映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-』
|
超の付く忙しさのはざまを縫って、映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六』を観てきた。
70年代以降の邦画の中で、第2次世界大戦を扱ったもの、特に戦闘シーンを中心の題材にしたものでろくなものに出会ったことがない。思い入れたっぷりのくさい音楽、死に赴く若者を送り出す女優たちのワンパターンの涙の演技、安っぽい戦闘シーンで絶叫しまくるとても軍人には見えない男優たち、とってつけたように入っている中国など現地の人々への狼藉シーン。。。
小林正樹や岡本喜八などが製作した60年代までの名作を最後に、日本の戦争映画は右と左の評価におびえ、まっとうな「反戦メッセージ」を伝えるものは皆無に等しかった。
今回の『聯合艦隊司令長官 山本五十六』も、もちろん大成功とはいえない。
しかし半藤一利の原作がしっかりしていることもあり、そこに記されたファクトに愚直にこだわったことがいい意味で抑制されたリアリティを醸し出している。
実は山本五十六という人の評価は近年少しずつ揺らぎだしているのだが、アメリカの国力を熟知した「開戦慎重派」であったスタンスはぶれることなくしっかりと描き出すことができている。
とりわけ役所広司の演技は、これまでの三船敏郎など歴代の「山本五十六」に比しても、もっともそのキャラクターに近いように思われる。
ミッドウェーの敗戦のさなか将棋を指すシーンは、へたをすると笑ってしまうような難しい演技だと思うが、「ああ、こんな感じだったろうなぁ」というそれなりのリアリティが感じられる。
ただしそれ以外の役者はやはりまだまだだ。
柳葉敏郎と椎名桔平は、表情の作り方が、旧軍の高級将校にどうしても見えない。阿部寛は絶叫パターンに陥ってしまっていて、明らかに「坂の上の雲」のほうがよかった。吉田栄作だけがまずまず。若い世代であのころの軍人を演じられる役者は本当にコマ不足だと思う。
むしろ優柔不断な南雲忠一を演じた脇役的な中原丈雄がいい味を出している。旧軍の海軍将校はみんなあんな感じだったと思う。
誰もが指摘するだろうが、この映画のいいのはしっかりとメディアの責任を問うている点である。
どんな時代もメディアはしょせん権力に迎合し世論を誘導していくにすぎないのではないか、そしてしそれは時に一つの国をとんでもない事態に巻き込んでしまうのではないか、という教訓が、リアリティをもってよく描きこまれている。(ただし編集主幹役の香川照之の演技は少々この役としてオーバーアクト気味で白けたが)
日本では70年代以降、イデオロギーの呪縛を乗り越えた真の意味での「戦争映画」が生まれていない。
今回の作品はまだまだではあるが、ようやく真剣にあの「国を挙げての大失敗」を、われわれが検証する時代の到来を感じさせる。
|

