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              2017年2月10日:  Vol.368

  <Vol.368:トランプ政権の政策とその展開>

テーマ:90年代から潮流だった自由貿易の否定が何をもたらすか
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<Vol.368:トランプ政権の政策とその展開>
     2017年2月10日:無料版

【目次】
1.TPPの目的
2.EU(欧州連合:28か国)は、自由貿易圏
3.NAFTAの設立
4.自由貿易のもとになった、リカードの比較生産費
5.比較生産費説の効果
6.TPPからの脱退
7.NAFTAとTPPからの離脱と、懲罰的な関税はどんな結果をもたらすか
【後記:新刊の案内】

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■1.TPPの目的

TPPは、日本経済の成長のための輸出入の促進策として、異次元緩和と並ぶ、政府の最重要政策でした。米国が離脱したことで、意味がなくなっています。(注)残されたのは二国間協定。

新大統領は、北米圏の自由貿易協定であるNAFTA(カナダ、メキシコ)の見直し(事実上の廃止)も言っています。「鎖国」ではありませんが、海外からの輸入を減らすために、「20%の高い関税」を課すという。

【関税の意味は、国家の存立に至る】
黒船(軍事力)で脅威を受けていた明治政府にとって、輸入に自国の意思で関税を課す「関税自主権(1907年:明治40年〜)」は、国家の主権存立の基盤でした。

明治39年まで輸入税は5%でしたが、価格に関係がない従量税だったため、太政官札(政府紙幣)の増刷のため高かったインフレの明治初期には、関税は事実上、ゼロ%でした。

18世紀からの産業革命により、工業製品の価値(品質÷価格)で優れていた米欧は、経済の面で、日本を植民地にしたのです。

海外の製品は無関税で輸入され、日本の金と美術品は、国際標準と比べて安かったため、略奪的に米欧に流出しています。

【ソ連の崩壊で冷戦が終わった、90年代からの新自由主義】
1990年代からは、経済学的な「新自由主義」の思潮により、グローバリズム(国際主義)が推進されていた世界に、新大統領は米国優先(=雇用の回復)の旗印のもとに、保護主義という「復古の棹(さお)」をさします。

トランプの経済認識が1980年代までのものだからです。「トランプ革命」という人もいますが、革命は主権を根底から覆すことですから、それにはあたらない。しかし本人が意識する以上に、世界経済への影響は大きい。

NFATAの廃止を言うトランプに対し、打撃を受けるメキシコは、「同じ率の報復関税」を言っています。

2016年の対米貿易収支では、中国が$2507億(30兆円)、日本が約6兆円の黒字です。

▼事実認識の誤りに基づく発言

トランプ発言は、70%が事実認識の誤りからの扇動であるという指摘があります(反トランプのNYタイムズのファクト・チェック)。

【日米の関税は、アンフェアではない】
自動車は、日米貿易の不均衡の最大テーマです。日本からの輸出には、2.5%の関税が課されています。しかし日本の米国車の輸入に対しては0%です。日米の関税では、米国のほうがアンフェアです。

【しかし日本車の米国内でのシェアは40%】
米国の、2016年の自動車販売台数(1755万台)では、(1)GM 18%、(2)フォード15%、(3)トヨタ15%、(4)フィアット・クライスラー13%、(5)ホンダ9%、(6)日産9%、(7)現代4%です。

年間2800万台の中国についで、販売数で2位の米国で、日本車の合計シェアは40%です。(注)日本国内では、中国の1/5.6の497万台の販売(16年)です。

性能がよく故障が少ないため、中古車の価格が高い。これが2年で車を変える米国での、人気の理由です。中古車が高いと、差額で新車が安く買えるからです。日本車は新車が仮に100万円高くても、トータル費用では安いからです。

【現地生産が多い】
日本メーカーの工場は、米国に13カ所です。現地生産は380万台。欧州で170万台、アジアで950万台、世界では、米国の総自動車販売に匹敵する1800万台が、日本メーカーの、2000年代で大きくなった現地生産です。

日本からの対米輸出は、160万台(2016年)と少ない。米国の雇用を使う現地生産が、380万台と2.4倍も多いのです。

貿易摩擦と、国内コストを上げた円高を主因に、2000年代には、生産と輸出の構造が変わっています。(90年代から始まった、世界の産業のグローバル化)

日本での米国車の販売シェアは0.4%でありほぼゼロです。トランプ氏は、関税でのアンフェアではなく、輸出入の「結果」を言っています。

原因が何であれ、輸入車の米国販売は、米国の雇用を奪うから「ノー」ということです。このため輸入に対しては、20%くらいの懲罰的な関税を課すという。

【日本の製造業の変質】
平均的に言えば、東証一部に上場している大手製造業の売上の約50%は、海外生産と輸出です。自動車や家電産業では、ほぼ70%です。

このため、円安・円高で、大きな影響を受け、「円安→日経平均高」、「円高→日経平均安」というマネー構造が作られています。円安になると、海外生産分の大手製造業の売上と利益が、円ベースでは増えて、円のコストは減るからです。円高では逆です。

日本にとって、20年の日米貿易摩擦を経た1990年代からのグローバル化は、海外生産の増加でした。

【3度の貿易摩擦】
・1960年代は、日米繊維戦争と鉄鋼、
・1970年代は、家電と自動車産業、
・1980年代は、半導体での貿易摩擦でした。

日米の貿易摩擦が、1990年代の、内需振興策としての公共事業(10年で400兆円)を生んだのです。米国が、日米構造協議で年40兆円の公共事業を、日本政府に要求したからです。政府は、いつも米国に従います。

この公共投資によって国債残が400兆円増えました。現在の「国債危機と異次元緩和」の原因は、日米貿易摩擦にさかのぼれることがわかります。

輸出を非難されたわが国の製造業は、海外に直接投資をし、金融業は証券投資を海外に対して行い、生産も海外で行ってきたのです。

このため、1990年以降の26年間で、対外資産は948兆円(直接投資151兆円、証券投資797兆円)と、GDPの1.8倍にもなっています。直接投資と証券投資は、海外への円の流出でもあるので、日銀がマネーを増発してもデフレになる構造ができあがったのです。

対外資産の増加は、海外(特に米国)の雇用増加でもあるのですが、トランプ氏はこの事実も無視しています。米国の貿易赤字が一方的に、米国の雇用を奪うと考えているからです。これは、1990年代からの、世界のグローバル経済化の進行を無視した考えです。

【経常収支が黒字続きだと、対外債権が増える】
米国のような経常収支の赤字国に対しては、資本の輸出(円売り/ドル買い)が必要です。

日本は米国の証券(国債、デリバティブ証券、株)を買い続けています。経常収支の黒字分は、資本収支では赤字(マネーの国外流出)になるからです。

その累積が、前記の米国を主とする対外資産903兆円、対外負債580兆円、対外純資産323兆円です。対外投資は、「ドル買い/円売り」として、円の海外流出(ドル買い)でもあるので、国内が需要不足でデフレになった主因でもあります。(日銀資金循環表:16年9月末)

米国債や債券の購入というマネーの流れで、米国に行ったジャパンマネーは、米国の需要になっています。貿易黒字が、対外資産になるというのが、これです。

この記事に

■2.EU(欧州連合:28か国)は、自由貿易圏

【繰り返してきた欧州の戦争】
戦争を繰り返していた欧州が、武器の進歩で破壊的だった第二次世界対戦のあと結成したのが、EUです。28か国が加盟し、域内では、関税を課さない自由貿易圏です。これは、欧州の大国フランスと、問題の根になっていたドイツの和解でした。総人口5億人で、GDPは$16兆(1840兆円)と日本の3.5倍、米国の0.94倍の大きさです。

戦争は、経済面では貿易の制限や拒否から起こります。政治面では支配(ガバナンス)です。政治的・経済的に支配するのが、植民地です。第二次世界大戦は、植民地の争奪戦でした。

自由貿易にし、労働の移動も自由にして移民を許容し、お互いが工場を作りあい、マネーが行き交う関係を作れば、利害が一致して、戦争は起こりにくくなる。これが東京と大阪が戦争をしない理由です。幕末には、国内で封建領主間の「戦争」がありました。

ドイツは、スペインに多くの工場を作っています。スペインとは戦争ができないでしょう。

(注)文面通りに読めば、憲法が交戦を禁じる日本では、戦争は過去のものと考えられています。世界では、そうではありません。いつも防衛戦と言い、軍事大国が侵略するのが戦争です。

【EUのビジョンは平和】
戦争を再び起こさないことが、欧州連合(EU)の理念(ビジョン)でした。そのEUから離脱するのが英国です。米国は、北米の自由貿易圏のNAFTAから離脱するでしょう。

言語を同じにし、文化にも共通性が高い米英が、相談はせずとも、一致した行動をとっています。英米の国民の、文化的に共通な意思が働いているのでしょう。

EUの上に、通貨でも統一を図ったのが、ユーロです(19か国)。スイスと英国が、EUとユーロに加盟しない国になります。

▼EUの上のユーロ

ユーロは、ロバート・マンデルの「最適通貨圏の理論(1961年)」をもとにして作られています。

最適通貨圏が成立する4つの条件は、以下です。

(1)労働移動の自由(つまり移民の自由)
(2)文化的な障壁のなさ。つまり価値観が類似すること。
(3)資本移動の自由。マネーが自由に移動できること。
(4)通貨の価値を下げるインフレ率の低さで、類似性があること。
このため、財政赤字には限界をもうけねばならない。

ユーロでは、財政赤字の上限を、GDPの3%以内と定めています。しかし、今はフランスが-3.3%、スペインが-4.6%、ギリシアが-7.7%です。ちなみに日本はGDP比5.6%、中国は3.8%、米国も3.2%の財政赤字です(2016年)。ドイツ(+1%)とスイス(+0.2%)を除く世界は、財政赤字が拡大しています。

【ベルギーにあるEUが上位の政府】
ユーロ加盟国では、EUの事務局(連合政府)に対して政府の財政予算を提出し、「承認」を受ける必要があります。

ギリシアの政府予算も、毎年、EUに提出され、財政赤字を修正されています。ギリシア国民は、こうしたEUによるギリシア支配に対して反抗し、暴動を起こしたのです。

【マネーと経済でのドイツ帝国】
EUは、政治的な独立はそのままにして(各国が政府をもつ)、経済面では一国であるかのようなブロック圏を作っています。

マネーと経済では、メルケルを首相とするドイツ帝国とも言えます。ドイツがもっとも強い経済だからです。(注)ドイツ銀行の危機は、自己資本が少なく、実際は不良になっている対外債券の所有が多いためです。

第二次世界大戦は、ドイツと連合国(主要なものは英、仏、米、ソ連)で始まっています。戦後のEUは、軍事力ではなく、経済力でドイツが帝国を作ったものでしょう。

EUとユーロには、「域内平和」の理念があるのです。南欧の財政赤字の大きさと英国の離脱を契機に、「最適通貨圏」の条件を満たさなくなったユーロがどうなるか、これには、別の論が必要です。(注)本稿では、EUの将来までには踏み込みません。

■3.NAFTAの設立

北米3国(米国、カナダ、メキシコ:域内人口4億6000万人)では、EUに対抗して、自由貿易圏が作られました(1994年)

(1)関税を課さない自由貿易の協定
(2)環境問題に関する協定
(3)労働の移動に関する協定、の3本柱からなります。

【メキシコ進出】
NFATAとともに、日本の製造業は、比較コストが低いメキシコに進出しています。米国への輸出に、関税がかからないからです。政治(=関税)は、このように、経済を変えます。

ユーロ加盟国だった英国に、日本の工場が進出したのと同じです。日本からユーロに輸出すれば、5%の関税がかかります。英国の日本工場からのユーロ域内への輸出は関税がゼロだったからです。金融面では、英国で免許があれば、ユーロ加盟国でも営業ができたからです。

トランプ政権は、TPPのみでなく、NAFTAに向かっても離脱の方向を言っています。

■4.自由貿易のもとになった、リカードの比較生産費

さてここから「知識」です。英国のリカード(リカードウとも表記されます)が、経済学の古典、『経済学および課税の原理(1819年初版)』で唱えた、比較生産費の論です。

サミュエルソンが、教科書『経済学』の中で、経済学での最大の発見と書いていたので、当方も読みました。とても難しい。抽象化した思考が必要だからです。

貿易が起こる原因は、比較生産費が低いからである。生産費の安いもの(生産性の高い商品)を輸出し、自国では生産費の高いものを輸入する自由貿易をすれば、両国のGDP成長は高まるとする論です。自由貿易を推進した経済論がこれです。

お互いが関税を課さず、輸入の制限もしない自由貿易にして、(1)日本は自動車の、対米輸出を今より増やし、(2)米国は農産物の、対日輸出を大きく増やせば、(3)日米両国の、国民の所得(企業の利益+国民の所得)は、今より増えるというものです。

新自由主義が推進したグローバリスムは、リカードの比較生産費の立場に立っています。EUの成立とユーロも、域内の比較生産費の立場にたっています。

経済学が自然科学なら「立場」や「説」、及びイデオロギーは なくなります。米国派の医療や医薬というものがないのと同じです。医療や医薬は、自然科学でしょう。経済学は科学ではありません。国、文化、制度、政治的な統治で異なるからです。国で異なる自然科学はないのです。

例えば中国の、共産党独裁体制下の経済学と、米国、日本、EUの経済学は異なります。江戸時代の経済学と、現代日本の経済も違います。以上の意味で、経済学は「時代と政府の意思を反映したイデオロギー」です。経済学は、統治の学でもあったのです。

マルクス主義の医学、物理学、量子論はなくても、マルクス主義の経済学はあります。他方、科学は政治的には中立です。

▼比較生産費の事例

リカードの原文では難しいので、単純化(モデル化)して述べます。リカードがあげた事例に基づき、英国の毛織物とボルトガルのワインです。

英国では毛織物の生産費が低く、ポルトガルではワインの生産費が低いとします。必要な労働量が多ければ、コストが高く国内の比較生産費が高い。同じ1単位の商品を生産する労働量が少なければ、比較生産費が低いことになります。

       ワイン生産の  毛織物生産の
       必要労働量   必要労働量
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ポルトガル   1人       2人
英国       5人       4人
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(注)1単位の商品を生産するための労働量(コスト)。

・英国では、ワインと毛織物の、2単位の商品生産に9人が必要とします。
・ポルトガルではワインと毛織物の2単位の商品生産に3人が必要とします。
・両国の貿易前の生産量の合計は、4単位です。

上表の事例では、ポルトガルがワインと毛織物の両方で、1単位を生産するための生産性が高く、価格は安い。

英国は、両方の生産性が低く、価格が高い。言い換えれば、ポルトガルは全体の「絶対生産費が低く」、英国は「高い」。

リカードは、この条件でも、両国が貿易をすれば、両国の利益が高まり、お互いにGDPは増えると言います。直感では、生産費が高く、価格が高い英国が損をする感じですが・・・

【国内での比較生産費の視点】
(1)ポルトガルでは、ワイン1単位を生産するのには1人の労働で済みますが、毛織物1単位の生産では2人分が必要です。つまり、ポルトガル内では、ワインの比較生産費が、毛織物の1/2(50%)と低い。

(2)英国では、ワイン1単位を生産するのには5人分の労働が必要ですが、毛織物の1単位では4人分とそれより少ない。英国内では、ワインの、毛織物と比べた比較生産費が5/4(125%)と高い。つまり、ワインと比較した、毛織物の国内での比較生産費は、4/5(80%)と低い。(注)比較生産費は、他国ではなく、国内の産業間を比べたものであることに留意してください。

ポルトガルは、両方の生産費が低い(絶対生産費が低い)。英国では、両方の生産費が高い(絶対生産費が高い)。

英国が国内での比較生産費が高い安い毛織物を、ポルトガルに輸出し、国内のワインの生産をやめて毛織物の生産に特化するとします。(注)やめなくても、減らせば、弱まった類似の効果が出ます。

英国の労働が、輸入するワイン生産から、毛織物生産に移行すればどうなるか。生産性の高い毛織物の生産に、5人が加わりますから、生産量は〔1単位(4人の労働)+1.25単位(5人の労働)=2.25単位〕に増えます。英国の生産量(GDP)は貿易をしないときの2単位から2.25単位に増えるのです。

同様に、ポルトガルの労働が、国内の比較生産費が高い毛織物生産から、ワインの生産に移行すればどうなるか。生産性の高いワインの生産に、2人が加わりますから、生産量は〔1単位(1人の労働)+2単位(2人の労働)=3単位〕に増えます。

貿易をする前の商品生産量は、
・ポルトガルがワイン1単位、毛織物1単位で、合計2単位(労働は3人分)でした。
・英国でも、ワインと毛織物で、合計2単位(労働は9人分)でした。

ワインと毛織物を貿易して、労働が移動したあとの商品生産量は、
・ポルトガルの生産がワイン3単位(労働は3人分)に増えて、
・英国では毛織物が2.25単位(労働は9人分)に増えます。両国の労働量は、貿易の開始前と同じです。

両国での合計生産量は、貿易前の4単位から、5.25単位へと31%増えました。

これは両国の労働量が、貿易以前と同じでも、貿易以後は実質GDPと所得が31%増えたことです(生産=所得=需要です)。このため、両国で31%分、実質所得が上がります。

両国では、以下のことが起こります。
・毛織物の消費が2単位から2.25単位に13%増え、
・ワイン消費も、2単位から3単位へと50%増えます。

【リカードの結論】
・英国が、比較生産費が低い毛織物に特化し、
・ポルトガルも、国内の比較生産費が低いワインに生産を特化させると、両国の国民は、貿易をした分、豊かになる。これが、リカードの比較生産費説です。

常識と異なるのは、毛織物の生産費でも優れるポルトガルが、国内の比較生産費が高いからという理由で毛織物の生産をやめて、英国から輸入することです。これでも、両国の生産量と所得が増えるのです。

この記事に

■5.比較生産費説の効果

得意な商品の貿易により、両国民は、豊かになる。これが世GDPの増加率より常に、貿易量を大きくしてきた比較生産費の説でした。

2015年の世界の輸入額は、1位米国$2.3兆(265兆円)、2位中国1.6兆(184兆円)、3位ドイツ$1.1兆(127兆円)、4位日本$6500億(75兆円)、5位英国$6300億(72兆円)、6位フランス$5700億(66兆円)です。

貿易収支の黒字では、1位中国$3222億(37兆円)、2位ドイツ$2285(26兆円)、3位ノルウェー$765億(8.8兆円)、4位オランダ$623億(7.2兆円)、5位アイルランド$467億(5.4兆円)6位イタリア$257億(3.0兆円)です。3位以下は、過去の常識と異なるでしょう。

貿易赤字では、1位米国$7414億(85兆円)、2位英国$1709(19兆円)、3位フランス$907億(10兆円)、4位日本$728億(兆8.3兆円)、5位トルコ$657億(7.5兆円)、6位スペイン$329億(3.8兆円)です。

1980年代から約30年、貿易黒字を誇っていた日本は、貿易赤字で世界4位の8.3兆円になっています。

なんと言っても、米国の赤字である85兆円が大きい。世界の貿易黒字を、ブラックホールのように赤字国として引き受けているのが米国です。(注)世界貿易では、黒字と赤字が等しい。

【米ドルの世界の通貨に対する実効レートの下落が、止まって、上がることもある理由】

大きな貿易赤字の継続でも、米ドルが下がらないのは、貿易で使われる国際通貨であるため、世界の貿易が増えるとドル買いが増えるからです。ドルを刷るだけで海外から商品が買える米国がもつ、基軸通貨の特権です。

ドイツが中心になり、ユーロが作られたもっとも大きな理由は、欧州がドル経済圏から逃れるためでした。貿易黒字で米ドルを貯めても、数年のスパンでは、1年に$1兆から$7000億(115兆円〜80兆円)の貿易赤字のために、過剰に刷られたドルが下がって、ドル貯蓄の価値が下がってきたからです。

自由貿易のEUが結成された理由は、前述のように、比較生産費の原理から、
・域内貿易の自由化により、
・EU28か国のGDPが増えて、
・国民所得(企業所得+世帯所得)が増えるとされたからです。

自由貿易のEUの結成は、リカードの学説の功績でしょう。

■6.TPPからの脱退

TPP(環太平洋経済連携協定)には、太平洋を取り巻く日本を含み、中国除く13か国が参加を表明しています。

太平洋圏のNAFTAとして、貿易の自由化による参加国の経済成長を目的に、結成されようとしていたものです。米国の、永久不参加の表明で、TPPは消えました。

【比較生産費説の問題】
リカードの比較生産費の問題は、労働移動の期間です。輸入産業の労働者が、輸出産業の労働に移動しなければならない。

生産性の低い農業や一次産業から、生産性の高い工業への移動は、個人の所得が増えるので、スムーズに進むでしょう。

わが国では、昭和22年(戦後2年目)の農業従事人口は、3353万人でした。労働者のうちほぼ10人に4人は、農業従事者でした。2000年には、これが389万人に減っています。2011年では261万人しかいません。

農村人口が、大挙して製造業に就職していた1960年代が、2008年までの中国のような、GDPと所得の二桁成長の経済だったのです。中国では、2008年まででした。

工業から工業への移動は、進みにくい。生じる移動は、自動車や家電産業から、生産性が低く、所得が低いことが多いサービス業です。

日本人は、生涯に3回職、業を変わります(平均勤務年数は11年)米国は、11回です(平均勤務年数3年)。米国の労働移動では、同じ職種が多い。このため、輸入の増加による失業率は、5%から8%と高くなっています。2016年6月は4.9%です。

以上から、1980年代以降の先進国では、現場労働では、労働移動による所得の増加はない。米国の収入5分位での、実質所得は、1983年を100としたとき、17年後の2010年では、以下になっています。(注)物価上昇を引いた実質所得

【米国の世帯年収】             年率増加
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)年収上位層(20%) 100→200(2010年) 4.2%
(2)年収中位層(40%) 100→150(2010年) 2.4%
(3)年収下位層(40%) 100→120(2010年) 1.0%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(注)これが「格差」と言われることの正体です。

年収で5分位の上位層(労働の20%)は、1983年から2010年に、物価上昇率を引いた実質年収は2倍になっています。1年に3%くらいの平均インフレがあったので、年収の名目額で4倍でしょう。

一方で、40%を占める中位層は27年間の実質年収で1.5倍、同じく40%の下位層は1.2倍に過ぎません。

米国での生産優先の支持は、中東部の、かつての工業地帯(インディアナ州、ミシガン州、イリノイ州、ニューヨーク州北部、ペンシルバニア州、ウェストバージニア州)の、白人の中低所得層多かった。

かつては民主党だった、ラストベルトでの勝利が、トランプを大統領にしています。ラストは、鉄の赤サビです。工場がサビついて、廃墟になった地帯という悲惨な意味です。

(注)日本の、子供あり世帯所得の平均は、1995年が頂点で781万円でした。2014年は712万円で、9%減っています。全世帯平均のピークは1994年の664万円でした。2014年は541万円で19%も減っています。2000年以降に退職者(夫婦で約20万円の年金が所得の70%)が増えたためです。

■7.NAFTAとTPPからの離脱と、懲罰的な関税はどんな結果をもたらすか

NAFTAとTPPから米国が離脱し、大統領令で、輸入に対して35%の懲罰的な関税を課したらどうなるか。35%ではなくても15%や10%でも同じことが起こります。

第三国での生産を含む米国への輸出が多いのは、(1)中国、(2)ドイツ、(3)日本です。

(1)中国では、パニック的に対米輸出が減少し、米国の輸入が減ったリーマン危機と同じ結果になります。

中国のGDP成長は、2007年が14.2%でしたが、リーマン危機の影響を受けた2009年は、9.2%に下がっています。GDPの実質成長が、輸出の減少で5ポイント(%)下がっています。

(2)日本はリーマン危機の前のGDPの実質成長が2.19%(2007年)でしたが、2009年にはマイナス5.5%と、経済循環での不況を超えた、超不況になっています。

これに近いことが生じる可能性が高い。

(3)輸出がGDPの37%と世界でもっとも大きなドイツでは、2007年が3.38%のGDP成長でしたが、2009年は日本とほぼ同じマイナス5.57%の超不況でした。

対米輸出が多い3国には、リーマン危機後の米国の輸入減少とほぼ同じことが、今度は金融要因からではなく、WTO(世界貿易機構)違反の、差別的関税ショックとして、起こる可能性が高い。

米国で、商品生産の増加が起こるかと言えば、そうではない。変質した米国製造業が、コストの高い国内に、工場を新設することは、ほとんど、考えることができないからです。

長期的に見た場合、米国工場(特に自動車、家電、IT)の採算はとれない。このためCEOは、大統領が誘っても、工場新設の決定はできないでしょう。

▼米国の生産の変化

現在の米国の代表的な製造業は、iPhoneやiPadを作るアップルです(時価総額$6175億:71兆円:トヨタの20兆円の3.6倍)。アップルは、中国や台湾の委託工場で作る企画生産型です。自社製品を輸入して、販売しているユニクロのような企業です。

米国企業のアップル等の輸入に対する関税はどうするのか? 輸入課税をすれば、アップルの商品は高くなって、売れなくなります。これは、米国内アップルの雇用(流通に従事)を奪うのです。

世界最大の小売業(世界売上51.8兆円:2016年)であり、米国に5000店をもつウォルマートの商品は、食品以外では90%以上が輸入です。差別的関税で、ウォルマートの食品以外の価格も上がって、売上が減ります。

ウォルマート以外でも、例えばファッションのGAPの商品はほぼ100%が海外輸入です。関税がつけば、その分、価格を上げます。

他の店舗でも、同じです。食品以外は、ほぼ輸入だからです。米国のメーカーは、製品を作らない企画生産型になっているからです(ファブレス・メーカーともいう)。

輸入関税を課すことが、輸入型になってしまった米国企業の雇用を増やすことは、ありません。むしろ、減らします。円安になると、中国やベトナムからの仕入価格が上がるユニクロのようなSPA型の生産・販売に変質したからです。

関税は、課税分がドル安になったことと同じように、海外商品の、米国内での価格を上げます。

米国の自動車も、関税がないNAFTAのメキシコで作られているものが多い。米国の労賃より低いからです。廃墟に近くなっている、自動車の都市デトロイトがそれを象徴しています。

期待されるラストベルトの復活はなく、
・関税では雇用が増えない米国世帯の所得は上がらす、
・一方で、商品物価が数%は上がる。

このため、米国に「関税不況」をもたらします。

世界に広がる「関税不況」は、金融のリーマンショックのように、FRBのドル増発(QE)により2年で回復したようなものにはならない。関税が続く限り、継続します。長期の世界不況になるでしょう。

米国も生産地が、アップルのようにグローバル化しているのに、生産の事実を無視して、大恐慌の1929年〜33年、つまり85年前に戻ったような、復古的な関税をかけるからです。

数ヶ月後には、米国人も米国の生産構造の、後戻りができない変化に気がつくかもしれません。

トランプ大統領には、この知識が明らかに不足しています。補佐官、財務長官、商務長官が、一刻も早くアドバイスして、トランプ関税と自由貿易圏からの離脱をとどめるよう期待しています。

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2017年の予想

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              2016年12月26日:  Vol.366

     <Vol.366:トランプ相場は2017年も続くのか>

    テーマ:国債のイールド・スプレッドで動いた国際金融
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■2017年の予想


「織り込みの項」で述べたように、2000年以降の金融相場では、
「3か月あるは6か月先の予想が実現したと想定した売買」が行われ
ています。

トランプ相場は、選挙公約が実行されたと想定した国債の売り、米
国株の買い、円の売り、日本株の買いから起ったものです。(織り
込み)

注目すべきは、2017年1月20日の、トランプ大統領就任式の後の、
上下院での議会演説です(一般教書)。

1月末からの金融市場は、次は3月から6月の、実体経済(GDP、金利、
企業利益、通貨)を予想して織り込むものに変わります。

一般教書での、選挙公約の減税($6兆)と公共事業($1兆)が、
実際は後退するとなると、それを織り込んだ相場に、反転が起りま
す。これは、トランプ相場の逆になるのです。金利の低下(国債価
格上昇)、日米の株価下落、そして、円安・ドル高の反動です。

政治と経済の運営の基本を示す一般教書は、選挙公約より激しいも
のにはなりません。むしろ、低下する可能性が高い。

となると、2016年末から1月初旬の金利、株価、ドルでピークをつ
けて下がるでしょう。米国の年初の金利、株価、ドル高(円安)は、
注目に値します。

ゴールマンサックス出身のムニューチン氏が、財務長官に指名され
ているので、ヘッジファンドには、一般教書の内容が伝わるからで
す。米国に限らず、日本でも政策的なものは、インサイダー情報の
カタマリになっています。

その次は、2017年2月の、政府の予算です。ここで、具体的に減税
と財政支出が明らかになります。これも、選挙公約より激しいもの
になる可能性は低い。

【FRBの利上げの要素】
もう一点、FRBの利上げという要素があります。FRBは16年12月14日
に0.25%の利上げを行いました。しかしトランプ相場の織り込みで
長期金利はすで2.6%に上がっていたため、0.25%程度では、ほと
んど話題にもならなかったのです。

FRBは、トランプ相場の金利上昇にのる形で、2017年には、少なく
とも3回(0.75%)か4回(1%)の利上げに転じるという予想に変
わっています。

これが、実際にできるのかどうか。

【ドル高の限界】
金利上昇がもたらすドル高は、米国産業の輸出にとっては障害です。
ユーロ安、元安、円安になって、米国製品が高くなり輸出が減るか
らです。輸出が減れば、米国産業の輸出($1.5兆:175兆円:
2015年)は減ります。それは、米国の自動車や武器輸出産業に打撃
を与えるからです。

米国は、円との関係で言うと「$1=120円以上」のドル高には、長
期では耐えるこことができないと見ています。輸出先の1位である
カナダと2位のメキシコは、米穀との関税がないNAFTA(自由貿易
圏)です。関税がないため、もろに、ドル高が輸出を減らすことに
なるからです。

米ドルを上げるFRBの年3回の利上げ(2017年)は、可能性が薄いよ
うに思えるのです。

以上の諸点を考慮した場合、2017年の円は、$1=120円を超えるこ
とがあってもこれは一時的であり110円台に戻る感じがしています。
日米の株価も、ダウで$2万、日経平均で2万円が頂点になるでしょ
う。

ある週刊誌は、日経平均4万円や2万5000円、$1=130円から140円
とも言っていますが、これはない。2017年1月初旬は、売り時を迎
えるでしょう。

【ドル高で膨らむ米国の対外債務の実質負担】
ドル高に限界がある理由のひとつは、米国が、基軸通貨のドルベー
スでの、対外債務国であることです。対外債務の総額は$17.5兆
(2047兆円:2015年)です。GDPに匹敵する海外からの債務です。

この債務はドルベースですから、世界の通貨に対するドル高が10%
進むと、債務の実質負担も[$17.5兆×1.1=$19.25(2252兆
円)]へと205兆円も膨らむのです。この負債からも、ドル高には
限界があることが、わかります。このため、$1=130円や140円に
は、なり得ないのです。

本稿では、2017年の株価、通貨の予測をしました。

週刊誌が、円は130円や140円、日経平均は2万5000円や3万円と騒い
でいるトランプ相場は、2017年1月末から2月には、ほぼ終わる可能
性型高いと判断しています。

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ドイツ銀行


Bloomberg
Ambereen Choudhury
2016年9月2日 11:07 JST

「ドイツ銀の経営陣は必死だ」−アナリストのハイン氏

改革を昨年10月始動も株価半減、コメルツ銀とも合併協議と関係者

ドイツ銀行のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)は、同行立て直しを1からやり直す。昨年に新戦略を発表したものの、同行の時価総額は半分以下に減ってしまった。

事情に詳しい関係者によると、クライアンCEOと幹部らはこの週末の会合で再編の進展を検証する。ドイツ銀はコメルツ銀行と合併の可能性について先月協議したが、両行ともにタイミングが適切でないという結論に至ったと別の関係者が匿名を条件に8月31日に明らかにした。

欧州最大の投資銀行を運営するドイツ銀は、資本要件が強化されトレーディング収入が減少する時代への適応に手こずっている。クライアンCEOは昨年10月に改革始動の戦略を示し、リスク資産や大量の人員を削減すると同時に配当も停止した。だが株価は先月に過去最安値を更新。このところ明るみに出た動向は、同CEOが一段の荒療治を検討してもおかしくない状況を示唆している。

フェアリサーチアルファバリューのアナリスト、ディーター・ハイン氏は「ドイツ銀の経営陣は必死だ。現在の戦略ではだめだと認識しており、どのような可能性があるかを探っている」と話す。

クライアンCEOは、ドイツ銀がコメルツ銀との合併の可能性を検討したとの報道があった8月31日、欧州の銀行には利益率と競争力改善のために再編が必要だと指摘しながらも、ドイツ銀は今はパートナーを求めていないと発言。統合を行わないとすれば、同CEOは追加資産の売却や投資銀行での一段の削減を迫られるかもしれない。

協議の非公開を理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、ドイツ銀は資産運用部門の非中核業務の一部からの撤退を検討する可能性がある。同部門の大部分を売却する計画はないという。

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