Ashley事件から生命倫理を考える

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2011年12月28日

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英「全国介護者戦略」モデル事業の総括報告書 リーズ大から 2

前のエントリーの続きです。)


ケアラーへの影響

DSプログラムのサービスを利用した18653人のケアラーの内
5050人(27%)からアンケートによって情報を収集した。
10年以上、週50時間以上介護している高齢女性が中心で
上記のようにマイノリティや多様な障害・病気の人のケアラーを含む。

回答者の80%はこれ以前には数時間を超えるレスパイトの経験がなかったと回答。

NHSサポート・サイトでは介護者役割へのサポートを受けたことがない人が多かった。
健康チェック・サイトでは多くのケアラーが過去半年以内に医療職の診察を受けていたが
今回新たに全人的なアプローチで介護者の心の健康が強調されたことを喜んだ。

(注 health and well-beingをここでは心身の健康と理解・仮訳しました)

休息サイトのサービスでは
「自分自身の生活」を送りやすくなり自信を持てた、
心身の健康のために行動するようになったという報告があり、
3分の1が新たな余暇活動を始めていた。

また専門職とのコミュニケーションがよくなった、
ケアラーとしてどんな支援やサービスを受けられるか、よく分かった、の声があり、

レスパイトを利用しなかったケアラーでは心の健康スコアが悪化する傾向があった。

健康チェックは支援を受けたマイノリティの多くに好影響があった。
4分の1が自分の健康に対する見方が変わり、運動量が増えた、と回答。
ほとんどの人がその他のサービスに申し込みをした。
ただし、一部の回答で、健康チェック以外のケアラー支援が
適切に行われていることがまず必要との課題も浮き彫りに。


コスト・パフォーマンス

DSプログラムの目的の一つに
最もコスト・パフォーマンスのよいサービス提供方法を探る、というものがあった。
正確な測定はできないが、研究からはプログラムで導入されたケアラー支援の多くは
医療と福祉領域でのコスト削減に繋がる可能性があるとのエビデンスが得られた。

全国評価とローカル評価から、削減が見込まれるのは

・入院、施設入所の予防
・支援によりケアラー役割の維持が可能
・心身の健康の問題を早期に発見できる
・ケアラーの心身の健康の改善
・連携・協働ができやすくなる
・GPの診療の効率化によるコスト削減(? Efficiency savings in GP practices.)
・ケアラーの再就労または離職防止
・ケアラー間でのインフォーマルな支援ネットワークの構築


政策提言

1. いずれの地域でも地方自治体、NHS組織とボランティア団体とが連携し、効果的な介護者支援を共に開発し提供する努力が必要。

2. サービスの開発には、地域の介護者支援の連携に多様なケアラーを含めることが必要。

3. 広い範囲のケアラーに支援を届け、まだサービスに繋がっていないケアラーに手を届けるためには、地域の関係者の柔軟な連携と、時にはターゲット・グループの特性に応じて臨時の体制を組むことが必要。

4. 地域レベルでの効果的なケアラー・サポートには多様なメニューが含まれ、それが個々のニーズに合わせて変更可能であること。

5. ケアラー・サポートのメニューについては、地方自治体とNHS組織とボランティア・セクターや状況に応じてその他の団体の間での合意が必要。

6. 新たな診断や退院や外来受診時など患者に介護する人が付き添うことの多い場所を中心に、病院が新たな介護者を見つけ出しサポートするメカニズムを定常的に持つこと。

7. 全てのGPに診療を通じてケアラー・サポートのキーマンとなるスタッフを決めるよう奨励すべき。そのキーマンの協力によって介護者を見つけ出し、地域の適切なサービスに繋げ、そして介護していることによってケアラー自身が病院の予約を取りにくかったり治療を受けにくくなることがないよう保証する。

8. 病院、GP診療所、地方自治体、ボランティア・セクターにおいてケアラーと接する全てのスタッフは、介護責任がケアラーの心身の健康におよぼす影響に配慮できるよう研修を積み、ケアラーが心身の健康チェックを受けられるようアドバイスできなければならない。

9. すべての関係機関がスタッフに対して定期的にケアラー支援の啓発研修を行うべきである。

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英「全国介護者戦略」モデル事業の総括報告書 リーズ大から 1

2008年に「全国介護者戦略」が策定された際に
保健省が作った The National Carers’ Strategy Demonstrator Sites (DS) プログラムを
リーズ大学の介護と労働と平等の国際研究機関(CIRCLE)が検証するべく行った調査研究の報告書。

New Approaches to Supporting Carers’ Health and Well-being: Evidence from the National Carers’ Strategy Demonstrator Sites programme
Edited by Sue Yeandle and Andrea Wigfield,
Center for International Research on Care, Labour & Equalities
University of Leeds


「全国介護者戦略」については、以下を参照 ↓
英国の介護者支援
英国のNHS検証草案と新・全国介護者戦略

DSプログラムとは、日本でいう「モデル事業」に当たるのではないか、と。
以下、訳語が不統一なままですが、Executive Summaryの内容を。
(ゴチックは Executive Summary の小見出しです)

          ―――――

全英25か所で1年半に渡り、
ケアラーへの新たな革新的サービスを提供したり、あるいは
現行の制度が効果的であれば、それを拡大したり、という試みが行われた。

25か所が3つの重点事業に分かれ、
それぞれに思い切った模索が行われた。

休息(レスパイト):12か所。
認知症または精神障害のある人のケアラーのために特化した短期レスパイト事業。
在宅での代替ケアの想像力に満ちた利用。
極めて柔軟なアプローチにより個別的な休息の機会を提供。
オンライン予約も。

健康チェック:6か所。
心身の健康チェックを、両方または単独で実施。
非医療職とボランティア団体スタッフの協働または後者のみを活用してチェックを実施。
自宅でのチェックや、コミュニティ・センターでのチェックも。

NHSの枠組みでのケアラー・サポート策の改善:7か所。
病院とプライマリー・ケアでの介護者支援策として、
親しくなる(befriending)活動、ピア・サポート活動、スタッフ啓発研修、
情報・記録・紹介手続き・介護者アセスメントへのアクセスの改善。
特にGPや病院、クリニックを通じて未支援のケアラーを見つけ出すことを重視。


パートナーシップと多機関アプローチ

08年の全国介護者戦略のヴィジョンは
それまでの医療とソーシャルケアに大きな変革をもたらすもので、
DSにおいても、新たなサービスを開発することによって
それぞれの機関のスタッフの役割にも、
機関間、機関内での協働関係にも変化をもたらした。

特にボランティア・セクターやアウトリーチ活動の担当者では仕事量が増えたとか、
新規サービス導入への同僚からの抵抗があったなどの報告もあるが、
概ね、チームワークが良好となり、ケアラー支援への意識が高まり、
新たな活動や新たなスキルの開発に繋がるなど、よい影響がもたらされた。

いずれのサイト(モデル事業を引き受けた場所)でも
民間のボランティア・セクター、NHS組織、地方自治体が連携し、
それぞれの役割や責任を担った。

休息のサイトでは地方自治体が主導し、
NHSでの支援サイトではNHS組織が主導、
健康チェックではサイトによって主導するところが異なった。

これまで支援もサービスも受けていないケアラー・グループにアプローチするために
柔軟なインフォーマル支援ネットワークを作ったサイトもあった。

こうした3者の連携は
モニタリング・システムの改善、医療と福祉間の意思疎通ネットワークの改善、
さらにスタッフへの新たなケアラー支援啓発研修に繋がった。

連携の問題点としては、
手続き上の差異を埋める問題、
連携相手の資源へのアクセスの問題、
連携機関の取り組み姿勢の温度差
地元のボランティア団体では登録ケアラーが逃げることへの懸念、
事業参加が将来の資金獲得にマイナス要因となる懸念、
GPの取り組み姿勢の差(? differential engagement among GPs).


ケアラーを見つけ、関わりを作り、活動に参加させていくこと

25のサイトで支援を受けたのは総勢18653人のケアラー。
休息サイトで5655人、健康チェック・サイトで5441人、HHSサポート・サイトで7557人。
その他、28899人のケアラ―と接触したがサービスは受けなかった。

その多くは高齢女性。
民族マイノリティのコミュニティのケアラーや、
認知症、精神障害、慢性・ターミナルな病気、知的障害、薬物乱用の人のケアラーとも
うまく関わりを持つことができた。

当初はGPその他の医療職と繋がることが難しかったが、
特にNHSサポートと健康チェックでは、NHSスタッフとの連携が
うまくケアラーを探しだして関わりを持つカギとなった。

特に多くのケアラーを見つけて関わることができたサイトは
ターゲットとするケアラー・グループに応じてやり方を変えていた。

これまで支援サービスを利用したことがない人を対象にするパンフなどには
「ケアラー・介護者」という文言は使わない方がよい、と考えるスタッフが多かった。

ケアラーとの関わりを作るのに重要なのは連携とネットワーク。
ヤング・ケアラーでは学校、大学、ユース・センターとの連携アプローチが有効だったし、
民族マイノリティではボランティア・セクターのアウトリーチがよかった。

ケアラーとの関わりを作るには、
ウェブや広告、ポスター、パンフよりも、直接会って信頼関係を作る方がよかった。

全てのサイトが支援サービスの企画にケアラーを参加させ、
中にはプロジェクトの展開方法やサービス評価に参加してもらったサイトもあった。

ケアラーが参加することによって
福祉や医療の専門家にはない視点がもたらされて、
それまでは考慮されることのなかった問題が指摘された。

DSプログラムの大事な「遺産」として
ケアラーの参加をさらに発展させようとするサイトも。

(次のエントリーに続く。)

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