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■鉄腕ガール/高橋ツトム/全9巻


■あらすじ■

 その女は、太陽になろうとした。女の名は加納トメ。
 白球を手にし、自らの腕一本に運命を託した破格の女。

 昭和20年、戦後日本。美しさと凶暴さを持ったトメの野球人生が始まる。
 現在は無い女子プロ野球に彼女は何を賭けようとしたのか?







■読書感想文■


 戦後の日本を舞台に描かれた、女子プロ野球のお話

 …といってもこれはスポーツ漫画じゃあございません。




 プロ野球を題材に、主人公の女性・加納トメが
 野球の魅力にとりつかれ、単身アメリカに殴り込み、一人の男を壮絶に愛した、
 超波乱万丈・壮絶オンナの一代記なのでございます。


 いやー最初はヒロインが「トメ」て〜!って思ったんだけど失礼しました。
 めっちゃカッコいいよ、トメ。



*********


 戦後の日本、しかも女子プロ野球が題材というから、
 わりと地味な感じのお話を想像していたんですが、
 こいつが予想外のスケールのデカさ。


 女給として働いていた主人公・加納トメはその美貌と腕っぷしの強さで、
 戦後初の女子プロ野球リーグを注目させる為の「かませ犬」としてスカウトされる。

 自分の投げる球に揺るぎない自信を持っていたトメだが、
 最強チーム「ストライクス」の黒沢にあっけなく打ち取られてしまう。

 自信を喪失したトメだが、化粧品会社「日比谷美容」の女性オーナー、
 蘭崎五十鈴に見初められ、「キャンディーズ」のピッチャーとして
 野球を本格的に始める事を決意する。






 野球ド素人のトメが、男も打てないくらいの剛速球をいきなり
 投げるっつーのは超漫画的ではありますが、
 まあ本格スポーツ漫画ではないですからね。

 トメの成長を1から書いてたらそれこそいつ終わるのか分かんないし、
 そこが漫画の主軸ってわけではないんで、まあそれについては
 あまりツッコまない方向で。







 前半は日本が舞台。

 最初の大きな山場は前半のクライマックス、
 日本国民を巻き込んでの賭け試合。


 敗戦国VS占領国。野球という形での日米決戦。

 ただのスポーツの試合を通りこして、
 アメリカに勝ちたい、一矢報いたいという思いを、
 トメの右腕に託して、熱狂する日本人とそれを一笑に付すアメリカ人。

 思わず手に汗握る迫力と臨場感に圧倒されます。




 そして一転、後半はアメリカが舞台。

 後半は野球という題材からけっこう離れてしまうんですが、
 これがまたスリリングでして。
 前半とは違った緊張感にページをめくる手が止まりません。





 野球というものを純粋に楽しんでいるトメや選手とは違い、
 関係者や主催者側にはいろんな野望や欲望が渦巻いてまして。

 
 戦後初の女子プロ野球で一山当てようと目論む日系人。
 女性の地位向上の実現に人生を懸ける女性オーナー。
 国家予算単位の金を持ち、日本を見下しているアメリカの富豪。

 さらにはGHQ、はたまた日本のヤクザまで、
 金と権力を持つ輩がここぞとばかりに蠢いております。



 彼らに知らず知らずのうちに運命を翻弄されつつも、
 強くしたたかに生き抜くトメの姿は、
 見ていてとてもカッコイイし、気持ちいい!




*********


 トメに限らず、この作品には生き様がカッコイイ人達が次々と登場します。

 
 命がけで恋人を愛した人、
 まだ差別が色濃く残る時代で新しい生き方を実践した人、
 貧しい家族を援助するために働く人、
 絶対的な支配力を持つ親から自立しようとする人、
 自分の信念を貫き通した人、
 鮮やかな引き際を見せつけた人…などなど。



 また言葉の強さ・カッコよさがハンパなくてねえ…。
 そらセリフが表紙にドドンと描かれるはずだわい。



 「戦争に勝ったくらいで威張りやがって 
  男としてもっとカッコよく生きられねえのか」


 「チクショウ!ここまで来たのに…鬼になりきれない!」


 「だからデカい国はバカだっつ〜〜〜の!!」


 「クビよ…夢のない人間はウチの会社にはいらないの。
  戦前にお帰りなさい」


 「人は必ず死ぬ そして人生は短い。
  それならもう二度と降伏しないで好きな事やってやる」






 うーんカッコいいセリフが多すぎて書ききれません。


 
 その中でもニューヨークの野球記者・クックが、
 弱小球団・グルーバーズのワールドシリーズ優勝時に書いた
 記事の見出し。その言葉の素晴らしさ・鮮烈さたるや。

 
 「ヘルシング」もセリフの強さ・カッコ良さ・インパクトはずば抜けてますが、
 この「鉄腕ガール」も負けてませんねえ。ゾクゾクします。



*********


 惜しむべき点がひとつだけ。

 それはトメのキャラクターは丁寧に描かれているのだけど、
 まわりのキャラクターの描き方がちょっと薄いところ。



 正確に言うと、脇役ですら超濃く、個性的なメンツばかりなのですが、
 トメとの関わり方の描き方が物足りないというか…。



 トメの性格が魅力的なのはすごーくよく分かる。
 破天荒で直情的で一本気で怖いものなしで根性が座っていて…。

 そんな彼女にみんなが惹かれるのも分かるのですが、
 中には人生投げ打って彼女と行動を共にする人もいたりして、
 その動機とかキッカケが「トメに惹かれた」ってだけでは
 弱すぎるよーな気もしました。



 魅力的な脇役が多かったぶん、彼らの目線で描かれているシーンが
 少なかったのはちょいと残念。
 まあそれを丁寧に描き出したら、あっちゅー間に何10巻もいっちゃうんでしょうが。





 この全9巻って長さは絶妙でしたからねえ。
 お腹いっぱいのよーなちょっと物足りないよーな。でも中身は特濃牛乳なみ。




 壮絶なオンナの壮絶な一代記。

 読み終えたあとにはお腹の底からエネルギーが沸いて来るような作品です。



 ああ、あと「キャンディーズ」のオーナー・蘭崎五十鈴の弟、蘭崎克己の
 カッコ良さがハンパじゃありません。
 まさに「目で殺される」というか。

 あんな男が現実にいたら貢いでしまいそう…。

この記事に

閉じる コメント(12)

まさしく、カッコよさの巣窟と呼べるくらい、セリフの洪水を受けました!!
面白かったっス♪

2009/3/20(金) 午後 6:19 た〜か 返信する

アバター

あぁぁぁ、これはもう、大好きどころの騒ぎじゃないです。
何度読み返しても、そのたびに熱くなれます。
TBかましてよかですか?

2009/3/21(土) 午前 1:53 カボチャ頭 返信する

たーかさん〉セリフがかっこよい漫画って印象が鮮烈っすよね!
ラストも良かったなあ。

2009/3/21(土) 午後 2:27 寿司子 返信する

カボチャ頭さん〉おおう、そんなに大好きな作品だったのですね。
これ読むと「ぬおー!じっとしてなんかいられぬわー!」って
気持になりますね。実際何もしないんですが(笑
TBお好きなだけかましてくださいませ。

2009/3/21(土) 午後 2:29 寿司子 返信する

『鉄腕ガール』20巻以上出てる記憶があったんですが
全9巻でしたか!前行った古本屋にやたら数があったもんで勘違いしてました(笑)
高橋ツトム作品ってちゃんと最初から最後まで読んだことって
ないっすねぇ。『スカイハイ』とか『士道』もヤンジャンで
チョイチョイ読んでたくらいで。あとアフタヌーンにたまに載ってる不良モノとか。『地雷震』も興味あるんですけどね〜
9巻なら集めやすそうだし、今度買ってみます☆
なんとなく『少女ファイト』臭がするし(笑)

2009/3/21(土) 午後 6:04 あ 返信する

アバター

はい、TB貼りました!どうもです♪
また読み返したくなりましたよ、ええ。

2009/3/22(日) 午前 5:35 カボチャ頭 返信する

んー確かに。トメ以外のメンバーを活かしたエピソードはほとんど無かったですね。実際、克己以外ほとんど記憶が・・。

野球としては成立しないハズの破天荒な展開ばっかなのに、他のどの野球漫画よりも球の迫力が凄くて。それがトメのキャラにハマってますよね。あのストレート、170キロぐらい出てそう(笑)
高橋さんの作品は初期作の『地雷震』。そしてこの『鉄腕ガール』が飛び抜けて好きです。ここ数年のは連載を増えたからか、今ひとつかなー。

最終話のトメはまさか!って驚いたけど、それがまたカッチョ良くて惚れ直したっす! 9巻完結は私もベストだと思ってます☆

2009/3/23(月) 午前 2:19 bmdfh 返信する

コグジュンくん〉20巻以上出てるのはたぶん「地雷震」くらいじゃ
ないかなー。ブクオフとか同じ巻が何冊か並んでると
たくさんあるかと錯覚しちゃうよね(笑
高橋作品はこれと「スカイハイ」「ブルーヘブン」しかちゃんと
読んでないけど、これはかなりオススメですぜ〜。
「少女ファイト」もこれもなんせ女性がカッコよし!

2009/3/23(月) 午後 4:29 寿司子 返信する

カボチャ頭さん〉TBどうもです〜。
わたくしもこないだ読み終えたばっかなのにもう読みたいです。

2009/3/23(月) 午後 4:30 寿司子 返信する

bmくん〉そうそう、けっこう濃いキャラ多かったから
ちょっともったいないなーと思っただすよ。
トメのストレート、確かに170km出てそう(笑
なんせメジャーリーガーと対決しちゃうもんねえ。
「地雷震」は全然読んだことなくて、こないだブクオフで
1巻を立ち読みしたらあまりにも絵が違っててビックリしたー!
持ってたら貸してほすぃーなー♪うふ。
「鉄腕〜」は最後のまとめ方も素晴らしかったすな。
あのトメは本当にビックリしたけどカッチョよかった!

2009/3/23(月) 午後 4:33 寿司子 返信する

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昔、友人から借りて読んだのにすっかり内容を忘れてました(汗)
↑のコグジュンさんのコメにもありますが、この決め台詞のテイストは
『少女ファイト』に通じるものがありますねー。
女性の野球モノと言えば、10年ほど前に『プリンセスナイン』というアニメがあって、
絵はアレでしたがなかなか面白かったです。
お蝶夫人みたいなライバルが出てました(笑)

2009/3/23(月) 午後 10:55 新橋 返信する

新橋さん〉昔に読んでたものってけっこう内容忘れちゃいますよねえ。
読んでた時はあまり感じなかったですが、
こう文字にしてみると、確かに日本橋イズムっぽい(笑
「プリンセスナイン」ってまたB級を通りこしてC級なイメージが
プンプンします!全然知らないぞー!
ライバルってなんで縦ロールのお嬢が多いんだろ(笑

2009/3/25(水) 午後 6:52 寿司子 返信する

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