蒼月亭【言の葉】夜終

凹んでる時に優しくされると本当やばい…ドキドキした(-.-;)

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僕の好きだった君。(沖土前提 近土/近藤→土方)

          僕の好きだった君。


「・・・あ。」
年末の書類整理で狭い部屋に缶詰状態。
大きいとは言えない机をはさんで、向いに座る男のそれにふと気付いた。
「・・・何だ?」
「あ・・・あ〜、いや・・・」
顔を上げたその瞳に俺が映って、思わず視線をそらす。
「何だよ、近藤さん?」
「・・・首んとこ」
俺は嘘が上手くつけないから。
ここは素直に。
「ついてるぞ、痕。」
いかにも「昨晩セックスしました」というような真っ赤な痕。
「・・・ッ!」
そこを指差すとトシの顔もその痕に負けじと赤く染まった。
「・・・随分激しい女だったんだなァ」
わざとらしくならないよう注意しながら言葉を吐き出した。
・・・本当は知ってる。その痕を付けたのが誰なのか。
「あ・ああ、激しい女で・・・参ったぜ」
少し安心したような声に、気付かれないように苦笑した。
俯いた首筋に見えたその痕は、たぶん牽制の為に付けられたんだろう。
吸い付くなんてもんじゃない。
歯形でも残ってるんじゃないかと思うくらい、濃い、所有印。
「ほら、んな事よりさっさと終わらせちまおうぜ」
「・・・そうだな」
ペン先が紙の上を滑る音と、部屋中に充満した嗅ぎ慣れたタバコの匂い。
・・・お前がタバコを吸い始めたのはいつからだったか。
頭の片隅で考える。

出逢った頃のトシは本当に頑固で冷たくて。
俺が何を言っても返ってくる言葉は1言2言。
それがどうしようもなく寂しくて。
無視されようが何だろうが、しつこく下らない話を続けた。
まるで野良猫を馴らすように。
毎日頑張ったもんだ。
そんな中で少しずつ打ち解けて。
日に1度見れるか見れないかだった笑顔が、毎日見れるようになって。
いつしかそれが当たり前になって。
俺から話しかけなくても、会話は生まれて。

「・・・近藤さん、手ェ止まってんぞ。」
「え・・・あ、悪い」
今ではこうやってそばに居る事が当たり前で。
いつも俺を気にかけてくれている。
そう思ったら、口元が緩んだ。
「何だよ、また“お妙さん”の事でも考えてたのかー?
 仕事中くらい真面目にしろよ、局長?」
「はは、悪い悪い」
・・・お前の事を考えてたんだよ。
当然、そんな言葉は飲み込んだ。

あの頃では想像もつかなかっただろう。
こんな風に穏やかに過ごせる時間が来るなんて。
出逢ってから1年も過ぎた頃には、俺達はもう家族のようになっていて。
そばに居る事が当たり前になってはいたが、それでも不安は有った。
野良猫らしくいつかフラっと消えてしまうんじゃないかと。
俺にはトシを繋ぎ止める術が無くて。
それでも、もしこれがトシ以外の人間だったら。
俺は「お前が決めた事なら」と、笑って旅立つ背中を見送ってやれただろう。
・・・けれどトシは別だった。
トシが俺の目の前から居なくなるなんて考えたくも無かった。

そんな中、真選組を立ち上げる事になって。
刀を捨てずに済む、と喜ぶと同時に不安も有った。
トシはついて来てくれるのだろうかと。
ミツバさんの事も有ったし、何より常に危険と隣り合わせの職業だ。
毎日のように命のやりとりをして、時には負わなくても良い傷を負うだろう。
トシは優しい。
幕府に背を向けるという理由だけで人を斬れるほど強くは無かった。
犯罪を取り締まるのだと言っても、中には汚い仕事だって有る。
そんな事、トシにさせたくないと思ったのも事実だ。
・・・だから、トシを誘う事を躊躇した。
断られた時の事や、人を斬る事で傷付いていくその姿を想像して。

「近・藤・さん・・・!!」
「うぇ・・・ッ!?」
「うぇ・・・ッじゃねーよ!仕事しろっつの!!
 何だよさっきから!何か悩み事でも有んのか!?」
顔を覗き込まれて。
思わずしんみりとその瞳を見つめた。
「な・・・何だよ?」
「・・・いやさぁ、よくついて来てくれたよなって。」
「何の話だ?」
「真選組立ち上げた時。」
「・・・いつの話してんだよアンタ・・・」
はぁっと深い溜息をつかれ、悪い・と軽く頭を下げた。
「当たり前だろ、そんなの。アンタは俺の大将なの!
 アンタが決めた道ならついてくよ、俺ァ」
言うなり視線をそらされて。
俯いて書類に目を通すその顔は真っ赤に染まっていて。
「トシ〜ィ!!」
「ああもう!良いからさっさと終わらせろよ書類!!
 アンタはそれに目を通して承認印押してくだけだろーが!!」
「了解!!」
言うとまた溜息をつかれた。

・・・だって本当に不安だったんだよ。
お前が俺から離れていくのが。
あの頃はまだ気付いてなかったけど。

・・・俺はトシに惚れてたんだよ。

たぶん、出逢った時からだろう。
最初は野良猫のような態度が放っておけなくて。
そばにいるうちにその真っ直ぐな性格に惹かれて。
いつしかトシは俺の後ろを歩くようになって。
真選組を立ち上げてからは、常に俺を支えてくれていた。
どんなに辛い仕事だって、自ら進んで買って出て。
俺に負担をかけないようにと。
・・・いつも俺の事を考えてくれていた。
そんなトシを守りたくて。
ずっとそばに居て欲しくて。
がむしゃらに頑張った時期も有る。
そうして隊員は増え、真選組という組織も安定してきて。
落ち着いて来た頃、ふと気付いたんだ。
そしてまた怖くなった。
お前は男なのに。
俺は誰より大切に想ってきた“家族”を邪な眼で見ていたのかと。
自己嫌悪に陥った。
・・・それからだ。
俺は恋多き男となった。
彼女でも出来ればこんな不純な想いは断ち切れると信じて。
手当たり次第告白しまくって、手当たり次第フラれた。
その度に慰めてくれるトシにまた揺らいで。
何度押し倒そうかと思った事か。
・・・いや、本当に危なかったんだよ。マジで。
トシはそんな俺の気持ちに全く気付かなくて。
花街だって普通に行くし、浮いた話も多く聞いた。
まぁどれも遊びなんだと分かるものだったが。
そんな話も、いつだったか短く切った髪も、俺を抑制するのには役立った。
“トシは男なんだ。恋の相手じゃないんだ。”
そう何度も何度も自分に言い聞かせて。

「それがまさか総悟に・・・なぁ・・・」
溜息混じりについ吐き出すと、軽く頭をはたかれた。
「近藤サンよぉ、アンタ仕事する気ねェだろ・・・」
「え?アレ?俺、仕事してなかった??」
「してねーよ!!手元の書類見ろよ!!一向に減る気配ねーじゃねーか!!
 さっきからブツブツブツブツ、何物思いにふけってんだ!?」
「トシの事考えてた」
トシの怒声に、ついあっさり白状してしまって。
しまったと思ったが、それを聞いたトシはそのまま黙り込んでしまった。
「・・・許可無く人の事考えてんじゃねーよ」
照れて、拗ねたような口ぶりが可愛くて。
今でも俺はトシの事が好きなんだなァと自覚した。
「なぁトシ」
「・・・んだよ」
けれど、お前は大切な“家族”だから。
「今、幸せか?」
「・・・はぁ!?」
「だから、幸せかって。」
意味が分からない・と睨まれたが、構わず聞いた。
「なぁ」
「・・・アンタが真面目に仕事してくれりゃあな!」
「・・・ははッ、そうだな」
お前は今、幸せなんだろう。
あの頃は見れなかった笑顔が、今はたくさん有る。
俺がトシを想うようにトシも総悟を想っていて。
総悟もお前を想い続けていたんだろう。
俺は自分の気持ちに精一杯で、何も気付かなくて。
もっと早くその想いに気付いていれば。
俺はもっと早く、トシへの想いを断ち切れていたんだろうか。

「お前が幸せならまぁ、良いか。」
「・・・ッだから!何の話だよ!!」
「俺にはお妙さんが居るし〜」
「だから・・・ッ」
「まぁ、成るように成ったんだろうなァ。なぁ、トシ!!」
「・・・訳分かんねーよ・・・」
呆れた声を出されて。
でもまぁ良いか、俺も幸せだ。
まだちょっとだけ胸が痛む気もするけれど。
「初恋は実らないって言うしな!!」
「・・・もう良いから黙っててくれ。」
「よっし!じゃあ一気に仕上げるぞ〜!!」
疲れた表情のトシに思いっきり笑いかけると、苦笑された。
「本当、アンタって訳分かんねーな!」
「そばにいて飽きないだろ!?」
「疲れるっつーの。」
そう言いながらも笑ってくれて。

いつまでもこんな風に笑い合えれば良い。
そうすればトシへの想いは良い思い出に変わるハズだ。
俺は昔お前に惚れてたんだよと、笑い話に出来るくらい。
この微かに痛む気持ちも全部思い出になると良い。
たぶんそれはそう遠くない話だろう。
俺の初恋は色鮮やかに“過去”に変わる。
そしてきっと。
俺が好きだった君はいつまでも変わらず、笑顔でそばにいてくれるのだろう。





 近藤さんの初恋が土方さんだったら良いのになァ〜、みたいな妄想。
 って言うか、初恋遅いなァ!!(笑)

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初コメ失礼しますっ!!

めっちゃ面白かったです><
真選組大好きなんですっごい楽しかったです☆
次の作品も楽しみにしてますね♪

2010/10/30(土) 午後 8:13 [ あこ ]

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