調査は有田焼の里として知られる佐賀県有田町と、山形県舟形町で実施されたが、発表は有田町での調査と結果に絞って行われた。同町健康福祉課と共同研究した有田共立病院の井上文夫院長が壇上に。
「調査は昨年9月から今年3月まで、町の保育園、幼稚園、小中学校に通う児童・生徒に協力してもらいました(解析対象は小中学生の1904人)。給食時に『1073R−1乳酸菌(以下、R−1乳酸菌)』を使ったドリンクタイプのヨーグルト1本を飲んでもらい、インフルエンザによる欠席者数を、調査を行わない周辺地域と比べたところ、明らかな違いが分かりました」
グラフは、そのことを如実に表している。インフルエンザの累積感染率は小学校、中学校とも、左端の有田町が、周辺地域、佐賀県(同町を除く)と比較して、格段に低い。
「結論として、有田町の累積感染率はインフルエンザA、B、新型とも低かった。同町の小中学校で比べると小学校の方が低い傾向があります。R−1乳酸菌を使ったヨーグルトは、全般的なインフルエンザウイルス感染に対する予防効果が期待できそうです」
こうした調査結果を受けて、免疫学の権威で順天堂大学医学部免疫学特任教授の奥村康氏が講演した。
「対象人数、調査期間ともに規模が大きく、貴重な研究です。地方自治体、学校が協力したことも意義深い。ヒトによるヨーグルト、乳酸菌の摂取とインフルエンザ感染抑止の関係が今回、初めて分かったといえるでしょう」などと、調査結果を高く評価した。
【用語解説】免疫力
生体を保全する防御システム、その力。私たちの体に備わっているもの。外から侵入する微生物、異物、ほかの個体の細胞や組織から自己を防衛する。また、がん細胞など体内に生じた変異細胞、ウイルス感染細胞などを排除する。
【用語解説】NK細胞(NK活性)
がんやウイルスの感染細胞を標的として破壊する細胞のこと。NKはナチュラルキラーの略。「NK活性」はNK細胞の働きの強さを表す、生体の免疫力の指標。
【用語解説】1073R−1乳酸菌
通称は「R−1乳酸菌」。ヨーグルトなどに含まれるブルガリア菌の一種。免疫力を高める作用があるとされるEPS(多糖体)を多くつくりだす。風邪やインフルエンザにかかりにくくなる効果などが発表されてきた。さらに新しい可能性の解明が期待されている。
■心のあり方とも関係
今回の調査・研究でカギを握る言葉は、「R−1乳酸菌」「NK細胞(NK活性)」、そして「免疫力」になるだろう。
半年間、R−1乳酸菌使用のヨーグルトを飲み続けた子供たちの“中”で何が起きたのか。なぜインフルエンザにかかりにくくなったのか。
体と心を分けて考えるのなら、まず、体内ではR−1乳酸菌がEPSという多糖体を多く生み出し、それがいくつかの段階を経て、ウイルスなどに感染した細胞を破壊するNK細胞を活性化した結果、免疫力を高めた−というメカニズムが見えてきた。
そして、子供たちの心の中では、「おいしいヨーグルトを給食の度に飲める」という楽しみな気持ちがあった。多くの児童・生徒がそう話している。だから半年間の調査にも協力的で、週末は親に頼んでヨーグルトを買い、飲む子も少なくなかったという。
順天堂大学医学部免疫学特任教授の奥村康氏は、「本当のメカニズム解明はこれからですが、生きた乳酸菌がNK活性を上げています。それが腸だけでなく体全体で起こり得ると思います。免疫力は私たちの心のありようとも密接な関係があります」と話す。
同氏が監修した「免疫年齢」チェックリスト。日常生活に関する20の質問に答え、足し算・引き算をすると、自分の「免疫年齢」が分かる。「免疫に関心をもっていただくために作ったもので、あまり結果にとらわれ過ぎないで」と奥村氏はほほ笑む。
「免疫年齢」は若いほどいいとされるが、質問項目の意図するところを考え、実践できることからやってみることも「年齢」を若返らせそうだ。
奥村氏は免疫、NK活性について、事例を挙げながら平易な表現で話した。
「NK活性には個人差があります。例えばNK活性が低い人は高い人に比べて発がん率が圧倒的に高い。昼夜逆転の生活を続けると下がり、ちょっとしたストレスでもドスンと落ちます。トップアスリートの中にはストレスなどから風邪をひきやすい人も多い」
さらに、「英国の研究では、失敗を自分のせいにするより人のせいにするほうが長生きできるといったことも。こちらもNK活性で説明できます」と語ると、会場から笑いが起きた。
奥村氏は、東日本大震災の被災者に「NK活性の低下が心配です」と心を向けつつ、「R−1乳酸菌使用のヨーグルトは、社会の第一線で働いている人やお年寄りへの活用も期待できるのではないか」と近い将来を展望した。