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500円新作

私の物語。私は2005年から、一冊の本の中にしばらくいたの。その本の名前は「500円硬貨で日本一週旅行をすると10万円貯まる本」という厚紙のページの穴に私達500円玉を一枚一枚、はめ込んでいくの。日本橋から始まり、全国各地を巡れるようになっていて、最後に「成田空港」に到着、そのときには、10万円、貯まっている仕掛けの本。私が、その本にはめ込まれ、仲間も少しづつ、はめ込まれていった。私達をはめ込む、ご夫婦の顔は、とっても素敵な笑顔で、私もなんだか幸せでした。だけど、あと、数枚、私達が揃えば、ってところで、その本は時が止まったの。リビングから聞こえる会話は旦那様が、入院されたのこと。今でも思い出す。私を本にはめ込む時にね、旦那様が「今まで仕事仕事、転勤転勤で、旅行のひとつも連れて行けなかった。この本で日本一週が終わる頃、定年だ。そしたら休みが毎日だ。お前とゆっくり旅行も出来る・・・」って、話されていたのを。時が止まってから2年後、リビングには、賑やかな会話が、戻ってきた。私が本の中に最初にいた頃は、奥様の声だけで、旦那様は、出張や転勤で、あんまりいなかったから、こんなに旦那様が面白いお話をするのかと、びっくりしたわ。毎日がとても賑やかで、お二人の共有できなかった時間を取り戻すかのように、よくお話をされてたわ。でも、旦那様のお身体は、旅行へ出かけられる体調にはありませんでした。それからしばらくして、旦那様は天国へと、単身赴任されました。私はそれからもずっと時が止まった本の中にいたのですが、ある天気のいい日。薄暗い本棚から、私がはめ込まれた本は、動き出したのです。それは、嫁いでいた、そこの娘さんが、本棚から引っ張りだしてくれたのです。私の時は、また動き出しました。

私がはめ込まれたコインのページには、そのとき、その場所に旅した、旦那様と奥様の微笑んだ写真も一緒にはさみこまれていました。娘さんが、その本を持って、奥様と日本一周の旅を始められたのです。長い時をかけて、私は、その本から開放されて、今、こうして、ここにいます。

え?10万円貯まって、成田空港から、どこへ、旅行に行ったかって?

さあ、どこでしょう。
娘さんと、奥様。そして、旦那様も一緒に素敵な旅をしていることでしょう。

私達、コインもそれぞれ旅をしています。時に止まったり、また動き出したり、人から人へ。人の人生と一緒ですね。
悩んだり苦しいときがあったら、私達コインを見つめてみてください。色々な旅をしてきたコインです。
きっと心を軽くしてくれるはずです。

こうして何かの縁で、出会った、コインの私とあなた。

出会いを大切に。





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灼熱の太陽 3

朗「南の少年には北の少年の横顔に、今を生きることの大変さを垣間見た。自分はまだ普通に生きていられる。あと、5,6年もすれば、兄と同じ徴兵に行く。そこで、初めて本当の生きる意味を知るのかもしれないとそのとき南の少年は思った。また唐突に北の少年が口を開いた」

北「お前、日本に行けよ。そして何か発明しろよ。食べても食べてもなくならない食いものとかよ。」
南「(笑)そんなの発明できないよ」
北「だってお前、学校に行ってるんだろ?色々教えてもらってるんだろ?日本という国の人間が出来るんだ。学校行ってるんだったらお前にだってきっと出来るさ。俺だって学校に通えれば、なにかきっと発明できるんじゃないかと思うんだけどな」
南「だって、僕、勉強嫌いだし(笑)」
北「好きとか嫌いとか、言ってる場合じゃないだろう。発明するんだ、発明・・・」

朗「遠くで犬の鳴き声が聞こえた。南の少年が慌ててその場を立った。」

南「そろそろ巡回の警備隊がこっちに交代でくるんだ。僕は持ち場に戻るよ」
くるりと背中を向ける南の少年。
北「おいおい、容易く敵に背中をみせるなよ。刺されて終わりだぜ」

南の少年、背中を向けたまま

南「もう、会えないのかな。君と・・・」
北「・・・会わないほうがいい・・・」

朗「ちょうど南の少年が北の少年に振り返ったときだった。(銃声の音)今までこんなに近くで銃声を聞いたことはなかった。突然のことで、なにがなんだかわからなかった。北の少年が撃たれたという事実もその瞬間にはよく理解できなかった。北の少年が目の前で倒れている。南の少年には、北の少年がどこを撃たれたのかも、とっさのその瞬間には理解できなかった。ただ声も出せずにただその場に立ち尽くしていた。「お前、なにやってんだ!」そう声がして兄がそこに立っていた。いつの間に兄が・・・と思いながら目の前に倒れている北の少年が兄に撃たれたのだと、必死に理解しようとした。」

北の少年は撃たれたわき腹を押さえながら、穴の奥のほうへはって行こうとしている。



南の少年が、しゃがみ北の少年に手をかけようとした瞬間、鬼の形相で南の少年を睨む北の少年。
息をのむ南の少年の表情。のち、北の少年の表情が、一瞬、優しい微笑みになった次の瞬間に、南の少年の腰にある拳銃に北の少年の手がかかる。
次の瞬間に、銃声。

南の少年、この世にない絶叫。
が、すぐに鈍い音がして倒れる南の少年と同時に暗転。

暗転の中

朗「南の少年が、目を開いたときは軍の宿舎の医務室だった。兄の拳銃で殴られた頭が割れるほど痛い。ぐるぐる巻きに巻かれた包帯。誰も南の少年がなぜ、ここに運ばれてきたかも、なぜ頭に怪我をおったかも聞こうとしなかった。南の少年も自分から聞く気にはなれなかったし、あの現実を受け入れることは出来なかった。もしかしたら、悪い夢ではなかったんではないのだろうか、と。あんなことはなかったんだ、と。夢の中の出来事で、寝汗を大量にかいて飛び起き、また倒れるように眠ってしまったんじゃないんだろうかって・・・頭がズキズキと痛い。心の洞窟を一本のナイフがぐるぐると回っているような気がする。南の少年は考えていた。北の少年が最後に南の少年のホルスタ^−に手をかけたのは、南の少年を殺そうとしたのか、それとも兄に向けて撃とうとしたのか。そしてあの一瞬の優しい微笑みはなんだったんだろうと」

ゆっくりと明転
街の雑踏音
小奇麗でモデルのようないでたちの南の少年(暗転中に着替え)

「(南の少年、声録音)あれから、僕は兄の軍の宿舎にも行っていないしあの穴にも行っていない。北の少年がどうなったかも、あの現実もあったことなのか、ないことになってしまったのかも、僕にはわからない。次の夏休みには親戚のおじさんの家に預けられた。おじさんは港に日本が建てた工場に勤めている。その日本の企業が日本で放送するCMのモデルに、おじさんの娘である姉さんが、勝手に僕の写真を応募したんだ。そんなひょんなことから、北の少年のアイツと話した日本に来ることになった。あいつが夢見ていた日本に・・・」

激しい雑踏音

「僕は今東京の渋谷のスクランブル交差点の前に立っている。それにしても暑い。この灼熱の太陽をなんとかしてほしい。地面から照り返す光が目に突き刺さる。あの日もさんさんと降り注ぐ日の光に目をやられていた。同じ太陽なのか・・・同年代に見える者達が、小奇麗でソフトクリームなんかを片手に持ち歩いていく。こっちの若者は携帯電話・・・これがあいつが夢見ていた日本・・・このままじゃ、僕の目はどうにかなってしまいそうだ。あの日、あの穴の中に入る瞬間に僕の目がやられたのは、見たくない現実、見ようとしない現実だったのかも知れない・・・」

南の少年、ポケットからサングラスを取り出す。

「僕はこの国を歩くときにこのサングラスをはずすことはないだろう・・・」

激しい雑踏音
歩き出す南の少年

あわせるように暗転


                          完






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灼熱の太陽 2

南「き・・・君・・・」
北「声を、声を出すな!・・・俺はお前を刺すことだってできるんだ!」
南「僕は・・・僕は君に何かしようかなんて思わない・・・ただただ・・・」
北「うるさい!喋るな!・・・(ナイフをつきつけ)なんでもいい・・・なんでもいいから、なにかよこせ!」
南「・・・何かって・・・」
北「なんでもいい・・・穴の中で見たんだ・・・なんだっていい・・・(崩れ落ちへたりこむ北の少年。が、ナイフの切先は南の少年を捕らえている)」
南「穴の中?・・・中になにが・・・」
北「見たんだ・・・イチゴやバナナの絵が書かれた袋を・・・」
南「・・・袋?」
北「とぼけるな!少しでいい。半分もいらない。少しでいいんだ」
南「ねえ、君は?・・・」
北「迷ったんだ・・・国境を越えようと思ってきたんじゃない!このあたりなら、まだ採られていない野草がけっこうあるって聞いてきたんだ。邪魔されなければ俺はお前に恨みがあるわけでもないし、どうでもいいんだ。なんでもいい・・・少しでも分けて貰えれば・・・」
 南「君はあっち側の・・・」
北「こんなこと・・こんなこと・・・俺だってしたくない・・・けど(ナイフを振り上げる)」

南の少年、腰のホルスターから拳銃を抜き構える。
南の少年震えている

朗「北の少年は冷静に南の少年を見つめていた。生きたいと気持ちが南の少年からビシビシと伝わってきた。おそらくこの振りかざしたナイフを彼の胸元に振り下ろそうとすれば、彼は躊躇なく引き金をひくだろう。だが、南の少年に握られている拳銃の安全装置は外されていない。それが、北の少年の心のどこかに、隙間を作った。」

北の少年、ゆっくりとナイフを下ろす。

北「君をナイフで刺してもいいが、拳銃じゃ、その前に俺撃たれちゃうな・・・」

南の少年も、ゆっくりと拳銃を下ろす。

南「君は何にも食べていないの?」
北「ああ、でも俺はそんなに腹がすいてるわけじゃない。菓子も俺が食いたいんじゃない・・・いや、どんな味か・・・ためしに食いたい気もするが・・・俺の国のものじゃないしな・・・矛盾してるけど、俺じゃなくて・・・弟がいるんだ・・母親もいる・・・食べ物が手に入らないんだ。俺がなんとかしなきゃならないんだ。手にいれるためだったら、なんだってする!」

北の少年、再びナイフを力強く握り締める
南の少年、ポケットから、飴を取り出す。

南「今はこんなものしか持ってないけど、兄さんが住んでいる宿舎からなら、穴の中に転がっている、空き袋のお菓子とおなじもの、いくつかあると思うよ。町まで出れば、買うことだってできるし・・・」
北「俺はそんなにバカじゃない。お前をここから行かせたら、仲間がやってきて、殺されるに決まってる。こんな格好している人間が、お前の国にいるか?」
南「そ・・・それは・・・」
北「同じ顔して、同じ言語を話して・・・俺の伯父さんは、そっちに住んでいて、俺はこっちに住んでいて、俺たちにはなにもない。俺のこのみすぼらしい格好は自分で見ても恥ずかしいと思うが、今の俺に何が出来るわけでもないんだ。」
南「ねえ、何が今一番欲しい?お菓子じゃお腹いっぱいになんかならないよ。栄養をつけなきゃ。そうだ!カップ麺なんか、どう?お湯があれば、すぐに作れるし・・・わりとお腹いっぱいにもなるし・・・カップヌードルっていってさ・・・」
北「どうやって手にいれるんだよ。お前をここから行かせるわけにはいかないんだ!」




南「だから、僕は絶対に君のこと・・・」
北「ここにはもうこない。今日のことは忘れる。いいか。勘違いするなよ。俺はいつだって、一瞬でお前のことを刺し殺すことが出来たんだ!それをしなかったのはな・・・」
南「ねえ!こういうのはどうかな。明日か明後日までに、僕がこの穴の中に食べ物を置いておくよ。夜中ならこの場所での立哨警備はないはず。そぉっとくれば絶対に見つからないよ。だから・・・」
北「お前なんで・・・ほんのさっきまで、俺に殺されるところだったんだぞ!それなのに・・・」

南の少年、優しく微笑む

南「僕を殺せたのに殺さなかった(笑)僕も君を撃ち殺せるのに撃ち殺さなかった(笑)」





朗「北の少年は苦笑いした(苦笑いする)本当は、お前が拳銃の安全装置を外していないから、絶対に撃たれないとわかっていたんだ。とは、言えなかった。それに北の少年にはわかっていた。南の少年がまだ、なんの訓練も受けておらず、一度も拳銃の引き金をひいたことがないってことも。それは、北の少年にとって、心のどこかに、先ほど感じた心の隙間をそのなにかで埋めることが出来るようなきがしたのだ」

北「なあ」
南「なに?」
北「いつも何してるんだ?」
南「唐突だなぁ(笑)今は夏休み休暇中だからね。昨日から兄さんの軍の宿舎に泊まりに来てるけど、帰ったら・・・帰ったら・・・宿題やるんだった・・・宿題・・・やりたかね〜(笑)」
北「学校行ってるんだ」
南「うん、行ってるよ。君は?」
北「行ってたが、今は行ってない。父親が軍に捕まって連行されて、いつ戻るかもなにも知らされてないし、母親も身体が弱いし・・・なんでもいいから、手に入れなきゃいけないんだ。物なら闇でも売れば、なんとか、食べ物が買えるしな。弟が・・・弟がいるんだけどさ・・・あいつ、喋らないんだ・・・いや、喋れないんじゃないんだ。ちゃんと喋れるんだ・・・でも、喋らねぇ。俺が家を出るときも帰るときも、黙って笑顔だけ作って・・・何を聞いても、笑顔だけ作ってんだ。あいつ、喋ると自分は餓死しちゃうんじゃないかと思っているんじゃないかって。そう勝手に思い込んでいるんじゃないかって。俺、なんとかしてやりてぇ、って思うんだけど何にもしてやれねぇ・・・せめて、働く場所でもあればさ・・・」

南の少年、黙っている。

北「なあ、穴の中の菓子、どこで作ってんだ?」
南「港のほうの工場。いっぱい工場が立ち並んでいるんだ。親戚の兄さんや、姉さんも、そっちの工場で働いている。」
北「すごいな。じゃあ、働きながら食べれるんだ」
南「食べれるのかなぁ(笑)」
北「すごいよな。いろんなもの作れるんだな。作るんだから、働く場所もあるわけだ。すごい発明だよな」
南「作ってるのは僕らの人たちだけど、作らせてるのは僕らの人たちじゃないんだ。」




北「作らせてる?」
南「僕らは作るために働く。そういう作る工場を作ったりしたのは別の国の人」
北「別の国?どこだよそれ。」
南「日本」
北「・・・日本・・・」
南「日本の国の人が工場を建てて、日本の発明したお菓子を僕たちの国の人が作る。僕たちが食べるのを僕たちが。日本の国の人が食べるのも僕たちが作るんだ」
北「じゃあ日本の国の人は何を作るんだよ」
南「さあ、よくわかんないけど・・・お菓子だけじゃないよ。カップヌードルだって、冷凍食品だって、あとは、車や電気製品の部品とかも僕たちの国で作っているんだ」
北「お前の国でも作るってことは、よっぽどモノが足りないんだな・・・だってそうだろう。わざわざお前の国で作るってことはさ、たくさんの数が必要なんだ。きっとみんなで働いているんだ。俺ぐらいの歳になればみんな働くんじゃないのか?よその国の人間使ってまで作るんだからさ、そうだろう?10歳くらいからもう働いているんじゃないか?俺も働きたいな。俺、なんだってやれる。日本か・・・」
南「何でも揃っている国なんだって。」
北「いつかいってみたい国だな。生きていられればな」

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灼熱の太陽

朗読者と、へたり込んでいる北の少年。
りりしく立っている南の少年。二人は幼い兵士か。

朗「ここは、北と南の境界線。北の少年は、もう何日も食べ物を食べていない。だが、北の少年が一番考えているのは、自分の空腹が満たされることではなく、自分と同じ空腹にあるであろう、家族のことが気がかりである。野草を求めて森に入ったのだが・・・」

北の少年、ゆっくり立ち上がる。
 朦朧とした意識の中、両手を必死に上へ上へと伸ばしている。

朗「北の少年は崖の上に生えている野草を必死に手を伸ばしとろうとしている。北の少年の意識の中ではそれは現実のものではない幻の野草であろうか・・・あと少し、と手がかかったところで、足元がすべり、砕かれた細かな石が崖の下へ落ちていく。しまった!北の少年の心は一瞬凍りついた。少し遠いところで、犬のほえる声が聞こえる。しばらく、どれくらいおであろうか、北の少年は息をころして、じっと崖にへばりついていた。」

南の少年、りりしく立っていたが、自分の周りに虫がよってきだし、やがて、イライラし、落ち着かない様子。
そのうちにオーディオプレーヤーか、耳にあてる。

朗「やがて、北の少年は、今度は足を滑らさないよう、そっと動き出す。慎重に慎重に。やがて、崖から平坦な茂みになり、食べられそうな野草の広がりを見つけ、北の少年に笑顔がほこらんだ瞬間、またも、足を滑らせ、転がるように落ちてしまった。」

北の少年、転がり落ちる演技

朗「転がり落ちた穴は、人が4.5人は入れるだろうか。落ちた瞬間に打ち付けた腰がとても痛いようだ(痛がる演技の北の少年)が、目の前に広がる光景に北の少年は思わずゴクリと唾を飲んだ。薄暗い穴の中でもはっきり見える菓子類のパッケージ。北の少年は夢中でパッケージをむさぼりはじめた。少年が好みそうな菓子の中には、まだ、中身が残っているものもあった。それはポテトチップスに似てる類のものであるか。パッケージの文字は北の少年の母国語で書かれてあり、北の少年にも、その菓子がどんなものか、すぐにわかった。必死で残り物をあさった。そして、時折、パッケージに目をやり、書かれている、イチゴや、バナナの絵を見ては目を輝かせている」

南の少年、あたりをキョロキョロと見回している。
体をくねらしたりしている。
・・・やがて、北の少年の架空の世界に客席に背を向けて・・・
放尿開始(エチュード)

穴の中にいる北の少年に南の少年の放尿がかかる
あわてる北の少年の(エチュード)
それを察し、元の位置まで、跳び下がる南の少年

南「だ、誰かいるの?」

返事がない。

南「ぼ、僕は今日初めてで、本当は兄さんなんだけど・・・ばれやしないって・・・兄さんが言うから・・・立ってるだけだからって・・・それに、立っててくれたら、お小遣い、くれるっていうから・・・今、僕、欲しいカードゲームがあって・・・ねえ、そこにいるの?」

北の少年、犬の鳴き声の真似をする。

最初は驚く南の少年だったが、やがて、笑顔になり・・・
やがて、南の少年も犬の鳴きまねをして、返す。
北の少年、静かになる。

南「ハハハ・・・誰?ちょっと似てないかな。あ、ごめんなんさい。なれなれしいですね。兄さんの友達ですか?兄さんが言ってました。立哨警備しているそばに、俺の秘密基地があるんだって。この穴のことだったんですね。入りたいなぁ。僕も入っていいですよね。」

朗「南の少年は、あたりをぐるりと見渡した。兄からは立哨の持ち場から絶対に離れてはならない、と言われていたので、誰かに見られたら、大変なことになるぞ!と思い、念入りにあたりを見渡した。しっかりと隣の山の稜線も確認した。それにしても、今日は日差しが強く眩しい。やがて、南の少年は、好奇心の気持ちを抑えられず、穴の中に、ゆっくりと足を踏み入れた。薄暗い穴とはいえ、さっきまで、さんさんと降り注ぐ、日差しに目を奪われていたので、その突然の闇が、目を酷使した。何歩ほど、穴の中を進んだのだろうか、突然、何かが光った。と何かを考える暇もなく、突き飛ばされた。ただ、それは、大きな何かではなく、自分と同じ位の何かだった。」

南の少年、北の少年、上記を表現する
北の少年の手にはナイフが握られている。
立ちすくむ南の少年。

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頬杖をついて架空の窓を見つめている。
テーブルの上には、アイスティー。
やがて、小さな溜息
左手の薬指のリングを回す・・・
思いつめた表情
 
じっと架空の窓を見つめている横顔
顔の表情が変わる。
どうやら雨が降り出してきたようだ
 
「あ、雨・・・」
 
雨を眺めるとともに、突然振り出した雨に右往左往する通行人を眺めている。
五反田、スクランブル交差点傍に立つビルの階にある喫茶店
 
「傘なんて持ってないわよね・・・雨に打たれて・・・逃げろ逃げろ!機関銃だー(笑)
 
大きな溜息をひとつつく。
 
「雨か・・・」
「みんな濡れてしまえばいいのよ」
 
薬指のリングをはずす
テーブルの上に置く。
 
雨の音
 
突然、車両事故の音。
 
「え、やだ。ぶつかっちゃった。乗ってる人、大丈夫かしら・・・あ、降りてきた。あ、あっちも降りてきた。良かった、大丈夫かぁ」
「降り始めだもんね。滑ったのかな。どっちかが、悪いのよね。どっちかが、必ず悪いのよ。でも・・・でも・・・その悪いほうが全部悪いことにならないのよ、事故って。私、事故起こしたことあるけど、どう考えたって一旦停止を無視した相手のほうが悪いに決まっているのに、私も前方不注意ですって・・・だいたい、とっさに止まれるスピードで交差点に入らなきゃって、いったいなんなのよ。そんな速度で走行したら私の後ろは渋滞で大名行列よ・・・ったく・・・けど、本当に止まれる速度、で走ったら事故もおこさないのかもね。止まれる速度か・・・」
 
携帯電話が鳴る。開いては見るものの、主を見つめ閉じる
 
しばしの間
 
「いまさら遅いのよ・・・さんざんこっちを振り返ろうともしないで、自分ばっか、どんどん先に進んじゃって、話しかけたって、私のほうを見向きもしない。そんなに早く進めないわよ。考えることだって悩むことだってそりゃあるのよ。あるに決まってるじゃない。一時停止して考えたっていいじゃない。自分ばっかり勝手に目的地決めちゃって、私の気持ち考えもしないで・・・いや、考えないじゃなくて、聞きもしない。私はいったいあなたの、なんなの?・・・待ってるの、待ってるのよ。どうして気づいてくれないの?いつまで、待っていればいいのよ。ずっと我慢してたんだから・・・我慢してたんだから・・・」
 
顔を伏せてしまう。
 
携帯電話が鳴る・・・・やがて、鳴り止む。
 
ゆっくりと顔をあげる。
 
窓の外を見つめる。
 
架空の男女。雨にぬれた女性に、男性が傘をさして入れてあげている。
 
「あ・・・傘・・・上手いタイミングね。でも下心見え見え。雨が降ること予想してたのかしら、この男。知り合い同士?そうよね、そうじゃなきゃ、女のほうもひょいひょいと、傘の中はいらないわよね。」
 
架空の窓に、相合傘を書いている。
 
「・・・土砂降りの雨の中、もうずーと立ちっぱなし(苦笑)付き合い始めたころは、あんなに優しかったのにね。歩く速度だってあわせてくれたのにね。いつからかな、私の存在が必要じゃないなぁ、って感じたのは。夫婦なんてそんなもの。そんなものなの?・・・もう、心に雨が降り出してずぶ濡れよ。もうだめなのかな。待ってても私の心に傘はさしてくれないのかな・・・」
 
架空の窓に書いた、相合傘を消す。(手を振る感じ)
 
「あっ、やだ。駅のホームで待ってる人、こっちみてる。このお店、駅のホームから、丸見えなのよね」
 
チリリン、入店の音。
そちらに目をやる
 
「ははは、ずぶ濡れじゃん。男も女も。あ〜あ〜気の利かない男ね。ここに飛び込む前に駅前のコンビニで傘買えよ。デートのために新調したって見え見え小娘の服がそんなに濡れなくってすんだのに。あ、チャペルのパンフレット・・・へーそうなんだ、この二人。」
 
架空の男女、席についた模様
激しくなる雨の音。
 
「なんで浮かない顔してるんだろう、この小娘・・・マリッジブルーってか。あーやだやだ、この男。御絞りで顔拭くなよ。汗だか雨だかわかんない顔してんな、ホント。やだ、手握ったよ手。チャペルのパンフレットテーブルの上において、別れ話?(間)やだ、大きな声出してそんなこと言わないでよ。聞いてるこっちが、恥ずかしいじゃない。・・・雨に決まってるじゃない。ジューンブライドなんて。ここはヨーロッパじゃないのよ。だいたいね、結婚なんて雨の降り始めなのよ。で、ずーと、雨が降り続くのよ。ねえ、わかってる?お二人さん。」
 
携帯に着信音。メール
開いてみる。
 
「しゃもじが、どこにあるかなんて、アホ。ないんだったら、スプーンでよそれ。私がなんで家を飛び出したかわかる?私はね、あんたの家政婦じゃないのよ。妻である前に一人の女でもあるのよ。それにね・・・」
 
架空の二人を見て
 
「はあ?君をもう二度と泣かせない!だと!この嘘つき男!なーにが、雨降って地固まる、よ。水溜り作るだけじゃない。しかも永遠に晴れないから、いつまでたったって、乾きゃしない。やだ、洗濯物取り込むの忘れてた。あちゃーびしょびしょだわ、この雨じゃ(溜息)・・・気がついてしまってくれたかしら、あいつ・・・」
 
メールを打とうとするが
 
「家政婦じゃないんだから・・・家政婦じゃ・・・」
 
架空の二人を見て
 
「え!素敵じゃない、けっこう頑張ったのかな、そのリング・・・なに笑ってんだよこの男、ばっかじゃないの・・・お前の指なんかに入るわけないだろう。ニコニコしちゃって・・・小娘も小娘よ。さっきまで泣きそうな顔してたくせに・・・泣きそうな・・・」
 
激しい雨の音
アイスティーをストローで掻きまわしながら
 
「まさか、結婚記念日まで忘れられるとは思ってもみなかったわよ。ちんけな安月給きりつめてさ、そりゃたいして旨かないよ私の料理なんかさ。見栄えも品祖だし。ホール買うお金だって、まあ二人なんだしカットケーキでもいいかな、って思って・・・出来れば今日は早く帰ってきて・・・「出来ればってお前言ってただろ!」って、偉そうに飲んで帰ってきて、「なんだお前、また甘いものが食いたくなったのか。太るぞ!」だって。考えられる?二人の結婚記念日に・・・」
 
架空の二人を見て
 
「はあ?壊れるほど君を抱きしめたい!?だって?アホか、この男。中西圭三の「最後の雨」じゃあるまいし・・・あ、ありゃ失恋ソングか。ハッピーソングじゃないわな。・・・失恋かぁ。・・・失恋しちゃったな。もう戻れないのかな・・・あの頃には・・・」
 
メールの着信音
優しい雨の音
メールを見る
 
「突然、すごい雨が降り出してきたね。今、どこにいるの?駅まで傘持って行こうか?洗濯物、ちょっと濡れちゃったけど、さっきしまったよ。ねえ、レアチーズとモンブラン、どっちがいい?昨日はゴメン。一日送れだけどケーキ。芸がなくてさ、他に思い浮かばなくて。何時頃帰ってくる?そうそう、しゃもじだけどさ、炊飯器の裏に落ちててさ、それがゴキブリホイホイの上でさ、でさ、ホイホイの中にそりゃ、ホイホイいっぱい入っているわけよ。何年前のホイホイなんだよ。だいたいお前は片付けが」
 
架空の二人を見て目が点
 
「げ!キスしちゃったよ、二人!この公の場で」
 
携帯を閉じる。
少し優しい表情
 
「おーい、そこのお二人さん。現実の世界に戻ってこーい(笑)・・・現実かぁ。結婚記念日も忘れてしまうような男と一緒にいる現実。自分勝手で優しい言葉ひとつかけてくれない現実。もう何年もキスどころか、好きだよ、も言ってくれない現実。(携帯を開いて)メールの着信も夫からのショートメールで埋まっているのも、これまた現実。」
 
テーブルの上のリングで遊ぶ。
ふと窓の外を見る。
ビックリした表情の後、苦笑い(指輪が何かの拍子に床に落ちる)
 
「よりによって、なんで私の花柄の派手派手な傘で来るのよ。ふふ、何時に帰ってくるかもわかんないんくせに・・・ずっと待っている気かしら。いつもより帰りが遅いから、多少は心配してるのかな・・・返信、連絡もしてないし。やっぱ心配はするんだ。」
 
架空の二人を見て
 
「おい、おい、今度はケンカかよ。なんで・・・あ、小娘!チャペルのパンフ、くしゃくしゃにしちゃったよ。あちゃー・・・せっかくもらった高そうなリングも外しちゃったよ・・・(自分の薬指を触って)あ、あれ、どこやったっけ。(床に落ちてる)あ、あったあった。なんだかんだ言っても、いざ、無くなったと思ったらドキッとしたな、もう」
 
愛おしそうにリングを眺め
ゆっくりとはめて、手をかざし、微笑む。
 
「私には、一番似合っているリングかな」
 
優しく微笑む
 
「さ、行ってあげようかな。(立ち上がりながら)きっと顔見るなり怒鳴るんだろうな。連絡くらいよこせ!って。やだやだ。でも・・・でも、そうやって心配してくれるのも私には、ありかな(優しく微笑む)」
 
雨足、強くなる。
 
店員の声「お客様、もしよろしかったら、傘お使いになりますか。次回来店時に持ってきてくだされば結構ですので」
 
「ありがとうございます。でも花柄で派手派手な傘持って駅前に立っててくれる人がいるので、そこまで走って行こうと思ってます。多少濡れるかもしれないけど、濡れながら走ってくる私に駆けつけてくれない人だけど、でも、でも全力で走ってって、思いっきり飛び込んでみようって思います。その傘、私のなんです。雨の日、気分が落ち込んでいるとき、花柄で派手派手な傘を見上げると、ちょっとだけ、元気がでてくるんです。その傘開いて、今日は私を待っててくれてるんです。あ、ごめんなさい・・・私・・・」
 
店員の声「良かったですね(笑)お幸せに!」
 
頭をペコリとさげて笑顔。
 
「よーし」
 
と、全力疾走の構え
が、自分の体をキョロキョロと見て
 
「思いっきり飛び込んで倒れちゃったらどうしよう・・・」
 
優しい雨の音。
 
暗転
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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