いっき旗本の問わず語り

世事やドラマを語ります。季節には弱小兼業農家のくらしもレポート。

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「砂の器」(1974)を観た その5 親たちの心

監督 野村芳太郎  脚本 橋本忍 山田洋次 原作   松本清張
配役 本浦千代吉 .....加藤嘉   和賀英良 ......  加藤剛
   本浦秀夫 ...  春日和秀 今西栄太郎 ...  丹波哲郎  
   三木謙一 ...  緒形拳   高木理恵子 .....  島田陽子 

ここでは三木巡査も敢えて親に含めてみようではないか。

もっとも和賀に殺されたのだから皮肉な言い回しにはなるけど。

千代吉はずっと生きていたのだね。

彼と世の中との唯一のパイプは、三木との文通であったことが

今西の捜査で判明する。

今西と千代吉との面会。おそらく刑事だという身分は明かされていたにちがいない。

もっとも殺人までは知らされていなかっただろう。

三木の死亡も含めて。

でも今西に秀夫の写真を見せられた時、それは明らかに秀夫とわかった。

そして、何かが彼に起こったことを千代松は悟ったはずである。

何度聞かれても、「こんな男は知らねえ」。

精一杯の抵抗であった。もちろん、息子への気兼ねでもある。

こんな立派な息子に、自分が邪魔をしたくない。これこそ真意であったはず。

しかし、かれをここまで生きてこさせたのも、息子に再会したいという想いでもあった。

それを励まし続けたのは、三木であった。

きっと会える。三木はずっと保証していた。

もし、三木が和賀の存在を教えてくれたなら、おそらく千代吉は喜んだに違いない。

しかし、訪問者は皮肉にも刑事である今西であった。

本来千代吉は社会を信頼していないはずである。

特に警察は国家の下僕であり、自分たちの存在を認めない輩であった。

それは下界との関わりを奪われた千代吉には、ずっと強い記憶となっていたはず。

でも、今西刑事はそんな悲劇を受け止めるだけの感受性を持っていたのである。後述。

三木はずっと千代吉を励ましてきた。

それこそ、保護を約束しながら、行方知れずになった秀夫への執着のため。

責任感は募るばかりであった。

もしかして警官を辞して雑貨商となったのも、それが要因かもしれない。

三木は父子を引き裂いたことをずっと傷として持っていた。

それは千代吉の病状と国の施策上やむを得ないことであり、

秀夫の将来にとっても正しい選択のはずであった。

だが、秀夫は親を捨ててはならなかった。

三木は親子の絆を大事だと思ってもいた。

だから再会は最重要だったのである。思えば理不尽な話である。

苦学して成功を収めた秀夫は和賀となり、過去を隠して生きている。

しかし、決して父を捨てたわけではない。

彼の中では、幼き日に苦しくも父と放浪した日々が鮮明に残っていた。

それがまさしく宿命であった。

そして、父はいつも彼の心の中にいたのである。

それがこの時の和賀にはちょうど良いことであった。

やっと得た安定と、一見幸福とも思える日々。それは不安定なものでもあった。

自らの素性を明かすこと、それは破滅でもあった。

それは父との良い想い出でもあると同時に、思い起こすこともはばかる被差別の記憶であるはず。

彼の苦しみは、父を慕いながらも会えないという事だったのだろう。

それが自らのエゴだとしても、それは越えられない辛い決心であった。

だからこそ、そこに三木への殺意が生まれるのである。

三木はその正義感と同時に、世間に対する無防備な信頼感とか仲間意識によって、

無意識に和賀を追いつめて行ったのである。

最後の死の時まで、どれほど和賀を苦しめているのかさえ

気づかなかったのではなかったか。・・・つづく

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こころのX線技師、いっきさん。見事な洞察力です。

2007/3/12(月) 午後 8:34 むらづみ

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X線技師ですかあ、やあ仕事師って感じで良いですね。ぽりぽり。

2007/3/12(月) 午後 10:08 聴衆いっき

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