
という法律構成でしょう。
 
(2)も、問題文の指定通り、
H、D、Pを分けて検討しましょう。
423条3項の推定規定の正しい適用が
できているか、を試すのが出題趣旨だと思います。
 
すなわち、
1号は、当該利益相反取引をした取締役
を指すのですが、本件のように、
甲社を代表しているのはHであり、
Pは単なる平取締役、という場合、
1号はPのことを指します。
誰の利益が会社と相反しているのか、
が重要なのであって、
その取引を行った代表者が誰か、は関係ありません。
 
取締役にPがいる以上、
HとPの馴れ合いの危険から
Hが代表者として行う利益相反取引は、
423条3項の解釈上は、Pによる行為として評価されます。
(取締役会の承認を得ようとする人が
423条3項1号の「取締役」だ、と考えればよいです)
428条1項もより免責が否定されるのもPです。
 
代表者のHは、423条3項2号の
「取引をすることを決定した」取締役
として評価すべきです。
最後に、Dは3号の「決議に賛成した」取締役、となります。
 
 
設問3は、345条4項の意見陳述の機会
の規定さえ見つけることができれば、十分です。

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司法試験論文式・民事系第1問(民法)

遅ればせながら、
工藤北斗講師による分析が
WEBアップされましたので、
「堅い」分析を読みたい方は、
こちらをどうぞ。
 
私は、ある程度自由に、思いつくままに
書いていきます。
 
まず、民事系において、
科目の出題順が年によって
変わるのではないか、
という噂が一部にありましたが、
無難に、
第1問が民法、第2問が商法、
第3問が民事訴訟法、
という順序で、来年以降も、この順序で固定でしょう。
 
LECでは、答練で、一部、
順番を入れ替えた出題もしていましたが、
今年は、順番固定でいきます。
 
さて、第1問(民法)の中身です。
設問1が久しぶりに要件事実の理解が
関連する出題となりました。
(1)において、
無理やり要件事実の理解を示そうとすると、
FがEに対して、所有権を主張する際、
FとEとの間で「権利自白」が成立する
直近の時点は、
DとEの親であるCが死亡した1985年4月であり、
Fが主張する請求原因事実は、
①1985年4月時点でのC所有
②1985年4月にC死亡
③DはCの子
④1988年7月にD死亡
⑤BはDの子
⑥1990/11/15 BA間で売買
⑦2003/02/01 A死亡
⑧FはAの子
となります。
 
ここで、③の主張において、
Fは、DがCの唯一の相続人であったこと
まで立証する必要はなく(非のみ説)、
被告Eの側で、
自身もCの相続人である(EはCの子)旨、
立証責任を負います。
 
仮に、EがCの子であるのかが真偽不明であった場合、
Fは勝訴できる、という結果となります。
 
以上が、要件事実を無理やり検討した場合の
答案の流れですが、
このように書いた受験生はもちろん、
考えた受験生もいないでしょう。
 
問題文で「Cには子としてD及びEがいた」
と明記されている以上、
相続に関する「非のみ説」を検討する必要はなく、
端的に、
遺産分割前の共有状態の土地を、
相続人の一方が売却してしまった場合の帰結を
書けば十分でしょう。
 
なお、94条2項類推適用でF(というか、前主のA)
を保護できないか、という検討が
他社の分析では大展開されていますが、
登記名義がCである以上、
そもそも「外観」の要件を充たさないと考えるのが
自然だと思います。
 
私がこの問題を見て思いついたのは、
権利外観法理ではなく、
 
相続回復請求権の時効消滅を定める
884条が共同相続人間で適用されるか
 
という論点でした。
判例(最判昭53.12.20)では、
共同相続人の一方が他方の存在を否定して
相続財産を占有している場合には、
原則として884条は適用されないが、
他方の相続人を否定するだけの
合理的根拠(戸籍の記載等で、他方の相続権が
否定できる事情など)がある場合に限って
例外的に884条を適用できる、
という結論でした。
 
かなり強引な読み方になりますが、
1985年4月にCが死亡した後、
Dが甲土地を管理した際に、
Eの相続分についても自己の所有に属すると
Dが信じるための、何らかの根拠があった場合には、
884条が適用され、
5年経過した後の1990年9月頃には、
Eが甲土地の持分を主張することはできなくなっている、
という解釈は一応、可能だと思います。
 
ただ、これは思いついても、書かない方が無難ですね。
 
 
次に、(2)です。
そもそも、甲土地のうち、
もともとDの持分となっていた部分は、
何ら問題なく権利承継が認められます。
以下、時効取得を論じる必要があるのは、
C死亡後に、共同相続によってEの持分となった部分、です。
 
まず問題となるのは、
Fが時効取得を主張するにあたって、
DやBの占有をあわせて主張できるか、です。
 
DがEの持分部分を占有していたのは、
法律関係を外形的に観察する限り、
他主占有であったと解釈すべきです。
そして、Dから相続したBについても、
DEの共同相続を知っている以上、
「相続による他主占有から自主占有への転換」
を肯定することは困難だと思います。
 
(1)では、要件事実を無理やり検討する答案は
流れが悪い、と書きましたが、
(2)では、要件事実を正面から検討することが
出題意図ではないか、と思います。
 
すなわち、要件事実の世界では、
Fが、実際に起こった法律関係を
正直に主張することは期待されていないので、
以下のような請求原因事実を
主張することも許されるはずです
(DからBへの相続を無視するのです)。
 
①1988年7月 Bが甲土地の占有開始
②1990年11月15日時点 Bが甲土地占有
③同日 B→A 甲土地売買
④上記売買に基づき、Aは甲土地の占有開始
 (正確には、Aの占有開始は11月20日)
⑤現在(2008年7月以降のいずれかの日) Aが甲土地占有
 
186条によって、自主占有は暫定事実となるので、
時効取得を否定したいEの側で、
Bの1988年7月当時の占有が他主占有であったことを
主張・立証する責任を負います。
 
したがって、BA間の売買の事実は、
FがBの自主占有を前提として、
Bの占有を出発点とした20年の占有を
主張する場合に、法律上の意義を有することになります。
 
 
設問2については、
混合寄託契約に関する事前知識を
受験生が知っていることは想定されていないので、
【別紙】の各条項の解釈から、
妥当な結論を導けば十分でしょう。
 
大前提として、「和風だし」2000個は
制限種類債権であること、
GとFが有していた共有持分権は
1000個ずつであること、
そして、
Gが引渡しを求めている時点では、
倉庫内には1000個しか存在せず、
残り1000個の引渡しは
社会通念上、不能である
(法的には、消滅したのと同じ)こと、
を述べましょう。
 
盗まれてしまった1000個
のうち500個分は
Gの持分部分であった、
という結論は
寄託契約書の第4条の合理的解釈から
当然に導かれるものであり、
Hとしては、
500個分のみGの引渡請求に応じ、
足りない分(500個)は
債務不履行責任としての
損害賠償で処理する旨、述べることになります。
 
 
最後に、設問3です。
予備校っぽい出題だな、というのが
第一印象です。
 
損害賠償の範囲として、
416条2項の解釈を論じるためには、
債務不履行を認めざるを得ず、
そうすると、
「おこわ」については無償寄託であることから、
施錠を忘れるのは、
「自己の財産に対するのと同一の注意」
の観点で見ても、注意義務違反になる、
という結論になります。
 
債務不履行の要件充足を検討したうえで、
損害の範囲の検討に入ります。
 
まず、通常損害としては、
「おこわ」500箱分の価値相当額
及び、Qへ販売できていたら得られたはずの利益額
の合計となります。
 
特別損害として、
仮にQ全店舗での販売ができていたとしたら
得られたはずの利益想定額
が認められるか、が
416条2項の解釈と関連して問題となります。
 
416条2項について、
通説の解釈を前提とすると、
債務不履行時(盗取時)である
平成24年1月24日時点で、
債務者Hが、
「本件履行不能(盗取)が無かったとすれば
Fが今後Qとの取引を拡大させて
大きな利益を得ることができたはず、
という事情」を予見可能だったか、
が問題となります。
 
ただ、FがQ全店舗で「おこわ」を販売できるかどうか、は
試験販売の評判がよいかどうか、
にかかっているのであって、
仮に、盗取されていなかったとしても、
Fが大きな利益を得ることができたか否かは
未確定であって、当然、Hの予見可能性も否定されます。
 
このように見てくると、事案14.の部分を
あまり強調しなくても、
単に、FがQとの取引を拡大できるかどうかは
未確定であった、という点さえ
説明できれば、
特別損害の賠償責任は否定されると思います。
 
特別損害に関する、予備校的な論証を
そのまま書くと、マイナス評価されるな、と感じました。 

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試験、お疲れ様でした

今朝、金環日食を見てから
出勤、通学をされた方が多かったことと思います。
 
朝の7時〜8時、という時間帯が非常に良く、
かつ、
昨日で司法試験、予備試験の短答式、そして、
弁理士の短答式が終わった、
ということで、
受験生も日食を楽しめたのでは、と思います。
 
さて、法務省から、
司法試験の問題が発表となったので、
科目ごとに、どんなことを書くべきか、
少し書いていきます。
(北斗講師による分析は終わっているのですが、
文章をWEBアップするのに手間取っているようです。
明日には、アップされるでしょうから、
しっかりとした分析は、そちらを見てください。
私がこれから書くのは、印象論に近いです。)
 
問題が掲載されているページはこちら
 
まず、憲法。
政教分離原則の中の、
89条違反の有無を検討する、ということは
ほぼ全ての受験生が気付けたと思います。
 
本問で差が付くのは、
・墓地の整備
・本堂再建
・庫裏再建 ←庫裏(くり)は住職の住居
の3つを分けて検討できているか、
という点でしょう。
 
政教分離違反の判断基準として、
厳格な目的効果基準(いわゆる、レーモン・テスト)
でも良いと思いますが、
この基準であてはめをすると、
最後の結論が「その行為が宗教との
過度の関わり合いをもたらすか」
という外形上の評価によって左右されるので、
空知太神社事件で挙げられた、
 
当該宗教的施設の性格、金銭支出の経緯・態様、
これらに対する評価等を社会通念に従って判断する
 
という基準の方が書きやすかったと思います。
 
例えば、墓地については、
B村にとっての本件墓地は、
ほぼ唯一の墓地であり、
宗教を離れて考えても、
これを再建することは、
村全体の公共の利益につながる、と考えられます。
ここで、Dの立場からは、
「A寺の墓地で埋葬してもらえるのは、
C宗の典礼方式に従った場合」であり、
立派な宗教的施設である、
という主張が出てくるわけですが、
宗教的施設であることを考慮したとしても、
本件墓地の役割の重要性や
金額が(本堂再建よりは)相対的に小さいこと、
支出の経緯として、
檀家(村民の3分の2)も火災の被害のために
資金負担させることが困難であったこと、
といった点を考慮すると、
墓地整備への公金支出は合憲でよいと思います。
 
これに対して、本堂はまさに宗教的施設であり、
寺の行事は習俗化しているとはいえ、
宗教的儀式の色彩は残っているので、
本堂再建に、4000万円もの金額を
支出することは、違憲になりやすいと思います。
 
B村側としては、
本堂が村民の交流の場となっていて、
かつ、檀家でない村民の悩み事相談
も受け付けている、
という話を言ってくるのでしょうが、
そのことだけで本堂の宗教的色彩が弱まるとは
考えにくいです。
 
最後に、庫裏が判断に悩むところでしょう。
1000万円という金額は相対的に低いですが、
必要な費用の半分を公金から支出する、
というのは墓地と同じ割合での補助金交付、となるので、
その点を考慮すると、違憲に傾きます。
 
住職の「住居」だから
政教分離原則違反になりにくい、
という風に思った人もいるかもしれませんが、
「住職」という地位に着目して
助成がされた、と見るべきです。
例えば、住職が交代すれば、新しい住職が
庫裏に入るはずです。
 
単純な発想ではありますが、
墓地は合憲で、本堂は違憲、
そして、庫裏は微妙、といった感じです。
 
 
次に、行政法です。
土地区画整理事業の事業計画決定に
処分性を認める最高裁の大法廷判決
(最大判平20.9.10)の射程
は多くの受験生が準備していた論点であり、
LECでは、直前模試において、
第一種市街地再開発事業を巡る紛争事案を題材に、
都市計画決定と、
その後に続く、事業計画等認可
のそれぞれについて処分性を検討する問題を
出題していました。
本試験の行政法の問題においても
計画決定と事業認可との違い
を理解していることが求められています。
 
処分性に関する〔設問1〕の論述の流れは、
まず、最大判平20.9.10の射程を検討するところから
書き始めるとよいでしょう。
 
道路を整備する事業を施行するためには、
事業計画決定の後に、
59条に基づく都市計画事業認定が
必要であるところ、
最大判平20.9.10で処分性が肯定された、
土地区画整理事業の事業計画決定は、
上記「事業認定」に該当する、
という対応関係を理解できている点を
まず示しましょう。
 
その上で、道路整備においては、
計画決定段階はまだ「青写真」に過ぎず、
建築制限は課せられているものの、
最大判平20.9.10の多数意見は、
建築制限の法効果のみでは処分性を肯定していないので、
判例の見解に従う限りは、
本件都市計画決定に処分性を認めることは
困難でしょう。
 
都市計画事業認定の段階で
争わせることが、当事者にとって
過度の負担となったり
(事情判決を受ける可能性が高い)、
又は、計画決定の段階ですでに
紛争が成熟しているといえるか、
という判断基準もありますが、
本問は小問が3つもあるので、
「紛争の成熟度」の基準を検討すると
時間不足になってしまうように思います。
 
さて、〔設問2〕は、
本案審理に関する問題であり、
誘導に素直に乗って考えることが
何より重要です。
 
1970年時点においては、
計画にはそれなりの妥当性があったと
考えられるので、
計画策定時点での違法性ではなく、
その後、40年という時間が経過する中で、
人口減少や低成長経済を考慮して
計画を見直すべきであるのに、
見直しを行わない、という点に
裁量権の濫用・逸脱がある、
と主張していくことになります。
 
都市計画法の中で、
計画変更に関する6条や21条を
指摘することが大事でしょう。
 
ちなみに、道路密度が低い、
ということは、建物が密集していることを意味し、
震災時の火災に弱い、という防災上の問題があります。
問題文に、この点の説明が無いのは
少し不親切であると思いますが、
都市計画を勉強していれば、
防災の観点は必ず知っているだろう、
という出題者なりの「常識」があるのかもしれません。
 
仮に、私が受験生であったら、
道路密度が不足する点を重視して、
変更しなかったことが
裁量権の濫用・逸脱とまでは言えない、とすると思います。
 
〔設問3〕は、百選でも取り上げられている論点で、
適法な行政行為によって
損害を被った場合の救済は、
憲法29条3項に基づく財産権補償しかなく、
判例上、本件のような事案では、
一般に課される制限であり、
「特別の犠牲」とまでは言えず、
補償は認められていません。
 
1970年代からの制限、と見ると
あまりに長期にわたって制限している、
という評価になりますが、
Pが実際に財産権を制限されるようになったのは
つい最近であって、
「高層の堅固な建物」は制限される、
という程度の制約であり、
かつ、道路整備は内在的制約であるので、
補償は不要、という結論でよいでしょう。
 
問題文では、「請求の成否を判断するために
考慮すべき要素を、一つ一つ丁寧に示せ」
という指示があるので、
あてはめから逆算して、
判断基準・要素を導きましょう。

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開設日: 2008/9/10(水)


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