ミステリ雑文

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島田御大、文学賞設立!?

福山市は、地元出身のミステリー作家、島田荘司さん(58)=米国ロサンゼルス市在住=を選考委員に迎え、推理小説の新人賞を創設する。
地方自治体が、長編の推理小説を公募するのは全国初。
優れた書き手を発掘し、文化の発信拠点として福山も全国に売り込む。

計画では、「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」と銘打ち、二〇〇七年度中に未発表作を募る。
最終選考は、福山市地吹町出身で、「占星術殺人事件」や「御手洗潔シリーズ」などの著作で知られる本格ミステリーの第一人者、島田さんが当たる。
第一回の最終選考と優秀作決定は、〇八年度となる見通し。すでに出版社三社の協力が内定。最優秀作については本の出版を確約する方向で検討している。

島田さんが〇四年、福山市に帰郷した際、古里の知名度アップ策として、自らがかかわる文学賞の創設を市に提案していた。
市は〇七年度の早い時期に、市内の文化団体の代表者らによる実行委員会をつくり、応募規定などを協議する。
羽田皓市長は「福山という地名の全国的な知名度はまだ低い。文学賞で都市ブランドづくりにつなげたい」と期待している。


3月24日 中国新聞より


あの島田御大がついに(?)ミステリ文学賞を設立です。
自らの出身地広島県福山市(吉敷の出身地尾道市の隣ですな)と協力して、新たなる才能の発掘と福山のPRを兼ねているという。
応募規定などの詳細は発表されていないものの、広島出身広島在住の私としては見逃せない?

ついに幻の作品「忘却の夢」(たいりょう作)が日の目を浴びる時が来るのか!?(笑)

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『本格ミステリー・ワールド 2007 』 監修:島田荘司

http://img.7andy.jp/bks/images/i6/31846376.JPG



現在ミステリ本の売り上げに大きく貢献していると思われる年末恒例のランキング本。
それらに対し、義憤とアンチテーゼを引っさげ御大島田荘司が立ち上がった(笑)。
冒頭の島田氏による挨拶文がふるっている。

現在の多くのランキングを「各方面への様々にやむを得ない『誠意行使』により、今や本来の目的を失って形骸化しており、読者に誤った指針を示し続けて有害」と切っている。(中略)これを正しく誘導するには(中略)ガラス張りの座談によって理由を明確に示しながら(中略)Aランクのサンプル作品群をフィールドに示したい」という二階堂黎人氏の相談を受けて、島田御大が立ち上がったらしい・・・

って自分の発案じゃなかったのかい!?(笑)

この辺の提示に関していえば、島田氏が一番の標的として捉えている文春や、「このミステリがすごい」「本格ミステリー・ベスト10」である程度棲み分けが出来ていると感じるし、読者のすべてがそれらのランキングを妄信しているとも思えないのだが、一面の真実を突いている部分もあるとは思う。
ただ、ランキング本の形骸化における主たる要因の一つに、日本の近代史、ひいてはいじめ問題に求めてしまうのが、さすが御大^^;;
つまりはベストセラー本を読んでいないのか、直木賞受賞作を読んでいないのか、文春ベストテン(←またしても標的は文春)のミステリを読んでいないのかという被脅迫の圧迫心理による読書の購入傾向があるというのだ。

そうか?そうなのか?少なくとも僕はそんな事は感じないけどなあ。


一方で「このミス」についても「陽の当たらぬと見える作家への判官贔屓、受賞高位者への儒教的気配り、そろそろこいつにもの親方配慮、目上への道徳の暴走」と一刀両断している。

しかし、そもそもミステリの定義がここまで広範囲に広がっていくなかで、ランクインする作品の多様性は必然であると思う。文春にしろ「このミス」にしろ“本格”という冠をつけていないのだから、その土壌において本格の冷遇を批判するのは少々的外れのような気がする。
あえてそれを突っ込むなら「本格ミステリー・ベスト10」ぐらいなのではないだろうか。

では島田氏のいう「Aランクの本格ミステリ」の定義とはなんなのか。
これがまたよく分からない。根本にあるのは島田氏がしばしば提示するヴァン・ダイン流本格スポーツ小説、あるいは民主平等の流儀(よくわからん。。。)からの脱却らしいのだが、その行く末として提示される部分の根拠があいまいなのである。
あえていうなら、「これが未来に遺るであろう傑作だ」という部分なのか?もしくは別の文などで島田氏が提示するポーやドイルへの回帰を念頭においた21世紀型本格ということになるのかもしれないが。
総じて読むと、島田氏の本格に対する愛情と現状への危機感は共感できる部分もあるのだが、その論法においてはやや視野の狭さを感じさせるのは僕だけであろうか。


それらをふくめて選考員(二階堂黎人・つづみ綾・小森健太郎)の座談会を経て選考された本が

『少年は探偵を夢見る』 芦辺拓
『宿命は待つことができる』 天城一
『顔のない敵』 石持浅海
『福家警部補の挨拶』 大倉崇裕
『風果つる館の殺人』 加賀美雅之
『UFO大通り』 島田荘司
『溺れる人魚』 島田荘司
『ウロボロスの純正音律』 竹本健治
『シャドウ』 道尾秀介
『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三
『ハートブレイク・レストラン』 松尾由美
『気分は名探偵』アンソロジー


である。全12作中、読んでいるのは8冊であり、未読本が4冊あるのでなんともいえないが、やはり気になるのは島田氏の本が2作入っている事である。
座談会を読むと、この2作については3者とも手放しで誉めている。
果たしてそうだろうか?
選者の一人である二階堂氏は、選考基準のひとつとして「その作家の作品群の中でのレベル」を挙げている。しかしながらその基準に照らし合わせてみると、島田氏の2作はその部分において外れてしまうのではないか。
例えば、「溺れる人魚」表題作に関して、「エデンの命題」表題作における21世紀型本格(その中には最先端の科学、あるいは医学を取り込むべきという発想がある)をより推し進めたものとして評価されているが、「溺れる人魚」が同系の作品と考えられる「眩暈」や「アトポス」より上質の作品とは思えない。
正直、この選考は島田氏が批判したランキング本と同じ配慮の匂いが感じてしまうのは、私だけではないと思う。

また今回の選者に対してもやや疑問がある。
それは二階堂氏の存在だ。個人的な見解で申し訳ないのだが、作家二階堂黎人は好きなのだが評論家二階堂黎人はあまり信用していない。その理由としてやはり島田氏と同等の視野の狭さと自己の価値基準への強い拘りがあると見受けられるからだ。
今回の座談会でも、自分が評価しない作品と評価する作品の判断基準が曖昧に感じられ、また評価しない作品への論評に対して擁護する他の選者の意見への正当な判断をしているとは思えない箇所があった。
これは二階堂氏のこれまで論調からも感じられることであり、少人数における選考方式においては憂慮されるべき事ではないだろうか。
しかも二階堂氏はこの本の企画立案者であり、座談会の進行を兼ねている(と思われる)からなおさらである。
論評そのもの、あるいは企画そのものは大いに買うものであるだけに、来年以降があるのであれば選考者に関してもう少し広義に考えるべきなんだろうと思うが。。。
そもそも島田荘司×二階堂黎人コンビによる評論企画という時点で、かなり危険な匂いを感じたが、その危惧が当たってしまったような気がする。

余談だが、職業ミステリ作家として第1線で活躍し、なお評論家として信用できるなと思うのは、創世記は江戸川乱歩、近代は笠井潔(この人も時折偏ると思うが)であり、現時点では法月綸太郎だと思うのだが、みなさんのオススメの方がいらっしゃればぜひ読んでみたいところではある。


なんだか批判的なことばかり書いたが、この本の企画そのものは賛同するし、読み物としても十分面白かった。
特にそれぞれの推理作家におけるよくある次回予告あるいは本格への考え方の部分はよかったと思う。特に綾辻行人の次回予告は出色のくだらなさで最高だ。
また天城一へのインタビューも良かったし、柴田よしき×加納朋子×篠田真由美の座談会なんてめったに見られないし(笑)。

また来年も刊行されることを楽しみにしております、はい。


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『本格ミステリベスト10 2007』(原書房)を読んで<前編>

いまや本格好きにとって、年末ベスト10は師走の楽しみの一つではないでしょうか。

その先陣を切って原書房より、『本格ミステリベスト10 2007』が発売されました。
さて今年のランキングはというと

 1位  『乱鴉の島』 有栖川有栖
 2位  『顔のない敵』 石持浅海
 3位  『厭魅の如き憑くもの 三津田信三
 4位  『夏季限定トロピカルパフェ事件』 米澤穂信
 5位  『邪魅の雫』 京極夏彦
 6位  『シャドウ』 道尾秀介
 7位  『骸の爪』 道尾秀介
 8位  『福家警部補の挨拶』 大倉崇裕
 9位  『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介
10位  『仮面幻双曲』 大山誠一郎

11位  『UFO大通り』 島田荘司
12位  『風果つる館の殺人』 加賀美雅之
13位  『千一夜の館の殺人』 芦辺拓
14位  『赤い指』 東野圭吾
15位  『殺意は必ず三度ある』 東川篤哉
16位  『宿命は待つことができる』 天城一
17位  『少年は探偵を夢見る』 芦辺拓
18位  『帝都衛星軌道』 島田荘司
19位  『ウロボロスの純正音律』 竹本健治
20位  『トーキョー・プリズン』 柳広司


となりました。
ちなみに21位以下には『月館の殺人』『びっくり館の殺人』『怪盗グリフィン、絶体絶命』といった新本格のベテランのみなさんも入ってますね。
いやあ、今年のランキングは語れない(笑)。
とにかくベスト10で読んだのが1位の『乱鴉の島』のみ。
20位まででも、島田さんの2冊、そして東野さんだけ。
ちなみに5位の京極さんと19位の竹本さんは購入はしておりますが、まだ開いておりません。
ちょっとこれは情けない(笑)。
とりあえずランクインの著者を見てみると石持さんは確か昨年に続いての2位ではなかったかな。
そして道尾さんが3作ランクインの快挙(多分)。しかしこの人の本を一冊も読んでない!!
さらには20位以内に島田御大が2作ランクイン。
しかしね〜、この2冊ともそんなに出来がいいとは思えないんですよね〜。
本格という定義では不利なのかもしれませんが、『怪盗グリフィン〜』とかの方が出来がいい気がするんですけどね〜、はい。

ちなみに今回は『本格ミステリベスト10』刊行10周年記念として、1996〜2005年のオールタイムベストが発表されてます。
さらにはインターネットで投票を行った2007年、オールタイムベストの結果もそれぞれ掲載されてるという贅沢な仕上がり。ちなみに私も投票してみました。
その結果についての感想は後半に譲ります。

さてさて今回は特別インタビューとして島田荘司氏が登場しております。
ちなみにタイトルが『「本格」Man of the Year 2006』、いやあ凄いアオリですね(笑)。
内容はというと、本格の成り立ちから日本における変遷、さらに21世紀型ミステリの島田氏の見解をとにかく喋り倒してます。
だって一つの質問に対して、1ページ3段組で約6ページ弱喋り続けてますから(笑)。
とにかく御大のミステリに対する情熱は感じられますし、21世紀型ミステリというのも理解できなくはないです。
(ちなみにこの『21世紀型ミステリ』については一位の『乱鴉の島』でも触れられてますね。島田氏の影響凄まじきか?)

ただ日本の硬派本格作家(定義がよく分かりませんが、多分ヴァン・ダインの流れ)や、本格原理主義者にとってポーやドイルがタブーとされているというくだりは大いに首を傾げます。そんな事初めて聞いたような気がします。島田さんの言わんとする事はわからないでもないでもないですし、日本の本格にダインが与えた影響は大きいとは思います。しかし一方でダイン=神あるいは正義という主張はあまりに狭義的な見解なのではないかと思います。

また綾辻以降の新本格に対する登場人物の記号化という問題において(ちなみに記号化を否定して人物背景を書くと、田山花袋と関わりかねず危ないという論もまたすごい・・・)、人物の記号化をしないものはけしからないという異端審問的風潮があったと述べられてますが、そうなのと???

そもそも全体を貫く、あるいは21世紀型本格におけるダインの束縛からの離脱という提言においても現在のミステリ界においてダインの束縛を感じながら書いてる作家がどれほどいるのかという(主流の中堅作家において、あえていうなら二階堂さんぐらいしか思い浮かばない。)気がしますね。

果たしてこれを読まれた皆さんはどう思われるか、あるいは現役のミステリ作家がどう思うか気になるところではあります。

それから最後に『容疑者Xの献身』に関する一連の論争(←そもそもミステリ文芸雑誌を読まないのでそんなことあった事すら知りませんでしたが)についても掲載されています。なかなかにマニアックな論争ですが、僕自身は面白きゃいいじゃんと思いました(笑)。


(後編に続く)

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横溝正史の生原稿5千枚発掘!!未発表短編も!!

<横溝正史>東京都内の旧宅で草稿など5千枚 未発表短編も


「犬神家の一族」「獄門島」などで知られるミステリー作家、横溝正史(1902〜81年)の草稿など約5000枚が、東京都世田谷区の横溝の旧宅から見つかった。未発表とみられる短編「霧の夜の出来事(微笑小説)」などがあった。
 「霧の夜の出来事」は青酸カリをきっかけにした男女の騒動をコミカルに描いた内容。目を通したミステリー評論家の新保博久さんは「原稿用紙に横溝が編集長をしていた雑誌『新青年』の判があった。穴埋めとして自ら書いたが、出来がよくないので没にしたのかもしれない」と推測する。
 資料の一部を整理した探偵小説研究者の浜田知明さんによると、他にすでに発表した短編を書き直して長編にした作品5点の原稿や自分の単行本などに加筆したもの、ほごにした推敲(すいこう)原稿が多くあった。浜田さんは「手塩にかけて小説を磨き上げる横溝の真摯(しんし)な様子が分かる」と語る。
 現在、再映画化で話題の「犬神家の一族」に関しては、書き始めの1行に悩み、4回も書き直してほごにした原稿が残っていたという。他にも映画やテレビドラマ化された作品のシナリオが150種300冊あり、中には師とも呼べる江戸川乱歩が添削した書き込みもある。

毎日新聞より

横溝ファンとしては見逃せないニュース♪
おお、横溝の未発表短編が発見されたのか!!「霧の夜の出来事(微笑小説)」・・・微笑小説ってなんだ?
短編を書き直して長編・・・その長編はすでに発表されたものなのか?それとも?
自分の単行本に加筆したもの・・・そこまでやりますか!!ぜひ拝見したい!!

その中でもやはり江戸川乱歩が添削した原稿というのが一番見たい!!
どこかで公開展示するのかな?
もしするのなら駆けつけたいぞ・・・。

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宇山日出臣氏を偲ぶ

今月8月3日、元講談社編集者であり「新本格」生みの親ともいえる宇山日出臣氏(本名:秀雄)が亡くなった。
62歳という若さである。『ミステリーランド』シリーズの創刊を最後に講談社を定年退職され、フリーの立場となった氏のこれからの活躍が期待されていただけに残念でなりまえん。

綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸といった新本格第一期と呼ばれる作家たちの発掘以降、多くの若手作家を発掘した氏の慧眼がなければ、現在のミステリ界の繁栄は無かったはずであり、現代のミステリファンは楽しみを半減される事となっていたでしょう。
元々商社勤務だった氏は、中井英夫の『虚無への供物』を読みこの偉大なるミステリの文庫化の為に編集者に転進した異色の経歴の持ち主である。
初志貫徹、氏は『虚無〜』の文庫化を成し遂げただけでなく、同じように『虚無への〜』に感化された多くの若い才能とともにミステリ界を歩き続ける事になった。

それは既成のミステリに捉われる事のない、少しでも将来性の感じられた小説はことごとく出版するという講談社の姿勢に反映されたのだと思う。
果たして、氏なくして麻耶雄嵩や清涼院流水、舞城王太郎や西尾維新という曲者作家達がここまでミステリ界(あるいは文壇)において確固たる地位を獲得する事が出来たのだろうか?さらには彼らに影響を受けた若い作家達の登場を考えると、現代ミステリにおける彼の功績は偉大という他ない。

彼が送り出した作品のクオリティに関する批判も確かにあろうと思う。特にメフィスト賞出身者の中には文章力で見ると、プロというには厳しい人達も多くいたのは確かでしょう。ただそれは現在のミステリ界だけの問題ではなく、小説というものが生まれると同時に語られてきたものだろうと思うし、その時代時代において批判にさらされつつも、批判により時代にあわせて洗練されてきたのが現代文学であり、この経過を見ずして批判するのは間違いであると思う。

氏の最後に手がけた単行本であり、「本格ミステリとは対極にある、もっとも苦手とする男女の恋愛小説」と自らが評した『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(寮美千子)は第33回泉鏡花文学賞を受賞している。これをとっても彼がミステリだけではない一流の編集者であったといっていいのではないか?

多くのミステリ作家に人柄を愛され、第4回本格ミステリ大賞特別賞を受賞した氏の逝去に驚かれた作家の方々も多いと思う。
そんな氏のためにも、これからのミステリ界がより一層の活発化を望み多くの素敵な作品が生まれてくる事を信じたい。

合掌。

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